アンブレイカブル(Unbreakable)のネタバレ解説まとめ

『アンブレイカブル』とは、2000年製作のアメリカ映画。日本公開は2001年の6月。大ヒットとなった「シックス・センス」の次にM・ナイト・シャマランが手掛けた作品。脚本もシャマラン自身が担当した。凄惨な列車事故に遭いながら、ただ一人かすり傷ひとつ負わずに生き残った男が辿る数奇な運命を描く。主演は「シックス・センス」に続きブルース・ウィリス。共演はサミュエル・L・ジャクソン、ロビン・ライト・ペン。

『アンブレイカブル』の概要

『アンブレイカブル』とは、2000年製作のアメリカ映画。日本公開は2001年の6月。大ヒットとなった「シックス・センス」の次にM・ナイト・シャマランが手掛けた作品。脚本もシャマラン自身が担当した。凄惨な列車事故に遭いながら、ただ一人かすり傷ひとつ負わずに生き残った男が辿る数奇な運命を描く。主演は「シックス・センス」に続きブルース・ウィリス。共演は、主人公をそれまでの人生と全く違う運命に導く謎の男を演じるサミュエル・L・ジャクソン、主人公との関係に悩む主人公の妻を演じるロビン・ライト・ペン。

それまで全く無名だったM・ナイト・シャマランが監督した「シックス・センス」は、作品のジャンルとしてはホラーでありながら、同時に家族の絆を描いた感動作でもあり、そして意表を突く意外なラストが話題となって、世界中で大ヒットした。公開された年のアカデミー作品賞や監督賞にもノミネートされるほど、興行的にも作品の評価としても大きな結果を残した「シックス・センス」で一躍脚光を浴びたシャマラン監督が、次に手掛ける作品も当然の如く注目された。それが本作「アンブレイカブル」であるが、「シックス・センス」で話題となった「意外なオチ」をこの作品にも期待していた観客にとっては、その期待を裏切る形となった。

「シンクス・センス」は、「幽霊が見えてしまう子供」を主人公としたホラーの設定を基調としつつ、その特異な能力故に、母親や同世代の子供と馴染めない子供の葛藤、子供のカウンセリングをしながら妻との関係に悩む主人公の姿を描き出し、一級の人間ドラマとしても成立させていた。この前作と比べ「アンブレイカブル」は、一見「シックス・センス」と似た体裁を取りながら、全く趣きを変えた作品となっている。シャマランは、「シックス・センス」同様にブルース・ウィリスを主演にして、大事故に遭ってただ一人生き残った男の苦悩を描くという形を取り、家族との関係に思い悩む主人公の姿を描きつつ、主人公と正反対の「脆く、壊れやすい体」を持った男との接触を軸に物語を構築していく。「シックス・センス」同様、主人公の不死身の体には何か秘密があるのではないか、ラストで観客をあっと言わせる「オチ」が待っているのではないか、という予想に反し、「実はその”事故に遭っても死なない男”は、不死身のヒーローだった」という奇想天外な物語を造り上げた。「アンブレイカブル」は、ヒーローが活躍するアメリカン・コミック好きのシャマランが造り上げた、日本で言えば「仮面ライダー」のようなヒーローものの、「ヒーローが誕生するまでを描いた第一話」を、極めてリアルに描いた作品だったのだ。これこそが、シャマランがこの作品に仕掛けた大いなるトリックだったのである。

しかし、「シックス・センス」のような「ホラーでありながら一流の人間ドラマ」を期待していた観客にとって、「ヒーローの誕生を生真面目に描いた作品」は、すぐに受け入れられるものではなかった。「死なない男が実はヒーローでしたって、観客を馬鹿にしているのか」という声も上がるなど、作品の評価は芳しいものではなかった。興行的にも「シックス・センス」に遠く及ばない結果となり、シャマランはこれ以降、「アンブレイカブル」を製作した時点で構想にあったと言う、「ヒーローをリアルに描いた次の作品」を封印する。

その後、クリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」で、ヒーローたる主人公があえて悪の汚名を被ることを選択するという、ヒーローの苦悩をリアルに描いた作品が、評論家の高い評価を得て、興行的にも成功した。そして、「アベンジャーズ」に代表されるアメリカン・コミックのヒーローを主人公とした映画のシリーズもヒットを重ねた。この状況を経て、ヒーローの苦悩をリアルに描いた映画を観客が受け入れる環境が整ったとシャマランは判断し、2017年に「アンブレイカブル」の主人公デヴィッド・ダンが10数年ぶりに出演する新作「スプリット」を製作する。そして、「アンブレイカブル」と「スプリット」の両方の登場人物が出演する、シリーズ3作目となる映画「GLASS」が2019年に公開される。

『アンブレイカブル』のあらすじ・ストーリー

131名もの犠牲者を出した列車事故で、デヴィッドはただ一人、かすり傷ひとつ負わずに生き残った

1961年、フィラデルフィアのデパートで、一人の黒人女性が新生児を出産していた。なかなか泣き止まない、生まれたばかりの我が子をいぶかしく思う母親を見て、立ち合わせた医者が子供を診察する。その医者は、驚愕の事実を母親に告げる。この子は、両手と両足の骨が折れている。おそらく母親の胎内にいる時に、すでに折れていたのだと。

そして、現在。ニューヨークで新しい職場を探していた警備員デヴィッド・ダンは、就職活動を終えフィラデルフィアの我が家へと向かう列車に乗り込む。するとその列車は徐々にスピードを上げ、次第に尋常ではない速さになって行き、乗客の間にも不安が広がり始める。列車はそのまま脱線、乗客131名が死亡する大惨事となった。この大惨事の中でデヴィッドはただ一人、かすり傷すら負わずに生き残る。唯一の生存者となったデヴィッドのことはマスコミにも取り上げられたが、このニュースに人一倍注目していた男がいた。それは、生まれた時に両手足を骨折していた、生まれつき折れ易い脆い骨を持った「骨形成不全症」という病を背負った、イライジャ・プライスという男だった。

イライジャは幼少の頃、その折れやすい骨を持った体の特徴を同級生の子供たちから揶揄され、「ミスター・ガラス」というあだ名をつけられていた。骨折するのが怖く、近所の子供たちにからかわれるのが嫌で、イライジャは家に閉じこもりがちになっていた。そんなイライジャをなんとか表に出そうと、母親は家の前の公園にプレゼントを置き、それをイライジャに取りに行かせる。勇気を出してイライジャが取りに行ったそのプレゼントの中身は、ヒーローが悪者と戦い活躍する、アメリカン・コミックだった。母親は、その続きが読みたければまた同じように公園に置いておくからと言い、イライジャを定期的に外出させることに成功する。これを機にイライジャはアメリカン・コミックの虜になり、成人してからはアメコミの収集家として名を馳せるまでになっていた。

一方、デヴィッドは、事故に遭う前からなぜか今の生活に不安を覚え、妻との関係も上手く行かず、家を出て別の場所で働こうと考えていた。そんなデヴィッドの元に、イライジャからのメッセージが届く。「あなたは今まで何回病気にかかりましたか?」というそのメッセージを見て、デヴィッドは改めて、これまで自分が一度も病気にかかったことがないことに気付く。自分にこのメッセージを送ってきた理由を聞こうと、一人息子のジョセフと共にイライジャに会いに行ったデヴィッドは、自分がイライジャが探し続けてきた人物だと告げられる。

脆く壊れ易い体を持った自分のような人間がいるのなら、決してケガをせず病気もしない、正反対の「絶対に壊れない体」を持った人間がいるのではないか。そしてその人物は、自分では気付いていないが、アメコミに書かれたヒーローとして現実社会に存在しているのではないかと、イライジャは語るのだった。コミックに書かれていることは決して「絵空事」ではなく、古代から伝わる壁画のように、実際にあったことを現代に生きる人々に伝える手段なのだと。デヴィッドは、自分がいつも感じている、日常生活に対する説明の出来ない違和感や悲しみのようなものを、メッセージをくれた主が説明してくれるのではないかと期待していたが、イライジャの話はあまりに突拍子もないものに思えた。デヴィッドはイライジャに、自分はアメフトの選手だった学生の時交通事故に遭い、ケガをして選手を引退したことがあると告げ、その場を去る。

スタジアムに来たイライジャは、デヴィッドの持つ力がヒーローの持つ特殊能力だと語る

イライジャの元から家に帰ったデヴィッドに、妻のオードリーは、列車事故から奇跡的に生還したことを経て、今からでもやり直しましょうとデヴィッドに告げる。オードリーがデヴィッドとの関係が上手く行かない理由は、デヴィッドが浮気をしているのではないかと疑っていて、就職活動で行ったニューヨークも、その浮気のためではないかと思っていたのだった。浮気を否定したデヴィッドに、オードリーは「あなたがデートに誘ってくれるなら、いつでもOKするわ」と語る。

アメフトの試合が行われるスタジアムで、デヴィッドが警備員の仕事をしている最中、イライジャが訪ねて来る。イライジャは、デヴィッドが数ある職業の中から警備員という「人を守る」仕事を選んだことにも、意味があると考えていた。デヴィッドは、これまで誰にも話していなかったが、自分には触れた人間の持つ悪意を見抜く力があるとイライジャに告げる。スタジアムに来た観客の一人が、腰のベルトに拳銃を隠し持っているのがわかった、そのイメージを見たと言うデヴィッドの言葉を聞き、イライジャはそれこそアメコミのヒーローが持つ「特殊能力」だと語る。デヴィッドが日常生活に悲しみのようなものを感じているのは、ヒーローとしてすべきことをしていないからだと、イライジャはデヴィッドを諭すのだった。デヴィッドは相変わらずイライジャの言葉を真に受けなかったが、イライジャはデヴィッドが言ったことを確かめるべく、拳銃を隠し持っているという観客の後を追う。

怪しい男がいるとデヴィッドに通報されたため、スタジアムから早足で立ち去ろうとするその観客をイライジャは必死に追うが、駅のホームへ繋がる傾斜のきつい階段を前に、イライジャは立ち尽くす。イライジャは勇気を出して階段を降り始めるが、足を滑らせ、階段に体を打ちつけ体中を骨折してしまう。イライジャは、全身を襲う猛烈な痛みの中、立ち去っていく観客のベルトに拳銃が刺してあるのを見つけ、そのまま気を失う。

家に帰ったデヴィッドは、息子のジョセフと共にウエイトトレーニングを始めるが、ジョセフがほんの悪戯心でつけた100キロ以上の重さのバーベルを、デヴィッドは持ち上げてしまう。デヴィッドが、自分がどこまで持ち上げられるのか試してみると、家にあったダンベルを全て足しても足りないくらいの、凄まじい重量を持ち上げることが可能だった。これを機にデヴィッドは、イライジャの言う通り、自分には特殊な力があるのではないかと考え始める。

デヴィッドはスタジアムで怪しい男を見つけ、身体検査を要請する

全身の骨折のため車イス生活を送ることになったイライジャは、リハビリのため理学療法を受けることになる。その理学療法を担当する医師が、デヴィッドの妻オードリーだった。イライジャはオードリーがデヴィッドの妻だと知った上で、リハビリを受けに来ていたのだった。イライジャはオードリーに、デヴィッドが学生時代に遭った交通事故について聞く。その事故の時、一緒に乗っていたのがオードリーだった。オードリーはイライジャに、「あの交通事故で夫が選手生命を絶たれるケガをしたおかげで、結婚出来た」と語る。理学療法を担当するオードリーにとって、デヴィッドは恋人としては申し分なかったが、自分もケガをする可能性が高く、人にケガを負わせることもあるアメフト選手との結婚は考えられずにいたのだった。

その頃デヴィッドは、スタジアムで警備の仕事をしながら、すれ違う人々の様々な「声」を聞き、自分の能力を試していた。その中で、母親に虐待されている子供の声を聞き、そしてスタジアムのトイレで麻薬を受け取る男のイメージを見る。しかし、その男の身体検査しても何も持っていなかった(実は男は麻薬を受け取る前で、デヴィッドはその男が受け取る「予知」を見ていたのだった)。その後、ジョセフが学校でケンカをしてケガをしたという知らせを受け、デヴィッドはジョセフの通う学校へ向かう。ジョセフは父親がヒーローだというイライジャの話を信じていて、ならば息子の自分も父親のように強いのではないかと考え、いじめられていた同級生を助けようと、ケンカを始めたのだった。

学校でデヴィッドは、ジョセフの担任である女教師から、デヴィッド自身がこの学校へ通っていた時の話を聞く。デヴィッドは幼少の頃に学校のプールで溺れて、危うく死にかけたことがあったのだった。その話を聞きデヴィッドは、「自分は決して死なない不死身の男で、現実社会に於けるヒーローである」というイライジャの話を信用しかけていたが、やはり彼は間違っている、自分はヒーローなどではないと考える。帰り道で、「同級生を助けようとしたがダメだった、僕はパパのように強くないね」と言うジョセフに、デヴィッドは「パパも同じだ。強くなんかない。パパもケガをするんだ」と答える。それを聞いたジョセフは、自分にとってヒーローであって欲しい父親が吐く弱音を聞いて、「なぜいつもそう言うの?」とデヴィッドを問い詰めるのだった。

家に帰ったデヴィッドは食卓でオードリーから、イライジャに会ったという話を聞く。するとそこで、ジョセフが拳銃を持っているのに気付く。デヴィッドがもしもの時のために隠し持っていた拳銃を、ジョセフが見つけ出していたのだった。そして、イライジャの話を信じるジョセフは、パパはヒーローで不死身なんだ、拳銃で撃たれても死なないんだと、拳銃をデヴィッドに向ける。デヴィッドの懸命の説得でなんとか事なきを得るが、デヴィッドは次の日イライジャに会いに行き、もう家族を巻き込まないでくれと頼む。イライジャは、大学の時デヴィッドが事故で選手生命を絶たれたというのは、オードリーと結婚するための方便で、実はケガなどしていなかったのだろうと考えていた。しかしデヴィッドは、自分が子供の頃に溺れたことをイライジャに話し、「自分はあんたの言ってるようなヒーローなんかじゃないんだ、もうこれきりだ」と言い放つ。

デヴィッドとオードリーは二人きりのデートで、お互いのことを正直に語り合う

デヴィッドが子供の頃に溺れた話を聞き、やはりデヴィッドは自分が探していた人物ではなかったのかと、イライジャは失意に陥っていた。しかしアメコミショップで「見張る者」というタイトルのアメコミを見つけ、その中に自分が求めていた「答え」を見つける。

数日後、また昔のようにやり直すチャンスだと、デヴィッドとオードリーはジョセフをベビーシッターに預け、「初めてのデート」を装って2人きりで食事に出かける。食事の席でオードリーは、「結婚が続かないと感じたのはいつ?」と正直に問う。デヴィッドも正直に、「夜中に怖い夢を見て、君に安心させて欲しかったけど、君を起こさなかった。その時だ」と答える。デヴィッドは妻と子との生活に、はっきりと説明は出来ないが何かが違うという、何か釈然としないものを感じていて、意識的に妻と息子を避けていたのだった。オードリーはそのことを、デヴィッドが交通事故で選手生命を絶たれ、自分と結婚したせいだと考えていた。オードリーはデヴィッドに、「選手としての才能は、天が与えてくれたもの。失って欲しくなかった」と告げる。

家に帰った二人に、ベビーシッターが伝言を告げる。ひとつはデヴィッドのニューヨークでの仕事が決まったという知らせで、オードリーは「あなたがニューヨークへ行くなら、それもまたやり直すきっかけになるわね」と、デヴィッドの転勤を受け入れるつもりでいた。もうひとつの伝言は、留守電に入っていた。電話の主はイライジャだった。イライジャは、デヴィッドが溺れたのは、ヒーローに付きものの「弱点」なのだと語った。それを、今日見つけたコミックで知ったのだと。

「私は病気になりケガをするが、君は決して病気をせず、ケガもしない。しかし私も君も同じように、水が肺に入ると溺れてしまう。君の、唯一の弱点だ」というイライジャの言葉を聞いたデヴィッドは、夜中に一人、自分が遭遇した列車事故の、その大破した列車の車両が収容された場所へ赴く。粉砕された列車の残骸を見ながら、デヴィッドは学生時代の交通事故のことを思い出す。車が横転する大事故だったが、イライジャが推察していた通り、デヴィッドはやはりその事故でもかすり傷ひとつ負わず、オードリーを助け出したのだった。そしてデヴィッドは決意を固め、イライジャに電話をかける。「僕は、何をすればいい?」そう問うデヴィッドに、イライジャは「人のいるところへ行け。そして、救うのだ。」と告げた。

雨の中レインコートを頭から被り、デヴィッドは「ヒーロー」としての行動を始める

「現実とコミックは違う。怖れるのは当たり前だ」というイライジャの言葉を思い出しながら、デヴィッドは駅へと向かう。デヴィッドは、そこですれ違う人々の、様々な「悪意」を感じ取り始める。そして、オレンジ色のツナギを着た男に触れた時、その男がある邸宅に押し入り、そこの主人を殺し、妻と子供を監禁している姿を見る。デヴィッドはその男の後をつけ、男が押し入った邸宅に潜入。地下室に監禁されていた二人の子供を救出し、次に2階で縛られていた妻を発見する。しかしそこでオレンジ色の男に見つかり、庭にあるプールへと叩き落とされてしまう。唯一の弱点、「水の中」へ落とされ絶体絶命のデヴィッドだったが、溺れる寸前、救出した子供二人がデヴィッドを助け出した。デヴィッドは再び2階へ上がり、オレンジ色の男と対決。その強靭な力で男を締め上げ、見事捕らわれていた家族の救出に成功した。

家に帰ったデヴィッドは、ベッドを別にして寝ていたオードリーを抱き上げ、自分のベッドへと横たえる。そしてオードリーに寄り添い、「悪い夢を見たんだ」と言うデヴィッドを、オードリーは優しく抱き締め、「もう大丈夫よ」と答えた。

翌朝目覚めたジョセフは、食卓でまるで恋人同士のように仲睦まじく語り合うデヴィッドとオードリーを不思議そうに見ながら、自分も食卓につく。食事の仕度をしながら、「今度イライジャが現れたら、警察に通報しましょう」というオードリーに内緒で、デヴィッドは朝刊をジョセフに見せる。そこには、「謎のヒーローが、子供たちを救った」という記事が載っていた。驚くジョセフに、デヴィッドは(それは自分だ)と頷き、「お前は正しかった」と小声で呟く。そして、(母さんには内緒な)と人指し指を唇に当て微笑むデヴィッドに、ジョセフは目に涙を浮かべながら頷くのだった。

その後デヴィッドは、アメコミの収集家として原画を集めた展示会を開いていたイライジャの元を訪れる。展示会場に居合わせたイライジャの母親の、「あの子は試練に打ち勝ったのよ。あの子は私の誇りだわ」と言う言葉に、デヴィッドも「彼の存在は奇跡です」と答える。そしてイライジャは、展示会場奥の、自室のスペースへデヴィッドを招く。イライジャは、デヴィッドの記事が載った新聞を手にして、「始まったな」と微笑む。「今朝もまだ、悲しみを感じたか?」と問うイライジャに、「いや」とデヴィッドは答える。そして、「握手の時が来たな」と差し出されたイライジャの手をデヴィッドは握った。その時、強烈なイメージがデヴィッドを襲った。それは、これまでに起きた凄惨な航空機事故やホテル火災をイライジャが故意に引き起こしていたというイメージだった。デヴィッドが遭遇した列車事故でも、列車が発車する寸前にイライジャは列車の運転席から降りて来ていた。更に、部屋の壁には世界中で起きた数々の凄惨な事故や事件の記事が貼ってあり、テーブルの上には作りかけの爆弾のようなものまで置いてあった。イライジャは、自分のような「壊れ易い、脆い体を持った人間」がいるなら、自分と正反対の「決して壊れない体」を持った人間もいるはずだと考え、その「壊れない体を持った人間」探し出すため、凄惨な事故を次々に引き起こしていたのだった。

愕然とするデヴィッドに、イライジャは「最大の恐怖とは、自分の存在理由がわからないことだ。多くの人間を犠牲にしたが、私はお前を見付け出した」と語る。あまりの衝撃に、そこを立ち去ろうとするデヴィッドの背中に、イライジャは尚も話しかけ続ける。「私はお前の真の姿を見つけ、自分の姿も見出した。自分のこの体の意味も。コミックに登場する悪党は、どんな奴か知ってるか?ヒーローとは”正反対の男”だ。そして、悪党には”あだ名”が付きものだ。私はこう呼ばれていた。『ミスター・ガラス』と。」

イライジャはその後デヴィッドの証言により、航空機事故やホテル火災、列車事故を起こした証拠を発見され、逮捕される。そして、重度精神障害者施設に収監された。

『アンブレイカブル』の登場人物・キャラクター

デヴィッド・ダン(演:ブルース・ウィリス)

アメフトの試合会場で、警備員を勤めている。家族は妻のオードリーと、一人息子のジョセフ。デヴィッド自身も学生時代はアメフトのスター選手だったが、交通事故に遭って選手生命を絶たれる。しかしそれは、事故に遭った時に同乗していたオードリーと結婚するための方便で、実は事故の際にはかすり傷ひとつ負っていなかった。数年後、131名の犠牲者を出した列車事故に巻き込まれるが、この事故でもデヴィッドはかすり傷ひとつ負わず生き残った。そんなデヴィッドに、イライジャ・プライスという男が接触して来てから、デヴィッドの運命は大きく変わり出す。イライジャは、デヴィッドは大事故に遭っても死なない不死身の体を持った男である、生まれつき脆く折れ易い骨を持った自分とは正反対の存在だと語る。そして、不死身の体を持ったデヴィッドは、現代社会に於ける、アメコミに描かれるヒーローであると告げる。

奇想天外なイライジャの話を最初は信用しなかったデヴィッドだったが、学生時代の交通事故でも怪我をせず、子供の頃から現在に至るまで病気すらしていないことに、改めて気付かされる。そしてデヴィッドは、それまで誰にも話していなかったが、肌の触れた人物の持つ「悪意」を感じ取ることの出来る能力を持っていた。その能力を密かに生かして、警備の仕事に役立てていたのだった。また、今まで意識していなかったが、自分の体重の何倍ものバーベルを持ち上げることの出来る、人並み外れた身体能力を持っていることにも気付く。更に、妻と子を愛していながら、家族との「幸せで平凡な生活」に馴染めず違和感を感じていたのは、自分がヒーローとして成すべきことをしていないからだとイライジャに教えられ、デヴィッドはヒーローとしての行動に出ることを決意する。大事故に遭ってもかすり傷すら負わない「不死身の体」の持ち主であるが、水中ではその能力を失う(溺れてしまう)という弱点を持っている。

イライジャ・プライス(演:サミュエル・L・ジャクソン)

生まれつき脆く折れ易い骨を持った、「骨形成不全症」という病気の持ち主。その体の特徴を揶揄して、幼少の頃は同学年の子供たちに「ミスター・ガラス」というあだ名を付けられていた。幼い頃母親に買い与えられたアメリカン・コミックに心酔し、成人してからはアメコミの収集家として名を馳せるまでになる。そして、アメコミに描かれているヒーローは、現実の世界にも存在するのではないかと考え始める。更に、もしヒーローが現実にも存在するとしたら、それは「脆く壊れ易い体」を持った自分とは正反対の、「決して”壊れない”体」を持った人間ではないかと考えた。自分がヒーローであると気付かず、一般社会に埋もれているその人物を発見することこそ、「壊れ易い体」を持って産まれた自分の使命だと信じていた。

イライジャは自分のこの考えを実証するため、爆薬などの製作を始め、飛行機事故やホテル火災、デヴィッド・ダンが遭遇した列車事故など、数々の大惨事を人為的に起こすようになる。その惨事に遭って「生き残った人物」がいたとしたら、その人物こそが自分の捜し求めている「決して死なない男=現実社会に於けるヒーロー」であると考えたのだ。そして遂にイライジャは、大惨事に遭ってかすり傷ひとつ負わず生き残った男、デヴィッド・ダンを探し当てる。

早速デヴィッドにコンタクト取り、(自分が大惨事を起こしたことは明かさずに)自分の考えを告げたイライジャだったが、デヴィッドはその考えを受け入れてくれなかった。しかし諦めず、何度もデヴィッドに接触し、果てはデヴィッドの妻のオードリーにまで接触した甲斐があり、デヴィッドは自分の中に秘められた「ヒーローとしての資質」に気付き始める。ヒーローとしての行動を開始し、自分がヒーローであると気付かせてくれたイライジャへ礼を言いに来たデヴィッドに、イライジャは初めて、自分がこれまで大惨事を引き起こして来た張本人であることを告白する。

アメコミに描かれたヒーローが現実に存在するのならば、その好敵手となる悪役=ヴィランもまた、現実に存在するのではないか。だとすれば、「決して壊れない体」を持ったヒーローとは正反対の、「脆く壊れ易い体」を持った自分こそが、その悪役として相応しいのではないか。イライジャはそう考え、不死身の体を持つ人物を見つけ出す目的と共に、自分の「悪役」としての存在を確立させるために、大惨事を故意に引き起こしていたのだった。自分が壊れ易い、満足な社会生活も送れないような体を持って生まれてきたことには、きっと意味がある。自分はただの、病弱な男ではない。ただの犯罪者ではない。ヒーローの好敵手である「ヴィラン」なのだ。この考えが、骨形成不全症という悲劇的な運命を背負って生まれたイライジャを、これまで支えて来たのだった。そしてイライジャは、「ミスター・ガラス」という、悪役に付きもののニックネームを持ったヴィランとして、ヒーローとして行動し始めたデヴィッドを、喜びと共に迎え入れた。

その後イライジャは、デヴィッドの告発により逮捕され、精神病院に収監される。2019年公開のシャマラン監督作「GLASS」に、デヴィッド・ダンやシャマラン監督作「スプリット」の登場人物ケビンらと共に、再登場する。

オードリー・ダン(演:ロビン・ライト・ペン)

本作の主人公、デヴィッド・ダンの妻。病院で患者のリハビリ等を受け持つ、理学療養師を勤めている。学生時代に、アメフトのスター選手だったデヴィッドと付き合っていたが、ある日デヴィッドの運転する車に乗っている時に、交通事故に合う。二人とも命に別状はなかったが、デヴィッドは事故の時のケガが元で、アメフトを引退することになる。その後、二人は結婚した。しかしそれは、医学療養師であるオードリーが、ケガが多く対戦相手をケガさせてしまうこともあるアメフトの選手と結婚することにためらいを感じていたのをデヴィッドが知り、事故を機会に選手を引退しようと考えたからで、実はデヴィッドは事故の時にかすり傷ひとつ負っていなかった。

オードリーは、デヴィッドが事故の時ケガをしていなかったことを知らなかったが、その後結婚生活が上手くいかなくなり、それはアメフトの選手という未来がなくなり自分と結婚したことを、デヴィッドが後悔しているからだと感じていた。自分の元へリハビリに訪れたイライジャ・プライスが、デヴィッドには特異な力があるということを聞くが、それはイライジャが骨形成不全症という病気を患い、長くつらい生活を送ってきたことで生まれた妄想だと考えていた。デヴィッドが、131人もの犠牲者を出した列車事故から奇跡的に生還したことで、夫婦生活をやりなおすチャンスだと考えた。

ジョセフ・ダン(演:スペンサー・トリート・クラーク)

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