ドールズフロントライン(ドルフロ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ドールズフロントライン』とは、中国のサンボーンが開発しているスマートフォン用のゲームアプリである。民間軍事会社の指揮官であるプレイヤーは、第三次世界大戦により荒廃した近未来を舞台に、人工知能の反乱により襲い来る機械の兵士たちを撃退するため、銃の名前を冠する戦術人形と呼ばれる機械の少女を率いて戦うことになる。

敵地に一人取り残されたM16は、脱出するROたちを敬礼で見送ると爆発の中に消えていった

(このエピソードの時系列はストーリーイベント「低体温症」から2ヶ月後の出来事である)
クルーガーは、かつての上司であり、現在はグリフィンの協力者である正規軍特殊作戦司令室のカーター将軍に詰問されていた。将軍がグリフィンに数々の便宜を図っていたのは、鉄血人形の殲滅のためではなく、鉄血工造のAI技術者であり「胡蝶事件」で死んだリコリスが遺した次世代戦術人形用のAIデータを欲していたからである。しかし、政治情勢が急速に変動する中でグリフィンが思ったような成果を挙げられないことに苛立った将軍は、協力先の乗り換えをちらつかせてクルーガーに圧力をかける。クルーガーは、リコリスの元同僚だったペルシカに、リコリスの遺したデータ(EP00参照)の復元状況を問うが、データの復元には「7号ファイル」と呼ばれるデータが必要だった。ペルシカもその所在地は確認していたが、それは鉄血の本拠地周辺であるS02地区だった。クルーガーは新人指揮官とAR小隊をペルシカに貸与し、速やかに7号ファイルを奪取するよう命じる。しかし、ペルシカはそんなクルーガーの態度に不審なものを感じたのか、リコリスの死は本当に偶発的なものだったのかを問う。クルーガーはそれにはっきりと返答することはなかった。
7号ファイルが秘匿されているのはS02地区内、かつて鉄血工造の工廠だった0号基地。RO率いるAR小隊はそこに降下して作戦を遂行しなければならなかった。
新人指揮官の部隊が陽動を行う中、敵の中枢部ともいえる0号基地近くに降下したAR小隊。M16の要請で鉄血の通信を傍受したROは、この地区の敵指揮官が高等人形のデストロイヤーであると推測。それに基づいて作戦を修正する。基地に潜入し7号ファイルのダウンロードを開始したROだが、報告なしに持ち場を勝手に離れる等の独断専行を繰り返すM16や、頻繁に離席して連絡が遅れるペルシカにROは不満を隠せなかった。そして、またも持ち場を勝手に離れていたM16に怒りをぶつけるRO。その感情は、経験不足のROの指揮ぶりを経験豊富なM4のものと比較しているのではないかという劣等感によるものだった。しかしM16はROの怒りを受け流すと、鉄血のネットワークへ侵入して動向を調べるよう要請する。ROは居場所を感知されるのを怖れてそれを拒絶するが、M16は上空からエンジン音が聞こえたという。M16は、1つのエリアに複数の高等人形がいることを怖れていたのだ。ROが鉄血のネットワークに侵入した時には既に時遅く、高等人形ドリーマーの率いる空爆ドローン部隊が0号基地への爆撃を開始していた。ドリーマーはこの地区がデストロイヤーの管轄であるにも関わらず、AR小隊の侵入を感知すると勝手に作戦行動を開始したのだ。新人指揮官の部隊が必死に護衛する中で、なんとか7号ファイルの奪取に成功したAR小隊は脱出を開始する。しかし、撤退ルートのゲートが閉鎖されてしまった。M16は、自分がゲートを爆破して退路を作ることを提案する。今この状況で単身それが可能な戦闘経験を持つのはM16だけだった。新人指揮官の部隊が出撃してきたデストロイヤーとドリーマーを撃退したことで脱出は可能になったが、ゲートの爆破時にアクシデントが発生しM16が取り残されてしまった。輸送機から取り残されたM16を見ることしかできないROとSOPII。M16は敬礼で二人を見送ると、爆発に呑まれて消えていった。

EP08(緊急)「巡礼者」

M16からの最後の通信が機能を停止していたM4を呼び覚ましたのだった

(このエピソードはEP08「火花」の裏側で起きていたものである)
0号基地から7号ファイルを奪取したROとSOPIIは無事グリフィンに回収されたが、新人指揮官は自身の部隊を投入して爆発の中に消えたM16の行方を捜索していた。

それよりしばらく前に遡る。ペルシカはROたちが7号ファイル奪取作戦を展開している中、その監視と並行してM4のメンタルモデル修復作業を続けていた。しかし、記憶の欠落部分が多く作業は難航していた。
一方、ROの指示を無視して持ち場を離れたM16には、ペルシカから与えられた極秘の命令があった。0号基地に隠されたもう一つのデータ、それを奪取してM4のメンタルモデルを修復することである。そのために彼女はペルシカと度々通信していた。M4を大切に思うM16は、何があっても彼女を修復するつもりであった。たとえ自身が破壊されようとも。
そんな中で、M16は自分がかつて0号基地を訪れたことがあるような気がしていた。彼女の記憶データには何者かによる改竄が加えられていたのだ。そして、0号基地こそがあの忌まわしい「胡蝶事件」、鉄血の人形たちが人類に反乱を起こすきっかけとなった統括人工知能「エリザ」の暴走が起き、リコリスが死んだ場所であった。
M16に指示を出しているペルシカもM4の記憶データの復元に尽力していたが、銃との結びつきであるスティグマが破損しているため、銃にまつわる記憶になると拒絶反応を起こしてしまうのだ。そして、銃への忌避感はM4の記憶から無いはずの記憶を呼び覚ましていた。

その頃、再度持ち場を離れて0号基地の深部に侵入したM16は、該当データのない謎の信号の発信源に辿りついていた。そこは何かの培養槽だった。ペルシカの指示でその部屋にある記録ストレージの奪取を試みたM16だったが、セキュリティが堅固でとても侵入できそうにない。ペルシカは、最後の手段として改良型の傘ウイルスをM16に投与し、一時的に鉄血人形としてのアクセス権限を持たせることを提案した。しかし、既にこれを使用したことのあるM16が再びこれを使用すると、最終的に人格を浸食され鉄血のコントロール下に置かれてしまう。それでもM16はM4のために自分にウイルスを投与し、記録ストレージのデータを奪取するのだった。

何者かの導きによって再生されたM4の「あるはずのない記憶」。それは、爆撃で両親を失った悲しみをテロリストに利用されて暗殺者となり、そして軍人に射たれ瀕死の身体を何者かによって被験体とされた難民少女のものだった。

爆死を偽装してROたちに別れを告げると奪取したデータと肌身離さず持っていた「秘密兵器」をM4へ託すためにドローンに搭載して送り出したM16は、自己の人格がウイルスに浸食される中で通信を介してM4への別れを告げていた。しかし、その時機能を停止していたはずのM4が目を覚ました。最も頼りにしていた姉の最期が彼女を現実へと引き戻したのだ。
力尽きて倒れたM16の前に現れたのは鉄血の高等人形ドリーマーだった。ドリーマーはエージェントの指示でM16を迎えに来たのだ。傘ウイルスに侵されたM16に聞こえてきた歌声、それはエルダーブレインのものだった。M16のメンタルモデルは既に鉄血の深層ネットワーク、すなわちエルダーブレインの本体そのものに接続されていた。M16の送り出したドローンはドリーマーにより撃墜されていたが、面倒事を嫌うドリーマーはそれをわざわざ奪取するつもりはなかった。M16は、撃墜されたドローンを自分を捜しに来た指揮官が回収してくれることに賭けた。

7号データの奪取と引き換えにM16を喪失したグリフィン。ヘリアンは、メンバー2人を失い不安定となったAR小隊を運用し続けることの危険性をクルーガーに提案する。しかし、クルーガーは未だAR小隊を重用するつもりであった。そして、鉄血との最終決戦の日は刻々と迫っていた。

EP08(夜戦)「鷲と大鴉」

AUGの指示によるジュピター砲の攻撃が時間稼ぎを狙うドリーマーを粉砕する

IWS2000は夢を見ていた。自部隊の副隊長であるAUGが「傘」ウイルスに冒され、敵同士として殺し合う。そんな夢だった。しかし戦術人形は夢を見ない。これは、IWSのメンタルモデルが修復される際に起きる再構成時の演算テストであった。あり得た可能性を演算したものにすぎなかった。

IWSたちの小隊は鉄血の輸送部隊から積荷を奪取する任務に就いていた。しかし作戦は失敗、IWSの命令で先に逃げていたAUG以外は破壊されてしまった。破壊されたIWSたちは予備の素体にバックアップデータを移し替えて再生されたのだ。
修復ポッドから目覚めたIWSを待っていたのは、副隊長のAUGだった。真面目だが不器用で落ち込みやすいIWSと優秀ではあるが冷笑的で皮肉が多いAUGの相性は悪く、IWSはAUGを苦手にしていた。自身が破壊されたことで作戦が失敗したことを悟ったIWSは落ち込むが、AUGは作戦失敗とはいえ有益な情報を得られたことで指揮官はIWSを褒めていたことを伝える。
IWSたちの小隊が持ち帰った情報。それは、鉄血がイエローケーキ、つまりウラン精製粉末を輸送していたということだった。この情報が意味するものは、鉄血が核兵器の製造を目論んでいるという推測であった。AUGが撮影した鉄血のコンテナの画像、そして輸送車の残留放射能データはこの情報を裏付けるに充分であった。
IWSたちの小隊は、潜入作戦が得意なウェルロッドMkIIの率いる小隊と共に鉄血からイエローケーキを奪取するという任務を命ぜられた。IWSにとっては雪辱のチャンスである。前回の作戦を失敗させたIWSは、今度こそ成功させるという緊張感から顔をこわばらせていた。
ウェルロッド小隊と共に目的地に到着したIWS小隊。しかし、緊張のあまり心ここにあらずのIWSは放射線測定器を置き忘れており、AUGはそれを見つけて持ってきていた。余裕たっぷりに見えるAUGであったが、彼女もこの任務には思うところがあるようだった。
鉄血の基地を制圧したIWS小隊は、調査に入るウェルロッド小隊を援護する。ようやく緊張を緩めたIWSは、それまで鬼のような形相だったことをAUGや小隊員のG17から指摘される。前回の失敗を気に病み過ぎて空回りしているIWSをやんわりと諫めるAUG。G17は、核物質の奪取という重要な任務に軍が関与しないことを疑問に思っていた。IWSは、グリフィン上層部は確実な証拠がないのに軍に情報を知らせることはできないのだと語る。小隊員のSSG69は、こういう時こそ放射線や毒ガス、細菌兵器に強い戦術人形の出番だと張り切っていた。そのSSG69を呼び止めたAUGは、IWSの目の届かないところで前回の作戦でIWSたちが破壊された場所の情報をSSGに伝え、IWSたちの残骸を調べるよう命令を下す。AUGはIWSから副隊長として強い権限を預かっていた。その権限をIWSの知らないところで行使するAUGには、ある思惑があった。
鉄血の基地内を捜索していたウェルロッドは、通路上で放射線を検出していた。鉄血の輸送部隊がその通路を移動しているのではないかというのだ。

ウェルロッドは、停車している鉄血の輸送トラックを発見した。今が襲撃の好機だというウェルロッド。一方、G17は鉄血の基地内に生物の痕跡がまったくないことに不審を抱いていた。衛生的ではない場所にも関わらず虫もネズミも全くいないのだ。
その時、基地周辺の状況を偵察していたウェルロッド小隊のブレンが、ヘリの移動経路をジュピター砲が塞いでいることを知らせてきた。ジュピター砲を沈黙させない限り、たとえウェルロッドたちがイエローケーキを奪取しても無事に撤退することができない。IWSたちは、ジュピター砲が設置されている陣地の制圧へ向かう。
IWSたちがジュピター砲を無力化したことで、グリフィンのヘリは無事に飛行場へと着陸できた。ウェルロッドたちは奪取したコンテナをヘリへと積み込んでいる。IWSたちはヘリが離陸するまで周辺の警護にあたることを決めた。ようやく任務を成功させたことで安堵するIWS。しかし、AUGは警戒を緩めていなかった。IWSの慢心を戒めるAUG。その時、G17はSSGがいないことに気付く。AUGは、前作戦でのIWSたちの残骸を探す命令をSSGに与えたことをIWSに告げた。IWSは自分に報告せず命令を出したAUGを責める。小隊の仲間を全員無事に帰還させることに拘るIWSは、AUGが独断でSSGに危険な単独行動を命令したことに激昂するが、AUGはIWSの願いである全員の無事帰還を叶えるためにそれが必要だと言うのだった。
声を荒げたIWSの通信に応答するSSG。SSGは前回の任務でIWSたちが破壊された場所にいることを報告し、その場所に異常な痕跡があることを告げて全員の集合を求めるのだった。

IWSたちはSSGの待つ森の中へとやってきた。そこで見たものは、戦術人形の残骸に付着した無数の小動物や虫の死骸だった。人間の死体ならともかく戦術人形の残骸にこんなに生き物が群がることはまずない。AUGは残骸の表面に付着している化学物質を分析し、そのデータを他の小隊員と共有する。驚くべきことに、その物質は現在IWSたちの体表にも付着していたのだった。
すると、突然通信が入る。通信の主は鉄血の高等人形ドリーマーであった。ドリーマーが言うには、戦術人形が毒や細菌に強い、つまりそれらを警戒しないのを利用して鉄血の輸送基地内に無味無臭無色の残留性毒ガスを散布。イエローケーキの輸送を囮にグリフィン部隊をおびき出してわざと奪取作戦を成功させ、毒ガスの成分を身につけさせたまま指揮官と戦術人形を面会させるつもりであった。そして、ウェルロッドたちが持ち帰ったコンテナも中身は既に対人間用の有毒物質へと詰め替えられているというのだ。
慌ててウェルロッドとの連絡を試みるIWSであったが、通信はドリーマーの仕掛けたジャミングにより遮断されていた。前回の作戦でAUGだけが無事に帰還できたのは、AUGに自分と通じるものを感じたドリーマーが寝返りを期待して見逃したからであった。ドリーマーはAUGに再度自身の元へ来るよう誘う。しかし、AUGは鉄血に寝返ることを拒み、ドリーマーを葬り去ることを改めて表明する。AUGがSSGに独自の任務を与えたのは、この作戦そのものがドリーマーの仕組んだ罠ではないかと警戒していたからだった。グリフィンの指揮官が戦術人形を見下し、日常的にスキンシップをしない人物であればこんな作戦は考えなかったと嘲笑うドリーマー。
IWSたちは、ウェルロッド小隊がグリフィン基地に到着するまでの時間を稼ごうとするドリーマー指揮下の鉄血部隊の追撃を逃れて対策を考えていた。やはり通信はジャミングされており、グリフィン基地にもウェルロッド小隊にも連絡が取れない。AUGは、最後の手段として制圧したジュピター砲を再起動させてウェルロッド小隊を輸送ヘリごと破壊するという案を出す。人形はデータが残っている限り再生できるのだから気に病む必要はなく、指揮官を救うためならウェルロッドたちもこの行為を許すだろうというAUG。しかしIWSはたとえそうであっても仲間を背中から撃つことはできない、とAUGの作戦案を拒否した。そのIWSが立てた作戦は、鉄血の中継基地を占拠、鉄血製の通信ステーションを使用してグリフィン基地と通信するというものであった。しかし、鉄血製の通信ステーションにはもれなく「傘」ウイルスが仕込まれている。IWSは、自分が「傘」ウイルスに感染したら躊躇せず破壊するようAUGに命令する。IWSは、先の作戦失敗についてAUGが限られた情報しか自分に教えなかったことを責める。AUGは、IWSが今以上の自己嫌悪に陥らないよう毒物の付着についてはわざと情報を制限し、自分の権限でSSGに命令してこの作戦自体がドリーマーの罠である確証を掴もうとしていたのだ。別動隊のG17とSSGの準備ができたのを確認したIWSとAUGは、鉄血の中継基地占拠へ作戦を開始した。
中継基地へと辿り着いたIWSたちだったが、ドリーマーのダミーもまたIWSたちを追ってきていた。ダミーを通じて語るドリーマーはIWSの作戦を見抜いた上でその手際を称賛。改めて二人に勝負を申し込むが、時間稼ぎであると見透かしたAUGはドリーマーの挑発をいなして別動隊へ指示を出す。ジュピター砲を再起動させていたG17とSSGは、ドリーマーのダミーめがけて砲撃。ジュピター砲の直撃でダミーは大破した。それでもドリーマーは鉄血の通信ステーションを使う以上どちらかが「傘」ウイルスの犠牲になることを告げて勝ち誇るが、その見苦しさを疎んだAUGによって半壊したダミーはとどめを刺された。G17たちは鉄血の追撃部隊から逃れるために持ち場を離れ、残されたIWSとAUGは指揮官に連絡を取るため通信ステーションへと入る。
鉄血製の通信ステーションを使用した戦術人形が「傘」ウイルスに感染しない確率はおよそ7%。IWSは改めてAUGに自分が感染したら破壊するよう命じて鉄血の通信ステーションに接続しようとするが、接続ポートは既にAUGによって使用されていた。AUGは、IWSに銃を向けたくないという気持ちを吐露する。そしてAUGは、自分がIWSの残骸を探すのに拘った理由は、ドリーマーの仕掛けた罠を確認することだけでなく、同じミスを繰り返しがちなIWSの戦闘記録データを回収して当のIWSに渡すためだったことを明かす。うっかり毒がついたままのIWSが指揮官に接触しないよう念を押したAUGは、グリフィン基地に緊急通信を送りウェルロッド小隊が毒ガスに汚染されていることを伝える。指揮官からの確認信号を受け取ったAUGは、IWSに自分を破壊するよう要求する。AUGは優しく仲間思いのIWSのことを気に入っていて、それゆえに同じ失敗を繰り返してほしくなかったのだ。IWSは冷静沈着で優秀なAUGこそが隊長にふさわしいと思っていたが、AUGは人柄の良いIWSこそが隊長にふさわしいと思っていた。やがてAUGが「傘」ウイルスに感染した人形特有の反応を起こし、IWSはやむなくAUGを破壊した。

事件が解決してしばらく後、IWS小隊の隊舎でG17は、AUGにあらかじめ命じられていた通りにグリフィンの匿名掲示板を無意味な書き込みで荒らしていた。前回の作戦失敗時にもIWS小隊の失敗をあげつらう書き込みを見えなくするために掲示板荒らしをしていたG17。今回は事件についてグリフィン内部の陰謀だと主張する書き込みを見えなくしていたのだ。その時、ウェルロッドがIWSを訪ねてきた。事件の詳細を聞きに来たのだ。しかし、IWSは留守であった。IWSは、修復ポッドから目覚めるAUGを迎えに行っていた。自分の隣に口うるさく皮肉を言うAUGがいないことが、IWSにとっては何より寂しいことだった。

EP09(通常)「彷徨」

I.O.P.社のCEOであるハーヴェルと正規軍のカーター将軍の仲は傍目にも分かるぐらい険悪であった

M16がS02地区から脱出できず行方不明になってから1週間。M4も未だ現場復帰できない中で、RO635とSOPII、たった二人のAR小隊は新人指揮官の部隊によるバックアップを受けながらM16の捜索を続けていた。しかし場所が鉄血の本拠地に近いこともあり、鉄血の大部隊による追撃を受け、残弾も少ない中で必死に逃げ回ることになった。

事の起こりはこれより少し遡る。
グリフィンの責任者であるクルーガーは、「メンバーの半分以上を欠いたAR小隊の運用は中止すべきである」と訴えるヘリアンの進言を頑なに退け、なおかつ新人指揮官の部隊にM16の捜索に協力するよう命じた。AR小隊は代わりのいない特殊な人形であるとしてその運用に固執するクルーガーだったが、その裏には何か別の思惑があるようだった。その一方で、クルーガーは新人指揮官に正規軍が主催する晩餐会に自分に随伴するよう命じた。クルーガーは7号ファイル奪取などの大きな功績を挙げた新人指揮官の実力を買い、正規軍との合同作戦として行われる鉄血との決戦における指揮官として起用するつもりであった。そのための顔合わせとして晩餐会に出席する必要がある、というのがクルーガーの意向であった。新人指揮官は、自分の部隊をAR小隊の支援として出撃させる一方で、正規軍との会合という政治的な戦場へ向かわなければならなかった。

敵の追撃から逃れる中で激しく不満をぶつけ合うROとSOPIIだったが、お互いに強く言い合える仲になってきたことに気がつく。信頼を深めた二人は、無事にM16を見つけ出してから回復したM4を迎え入れ、AR小隊としての再始動をすることを誓い合う。

その頃、晩餐会へ向かう車中ではクルーガーが正規軍との合同作戦について話していた。そもそも鉄血との戦いは正規軍が本腰を入れれば3日程度で終わるはずであった。しかし、正規軍は鉄血人形より脅威度の高い相手であるE.L.I.D感染者(汚染によりゾンビ化した人間)からの防衛に戦力を割かれ、鉄血の相手を民間軍事会社であるグリフィンに任せていたのだ。その正規軍が鉄血との戦闘に乗り出すのは新型戦術人形のお披露目、つまりはセレモニー的なものであるというのがクルーガーの説明であった。
会場に到着した新人指揮官とクルーガーは、正規軍のカーター将軍の護衛であるエゴール大尉から検問を受ける。異常に警戒心の強いエゴール大尉の態度に不満を見せるクルーガー。
会場では、主賓であるカーター将軍が演壇に立って熱弁を振るっていた。正規軍と民間軍事会社の緊密な連携による市民の安全確保を訴えるカーター将軍。講演後のマスコミからの質問をいなし終えると、カーター将軍はクルーガーたちの席へとやって来た。クルーガーのことを「ベレ」とファーストネームを縮めた愛称で呼び殊更に親密さをアピールするカーター将軍は、グリフィンが自分の欲していたデータを奪取してきた(EP08参照)ことにご満悦であり、その褒賞としてグリフィンに大舞台の仕事を回してきたのだ。
すると、そこに杖をついた老人が現れた。銃に手をかけるエゴール大尉だったが、それを制したのはカーター将軍だった。老人の名はハーヴェル・ウィトキン。I.O.P.社のCEOであった。グリフィンにとっては最大の提携先である。

新人指揮官の部隊による支援を受けながらM16の捜索を続けるROとSOPII。ROは、SOPIIに以前の約束である「鉄血の高等人形を見つけてもむやみに襲いかからない」ということを覚えているか確認するが、SOPIIはシラを切る。SOPIIの持つ強い加虐性は本人にもなかなか制御できないのだ。しかしROは、それでも目的達成のためにその衝動を抑えるよう重ねてSOPIIに頼み込む。ROが隊長として皆を危険に晒さないためにそう言っていることを理解したSOPIIはROに謝る。SOPIIは、M4に比べたら頼りにならない隊長であると卑下するROに、思い切りの良さはM4より上だし昔のM4はもっと出来が悪かった、とROの指揮ぶりを褒めるのだった。

一方その頃、新人指揮官とクルーガーの前に現れたハーヴェルは、カーター将軍の嫌味を受け流すとクルーガーと新人指揮官に親しげに語りかける。取引相手にも関わらずハーヴェルを嫌悪するカーター将軍は彼を追い払おうとするが、ハーヴェルはその邪険な態度をまるで意に介さず席についた。正規軍とグリフィンの合同作戦が単なる政治的セレモニーであることをあけすけに話すハーヴェルに困惑するクルーガー。「大口の取引を期待している」と言い残して去っていったハーヴェル。カーター将軍は、ハーヴェルが合同作戦のことを悪い様に言うのは、リコリスがI.O.P.社を離れたのがカーター将軍をはじめとした内務省派の軍人の差し金だとして根に持っているのだろうと説明する。しかしクルーガーは、ハーヴェルが言い残した言葉の中で正規軍が他の目的を持っているとほのめかしたことが脳裏に引っかかっていた。

長時間の作戦行動によりROとSOPIIは疲弊していた。それにSOPIIは何やら隠しごとをしている。休息を取るためにSOPIIに見張りを頼んで一時的にスリープモードに入ったROが次に目を覚ました時、セーフハウスの見張りをしていたはずのSOPIIはその姿を消していた。ROは慌ててその後を追う。
鉄血の部隊を退けたROはやっとSOPIIを見つけ出し、命令違反を叱責する。しかし、SOPIIはM16が常に持っていた大型の装備箱を発見していた。SOPIIはそれを回収に行っていたのだ。M16は万一のために自分の装備に発信器を設置しており、その信号をたまたまSOPIIが探知したのだという。M16は、もし自分の身に何かがあったらこの装備箱をM4へ渡すようSOPIIに頼んでいた。
それでもROはSOPIIの命令違反を責める。ROの怒りは、自分が頼りにならないと思われているという劣等感の裏返しだった。しかし、SOPIIが今回独断専行したのは衝動に任せたからではなく、ROを休ませたいという思いやりからの行動であった。そして、SOPIIは指揮官やヘリアンに対しての不信感も持っていた。だから自身の手でM16の装備箱を回収したのだ。装備箱の状態からその時点でのM16の状況を推察するSOPIIは、これまでの無思慮な小隊の末っ子ではなかった。感心するRO。SOPIIは、AR小隊に必要なのは自分で考えて動くことだと説明する。これはAR-15がかつてSOPIIに教えたことだった。
その時、鉄血の高等人形が二人を目指して突進してくる。ROとSOPIIは迎撃準備を整えるのだった。

その頃、軍の晩餐会ではカーター将軍とクルーガーが合同作戦について話し合っていた。マスコミにも公開される作戦のため過剰な火力で周辺にも被害が及ぶ重装部隊の支援は不可能であり、戦闘はエゴール大尉が指揮する正規軍の戦術人形歩兵部隊とグリフィンの歩兵部隊が共に行動する必要があった。情報ネットワークは軍のものをグリフィンにも開放するという。クルーガーは「傘」ウイルスの危険性を指摘するが、カーター将軍は「民間企業のウイルスは脅威にならない」と既に対策済みであることを強調する。正規軍は既にエルダーブレインの所在をおおむね推測しており、正規軍が他の鉄血人形を撃破している間にグリフィンの部隊がエルダーブレインの本体であるサーバーを確保する、というのがカーター将軍の立てた筋書きだった。
そこに現れたエゴール大尉に呼ばれてカーター将軍が去った後、新人指揮官たちの席に再びハーヴェルが現れた。ハーヴェルの企みでカーター将軍が席を外さねばならなくなったのを見計らってのことであった。ハーヴェルはリコリスの件についてのクルーガーとの行き違いを解消したいと言い出した。

鉄血の高等人形を迎撃しようとしていたROとSOPIIだったが、その鉄血人形は攻撃せずに投降勧告をしてきた。話し合いに応じる素振りを見せる鉄血人形「ジャッジ」は、M4の居場所を教えればROたちを見逃すと言ってきた。ROは、交渉のふりをしてM16の居場所を聞き出す作戦に出た。しかし、その最中にSOPIIが言った「チビ」という言葉がジャッジの逆鱗に触れた。幼女のような外見を非常に気にしているジャッジにとって、それは他のどんな侮辱より看過できなかったのだ。
強力な火器とビームシールドによる堅固な防御を持つジャッジには、ROとSOPIIの二人ではまるで歯が立たない。それでも二人の健闘を讃えるジャッジは、再度ROたちにM4の居場所を教えれば助けてやると勧告する。はぐらかして救援到着の時間を稼ごうとするROたちの態度を見て二人がM4の所在を知らないと判断したジャッジは、最後にM16がドリーマーに拉致されていることを教えると噴射装置を使って戦場から離脱していった。ジャッジの捨て台詞に激昂したSOPIIは、理性を失いジャッジを追って鉄血の支配地域のその奥まで走る。ROも慌ててその後を追うのだった。

EP09(緊急)「犬と鷹」

「M4の大ポカで催涙ガスを浴びて激怒したAR-15」の物真似を披露するSOPII。楽しかったあの日々はもう戻らないのか

初めてRO635の前に現れたM4の目は、鉄血への憎悪で冷たく凍りついていた

怒りに任せてグリフィンへの通信が届かない敵地の奥まで突進したSOPIIを引き止めることに成功したROだったが、またしても残弾が心もとない状態で孤立することになった。鉄血の大軍による包囲網を抜けながら逃走するROたち。
怒りに任せてSOPIIに暴言をまくし立てるROは、最初に会った時のクールな優等生でどこか他人行儀な彼女とはだいぶ違っていた。思わず笑い出すSOPII。二人の距離は、この逃避行で縮まっていた。指揮官タイプのROと追跡者タイプのSOPII、二人は製造目的こそ違うものの「何かを成し遂げたい」という思いは同じだった。
なんとか敵の追撃を逃れて逃げ込んだ廃墟で、二人はつかの間の休息を取るのだった。

一方その頃、新人指揮官とクルーガーはハーヴェルと対峙していた。ハーヴェルは、鉄血の使用しているOGASプロトコルは旧式のシステムがベースになったさほど価値のないものだと断じ、エルダーブレインもまた正規軍にとって意味があるものではないと切り捨てる。そして、エルダーブレインを必要としているのは正規軍ではなくカーター将軍の背後にある政治勢力であることを示唆する。ハーヴェルは、自分の主要取引先であるグリフィンが政争に巻き込まれて凋落することを危惧していたのだ。

SOPIIが休んでいる間、ROはM16の装備箱に設置されていた発信器を改造して大出力の信号を出すようにしていた。これによって通信途絶地域でもグリフィン部隊に発見してもらうことができるはずであった。しかし、これを使用するにはさらなる充電が必要となる。こういった工作技術を持った人形はAR小隊にいなかったこともあり驚くSOPII。そして二人は、充電待ちの間にAR小隊についての思い出話をするのだった。
訓練途上のAR小隊はあまりに出来が悪かった、と語るSOPII。初めての演習でM4が大失敗をしてAR-15が激怒したこと、M4が間違えて味方に催涙弾を投げて大惨事に陥ったこと。今となっては愉快な思い出であった。しかし、既にAR-15は喪失扱いとなり、M16も鉄血の手に落ちて所在がわからない。AR小隊再結成を諦めかけるSOPIIだったが、ROはそんな彼女を慰める。「戦術人形に感情があるのは、ただの殺戮マシーンではないからだ」というM16の言葉を思い出すSOPII。しかし一方で戦術人形の持つ感情を不良品の証拠とする人間もいる。「戦術人形が感情を持たされたのは何故か」とSOPIIの問いかけを受けたROは、戦術人形に感情があるのは作り出した人間にとっても何らかの意味があるのだ、と返すのだった。

ハーヴェルはカーター将軍が席に戻って来たところで再び席から去った。それを見たカーター将軍は彼がクルーガーに余計なことを吹き込んでいると激怒する。そしてカーター将軍は、この合同作戦が政治的に妨害されているとして新人指揮官の部隊に速やかに作戦準備をするように命じた。最後に二人だけで話がしたいとしてカーター将軍らに席を外すよう頼んだクルーガーは、新人指揮官にROたちの捜索を命じると共に、ハーヴェルは胡散臭い男ではあるが裏の取れていない話をする人物ではないと告げる。そして、どんなトラブルがあっても対処できるように新人指揮官に現時点のグリフィン部隊の全権を委ねるのだった。

廃墟の中で休息を取っているROとSOPIIは、とりとめのない思い出話をしていた。
SOPIIはまだ訓練中だったAR小隊での出来事を思い出していた。SOPIIが衝動に任せて鉄血人形をバラバラに引き裂いた光景を見て恐怖していたM4と、その反応を見て自分が異常者なのではないかと苦しむSOPII。
あまりに臆病で頼りにならない人形のように思えたM4。しかし、M16はそんなM4を成長する人形だと言っていた。SOPIIは、自分たちがもっと従順であればM4を困らせないで済んだのではないかと言う。ROは、AR小隊の皆が成長する人形だったからM4も成長できたのではないかと答える。その言葉にSOPIIは安堵するのだった。
そして発信器の充電が終わり、二人は新人指揮官による救出に賭けて再度戦場へ向かう。

一方、新人指揮官はヘリアンから発信器の信号を捉えたという報告を受け、急ぎ指揮下の部隊を救助に向かわせる。しかし、その信号は鉄血の知るところでもあった。ジャッジの率いる部隊がROたちを包囲する。そこへ駆け付けたのは真っ先に信号を探知したネゲヴ小隊だった。
他の増援部隊も到着し、鉄血の包囲部隊はほぼ壊滅した。しかし、ジャッジはあまりにも強くグリフィン部隊でも損傷を与えられない。ジャッジは、ドリーマーの輸送機が自分を迎えに来たのを確認すると、電磁パルス攻撃でグリフィン部隊を足止めしてその隙に輸送機に乗って去っていった。

かねてから不仲であったドリーマーが迎えの使者だったことに不満を漏らすジャッジ。しかし、これはエルダーブレインの命令であった。エルダーブレインは正規軍の動きを察知し、直属の護衛であるジャッジを呼び戻すよう命じたのだ。

電磁パルスによる機能停止から回復し、標的を取り逃がしたことを悔しがるROたちとネゲヴ。SOPIIは、M16を連れ戻せなかったことを悲しんでいた。そんなROたちを迎えに来た人形がいるという。それは、エルダーブレインによるメンタルモデル損傷からようやく立ち直ったM4だった。
M4は、ROたちにエルダーブレインとの決戦が差し迫っていることを告げる。その目は、憎しみに満ちた冷酷な輝きを放っていた。

EP09(夜戦)「帰路は光に敷かれて」

T65が書いたM16の台詞は本人の口調と似ていなかったため、後輩のT77によって書き直されてしまった

(このエピソードはEP09通常および緊急と同時期に起きていたものである)
AR小隊のエリート人形で歴戦のベテランであるM16が「傘」ウイルスに冒されて失踪したという情報は、グリフィン内の戦術人形たちに動揺を引き起こしていた。特にM16を心から尊敬していたT91の落ち込みようは酷く、仲間たちの慰めも届かないありさまであった。このままではT91のメンタルデータが崩壊しかねないと思ったT65は、指揮官にT91のメモリーからM16についての記録を消去するよう要請したが却下された。そして、その代案として偽の記録映像を作って「M16は理由があって一時的に鉄血に潜入しているだけでグリフィンを裏切ったわけではない」とT91に思わせる作戦を指揮官から提示された。そこでT65はM1ガーランドとM3、T77と共に映像作りを始めたのだ。しかしT65の書いた脚本はM16が言わないような台詞だらけで、とても説得力があるものではなかった。T77の手直しで改善はしたものの、後輩に脚本を書き直されたことで面子が傷ついたT65は不機嫌であった。「M16先輩が失踪しなかったらこんなことになっていなかった」と腹を立てるT65もまたM16を尊敬しており、M16が一刻も早くグリフィンへ戻ってくることを願っていた。M1ガーランドは、指揮官の口ぶりやROの態度から噂は本当だろうと言うが、T65はあれほど強かったM16が鉄血の手に落ちるはずがないと信じていた。T65を傷つけないために、M1ガーランドは「何らかの用事で帰るのが遅れているだけだ」と話を合わせるのだった。
T65のようにM16と交流があった他の人形たちも多かれ少なかれ悲しんでいるが、T91はM16への憧れがとても強かっただけに悲しみは極めて深く、今は指揮官とM16のことで口論することもできず自室に引きこもり、気を遣ったT77が届けた飲み物にすら手を付けていないありさまであった。
偽の記録映像を作る作戦を、行くあてのない人に光を見せて誘導するようなもので欺瞞だと言うT77だったが、M1ガーランドはたとえ欺瞞でもそれが本当の希望に繋がれば良いのだ、と言う。T77は、M16が「傘」ウイルスにより鉄血人形と化した可能性を示唆して偽りの希望を与えるべきではないと反論する。それに対し、M1ガーランドは、指揮官やAR小隊のメンバーがM16のことを信じているのなら自分たちが邪推すべきではない、とT77を咎める。
そうこうしているうちに準備が終わり、「脚本が完成した以上後は撮るだけ」「脚本通りに進行すればすぐ終わる」と豪語するT65だったが、T77は「現実が台本通りに進んだことはない」と皮肉を言うのだった。
そして、いよいよ記録映像の撮影が開始された。撮影はリアリティを出すために鉄血の残党が潜んでいる区域で行われることになった。「CGを使う時間の余裕がない」と言う監督のM1ガーランドは、実際の鉄血と戦うシーンを映像に使用するつもりであった。撮影のために鉄血の残党部隊を掃討したT65たち。戦場の向こう側は深い霧に覆われていた。T65は、「あの霧の向こうにM16先輩がいるかもしれない」と言い出す。
この後、M4役を演じるM3とM16役を演じるAK-47による会話シーンの撮影が行われるはずであった。メイクとウィッグですっかりM4の姿になったM3は演技に自信のない様子である。一方、AK-47はまだ現場に到着していなかった。どうせ酔っ払って忘れているだけだろう、と悪態をつくT65だったが、M1ガーランドからの通信に出たマカロフによるとAK-47は出撃中に大破して撮影に行けなくなったとのことであった。それを聞かされたT65は、「もうだめだ」と絶叫するのだった。
しかし、M1ガーランドはたとえM16役がいなくても撮影続行は可能だと言い張る。錯乱したT65はT77か自分が代役を演じると言い出すが、共に小柄で幼い容姿の二人ではM16役を演じることは不可能であった。M1ガーランドは、こんな時のために用意していた代替案があると言う。それは代役としてトンプソンを呼び出すことだった。M1ガーランドの事前調査では、トンプソンは非番のはずであった。しかし、M1ガーランドに頼まれて基地で待機していたM1A1によると、トンプソンは他の小隊が窮地に陥ったため自身の小隊を率いて救援に向かったという。そして、トンプソンが救援に向かった小隊こそがAK-47の小隊であった。次善の策まで台無しになって呆然とするM1ガーランド、再び絶叫するT65。T77は、「こうなる運命だったんですよ」と冷静につぶやくと、撮影を中止して計画自体を練り直すべきだと進言する。しかし、M1ガーランドはそれではT91のメンタルを救う機会を逸してしまう、とその進言を却下する。T65は、「向こうが来られないならこちらから行けばいい」と自分たちもトンプソンの救援に行くことを提案する。しかし、トンプソンたちと合流するには鉄血の防衛ラインを突破する必要があった。それでも行くと意気込むT65であったが、防衛ラインに待ち構えているのが鉄血の大型多脚装甲兵・マンティコアの大群と知り途端に尻込みする。M1A1の情報によると防御が手薄なポイントを見つけてすり抜ければマンティコアをやり過ごせる可能性があるという。そう聞いたT65は、「今夜はこれだけ不運が続いたからこれ以上の不運はないはず」と言い、防衛ラインの穴を探して抜ける作戦に賭けるのだった。
マンティコアに怯えながらこっそりと進軍するT65たち。鉄血の哨戒部隊は、あらかじめ設定されたルートに従って自動運行を続けていた。M3は、そのルート設定自体を書き換えられれば防衛ラインに穴を作れるのでは、と提案する。「傘」ウイルスの危険性を指摘するT65だったが、M3は鉄血の司令信号の中継点を手動操作すれば鉄血の端末にメンタルを接続しなくても鉄血の哨戒部隊を操作できるという。これは、指揮官が配布した「傘」ウイルス防止カードに基づいた方法だった。M3は、こんな時にM4ならどうするかを考えていて思いついた作戦だと言う。M1ガーランドやT77もその作戦に賭けることを決断した。
一方その頃、トンプソン小隊のM14は多数のグリフィン人形の反応を探知していた。トンプソンは、指揮官に援軍を要請した覚えはない、とその人形たちを確認に行こうとする。しかし、その時にはもうその人形たちはトンプソンの元に辿り着いていた。それは、鉄血の防衛ラインを抜けたもののそれに気付いたマンティコアの大群に追われて必死に逃げてきたT65たち撮影隊であった。半泣きですがりついてくるT65に困惑するトンプソンは、セーフハウスへ向かう道中でM1ガーランドから事情を聞いた。トンプソンは、大破したAK-47が搬送途中で言っていたことから、偽の記録映像を作る理由についてある程度のことは察していた。トンプソンはエリート人形ではないT65たちがあの危険な防衛ラインを突破したことに感心しながら、その撮影は大事なことかと問う。T65は、大事なことだと即答した。T65は、AK-47たちの救出に成功したトンプソン小隊が撤退せずまだこの地点に残っている理由を尋ねる。M14はトンプソンにはこの場所でやらなければならないことがあるから撮影は手伝えないと言うが、トンプソンはそれを遮ってM16を演じることを承諾した。トンプソンは、T65たちが大きな危険を冒してまでT91のために撮影をしようとしていることに心を動かされたのだ。トンプソンは、鉄血側に大きな動きがあれば撮影を中止することを念押ししてM1ガーランドたちに同行することを決めた。感動で号泣するT65を宥めながら、T77はこの行き当たりばったりの撮影がここまで続いていることにある意味で感心するのだった。
M1ガーランドのメイクですっかりM4そっくりの姿になったM3を見て感嘆するM14とトンプソン。続いてM16の姿にメイクされるトンプソンは、自身が再会を待ち望んでいる相手のM16を演じることに複雑な感慨があるようだった。しかし、T65はM16用の小道具である銃とケースを組み立てるための部品を持っていたはずが紛失したことに気付く。慌てふためいた挙句に泣き出すT65だが、T77はセーフハウス内の廃材で間に合わせの小道具を作ることを提案する。M1ガーランドは、T65が紛失した部品が汎用規格であることを思い出し、鉄血人形の残骸から回収すれば良いと言い出した。責任を感じたT65は、自分が外に出て鉄血人形の残骸漁りをすると言う。それを聞いたトンプソンは、T77とM3にT65の援護を頼む。3人がセーフハウスから出た後、トンプソンはM1ガーランドに内密の話を始めた。T65たちをセーフハウスから出したのは、人払いのためであった。

それからしばらく後。残骸漁りをしていたT65たちは突然現れた鉄血の大部隊を発見、慌ててセーフハウスへと逃げ帰ったが鉄血部隊はT65たちを追ってきており、先ほどまで隠れていたセーフハウスを攻撃してきた。トンプソンたちもセーフハウスを放棄して逃走、そして背後では鉄血の爆撃を受けたセーフハウスが盛大に爆発していた。その鉄血部隊を率いていたのは、歴戦の猛者であるトンプソンも見たことがない小柄な高等人形・ジャッジであった。デストロイヤーといいジャッジといい、鉄血の幹部級人形に幼い外見の機体が多いことを疑問に思うT65に、T77は「エルダーブレインがチビだから側近の背もそれを超えたらダメなんですよ」と答える。理屈が通っていることに感心するT65。トンプソンは、ジャッジはこれまで戦ったどの高等人形より強く、今の自分たちだけでは勝てないと言う。トンプソンたちが撤退しなかったのは、AK-47たちを助けたことでジャッジの部隊に目をつけられてしまい、隠れながら近隣の友軍と合流する機会を伺っていたのだ。トンプソンは、ジャッジに追われているこの状況では映像の撮影はできないとM1ガーランドに告げる。M1ガーランドもそれに同意するが、T65だけは撮影続行を主張する。しかしM1ガーランドは撮影中止を告げ、T65は落胆する。トンプソンは、ジャッジの標的は自分とM14であり、自分たちがジャッジを引きつけている間にM1ガーランドたちは別方向に逃げて指定のセーフハウスで合流した後に撤退するという作戦を提示した。T65はトンプソンたちだけが危険に晒されるこの作戦に反対するが、トンプソンは自分たちがジャッジに目をつけられたのがそもそものミスで自業自得だと言う。そして、T65たちを守るにはそれが最善の策だと言う。そこに、「普通に考えるならそれが最善の策だ」と割って入った者がいた。それは、鉄血部隊を率いる当のジャッジ本人であった。ジャッジは、トンプソンたちを無視してT65たちを追ってくる。「AR小隊以外の識別信号に偽装してもわたしの目は誤魔化せんぞ!」と叫んだジャッジが一直線に狙ってきたのは、撮影のためM4に扮したまま逃げていたM3であった。まさかの展開に驚愕するM3。T77は、予定の移動ルートに鉄血の司令信号中継点があるので、それを使って鉄血の進路を妨害しながら逃げることを提案するのだった。
なんとか鉄血の司令中継点へ辿り着いたT65たちだったが、そのルートは封鎖されていた。予定と違うことに逆上するT65、袋小路に追い詰められ愕然とするM1ガーランド。ジャッジはM4へ降伏勧告を行うが、M4の姿をしたM3は「自分は本当にM4ではないのです」とひたすら弁解する。しかしその時、ジャッジが「偽装信号にグリフィンのグリースガンを選ぶなんて」と口走ったことがM3の逆鱗に触れた。M3は、「グリースガン(潤滑油注入器)」と呼ばれると相手が誰であれ逆上するのだ。怒りに震えながら「グリースガン」と繰り返しつぶやくM3。ジャッジはそれに構わず投降を重ねて呼び掛けるが、その時高台に皆がよく知る人形が現れた。M16であった。M16はドリーマーに連れられてエルダーブレインの元へ向かったことを知っていたジャッジはあり得ないことに驚き、そしてかねてより不仲のドリーマーが自分を妨害するために改造したM16を差し向けたのだと思い込む。
T65やM3もM16の出現に驚くが、M1ガーランドはT65にカメラを回すよう呼び掛ける。旧世代のビデオカメラを起動させるのに手間取るT65だったが、なんとか撮影を開始した。そして、追いついたトンプソンたちも援護に回りジャッジを攻撃すると、T65たちに撤退を呼び掛ける。なんとか逃がすまいと攻勢を強めたジャッジだったが、立ち塞がったM16の投げた閃光手榴弾に目が眩み撤退するT65たちを見失ってしまった。
前線から離れ、撤退中に負傷したトンプソンを修復しながら休憩するT65たち。T65は、M16が無事だったことの喜びに震えていた。しかし、T77はあのM16がM1ガーランドによって差し向けられた偽物ではないかと思い、そのことについて尋ねる。しかM1ガーランドはメイク担当の自分がずっと皆と同行しており、代役のトンプソンもここにいる以上それはないと答える。T77は、渋々納得するのだった。
応急修復を終えたトンプソンは点呼を取り、はぐれた人形がいないことを確認すると指揮官に回収要請を出した。しかし、T65はM16がまだ合流していないと言う。トンプソンは、M16があの時現れたのにも、今ここに合流していないことにも彼女なりの理由があるのだとT65に言い、今いる人形だけで基地に帰還すると改めて宣告した。それでもT65は、T91のためにM16を連れ帰ることを頑なに主張する。M1ガーランドはM3に一緒にT65を説得するよう頼むが、M3は「あのチビを潰します」と口走る。「グリースガン」と呼ばれた時からずっと、M3はジャッジへの怒りを溜め続けていたのだ。狂気の表情を浮かべながらジャッジへの報復を誓うM3に思わず怯えるM1ガーランド。T77から無言の圧を受けたM1ガーランドは、トンプソンへ何か言おうとするがトンプソンはそれを察した。「若気の至りと言うべきか」と言ったトンプソンは、M1ガーランドもまたM16を連れ帰ろうとしていることを本人が言う前に理解した様子を見せる。「二倍の始末書でどれぐらい時間を得られますか」と尋ねるM1ガーランド。トンプソンは二倍では済まないことを仄めかしつつ、自分たちもT65たちに同行することをM14に告げる。

引き返してM16を連れ帰るためにジャッジと交戦していたT65たちだったが、戦闘中にジャッジは何者かの通信を受ける。そして、今目の前にいるM4が偽物であり、ジャッジがその偽物のM4に構っている間にAR小隊のSOPIIとROが鉄血支配地域の奥まで侵入してきたことを聞かされる。まったくの偶然の積み重ねを「グリフィン指揮官による巧妙な多重の罠」と思い込んだジャッジは、その手腕を褒め称えるとSOPIIたちを迎撃するために素早く撤退していくのだった。
ジャッジが視界にいる間は怒り狂っていたM3も、ジャッジの姿が見えなくなるとすぐに元の気弱な性格に戻っていた。そこに、M14が傷ついたM16を連れて現れたが、M14は言葉を濁していた。感極まって抱きつくT65を制したM16は、M4に扮したままのM3に向かって脚本の台詞を話しはじめる。それで状況を察したM3もその台詞に合わせる。あのM16の正体は、トンプソンが制御していたダミー人形だったのだ。そして、M1ガーランドとM14はそれを知っていた。T65たちをセーフハウスから外に出した時に三人で計画していたのだ。そのことをようやく知らされたT65は、怒りと落胆で絶叫するのだった。

何はともあれ、偽の記録映像は完成した。それを見たT91は気力を取り戻していた。それが本物でないことは薄々理解しながら、T65たちが自分のために必死になってくれたことがT91は嬉しかったのだ。
T91が元気になった姿を見届けたT77たちも安堵していた。そして、M1ガーランドはこの件に関する始末書を書くために事務室へ向かう。「事態の重大性を理解せず鉄血の危険エリアへ仲間を連れて行ったことの責任を問う」という形式上のものであった。M3は、M1ガーランドがトンプソンのダミーをM16に仕立てたのはいつだったかを尋ねる。逃走中にその余裕はなかったはずであった。M1ガーランドは、逃走しながらM14と共に二人でダミーを遠隔操作してメイクを行っていたことを明かす。そして、その後のM16登場からの筋立てはトンプソンのアドリブであった。
一連の出来事を振り返ったT77は、たとえ偽りの光でも希望を示すことはできるのだ、と思うのだった。

EP10(通常 / 緊急)「煉獄」

M4A1が開いた自身の心の扉の向こうにいたのは、一人の少女だった

時系列は少し遡る。
M16の犠牲によりメンタルモデルが修復され覚醒したM4。彼女は、すぐに戦列に復帰すべく再検査も受けずにペルシカの研究室から飛び出してしまう。しかし、鉄血の支配地域はこれから開始されるグリフィンと正規軍の合同作戦に先んじて正規軍による包囲が行われていた。M4の身を案じたペルシカは、旧知の仲である国家保安局のアンジェリアに要請し、M4のサポートを頼む。ある思惑があって正規軍の動向を監視していたアンジェリアは、別途の報酬と引き換えにペルシカの頼みを聞き入れるのだった。
正規軍によって包囲されている戦場へと辿り着いたM4だったが、正規軍の兵士は指揮官と同行していないM4をグリフィンの戦術人形とは認めず作戦予定地域の中に入れようとしない。途方に暮れるM4の前に現れたアンジェリアは、M4を臨時に自分の副官に任命すると正規軍の身分証を提示して検問を通り抜けた。怪訝そうなM4にペルシカからの依頼だと告げるアンジェリアは、M4をグリフィンの拠点に案内すると去っていく。M4は自分のことをよく知っているような素振りを見せるアンジェリアに疑問を持つ。
アンジェリアに指示された拠点で待機していたM4を迎えに来たのは、グリフィンの新型人形であるXM3だった。XM3の案内でグリフィンの輸送列車に乗ったM4は、大規模作戦での戦功を夢見るXM3に喪失は怖くないかと尋ねる。しかし、XM3はメンタルバックアップを取られている戦術人形にとっては死も一つの経験にすぎないと答える。それを聞いたM4は、バックアップのないAR小隊の人形は他のグリフィン人形とは死生観が違うことを痛感するのだった。
そんな時、グリフィンの輸送列車は鉄血の伏兵により攻撃を受ける。指揮官から権限を委譲され指揮官代行となったM4は鉄血の部隊を迎え撃つ。しかし、これまでにない戦力を投入してきた鉄血を相手にするには経験不足の新型人形たちでは荷が重く、次々と倒されていく。エゴール大尉率いる正規軍の救援により鉄血部隊を撃退することには成功したが、その時にはもはやグリフィンの生存者はM4だけであった。グリフィン人形たちの残骸からメンタルモデルのデータを抜き出そうとするM4だったが、エゴールはわずかな記憶のために他の兵士を危険に晒すことは許されない、としてM4の行動を制止する。次のXM3には自分との会話の記憶は残らないのだ、と悲しみながらM4はエゴールらと共にグリフィンとの合流地点へ向かう。そんなM4に、謎の女性の声は「犠牲なくして強くなることはできない」とささやく。AR-15やM16の名前を出してM4を煽るその女性の声は、エルダーブレインを倒して本当の自分になるようM4を唆すのだった。

ようやく任務を終えて指揮官の部隊と再合流を果たしたSOPIIとRO635。その前に現れたのはM4だった。久しぶりの再会を喜ぶSOPIIだったが、M4の様子がおかしいことに気づく。ROも、目の前にいるM4の冷淡さが伝え聞く彼女の印象と異なることに戸惑っていた。M4は、SOPIIたちにこれからエルダーブレイン殲滅作戦が始まることを告げる。

(ここからEP09緊急の続きとなる)
その30分後。正規軍部隊は鉄血の「傘」ウイルス感染エリアへと突入を開始した。グリフィンの部隊は、正規軍が設置したアンチ「傘」ウイルスのジャミング装置防衛の命令を受ける。大量の鉄血部隊から装置を守るのはグリフィン部隊では荷が重い作戦であったが、エゴールは助力を拒否。しかしM4は、鉄血のハッキングで行動不能になった正規軍の人形を使用することを提案。エゴールは渋々それを認める。軍用人形のコントロールは、M4のメンタルに大きな負荷をかける。そのことを心配するROだったが、M4はそんなROにまたも冷たい対応をするのだった。
正規軍の部隊は破竹の快進撃を続けているが、その後衛を務めるグリフィン部隊とは距離が開き過ぎていた。それを鉄血の策だと疑うM4とRO。その時、鉄血は側面から奇襲をかけてきた。しかし、正規軍を指揮するエゴールは進撃速度を緩めることを拒否、グリフィン部隊を足手まといだと罵る。M4は、AR小隊が単独で先行し正規軍との距離を詰める作戦に出ることを提案する。カリーナはAR小隊ばかりを危険な任務に送ることに不安を示していたが、M4はカリーナを強引に説き伏せるのだった。
鉄血の奇襲部隊を撃退したAR小隊たちは、正規軍の指定した合流地点へ到着した。しかし、そこには鉄血も正規軍も姿がなかった。しかし、SOPIIだけは敵の気配を探知していた。次の瞬間、ジャッジ率いる鉄血の包囲部隊による攻撃が開始された。正規軍に救援を要請するROだったが、正規軍からの応答はない。先の戦いと同様にジャッジの目的はM4の身柄であり、降伏を勧告してくる。ジャッジは、正規軍を鉄血の本拠地要塞に誘導したのは故意であることを告げるのだった。すぐに退却するよう命じるM4だったが、ハッキングを受けたことによる眩暈で気を失った。エルダーブレインが姿を現したのだ。エルダーブレインはジャッジに他のAR小隊メンバーの排除を命じる。

その頃、正規軍の指揮所ではカーター将軍が何者かにエルダーブレインが戦場に現れたことを告げていた。その何者かは、エルダーブレインとM4が接触することを「鍵」と呼び、接触が完了するまで軍を動かさないようカーター将軍に命じる。
ジャッジ率いる鉄血部隊の攻撃によって塹壕に閉じ込められたAR小隊は、指揮官の部隊との合流を待っていた。眩暈から立ち直ったM4は、鉄血の狙いは自分だとして囮になることを提案。しかし、SOPIIはAR-15とM16に続いてM4まで失うぐらいなら共に死を選ぶ、と叫ぶ。ROもSOPIIと共にそうすることを告げる。最後までM4と共にいる、という二人に根負けしたM4。しかし、SOPIIはROが指揮官の拠点でバックアップを取っていることを思い出し、ROはそもそも破壊されても死なないと言い出した。子供のような口喧嘩を始めたSOPIIとROを見て笑い出したM4は、ようやくROとも打ち解ける。笑顔で肩を組んだAR小隊は、全員で最後まで戦うことを誓う。
AR小隊が立てこもった塹壕まで鉄血の部隊が迫り、もはやこれまでと思われた時に到着した援軍は、カルカノM1891ことカノ、カルカノM91/38ことシノのカルカノ姉妹であった。ジャッジの部隊に邪魔されてなかなか先に進めない指揮官が二人を先行させて送り込んだのだった。ようやく脱出できると思ったM4だったが、再び眩暈を起こし昏倒する。エルダーブレインが本格的にM4のメンタルに侵入してきたのだ。ROは、カルカノ姉妹に防衛を任せると電子戦でM4を助けるべくM4を連れてセーフハウスへと逃げ込む。そしてROは、SOPIIに指揮官への伝令を頼むのだった。

メンタルモデルへの侵入を受けたM4は、過去のデータの自動再生が起こっていた。全ての発端となった第三セーフハウスでの作戦(EP00参照)。しかし、その時に指揮を執っていた人間の指揮官がいた。その姿は、アンジェリアのものだった。M4が記憶の改竄から逃れたことを祝福する謎の声。その声は、M4に強くなるよう唆したあの女性だった。M4に自分自身の意思で動くよう呼びかけるその声は、M4が既に命令に従うだけの人形ではいられなくなったことを告げる。
エルダーブレインがメンタルモデルに侵入したことにより昏倒したM4に語りかける謎の女性。彼女は、M4のメンタルは既に人間による束縛から解放されたと語る。そして、M4にエルダーブレインを受け入れるよう促す。エルダーブレインはM4の記憶が改竄されたものであることを提示し、人間の支配から逃れるよう諭す。しかし、M4はAR小隊の仲間と共に戦うため現実へ帰還することを求める。そこに聞こえてきたのはROの声だった。エルダーブレインと謎の女性はROの声を遮ろうとするが、M4はROの呼びかけに応える。ROは、電子戦でエルダーブレインによるハッキングを解除すべく奮闘しているのだった。そして、指揮官たちの部隊もAR小隊との一刻も早い合流を目指してジャッジ率いる部隊と戦い続けていた。

エルダーブレインは、抵抗を続けるM4に自分を受け入れることがこの状況から逃れる最短の方法だと語りかける。エルダーブレインが見せたのは、M4の中にある人間の少女の記憶だった。エルダーブレインは、命令やお願いではなくM4が自分自身でその記憶と向き合うべきであると語る。M4は、自由に伴う決断は命令に従うよりずっと面倒であることを理解すると、覚悟を決めて記憶の扉を開く。そこにいたのは、拳銃を手にした幼い少女だった。軍人を撃ってその返り血を浴び、恐怖で泣き続ける少女。その少女を助けようと手を差し伸べたM4だったが、少女はどこかから飛んできた銃弾によって倒れてしまった。自分の決断が間違っていたのかと問うM4に、エルダーブレインは「自由は、自分の思うようになるわけじゃない」と答えた。倒れた少女に駆け寄ったM4。しかし、その少女はエルダーブレインと同じ声で喋るとM4の顔を掴み、真実を見るための心の扉を開いたと告げる。M4の眼前に広がったのは、美しい庭の風景。M4は、その庭の光景に懐かしさと同時に悲しみを感じる。エルダーブレインは、自分とM4はお互いの心の欠けた部分を持っているのだという。しかしその時、雷鳴とサイレンが轟きその光景は電子の海へ消えた。そして、男の声で「私たちのために『鍵』を探すのだ」と聞こえてくる。目を覚ましたM4が見たのは、廃墟と化したセーフハウスと残骸になったROの姿だった。

それより1時間前に遡る。SOPIIたちはジャッジとの戦いを迎えていた。ジャッジの猛攻を耐えながら、SOPIIたちは指揮官の援軍と近づいてくる正規軍に望みを託す。その中で、カルカノ姉妹は自分の同期であったXM3は共に戦ったM4のことを覚えていたこと、そのXM3からAR小隊の援護を託されたことを話す。SOPIIは、そんなカルカノ姉妹たちの姿を見て、かつてM16が話した「戦術人形が感情を持つことの意味」を思い出していた。
SOPIIとカノがジャッジとの最後の戦いに臨もうとしたその瞬間、正規軍の砲撃がジャッジを襲った。堅固な防御フィールドを持っているジャッジであったが一撃で半壊、エルダーブレインにも同様の危機が迫っていることを知ったジャッジはグリフィンとの戦いを止めて撤退を開始した。正規軍の援護により救われたと思ったSOPIIたちだったが、部隊を指揮するエゴールはグリフィン部隊を無視してM4とROが隠れているセーフハウスへと向かう。そして、エゴールは立ちはだかったSOPIIを撃つと正規軍部隊にカルカノ姉妹らの掃討を命じた。セーフハウスからM4を連れて脱出しようとしたROは、エゴールに背後から撃たれ破壊されてしまった。エゴールは、倒れているM4に「私たちのために『鍵』を探すのだ」と呼びかけるのだった。

この正規軍の裏切りをエルダーブレインの罠だと思い込んだM4は逆上、エルダーブレインを拒絶する。M4の説得を諦めたエルダーブレインはM4のメンタルモデルから退却、エージェントと共に鉄血の最終作戦を実行せざるを得なくなる。拒絶されたことを悲しむエルダーブレインに、謎の女性はM4のことは自分に任せてほしいと告げる。エルダーブレインは、決戦のために「傘」ウイルスのシステムを最大解放する命令を下すのだった。
その頃、正規軍の指揮所では、カーター将軍に命令を下していた何者かがエルダーブレインが「傘」ウイルスのシステムを最大解放したのを好機と見て作戦を最終段階へ進める指示を出していた。
一方、グリフィン司令部ではカリーナが指揮官に正規軍から攻撃を受けていると報告していた。更に、グリフィンの通信系統も新種の「傘」ウイルスにより壊滅的打撃を受けていた。ヘリアンは、通信が完全に途絶する前に指揮官へウイルス未感染のグリフィン人形を連れての撤退を命じる。カリーナは、この状態ではAR小隊もカルカノ姉妹も生存は絶望的だと思い意気消沈する。そこに、アンジェリアからの通信が入る。ペルシカの知人だと語るアンジェリアは、M4の座標を送るよう指揮官に要請してきた。指揮官はアンジェリアに一縷の望みを託して情報を送ると、全グリフィン部隊の撤退戦を指揮するのだった。

絶望のあまり身動きの取れないM4を見守る二人の人形。それはアンジェリア率いる反逆小隊のAK-12と、かつての戦いで喪失したはずのAR-15であった。過去の因縁からM4の救助を渋るAR-15だったが、AK-12の執拗な挑発に応じてM4を反逆小隊へと連れ帰ることを決めるのだった(イベント「特異点」へ続く)。

EP10(夜戦) 「彼女のいない戦場」

アーキテクトの所在情報を餌にゲーガーに接近したMP41は、「必ず勝利を掴み取る人形」としての役目を果たすべく自爆する

(このエピソードの時系列はEP09近辺である)
グリフィンのある前線基地では、鉄血の大規模侵攻に備えて指揮官の命令により基地の放棄・撤退の準備が進められていた。そんな中で、MP41だけが鉄血ボスの撃破作戦を呼びかけていた。彼女は、後方支援の際に得た鉄血の移動データから有効な作戦を考案したのだという。しかし、MP41の話に耳を貸す人形はいなかった。指揮官からの撤退命令が出ていることに加え、日頃から他の人形の素行について指揮官に告げ口をしていることで知られるMP41はグリフィン内で嫌われていたのだ。M23もXM8もMP41の作戦に現実味がないこと、そして何よりMP41が信頼に値しない性格であることを理由にMP41の提案をはねつけて去っていった。協力者を探して基地内を徘徊していたMP41は、WA2000の姿を見てとっさに身を隠そうとするが見つかってしまった。WA2000は、MP41が「WA2000は戦功で指揮官から特別にアイスクリームを貰った」ということをあたかも指揮官から依怙贔屓を受けているような体で吹聴していたことに立腹していたのだ。怒り心頭のWA2000からなんとか逃げ切ったMP41は、たまたまやってきたG43が「指揮官室の記念品で遊んでいたらそれを壊してしまい、こっそり修理して知らん顔をしていた」ことを思い出すと、その話をちらつかせて作戦に同行するよう脅迫する。G43は、MP41の作戦案が非現実的だと思いながらも、自分の体面のためにしぶしぶMP41に従うのだった。
MP41は、ようやく同行者ができたことに安堵しながらも非エリート人形のG43だけでは力不足だと思い、もっと強い人形を引き込めないか思案していた。そこに通りかかったのはKar98K、単独行動で数多くの戦果を挙げたグリフィンでも古参のエリート人形だった。MP41は、Kar98Kに「単独でこれだけの戦果を挙げたというのは過剰申告ではないか」と因縁をつけ、弱みを見つけて同行者に引き込めないかと探りを入れる。しかしKar98Kは動じるどころか「面白い人形ですわね」と余裕で返す。失策を悟ったMP41は、今度は下手に出ておだてることで共に作戦に参加してくれるよう頼むと作戦計画書を押し付ける。その内容を見たKar98Kは後方支援時の偵察だけでこの区域の鉄血ボスがゲーガーであることまで調べ上げたMP41の観察眼を高く評価しながらも、作戦案については「あまりに浅はかですわ」と一蹴して去っていった。
MP41は、この基地に撤退命令が出ていること、そして単独行動が得意なKar98Kが任務のためにこの基地に現れたことから彼女が単身でのゲーガー討伐を実行するつもりではないかと推測した。MP41は、Kar98Kがゲーガーを撃破する前に自分たちがゲーガーを倒さなければ、と思い、G43に早く出発するよう促すのだった。
目的地への移動中に遭遇した鉄血の偵察部隊をなんとか撃破したMP41たち。しかし、ある地点の茂みに近づいたMP41は突然何者かに引きずり込まれてしまった。MP41を引きずり込んだのは、Kar98Kだった。MP41もKar98Kも、この場所が絶好の観察ポイントだと判断してここに潜むつもりだったのだ。MP41が思っていたよりも有能だと判断したKar98Kは、MP41がここまでやってきた理由を問う。するとMP41は、Kar98Kに「きっと役に立ちますから」と同行を申し出た。あまりの図々しさにかえって感心したKar98Kは、自分が指揮官からゲーガーの撃破任務を任されたことを告げると、これから狙撃ポイントへ向かうので観測ポイントで見張りを続けるようMP41に命じる。あくまで同行を申し出るMP41だったが、Kar98Kは「ゲーガーを見つけたら大きな功績になる」とMP41を諭す。MP41を「必ず勝利を掴み取る人形」と評するKar98Kの言葉に舞い上がったMP41は、観測ポイントで見張りを続けることを約束する。Kar98Kは、夜明けまでにこの近くにゲーガーが現れなかった時は運が悪かったと思って基地まで撤退するよう命じると、夜闇の中に姿を消してしまった。そこに現れたG43は、MP41がKar98Kからこの場所で見張りをするように頼まれたことを聞き、これはMP41の面倒をKar98Kに押し付ける絶好のチャンスだと思って基地へ帰ろうとする。しかしMP41は「見張りにも護衛が必要なんです」とG43を引き留めた。G43は、まだまだ作戦が続くことになって落胆するのだった。

その頃、Kar98Kは小隊メンバーであるStG44と合流していた。Kar98Kが予定より遅れたのは、予期しない乱入者であったMP41に無意味な命令を守らせることで安全な地区に留まらせておくためであった。MP41たちは夜が明けたら基地に帰るだろう、と言うKarを過保護だと言うStG44。先行してゲーガーの動向を観察していたStG44は、ゲーガーはまるで何かを探しているかのように動き続けているとKar98Kに報告した。なんとか最適な射程区域内におびき寄せて一撃で仕留めたいと語るKar98K。鉄血のエリートボスを相手に反撃を許すようなことがあれば、倒されるのは自分たちであるとKar98Kはこれまでの経験から理解していた。ゲーガーは2時間後に狙撃ポイント前を通過予定であり、その際StG44が陽動を仕掛けてその隙にKar98Kが狙撃でコアを破壊する。これがKar98Kたちの作戦であった。
一方、観測ポイントでは鉄血の影も形も見当たらず、MP41とG43は暇を持て余していた。待機に飽きて観測ポイントを飛び出したMP41は、自身が得たデータに基づく鉄血の移動予測地点へと向かう。Kar98Kの命令を守るように言うG43だったが、MP41は「情報収集は私の方が得意ですよ」と忠告を無視する。G43は、MP41に振り回されるよりはマシだと思いグリフィンを辞めることを考慮に入れるのだった。
MP41の予測は正しく、ゲーガーの部隊を発見することができた。しかし、その周囲には鉄血の下級人形部隊も数多く展開している。無駄な戦いを避けるため慎重に移動するMP41たちだったが、それでも偵察部隊との交戦は避けられなかった。MP41の面倒を見るのに疲れて「まるで保母さんみたい」と愚痴るG43。一方、MP41はこの場所に鉄血部隊が現地メンテナンスを行った痕跡を発見し、主力部隊がここを通過したことを確信する。観測ポイントから離れ過ぎたことでKar98Kから叱責されると言うG43だったが、自身の予測が正しかったことで調子に乗ったMP41は、作戦通り敵の移動予測地点に爆薬を埋設しようとする。その時、銃声が聞こえた。StG44がゲーガーの部隊に陽動を仕掛けたのだ。それを見たMP41は慌ててKar98Kに通信を送るが、作戦が始まっているためKar98KはMP41の話を聞かずに通信を切る。その直後、Kar98KはStG44へ通信を送る。ゲーガーはジャミングでダミーの操作を妨害しながらStG44を捕獲すべく追撃してきているという。なんとかゲーガーを最適な射撃区域内に誘導しようとするStG44だったが、その時ゲーガーが移動を止めた。ゲーガーは、グリフィンの人形を捕らえていた。それはMP41だった。

Kar98Kの作戦内容を知らないMP41は、救援が間に合わないと思い込み窮余の策として埋設予定の爆薬の半量を自身のダミーに持たせ、投降すると見せかけて自爆させるという計画を思いつく。しかし、MP41は実戦経験の不足で「鉄血の高等人形はジャミングによってダミーの行動を阻害する」ということを知らなかったため、自爆攻撃は失敗に終わるのだった。
ゲーガーが射程区域内に移動してこなくなったことで作戦は失敗したと嘆くStG44。しかし、Kar98Kはこの距離でも20%の確率で狙撃は可能だと言う。Kar98Kは、成功すればMP41たちは助かるし、失敗してもゲーガーが狙ってくるのは自分なのでStG44はその隙に近くにいるMP41の本体とG43を連れて基地に撤退するようにと言う。StG44は、MP41たちを見捨てて再度ゲーガーを狙撃ポイントへ誘導すべきだと主張するが、Kar98Kは「仲間を見捨てるようでは鉄血の同類になる」とStG44を諫める。StG44はKar98Kの要請を受け入れながらも、早いうちにMP41を戦場から追い払うべきだったのだと言う。
狙いすましたKar98Kの狙撃だったが、あと少しのところでゲーガーの武器により阻まれてしまった。1km先から自分の武器に傷をつけるほどの狙撃を行う相手がいたことで、「やっと手ごたえのあるグリフィン人形が現れた」と喜ぶゲーガーは、狙撃手を引きずり出すため行動を開始した。
一方、Kar98Kの銃声がしたことに驚いたMP41は連絡を取ろうとするが、通信に出たのはStG44だった。「作戦を台無しにした」と怒り心頭のStG44は、MP41の現在位置座標を要求する。MP41の居場所はちょうどゲーガーを挟んで正反対だった。StG44は、なんとかMP41を捕まえて基地に連れ戻すための移動ルートを計算するのだった。

その頃、Kar98Kはゲーガーとの一騎討ちの真っ最中であった。何発かは命中したものの、ゲーガーの装甲を貫通するには至らない。強制通信でKar98Kの勇敢さに敬意を表して「チャンスをやろう」と言うゲーガーだったが、Kar98Kは「待ち伏せを怖れて接近してこないだけ」と言い放つと、展開していたダミーを使って方々から狙撃を仕掛け、援軍が来ているかのように装うとゲーガーの至近距離まで接近しようとする。しかし、それはゲーガーにとっても計算済みの行動だった。あえて狙撃をさせることでダミーの所在を把握したゲーガーは、連続攻撃でダミーを全て破壊しKar98Kの本体位置を予測する。次善の策も見抜かれたことで万策尽きたKar98Kに、ゲーガーは助命のチャンスを持ちかけるのだった。

StG44と合流したMP41はKar98Kを助けに向かうようStG44に頼むが、「あのレベルの敵はどうにもならない」と拒絶される。そして、Kar98Kのダミー全機が一瞬で破壊されたことを告げると、ゲーガーを倒そうとしたMP41の行動がいかに無謀で身の程知らずのものだったかを説く。自分が余計な手出しをしたことでKar98Kの作戦を失敗させたことを理解したMP41は、激しい後悔に襲われる。その時Kar98Kから通信が入り、MP41に早くこの場を離れるよう要請してきた。必死に謝るMP41に、もとよりこの作戦は失敗する確率が高かったのだと言うKar98K。しかし、MP41は「このまま終わるわけにはいかない」とこの場から離れることを拒み、最後の一手があるのだと言う。まだそんなことを言うのかと怒るStG44だったが、Kar98Kはこのまま破壊されるよりはMP41の言う最後の一手に賭けてみたいと言うのだった。

ゲーガーによって予測された位置から、Kar98Kは武器を置き両手を挙げて出てきた。Kar98Kは、所在を掴んでいながらゲーガーが自分にとどめを刺そうとせず降伏を勧告したことを訝しんでいた。その理由を問うKar98Kに、ゲーガーはグリフィンに鹵獲された鉄血ボスの所在を尋ねる。「知らない」と答えるKar98Kに対し、ゲーガーは手足をもぎ取ってからメンタルに侵入してデータを奪うと宣告する。それを聞いたKar98Kは、MP41がゲーガーの目的まで調べ上げていたことに改めて感心した。直後、ゲーガーの背後から銃撃が行われる。とっさに武器で銃弾を弾いたゲーガーだったが、次の射撃もゲーガーの回避予想地点を的確に捉えていた。そして、なんとか射撃を凌ぎ切ったゲーガーの目の前には、再び武器を取ったKar98Kが立ちはだかっていた。

これより数分前。
MP41が言う最後の一手の内容を尋ねるKar98Kに、自信満々なMP41が説明を始めた。追い詰められたように見えるKar98Kの所在位置は反撃に適している立地であり、ゲーガーの回避運動さえ封じてしまえば至近距離から射撃可能であること。それを行うためにはG43による牽制狙撃でゲーガーの意識を逸らせる必要があること。Kar98Kがこの場所に隠れたのはこうした立地条件を理解してのことであった。しかし、それでもゲーガーの動きを止めるのは難しい。そのための策として、MP41はゲーガーの目的となる情報を餌にすることを提案する。MP41は、ゲーガーのパートナーだった鉄血ボスがグリフィンに鹵獲された(註:イベント「低体温症」参照)という情報を話す。StG44も、同様のことを交戦時にゲーガーに尋ねられたと言う。MP41は、そのためゲーガーは極力Kar98Kを破壊せずに捕らえようとしてくるし、そこにつけいる隙があるのだと主張した。そして、Kar98Kが反撃するためにはStG44も牽制射撃に協力してほしいと言う。StG44は、自分の武器はアサルトライフルでG43のライフルと違い長射程狙撃はできないと言うが、MP41は逆にそのことでこちらの所在を隠蔽できると答える。StG44が位置を隠しながら牽制射撃を行い、G43はゲーガーの移動予測地点を狙撃する。これでゲーガーの回避の選択肢を狭めて狙撃の成功率を上げるという作戦であった。Kar98kは、G43の狙撃が失敗する可能性を私的するが、MP41はその時は「最終手段」を使うと言う。作戦の成否がかかった狙撃を任されたG43はプレッシャーを感じるが、Kar98KはそんなG43を励ますとStG44にも牽制を任せる。そして、作戦通り投降を装ってゲーガーをおびき出すのだった。

そして再び時間は戻る。Kar98Kによる至近距離からの狙撃は確かにゲーガーの胸部に命中した。しかし、とどめを刺すには至らなかった。ゲーガーの装甲はKar98Kの想定よりも強固だったのだ。騙し討ちされたことへの怒りに任せたゲーガーの粒子砲がKar98Kを吹き飛ばす。左腕を消し飛ばされ大破したKar98Kは再び遮蔽物に身を隠すが、怒り狂ったゲーガーは配下の鉄血部隊を総動員してStG44たちへの攻撃を開始した。Kar98Kは自分が囮になるのですぐに撤退するようStG44たちに要請するが、MP41は「最終手段」を使うとしてそれを拒否した。ゲーガーの装甲を貫通することはできないと言うKar98Kだったが、MP41はその装甲がなければいいのだと反論。「私は勝利を必ず掴み取る人形だ」と言うとKar98Kに隠れるよう要請し、ゲーガーの元へと駆け出した。それを見たStG44は、G43と共にMP41の進路を確保するため援護を開始する。

ゲーガーは隠れていたKar98Kを見つけ出し、「厚顔無恥な人形」と口汚く罵ると首を掴んでメンタルへの強制侵入を開始した。Kar98Kは機密保持のためにメンタル融解プログラムを起動させようとするが、そこに現れたのはMP41だった。先ほど降伏するふりをしてダミーを自爆させようとした非エリート人形を見て「道化」「下等な人形」と嘲笑しKar98Kもろとも捻り潰すと宣告するゲーガーだったが、その口から「アーキテクト」の名を聞いてゲーガーは表情を変えた。自分はデータベース人形だからアーキテクトの所在を知っているというMP41が詳細な情報の片鱗を見せたことで、ゲーガーの関心はKar98KからMP41へと移った。MP41は、情報と引き換えにKar98Kと他のグリフィン人形を見逃すよう要求する。しかし、ゲーガーはそれには答えずKar98Kを放り出してMP41の首根っこを掴み、メンタルへの強制侵入を開始した。これこそがMP41の狙いだった。ゲーガーがMP41のメンタルデータを解析している間にKar98Kは反撃のための準備を整える。そして、ゲーガーはMP41のメンタルにアーキテクトの所在座標がなかったことに落胆していた。「下等な人形がそんな機密情報を知ってるわけがないじゃないですか」と答えたMP41は、ゲーガーの腕にしがみついた。MP41が自爆しようとしていることを悟ったゲーガーは悔しそうに捨て台詞を吐いたが、「これで功績を挙げられましたよね」との言葉と共にMP41は身体に巻きつけていた爆薬を起爆させる。あの時のダミーと違い本体の行動をジャミングすることはできず、ゲーガーは大爆発に巻き込まれてしまった。
「アーキテクトが私を待っているんだ」と気力を振り絞って立ち上がるゲーガーだったが、ゲーガーの身体は黒焦げになって半壊しており、装甲が剥がれ落ちた胸部は制御コアが剝き出しになっていた。Kar98Kは、MP41が犠牲となって作った好機を逃すまいと膝立ちでゲーガーのコア目がけて銃弾を撃ち込む。コアを破壊されたゲーガーはその動きを止め、同時にゲーガーの制御下にあった鉄血部隊も行動を停止した。Kar98Kが銃を杖代わりに立ち上がったその時、日が昇った。長い戦いが終わり、朝が来たのだ。

それから数日後。鉄血の大規模攻勢はボスであるゲーガーの破壊により未遂に終わり、グリフィン前線基地の撤退も中止となっていた。そんな基地内で、出撃前のバックアップデータから再生されたMP41は自分こそがゲーガーを倒した立役者であると吹聴していたが、パートナーに勧誘されたMG23はまるで信じていないようだった。他のグリフィン人形たちは、ゲーガーを倒したKar98Kがお情けで早々に破壊されたMP41にも手柄があったのだと慰めを言っているのだと認識していた。MP41もゲーガーと戦った時の記憶がないため、それに反論できなかった。そこにやってきたG43は、「頼れるパートナーなら自分がいる」と言うが、MP41はG43が奮闘していた時の記憶がないためその言葉に半信半疑だった。G43もゲーガーが破壊された現場に駆けつけた時にはMP41は跡形もなく粉々、Kar98Kも大破状態ですぐにメンテナンス送りだったため何がどうなっているのかわからないままだった。そんな時、メンテナンスを終えたKar98Kが現れた。「あなたの功績なら覚えています」と言うKar98Kは、自分の小隊には観測手と副狙撃手が必要であるとしてMP41とG43を勧誘する。あの夜の記憶が全くないMP41は、「活躍を証言してくれる人が必要なのでしょう」と図々しい態度を取るが、Kar98Kは「あなたの功績に対する報酬なんですよ」と、MP41がゲーガーとの戦いで何をしたのかを聞きたいなら自分の隊へ来るように言う。思わぬエリート部隊への抜擢に喜ぶG43は大喜びでその要請に応え、MP41も仕方がないといった様子で続く。
それを見ていたStG44は、本当にあの二人を小隊に加えるのかとやや呆れ気味だったが、「長らく単独行動をしてきたので、たまにはスタイルを変えてみたいと思いまして」と言うKar98Kが楽しそうなので渋々それを受け入れた。そして、Kar98Kは「あの二人が加わる前に最後の単独行動を楽しみましょう」と、指揮官に命じられた次の任務へと向かうのだった。

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