MIU404（ドラマ）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『MIU404』の概要

『MIU404』とは2020年に放送された、性格も経歴も全く違う二人の刑事が日本における社会問題を背景にした犯人や被害者と向き合いながら事件解決を目指す、警視庁機動捜査隊を舞台としたテレビドラマである。2020年6月26日から9月4日までTBSテレビ系の金曜ドラマとして22時から放送された。
警視庁機動捜査隊に臨時部隊として第4機捜が新設され、第4機捜の隊員達がさまざまな事件を解決へと導いていく。また、裏の世界を操る謎の人物を解明しながら徐々に真相へと近づくという奥深いストーリーも盛り込まれている。
綾野剛と星野源のダブル主演作としても話題となり、2人がバディとして活躍する姿や斬新なストーリーが高く評価された作品だ。ドラマは野木亜紀子のオリジナル脚本により作られ、2018年に放送されたドラマ『アンナチュラル』の主要スタッフにより制作され、『アンナチュラル』に登場するキャラクターがゲスト出演するなど、ふたつのドラマのコラボも楽しみのひとつである。第105回ザテレビジョンドラマアカデミー賞では最優秀作品賞を受賞するなど数々の賞を受賞した作品だ。

『MIU404』のあらすじ・ストーリー

第4機捜の新設

警視庁の働き方改革により、刑事部・機動捜査隊が3部制から4部制に変更になった。臨時部隊として第4機捜(MIU404)が新設された。仕切る隊長は女刑事の桔梗ゆづる（ききょう ゆづる）である。
第4機捜の隊員として招集された志摩一美（しま かずみ）は、交番勤務員だった伊吹藍（いぶき あい）とバディを組むことになった。伊吹の情報を集める志摩だったが、「とにかく足が速い」事以外は悪い評判ばかりだった。

志摩と伊吹がパトロールしていると、後ろの車が接近してあおってくる。あおり車両の乱暴な運転により、歩行者の女性の老人が倒れてしまう。これを見た伊吹は怒り、車をあおり車両の前に強引に回りこませて止める。伊吹とあおり車両の運転手は口論になり、様子を見ていた通行人に110番されてしまう。

男が殴打される事件が起こり、第4機捜(MIU404)が出動する。捜査をしていくと、被害者は志摩と伊吹を数時間前にあおり運転していた男だとわかる。志摩と伊吹が乗っていた車のドライブレコーダーから犯人の車が割り出されるが、犯人は車に偽造ナンバーを着けていた。
その頃、小さな女の子が「おばあちゃんがいなくなった」と派出所にやってくる。いなくなったおばあちゃんは、あおり車両の運転で倒れた女性だとわかる。おばあちゃんはあおり運転で倒れた時に孫に買ったおもちゃを落としてしまい、他のおもちゃ屋に行った後に帰ることができなくなっていた。

MIU404のメンバーは防犯カメラの映像を集めて、捜査にあたる。犯人の車を見つけ、追う志摩と伊吹。止まらない犯人の車の前に強引に回り込み、横転してしまうも犯人の車を停めることができた。車から逃走した犯人を追う伊吹。志摩も後から追いかけ、犯人を逮捕する事ができた。
集めた防犯カメラの映像から、捜索願が出ていたおばあちゃんが見つかる。おばあちゃんと孫の安心した様子を見た伊吹は、「機捜っていいな、誰かが最悪になる前に止められる仕事じゃん」と志摩に話した。

いたずら通報事件

西武武蔵野所轄内でイタズラの通報が頻発しているという情報が入る。MIU404は捜査を開始する。
志摩と伊吹がパトロール中にイタズラ通報が入り現場に向かうが、伊吹の俊足をもってしても取り逃がしてしまう。犯人は4人でバトンタッチして逃げていた。走り方から陸上部員である可能性が浮上し、近隣の高校を調べることにする。

バシリカ高校に聞き込みに行った際、校長の話に不審な点があると感じ調べることになる。
バシリカ高校の陸上部は、元三年生がドラッグを売りつけていたことが原因で廃部になっていた。
警察が操作していることを知った4人の元陸上部は、最後の大会として再びイタズラ通報を行う。いつものように元陸上部マネージャーの真木カホリ（まき カホリ）がイタズラ通報をした。だがMIU404に3人が捕まってしまい、成川岳（なりかわ がく）だけは逃げ切る。

真木カホリが本物の犯人に襲われてしまう。通報するが、声紋鑑定でイタズラ通報とわかり捜査に遅れが生じてしまう。連れ去られてしまうが、志摩と伊吹がなんとか犯人を逮捕する。
一方、逮捕されなかった成川岳は元陸上部の先輩に助けを求める。しかし、現れたのは「味方」と称するドラッグの売人の久住（くずみ）だった。

事件が終わり桔梗隊長は「これからデート」と署を後にした。向かった水族館には、息子のユタカと謎の女性の羽野麦（はの むぎ）が待っていた。

一億円の女

銃で撃たれた女性が薬局で応急処置をして行ってしまったと通報が入る。女性が持っていたスーツケースには1億円ほど入っていたことがわかる。

女性は青池透子（あおいけ とうこ）といい、2年前の裏カジノ事件で逮捕されていたが、借金を背負い働かせられていただけであった。カジノ店のオーナー「エトリ」という謎の人物は逮捕されていない。この事件の情報提供者である羽野麦がエトリに狙われる可能性があるため、桔梗隊長は自宅で匿っていた。
青池は働いているパソコンショップに黒いお金が入ってきていることを知り、そのお金を自分の口座に少しずつ入れ、一億円ほどになっていた。それがバレて逃げている途中に撃たれたのだった。

青池を追って見つけるが、すでに脈がなく死亡が確認され、一億円も消えていた。その後の捜査で、青池は一億円を宝石に変え、Girls Saveの海外本部に送ったことがわかった。

志摩の過去

伊吹は偶然、志摩が捜査一課時代に相棒殺しと言われていたことを耳にする。直接志摩に聞くも、志摩は何も答えなかった。伊吹は当時を知る4機捜のメンバー陣馬耕平（じんば こうへい）から、志摩の元相棒・香坂義孝（こうさか よしたか）の不審死のことを聞く。

当時、志摩と香坂はタリウム連続毒殺事件を追っていた。その事件解決後、ビルの下で香坂が遺体となって発見された。香坂は証拠を捏造して追っていた犯人を逮捕しようとしたことを、志摩に強く注意されていた。そして、退職願と手紙を添えてビルから転落死したのだった。志摩は香坂を助けられなかったことを自分の責任と感じていた。

伊吹が香坂の転落した屋上に行くと、そこから見えるアパートのベランダに垂れ幕を見つけ、話を聞きに行く。住人によると、家に男が押し入り襲われそうになったが、誰かが通報してくれたお陰で助かったということだった。調べると、通報したのは香坂ということがわかった。香坂は自殺ではなく住人を助けようとして、誤って転落死してしまったのだった。

トランクルームに謎の死体

トランクルーム内に男性の遺体を発見したと通報が入り、現場に駆けつける志摩と伊吹。遺体に猫砂がかけられていたことからただの自殺ではないと判断し、他のトランクルームの利用者に聴取を行う。

その頃、結婚が決まった長男の両親顔合わせのために家族で会場に向かう陣馬は、道中に偶然にも指名手配犯に遭遇する。指名手配犯を追うために家族を車から降ろそうとする。しかし、以前にも同じようなことがあったと思い出した妻によって、陣馬が車から降ろされタクシーで指名手配犯を追うことになる。

他のトランクルームの利用者の倉田（くらた）の証言で、遺体の男性はケンさんということがわかる。さらに、ケンさんのトランクルームと同じ名義でもう1つトランクルームが借りられ、誰かが住んでいる形跡があった。
捜査が進むと、今回の遺体が10年前の強盗殺傷事件の犯人だということがわかる。事件の犯人は大熊邦彦（おおくま くにひこ）と梨本健（なしもと けん）の2人。遺体が梨本、もう1つのトランクルームに住んでいるのが大熊だとわかった。さらに、陣馬が追っている指名手配犯も大熊だった。

出前太郎の従業員が大熊に襲われ、自転車とユニフォームを奪われる。大熊を追うが、出前太郎のユニフォームを着た従業員が近隣に多くいたため、逮捕が難しかった。そこで志摩は出前太郎のユニフォームがリバーシブルになっていることを利用し、従業員に裏返しに着るように指示する。この指示で大熊だけが違うユニフォームになり、見つけ出すことに成功する。
大熊の逮捕後、急いで顔合わせに向かう陣馬。頭を下げ謝罪したが、責められることなく温かく迎え入れられた。

伊吹の恩師

両手の人差し指・中指・薬指が切断された遺体がシートにくるまれた状態で発見された。シートには「曽」に似た文字のタグが付けられていた。「曽」は中国語で「獣」を意味する。20年前にも同じような遺体が2件発見されていて、未解決のままだった。

遺体は前科2犯の堀内伸也（ほりうち しんや）と判明し、初犯逮捕時の担当刑事が伊吹の恩師の蒲郡（がまごおり）だった。志摩と伊吹は蒲郡に堀内の話を聞くことができ、同時に蒲郡が脳血管型認知症の治療をしていることに気づいた。連続猟奇的殺人として捜査をしていたが、過去の2件の事件と今回の事件では指の切断の仕方に違いがあることがわかる。志摩は連続殺人ではないと考えるのだった。

捜査1課の調べで、蒲郡と蒲郡の妻がひき逃げされ、妻は亡くなり蒲郡は後遺症で脳血管型認知症になったことがわかる。志摩はこの事実から、ひき逃げしたのは堀内で、堀内を殺害したのは蒲郡ではないかと疑う。
伊吹は蒲郡が犯人ではないと認めたくないが、真相を確認するため蒲郡の自宅を訪れる。蒲郡は犯行を認めて真相を話し、逮捕された。

羽野麦がエトリに拉致される

桔梗隊長の家に盗聴器が発見された。エトリが羽野麦を狙って仕掛けたと考える桔梗。羽野麦を守るため、警察のマンションに一時的に引っ越した。
盗聴器を仕掛けたのは、エトリの資金援助を受ける「たつい組」だとわかる。さらに、逃走中の高校生の成川がたつい組に出入りしていることがわかる。母親の証言から、成川は久住という男の世話になっているということがわかる。

その頃、警察署では桔梗隊長の反対を押し切り羽野麦の事情聴取を行うことになった。羽野麦は当時幼稚園の先生をしていたが生活が厳しかったため、バーでピアノの弾く仕事もしていた。そこでエトリに気に入られ、エトリが行っていることを知った。しばらくすると脅されるようになり「気に入られた女は飽きるまでおもちゃになる」「逆らえば寒くて暗くて狭い場所に行く」と言われていた。警察に相談するも取り合ってくれなかった時に、助けてくれたのが桔梗隊長だったと話す。

成川はドラックの売人久住の仕事を手伝っていた。成川はたつい組で、羽野麦が詐欺師で1000万の賞金がかかっていることを知る。羽野麦を知っていた成川は、特派員RECというナウチューバーに協力してもらい羽野麦を見つける。そして羽野麦を連れ去ることに成功し、エトリの隠れ家に行く。しかしそこで、羽野麦が詐欺師ではないことに気付く。羽野麦を助けようとする成川だが、何もできずに羽野麦と井戸に沈められてしまった。

たつい組のガサ入れがきっかけで、羽野麦が行方不明なことがわかる。志摩は羽野麦の「寒くて暗くて狭い場所」という言葉をヒントに、井戸にいると予想する。そして捜索の結果、志摩と伊吹は羽野麦と成川を見つけ救出に成功した。

羽野麦が覚えていたエトリの車のナンバーをもとに、エトリを逮捕する。しかし、エトリを連行する1機捜の車両が志摩と伊吹の目の前で、爆弾を乗せたドローンによって爆破されてしまう。エトリは死亡し、捜査員も重軽傷を負った。この爆破の様子を、特派員RECが動画撮影していた。

久住を追う

志摩は、エトリを背後で操っていたのは久住ではないかと推測する。成川の協力のもと探すが、見つけられないでいた。
その頃、特派員RECのもとに浜田という人物から、ドローン爆破の秘密情報が送られてくる。その内容は、事件は警察が陰謀したものということだった。RECはその情報を拡散させた。さらに4機捜のデタラメな情報まで流れることになる。

情報が拡散後、志摩と伊吹のもとに特派員RECから連絡が入る。浜田と警察がどちらが正しいか明らかにしたいというものだった。電話アプリを使用し、浜田と名乗る久住と接触をする。そこでRECは、久住に利用されていた事を知る。

ドラッグの国内工場を突き止めた陣馬は、ひとりで工場に向かい張り込みをする。すると、工場から一台のトラックが出てくる。陣馬はトラックの前に立ちはだかり止まるように叫ぶも、トラックはそのまま陣馬をはねて逃走した。

久住はRECのパソコンを乗っ取り、爆弾を都内に落とすというメッセージを警察庁に送った。その後、RECのチャンネルで都内の様々な場所で爆弾が爆発した動画がアップされる。志摩と伊吹は、爆弾が爆発した病院に向かうが、爆発した様子はなかった。そこでこの爆弾テロがフェイクということに気づく。

久住の逮捕

志摩は特派員RECを使い久住の似顔絵を拡散し、一般人からの情報を待った。そして、東京湾マリーナに久住がいる可能性があることを突き止めた。志摩より先に東京湾マリーナに着いた伊吹は、久住と出会う。
久住を追って船室に入るが、閉じ込められてドラッグが熱された有害ガスで意識を失ってしまう。遅れてやってきた志摩は意識を失った伊吹を発見し、久住に拳銃を向ける。しかし、背後にいた久住の仲間に撃たれてしまう。目を覚ました伊吹は志摩が大量の出血をして倒れているのを見つける。瀕死の志摩の制止を無視して、殺意を覚えた伊吹は久住を撃ってしまう。

トラックにはねられて意識不明だった陣馬が目を覚ますのと同じ頃、意識をなくしていた志摩と伊吹も目を覚ます。志摩が撃たれたのも伊吹が久住を撃ったのも、ドラッグによる幻覚だった。二人は海に飛び込み、久住の船から脱出する。国外逃亡を企てる久住だが、逃げ切れないと思い付近の土地に上陸する。

再び久住を追う志摩と伊吹は、屋形船にいるところを発見する。逃亡した久住だが、逃げ切れないと判断して故意に橋桁に頭をぶつけた。屋形船にいた仲間に、警察に暴行されたと訴えるためだった。しかし、仲間はドラッグを服用していて、全く状況をわかっていなかった。そんな久住に志摩は「お前を一生許さないから殺さない」と言う。伊吹は「生きて俺達と一緒にここで苦しめ」と言い放つ。

久住は逮捕されるが、最後まで素性は明かさなかった。