Caligula Overdose(カリギュラ オーバードーズ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『Caligula Overdose』とは、フリューから発売されたPSvitaのRPGソフト「Caligula -カリギュラ-」のリメイク版であるPS4作品である。ストーリーはPSvita版と同じ、主人公とその仲間たちが現実に帰還するべく「帰宅部」を結成し、仮想世界からの脱出を図る物語となっているが、本作では帰宅部の宿敵的存在「オスティナートの楽士」のストーリーが追加されているのが大きな特徴となっている。

帰宅部はイケPから教えてもらったランドマークタワーへと向かうことを決意した。そして、そのランドマークタワーを根城にする楽士・シャドウナイフはμの護衛役であることから、μも一緒にいる可能性が高い。そう期待して、帰宅部とアリアはランドマークタワーに向かった。そして入るや否や、「愚かな……自ら討たれに来るとは。ここは影の領分。貴様らの墓標となると知れ」と、気取った声が出迎え、帰宅部とアリアの背後を取る形でシャドウナイフが姿を現した。そして、次々と帰宅部の死角に現れては「影縫い」と呼ぶ、相手を動けなくさせる攻撃をしかけ、翻弄をかけてくる。その影縫いで次々と仲間たちが身動きがとれなくさせられた中、なんとか攻撃をかわした主人公とアリアと鼓太郎は、シャドウナイフに一撃を浴びせて影縫いを破り、仲間たちの動きを取り戻すことに成功する。その瞬間、シャドウナイフの姿が突然消滅したことに帰宅部とアリアが驚くと、「今のはただの影武者、ほんの座興だ……俺に話があるなら、上がってこい」と、シャドウナイフの声がそう告げた。どうやら本物のシャドウナイフは別の階にいるようで、先ほど倒したのは偽者だったようだ。
タワーの各フロアに待ち受けるデジヘッドたちを駆逐しながら先へ進んでいくと、柱に縛り付けられたひとりの男子生徒と、デジヘッドに腐った食事を食えと迫られる女子生徒を発見する。二人はそれぞれシャドウナイフにいきなり捕らえられ、「罪を償え」という言葉と共に縛り付けと腐った食事という拷問をさせられていたらしい。男子生徒を助け、それから女子生徒を助けようとした直後、「何故邪魔をする……? 罪には相応の罰が与えられるべきだ」と、再びシャドウナイフが現れる。それに対し鼓太郎が「どうもこうもねーよ! 目の前で困ってる人がいりゃ、助ける! それだけだ!!」と、言い返し、先陣切って再び挑みかかる。そしてまた繰り広げられる戦いの後、再び退けられたシャドウナイフは「俺は貴様のことは認めない……俺こそが、唯一の正義だ」と、言い残した直後に消滅する。どうやらまた影武者だったようだ。
そして先へ進むと、今度はロッカーに閉じ込められている男子生徒を発見した。そこにいた見張り役のデジヘッドを倒して助け出すと、その男子生徒は「山田の野郎…ぜってーにぶっ殺してやる」と、不穏な一言を口にした。それに帰宅部が引っかかると、男子生徒はシャドウナイフの正体は「山田大樹」という男で、現実世界の自分たちの「いじられ役」だったと話した。その「いじられ役」というのは、電柱に縛りつけたり、ロッカーに閉じ込めたり、腐った食べ物を食べさせたりと玩具にして遊ぶというもので、正真正銘のいじめられっ子だった。その頃の山田こと現実世界のシャドウナイフに対する自分たちの行いを悪びれもせず、むしろ面白がり、逆に被害者面して仕返しを依頼してくるそのいじめっ子の男子生徒の様子に鼓太郎が険しい表情になった。「こんなことをするようになるまで、他人の人生を歪めといて被害者面してんじゃねぇ」鬼気迫る形相でそう言い放ち、痛い目にあいたくなかったら10数える前に消えろ、と脅しをかける鼓太郎。さらに主人公も一緒になって脅しをかけてきたことで、いじめっ子の男子生徒は慌ててその場から逃げ去った。

再び姿を現わし、帰宅部と対峙するシャドウナイフ。彼の現実世界での真実を知って鼓太郎は苦悶しながらも、自分の信念と気持ちをしっかり持って彼と戦うことを選ぶ。

そして屋上で帰宅部と対峙したμも、帰宅部を敵と認識し、主人公に向けて見えない力を振るう。

μの力で手足を捻じ曲げられる主人公。その苦痛に絶叫する姿を見たアリアが、今までに帰宅部には語らなかった恐るべきメビウスの真実を口にしてしまう。

そんな中、ついにソーンが帰宅部の前に現れた。その彼女の姿を見て、なぜか笙悟は錯乱し、嘔吐し始める。

その直後、「まだ俺に歯向かうのか……身の程知らず共め」と、シャドウナイフが再三姿を現す。しかし、先ほどのシャドウナイフの現実世界の過去を知って、鼓太郎は立ち向かうのを躊躇う。その様子を見てシャドウナイフが、怖気づいたのか、と見下してくるが、鼓太郎はそれに対してこう答えると共に、拳を握りしめた。「あいつらは、吐き気がするくらい気に食わねぇ……ただ、お前をこのままにしとくのは絶対に違う気がすんだよ!」その鼓太郎の言葉を「幼稚な」と一蹴したシャドウナイフは、改めて向かってきた彼を迎え撃つ。
こうして、三度目の勝負も、鼓太郎と帰宅部が勝ちをもぎ取った。だがこのシャドウナイフも影武者だったらしく、「次で決めてやる……本当の正義が、どちらにあるかをな……!」と、不敵な笑いと一言を残して消滅した。
そしてついに最上階に辿り着くと、そこにはシャドウナイフだけでなくμもいた。μの姿を見つけたアリアは、これ以上誰かのために歌うのはやめてと叫ぶが、μは「どうして?」と、訳がわからない顔で首を振る。「アリアも町の人たちの声を聞いてよ……みんなメビウスに来たことで救われてるんだよ? わたしたち二人で作ったメビウスは、みんなの役に立ってるの……!」その悲痛な言葉を、鼓太郎が「ふざけんな! オレたちは家に帰りたくて迷惑してんだ!!」と、怒りの言葉で切って捨てる。そうしてμに向かっていこうとした瞬間、μが悲鳴と共に手をかざした。すると、見えない力が鼓太郎を襲い、鼓太郎に一撃を与えて彼をその場に倒してしまう。こうしてμが帰宅部を敵だと認識してしまったのを見て、「メビウスさえあれば、腐りきった現実など無用……! 悪の蔓延る現実など滅ぼしてしまえ!! メビウスが皆を苦しめる現実に置き変わればいいんだ!!」と、勝ち誇った様子でシャドウナイフが叫ぶ。「そいつの言うことを聞いちゃダメ!」と叫ぶアリアだが、すでに帰宅部を敵と認識したμは、アリアと常に行動を共にしている主人公を見て、「その人が悪いんだ……その人に悪いことを、吹き込まれたんだ……!」と、怒りの言葉と共に手をかざす。すると、今度は主人公が見えない力に襲われ、宙に吊るし上げられて手足を捻じ曲げられる。それを見たアリアが、思わずこう叫んだ。「やめてμ!! メビウスで死んだら、現実でもっ……!!」
すると続いて「やめなさい、μ」と、どこからともなく女の声が聞こえてきた。μが振り返ると、そこにソーンが立っていた。そして、ソーンの姿を見た笙悟が、突然錯乱し始める。突然の笙悟の異変に驚きを隠せない帰宅部。そんな笙悟を冷たく一瞥した後、ソーンはμに「メビウスの維持こそ、オスティナートの楽士の宿願よ。あなた自ら手を汚す必要もない……人々を導く偶像は、清らかでなければ」と、諭すように言った。そして続けて、アリアと帰宅部へ向き直ると、自分がμの側にいるうちは、いくら足掻いてもメビウスからは出られない、と言い、シャドウナイフに帰宅部の始末を命じ、μを連れてその場を去ってしまう。

自分を救ったメビウスと、自分が信じる正義を守るために、剣を手に取るシャドウナイフ。そして彼も、鼓太郎や帰宅部と壮絶な激闘を繰り広げる。

帰宅部に敗北した後、戦意を喪失しながらもメビウスにかける自分の思いを叫び続けるシャドウナイフ。その直後、彼は足を踏み外し、転落してしまう。

シャドウナイフの転落を目の当たりにし、さらに「メビウスで死ねば現実でも死ぬ」という恐るべき真実を知った鼓太郎は、やり場のない怒りを笙悟にぶつけにかかる。

笙悟や主人公も含めた仲間たちがその場から引き揚げた後、鼓太郎はひとりその場に立ち尽くし、悲しさとやり切れなさに項垂れるのだった。

そして主人公が拘束から解放されたと同時に、シャドウナイフはソーンの言葉に、偉そうに、と不服な様子を見せたが、すぐに帰宅部へと向き直った。ついに真っ向勝負する気になった、と見て取りながらも、鼓太郎は「いじめられた仕返しにいじめ返すのが正義だって言うのか?」と、問いを投げかける。それを聞いて一瞬言葉に詰まった様子を見せるシャドウナイフだが、「奴らの悪事を知って尚、俺を否定するというのか? 悪を救い、さらなる犠牲者を作るお前が悪でないなら……何だと言う!?」と、吼えてくる。しかし鼓太郎も負けじと「だからってお前がやってることは弱い者いじめにしか見えねぇ!! 少なくとも、オレが力を望んだのは、お前みたいになるためじゃねえ!!」と吠え返すと、シャドウナイフは鬼の形相になり「俺を絶望から救ったのは……お前らではなくメビウスだっ!! 世界に仇なすローグ(メビウスでいう叛逆者)ども……俺の手で一人残らずメビウスの礎にしてくれるっ!!!」と、剣を召喚して、鼓太郎と帰宅部へと襲いかかる。
そして激闘の末、シャドウナイフはついに打ち倒された。戦意を喪失しながらも、シャドウナイフはこう叫び続ける。「俺は悪を裁く……僕が受けた苦しみを、何倍にもしてあいつらに……!! あいつらも……お前みたいに、ガタイがでかいってだけで、偉そうな顔をして……僕をっ!!!」と、その叫びに鼓太郎は気が動転し、自分がでかい体になることを望んだのは誰かを傷つけるためじゃないと否定する。そんな鼓太郎をシャドウナイフは嘲り笑い、「帰るもんか……あんな現実……絶対に帰らないぞぉっ!!」とも叫びながらシャドウナイフは後ずさり、やがてそのまま絶叫と共にタワーから転落していった。
「う、嘘だろ……!? い、今のも影武者だよな……!?」と、さらに動転する鼓太郎に、アリアは今のシャドウナイフは本物だと言った後、重々しく口を開いた。「ここでの死は……魂の消失と同じ……現実と、同じように……」つまり、メビウスで死ぬと、現実でも死ぬ。初めて明らかになったその事実に、鼓太郎だけでなく帰宅部全員が愕然となった。さらに追い討ちをかけるように、アリアは重々しい表情でこうも語った。楽士たちの曲に感化されたメビウスの住人たちの妬みや恨みなどの負の感情がμを狂わせて力を与えており、その結果、μはメビウスの住人たちの偏った思いが大勢の人間の願いだと勘違いして、アリアの説得も受け付けないほどどんどん自分を見失ってしまっている、と。それはつまり、ソーンの言うようにどれだけ足掻いても現実には帰れないに他ならないことに、帰宅部のメンバーは愕然となる。そして、やり場のない怒りをぶつけるように、鼓太郎は剣幕をきかせて笙悟に食ってかかる。「あの楽士の女とどういう関係だ……? 知ってるならなんでもっと早く言わねぇんだ!? お前がもっとしっかりしてりゃ、山田だって死なないで済んだかもしれねえだろうがっ!!!」まるで我を失ったかのように一方的に笙悟に食ってかかる鼓太郎を見て、美笛や鳴子が悲痛な声で止めにかかるが、鼓太郎は止まる様子はない。そしてついに見かねた琴乃が剣幕をきかせて「うるさい!! 落ち着きなさい!!」とどやしつけ、同じく見かねた鍵介が溜め息まじりに「一度解散して、お互いに考える時間を取りませんか?」という一言を投げかけた。これ以上ここにいても何もできることはないし、揉めるだけだと他のメンバーも、そして主人公も笙悟も判断して去っていく。そして、その場に一人立ち尽くしながら、鼓太郎は泣きそうな声でこう呟いた。「畜生……本当の正義って何だよ……教えてくれよ、山田……」

ウィキッド編

ランドマークタワーで永至が死んだという報せを耳にする帰宅部。この報せは帰宅部だけでなく、後の楽士側にも大きな衝撃を与えることになる。

さらに追い打ちをかけるように帰宅部は集合した先の部屋に閉じ込められ、鳴子の携帯からウィキッドのものと思しきメッセージが送られてくる。

その場にやってきた茉莉絵からも「鳴子がデジヘッドになった」という驚きの報せが伝えられ、帰宅部は精神的にさらに追い詰められていくことになる。

翌日、ランドマークタワー近くで事故があったという騒ぎがあり、帰宅部がすぐさま様子を見に行ってみる。するとそこはシャドウナイフが転落した現場らしく、そのシャドウナイフが落ちてきた際に割ったショッピングモールの天井のガラスが全身に刺さって出血多量で命を落とした男がひとりいた。それはなんと、永至だった。そして一方のシャドウナイフも重傷を負い、病院へとすぐさま搬送されて、一命を取り留めたようだった。また、永至の死体は、現実の永至も死亡したことで消滅してしまったという。アリアによると、魂のない人間はメビウスに招くことも留まることもできないらしく、メビウスで死んだら本当にそこで終わりということだった。
こうしてランドマークタワーでの事件で帰宅部のメンバーはすっかり憔悴してしまい、さらに突然鳴子が姿を消してしまい、同時に一同がいる部屋の扉が突然開かなくなる。そしてスピーカーからは、突如攻撃的で暴力的なメロディーの楽曲が流れてきた。鍵介によると、この曲は「ウィキッド」と名乗る楽士の曲らしい。その時、美笛の携帯に鳴子のメッセージが届いた。その内容はなんと「騙されてやんの! 帰宅部バカばっか! ウケる!」と、明らかな悪意が込められたものだった。それに美笛が目を疑うと、さらに悪意あるメッセージはこう続いた。「仲良しこよしの部活動はここでおしまい! そこで私の曲を聞いて、デジヘッドになっちゃいな? お前らの無駄な努力、特等席で見せてもらえてとっても楽しかったよ〜。それじゃバイバイ。デジヘッドとなったお前らに再会できるの待ってるね〜?」そのメッセージに、愕然となる帰宅部のメンバー。そのウィキッドという楽士が鳴子で、今まで彼女に騙されていたのかとまた怒りで我を忘れかける鼓太郎に、ウィキッドは声しか聞いたことがなく、鳴子とでは気性が違いすぎると異を唱える鍵介。そして主人公も、きっと何か理由があるはずだと鼓太郎と、動揺を隠しきれないメンバーを諭し、落ち着いて状況の対応にあたるのだった。
その後、しばらくして扉を叩く音と、落ち着いた感じの少女の声が聞こえてきた。「みなさん、大丈夫ですか!? 水口茉莉絵です!」その声の主は何と、鳴子のクラスメイトで、優等生としても有名である水口茉莉絵だった。茉莉絵は鳴子が帰宅部を閉じ込めたと大笑いしているから、仲間である帰宅部に知らせに来たという。さらにあろうことか、鳴子はデジヘッドになってしまい、手下として従えたデジヘッドたちを使って学校の生徒たちを捕まえているらしい。あまりにも突然すぎる展開の連発に困惑を隠せず、すぐに鳴子の元へ向かおうとする帰宅部だが、扉を開けようにも、茉莉絵によるといつの間にか南京錠がかけられているらしい。とりあえず茉莉絵に鍵を探してきてくれるよう依頼した後、帰宅部はどうするか対策を考え合おうとしたが、結局いい手が見つからず、一晩明けてしまった。

茉莉絵の差し入れであるサンドイッチで腹ごしらえしたメンバーたちだが、すぐに眠くなるという異変が現れ始める。このサンドイッチもまた、ウィキッドが仕掛けた罠だった。

その直後、主人公に自らの正体を看破された茉莉絵は、突如として態度と口調を暴力的なものへ豹変させた。

ついに姿を現わす新たなる強敵・ウィキッド。瞳はハートマークで格好もどこか扇情的なものだが、その狂気に満ちた表情と、暴力的な口調とは振る舞いは、まさに「狂犬」と言っても過言ではない。

そして鳴子は、ウィキッドに襲われて携帯を奪われ、体育館に監禁されていた。

さらに憔悴しかかる帰宅部に追い打ちをかけるように、再び鳴子から挑発的なメッセージが送られてくる。「ところで、気づいたかな? 裏切り者は、もう一人いる。お前たちに見つけられるかなぁ? でも、実は薄々疑ってた人もいるんじゃないのぉ〜?」そのメッセージにさらなる驚きを隠せず、さらにアリアも巻き込んで疑心暗鬼になっていく帰宅部。そして空腹と疲労にも襲われ、限界寸前まで近づいたところ、茉莉絵が鍵と共に差し入れを持ってきた。やっと一息つけると思った帰宅部のメンバーが差し入れを貪るようにして食っている中、主人公はここである疑問に気づく。それは茉莉絵が自分を「部長さん」と呼んでいるという点で、主人公は一言も部長であることを茉莉絵に教えた覚えはない。
すると突然、帰宅部のメンバーが次々と眠り出した。思わぬ事態に主人公とアリアが目を見張った瞬間、「チッ……め・ん・ど・くせぇ〜〜なぁっ!!!」と、茉莉絵が急に語調を荒げた。すると茉莉絵の姿が、妖艶で凶悪そうな衣装に身を纏った少女に変わった。「せ〜っかく、今度はひとりずつ監禁して楽しいことしようとしてたのに、バレちゃったぁ! ざんね〜〜ん!!」気のふれた笑顔で大声を張り上げるその少女こそが、ウィキッドだったのだ。主人公一人だけ連れていけば裏切り者ということにして、後はひとりずつ仲違いにして帰宅部を壊滅に追い込んでやれる、と、狂気じみた笑いで歪んだ欲望をぶちまけた後、ウィキッドは主人公に襲いかかってきた。そうして突然の戦いになったが、辛うじてウィキッドを退けた主人公は仲間たちを必死に起こす。そして茉莉絵こそがウィキッドで、鳴子をさらって皆を部屋に閉じ込めた真犯人と説明し、鳴子への疑いを晴らすことに成功したのだった。
それから学校中を探索し、鳴子が体育館にいることを突き止めた帰宅部は、急いで体育館に駆けつける。そこにはウィキッドと、椅子に縛り付けられた鳴子がいた。助けに駆け寄ろうとするが、ウィキッドがそれ以上近づくと鳴子の顔を剥ぐ、と、気のふれた笑いで脅しをかけるため、思うように動けない。そして鳴子は「あたしのことはいいから、みんなで現実に戻って……!」と、訴えるが、鼓太郎や鈴奈は鳴子を助けにここまで来たと一歩も引かない。そこで維弦が何があったと尋ねると、鳴子はこう説明した。これ以上帰宅部の活動を続けたら、帰宅部はおろかオスティナートの楽士たちも死ぬかもしれない。だから話し合いで解決しようと近づいてきたウィキッドに丸め込まれ、帰宅部の部屋の場所を教えてしまい、逆に捕らえられてしまったのだという。「バカな仲間を持つと大変だねぇ〜?」と、笑い飛ばしてくるウィキッドに、せっかく帰宅部のみんなと友達になれたのに死んじゃうなんて嫌だ、と鳴子はさらに悲痛そうに訴える。だがそんな鳴子の悲痛な叫びと思いをウィキッドはさらに笑い飛ばしたが、次には笑いを消し、ドスの利いた声でこう言い放った。「私、そういう上っ面の関係……大っ嫌い。どいつもこいつも、本当は自分のことしか考えてないくせに、友達だとか仲間だとか絆だとか、反吐が出る」そして、気のふれた笑いに戻ったウィキッドは、そんな関係を壊すことが自分にとって楽しみであり、何より絆や友情といった温かなつながりを引き裂かれた時の人間の顔が絶望に歪むのを見るのが最高だとも、歪んだ欲望をこれ見よがしにぶちまけてくる。

ウィキッドの一瞬の隙をついて、鳴子の拘束を解除するアリア。

アリアの横槍と帰宅部の結束を目の当たりにし、完全に気分を壊され、烈火の如く激怒するウィキッド。狂気的かつ暴力的な叫びと共に襲いかかる。

そして一瞬、茉莉絵の姿に戻ったウィキッドは、怨みと怒りに満ちているが、どこか悲痛にも感じられる捨て台詞と共にその場から逃げ去った。

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