星を追う子ども(映画)のネタバレ解説まとめ

『星を追う子ども』とは、2011年5月に公開された長編アニメーション映画である。監督は「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」などで知られる新海誠で、制作会社はコミックス・ウエーブ・フィルム。この物語は、主人公の少女「アスナ」が、秘密基地で出会った少年「シュン」の死を乗り越え、強く生きていこうと決心するまでの冒険を描いたファンタジー作品である。

山の上の秘密基地で、シュンがアスナにキスをして言った台詞。後にアスナは母親にどういう意味だと思うかと問うと、母親は少し驚いたような顔をして「生まれてきてくれて、ありがとうという意味よ」と微笑む。これは寿命を縮めてでもアガルタから地上にやってきたシュンが、アスナに出会えたことにより初めて自分の生に満足したことを意味する。シュンは、自分はもうすぐいなくなってしまうが、アスナにはずっと生きていてほしいと願ったのだ。

「これは“さよなら”を知るための旅だ」

夷族に連れ去れる前、アスナの夢の中のシュンが彼女に言う台詞。妻を生き返らせたいという森崎についてアガルタに来たアスナは、シュンを蘇らせたいわけではないが、シュンの弟のシンを「記憶を失ったシュンなのではないか」と期待し、それが違うと確信を持てるまで彼の死を認められないでいた。だからこの台詞は、シュンの死を分かっていても認めたくない、だが認めなくてはならないという彼女の潜在意識の表れなのだ。

「アスナ、君には生きていてほしい」

世界の果て「フィニス・テラ」の絶壁を前に、崖を降りられないと恐怖してしまったアスナに森崎が言った台詞。アガルタを旅する中、アスナは森崎を「お父さんみたい」と親しむようになっており、妻を失って以来誰にも心を許さず生きていた森崎もまた、次第にアスナに心を開くようになっていた。だから崖を降りることに命の危険を感じたアスナに、無理強いはせずにこの言葉をかけたのだ。

「生きている者が大事だ!」

アスナの体を依代に妻リサを蘇らせた森崎に、シンが言った台詞。シンはアスナとリサの魂を繋いでいるクラヴィスを破壊しようとするが、森崎はそんなシンの首筋にナイフをあて、やめてくれと懇願する。シャクナ・ヴィマーナにリサの魂を入れる肉体を求められたとき、森崎は自分以外の命を犠牲にしたが、シンは自分の命をなげうってでも他の命を助けた。この台詞には、「死」を受け入れすぎている他のアガルタ人にはない、シンの「命」への思いと、彼の強さが見て取れる。

『星を追う子ども』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

シュンが「どうしても会いたかった人」

本作中では語られなかったが、シュンが「どうしても会いたかった人」とは、アスナの父親であった(これはコミック版で語られている)。アスナの父親はアガルタにいる頃、シュンの師だったのだ。アスナの父はシュンに死んでしまった人は星になるのだという、地上の言い伝えを教えていた。両親を失っていたシュンは、そんな言い伝えを聞いて以前から地上へ憧れを抱いていた。そして自分が病に侵され、もう長く生きられないことを知って、アガルタにはない星空を見に地上へ出てきたのだ。アスナの父は既に亡くなっていたが、その娘であるアスナに会えてシュンは満足してこの世を去っていった。

もうひとつの喪失

アスナのシュンの喪失、森崎のリサの喪失に加えて『星を追う子ども』で語られている死が、アスナの母親の夫の喪失だ。アスナの母親も森崎同様、最愛の伴侶を失っている。アスナの母とて「それを(死者にもう一度会いたいと)願うのは、きっといけないことなんでしょうね。死ぬことは生きることの一部だとお父さんは言っていたけれど、私は…」と夫を失ったばかりのころは悲しみに押しつぶされそうだった。だが、妻の死を諦められないまま生きてきた森崎と違い、アスナの母にはアスナという守るべき存在があった。だからこそ、彼女は前向きに生きていくことが出来たのだった。

『星を追う子ども』の主題歌・挿入歌

主題歌:熊木杏里『Hello Goodbye & Hello』

熊木杏里は、2001年に放送されたテレビ番組の歌手オーディションでグランプリに輝き、2002年にデビューしたシンガーソングライターだ。本作『星を追う子ども』の主題歌を歌うきっかけとなったのは、以前別の仕事で面識のあった音楽プロデューサーから声をかけられたことによるものだったそうだ。実はオファーを受けた当時、彼女はファンから「熊井杏里の歌は、新海誠作品とどこか通じるものがある」と言われていたのだという。彼女がこの楽曲『Hello Goodbye & Hello』を新海監督に出した時、監督は『星を追う子ども』のメインテーマともなる「“さよなら”を言うための旅」をそのまま表現した歌詞に、「ちょっとズバッと言いすぎているのではないか」と返したそうだ。だが監督も内心では、まだ主題歌のイメージが固まっていなかったようで、数パターンの別の歌詞を書いてみた結果、やはり『Hello Goodbye & Hello』という歌詞のままこの楽曲は完成したのだという。

『星を追う子ども』予告

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