かくりよの宿飯(第5話『あやかしとの約束を忘れてはならぬ』)のあらすじと感想・考察まとめ

葵の手当てによって傷の癒えた暁は、葵に一緒に料理を作ろうと提案された。史郎との思い出の水餃子を作り、鈴蘭にも食べてもらった。それは、うつしよへ向かうという鈴蘭への餞別にもなった。鈴蘭のうつしよへの旅立ちを阻止しようと、天神屋に乗り込んできた八幡屋の若旦那を暁が退け、鈴蘭と葵は無事にうつしよへと旅立って行った。
今回は「かくりよの宿飯」第5話『あやかしとの約束を忘れてはならぬ』の内容(あらすじ・ストーリー)と感想・考察を紹介。

「かくりよの宿飯」第5話『あやかしとの約束を忘れてはならぬ』のあらすじ・ストーリー

蜘蛛の糸を出す土蜘蛛

暁は葵の作った料理に手を付けず、ふて腐れていた。
葵「気が向いたら食べなさいね、鈴蘭さんの所に行ってくるから」
暁「貴様、鈴蘭に手を出すな」
そう言って暁は、蜘蛛の糸を葵に向かって出した。しかし、糸は50センチ程しか飛ばず、葵には届かなかった。
葵「ほうら、食べないから霊力が戻らないのよ」
暁「お前の顔は実に史郎を思い出させる。生意気そうで腹立たしいったらない。汚らわしい史郎の孫娘め!」
葵は返事をせず、黙って鈴蘭のところに向かった。

妖都切子の器に盛られたデザート

鈴蘭はひとり、三味線を奏でながら部屋でくつろいでいた。葵は「鈴蘭さん、葵です」と声を掛け、持って来た盆を机の上に置いた。盆の上にはおいしそうなデザートが、妖都切子の器にきれいに盛られて載っていた。
葵「お口に合うといいけど」
鈴蘭は「まあ素敵」と言ってひと口食べ、話を続けた。
鈴蘭「兄さんが葵さんのところでお世話になっていると聞きました」
葵「そのぉ、成り行きで…。少し休めば元気になると思うんだけど」
鈴蘭「ありがとうございます。このアイスもおいしい。私、史郎様が買って下さった、うつしよのアイスが好きでした」

史郎と食事をする鈴蘭と暁

葵「おじいちゃんとはどこで出会ったの?」
鈴蘭「うつしよです。私たち兄妹に史郎様はとても親切にして下さいました。家族を人間に殺された私たちは、安全に暮らせるところを探して日本中を転々としていました。人間を恨んでいた兄さんは、人を襲うたびに霊力を高めていったのです。そんなある日、史郎様が現れ大妖怪になった兄さんをいとも簡単に」
そう言って、史郎が暴れる暁をいとも簡単に退治してしまったこと、そしてその後、史郎は暁と鈴蘭を連れ帰り面倒を見てくれたのだと話した。
暁は「人間なんか信用できるか」と史郎に反抗していたが、史郎の料理を手伝ったりしながら、徐々に打ち解けていった。そして、おいしい水餃子を食べさせてもらったことや、字を習わせてもらったこと、史郎の家で生活を共にさせてもらったことなどを、楽しそうに思い出しながら葵に語って聞かせた。

鳥居の下で待つ大旦那

鈴蘭「兄さんは史郎様にこき使われていましたが、私はいっぱい甘えさせてもらいました」
そう話し終えると、鈴蘭は少し神妙な面持ちになった。

仲良く3人で過ごしていたある日、鈴蘭と暁は史郎に連れられて、ある神社の前にやって来た。そこで史郎は2人にかくりよへ行くように言いつけた。
暁「なぜだ!理由を言え、理由を!」
暁は突然のことに驚き、史郎に激しく理由を問いただした。
鈴蘭は膝から崩れ落ちて史郎に「いやです、いやです」とすがった。
史郎「うつしよは生きにくい、いつでも会いに行く、約束する」
史郎はひざまずく鈴蘭の頭を撫でながら、神社の鳥居の方を見た。そこには天神屋の大旦那が立っていた。

うつしよでの思い出を語る鈴蘭

鈴蘭「かくりよへ行く算段を整えて下さったのが、大旦那様でした。最初は私も天神屋で仲居をしていたのですよ。史郎様がよく都へ現れると聞いて、ここを辞め都で一番の芸妓になるべく励みました。満足のいく三味線を奏でられるようになった頃、史郎様はぱったり来てくれなくなりましたが」
葵「それきっと、おじいちゃんが私を引き取ったせいだわ」
鈴蘭「史郎様はずっとおひとりでした。だからこそ、私はあの人のそばにいたかった。お孫さんと暮らしていると聞いて、ああもうひとりではない、史郎様には家族がいるんだなあって」
葵「鈴蘭さん、うつしよへ行くって本当?」
鈴蘭「ええ、ずっと思っていましたから」
葵「おじいちゃんはもういないよ」
鈴蘭「人間とは、こんなにもすぐに死んでしまうものなのですね、史郎様ほどの人でも。史郎様の墓があるなら、そのそばで、史郎様と過ごした土地で、強く生きてみたいのです」
葵「暁は?このまま喧嘩したままでいいの?」
鈴蘭「仕方がありません、私も兄さんもとても頑固なのですよ」
葵は「このまま兄妹が離れ離れになるなんて悲しすぎる」と思いながら小料理屋へ戻って行った。

暁にスムージーを飲ませる葵

小料理屋に戻った葵は、暁がまだ料理に手を付けていないのを見て怒りをあらわにした。
葵は野菜でスムージーを作ると、土蜘蛛の姿の暁を小脇に抱え、無理やり暁の口を開けてスムージーを流し込んだ。
激しく抵抗しながらも、口の中にスムージーを入れられた暁は、土蜘蛛の姿から人間の姿に変身した。
葵は、うつしよへ行く鈴蘭を見送ってあげるように暁に頼んだ。「史郎に振り回されるのはもう嫌だ」と暁は渋っていたが、葵に根負けして最後は承知した。葵は暁に、一緒に料理を作ろうと提案した。

左利きの暁

若旦那の銀次が「葵さん、おはようございます」と言って、翌朝小料理屋にやって来た。葵に食材の調達を頼まれていた。
銀次「史郎さん直伝の水餃子ですか?いいですね」
葵「これは、暁と鈴蘭さんのためよ」
天神屋から暁もやって来た。
葵「やっと来たわね」
暁「来ないとうるさいからな」
葵は割烹着を暁に渡した。暁は素直に割烹着を着て台所に立った。そして2人で料理を作り始めた。
小麦粉の練ったものを丸く伸ばすよう言われた暁は、棒でたたき始めて葵を驚かせた。
「みじん切りは早さが命と史郎が言っていたんだ」と、暁がキャベツを高速で乱暴に切り始めたので、葵が止めた。
「それは多分おじいちゃんの嫌がらせよ」と笑う葵に「史郎め!」とひと言暁は呟いた。
水餃子の皮を暁が左手で包むのを見て「左利きなのね」と葵が言った。
葵「私もおじいちゃんと一緒にこうやって水餃子を作ったの」
暁「史郎はあやかしの好む味付けを嫌った。辛くて濃い味付けが好きだったんだ。味薄いだの、甘いだのと何度もちゃぶ台をひっくり返された」
葵「おじいちゃんは私に、少し甘くて薄味の方が好きだって言ってたけど」
暁「それは、きっとお前をあやかしから守るためだろう」
葵「自分の好みを偽って、あやかし好みの味を私にさせてたってこと?」
暁「さあ、どうだろうな」

出来上がった水餃子を食べる葵と暁

葵「おじいちゃんも私の身を心配したなら、退魔術(*)でも教えてくれればよかったのに」
暁「それはきっと、借金の代わりに孫娘を嫁にやるという大旦那様との約束があるからだろう。史郎が借金をしたのは、俺が見習いで仕事を始めた直後だった。ふらっと現れて飲み食いして暴れた挙句、国宝級の壷を割りやがった。俺はいたたまれなかった。しかもその借金の方に自分の孫娘を提示して。大旦那様は何を思ったか、それを了承したわけだ」
話しているうちに、水餃子が出来上がったので2人で食べてみた。
暁「この味だ、史郎に救ってもらった日にこれを鈴蘭と食べた。お前が鈴蘭の所へ持っていけ。俺が作ったことは絶対に言うな。それと俺は天神屋の番頭、暁だ」
史郎の孫娘だということで葵を嫌い、「俺の名前を呼ぶな」と言っていた暁だったが、葵にこれからは名で呼ぶよう促した。
暁は割烹着を脱ぎ小料理屋を出て行った。

*:退魔術(たいまじゅつ)とは魔物を退治することの出来る術。

水餃子を食べる鈴蘭

葵は、出来上がった水餃子を鈴蘭のもとに届けた。
鈴蘭「これは確かに史郎様の水餃子。おいしいです、とても。この味は私が一番幸せだった時の象徴のようなものです。もしかしてこれ、兄さんも作りました?」
葵「えー、どうして分かったの?」
鈴蘭「ひだの向きです、兄さんは左利きなので」
葵「してやられたわね。私、口止めされてたの」
鈴蘭「兄さんは頑固ですからね」
葵「暁のことは、このままでいいの?」
鈴蘭「私をうつしよに向かわせたくないのは兄さんの本心。史郎様の味を思い出させてくれただけで、私は十分兄さんの愛情を感じます」
葵「兄妹っていいなあ、なんだかんだと心配し合っても絶対的な味方なのね」
鈴蘭「あら、葵さんだって兄さんと私と兄妹みたいなものではないですか?だって同じ史郎様に育てられたのですから、家族も同然ですよ」

うつしよに旅立つ鈴蘭

鈴蘭がうつしよに旅立つ日が来た。「お世話になりました。ありがとうございます」と鈴蘭は葵と大旦那に礼を言った。若旦那の銀次が「まもなく牛車(ぎっしゃ)(*)の支度が整います」と鈴蘭を呼びに来た時、ドーンという音が鳴った。そして八幡屋の若旦那が「鈴蘭はどこだ」と叫びながら、一反木綿達を引き連れて天神屋に押しかけて来た。
若旦那「天神屋の大旦那に告げる、今すぐ鈴蘭を出せ。私が嫁に貰うことになっている、邪魔立てすると天神屋に火を放つぞ」
若旦那がそう言った時、暁が「うるさいぞ一反木綿ども」と言って若旦那に飛び掛かった。
暁が八幡屋の若旦那と対している間に、大旦那は葵に「鈴蘭と一緒にうつしよへ行って欲しい」と頼んだ。
大旦那「お前はうつしよをよく知っているし、鈴蘭を目的の場所に連れていくことが出来る」
銀次「葵さんも乗って下さい」
お涼もやって来て「これを忘れては、うつしよでいろいろ大変なのではなくて?」と言いながら、葵がうつしよから持って来ていたバッグを手渡した。
大旦那「お涼、気が利くじゃないか」
お涼「若女将たるものこのくらい」
葵「どういうことなの?大旦那様」
大旦那はそれには答えず「鈴蘭を頼んだぞ」とだけ言った。

*:牛車(ぎっしゃ)とは牛や水牛にけん引させる車のこと。かくりよで使われる牛車には牛の姿は見えない。かくりよとうつしよを行き来するための交通手段。

大筒(おおづつ)を撃つ一反木綿

葵と鈴蘭を乗せた牛車は動き出した。牛車の中で鈴蘭は葵に「申し訳ありません、私の事情に巻き込んでしまって」と葵に謝っていた。葵は「うつしよだって、鈴蘭さんがいた時代とは変わっているでしょうからね」と気にしないよう鈴蘭を気遣った。
やがて牛車はゆっくりと空に浮かび上がって行った。八幡屋の一反木綿の1人が浮かび上がる牛車に向けて大筒(おおづつ)(*)を撃ち放った。大筒の弾は暁が霊力で受け止め、牛車にはとどかなかった。
今度は別の一反木綿たちが3基の大筒を、牛車に向けて撃ち放った。
暁が繭のような蜘蛛の糸の塊を空に打ち上げ、大筒の弾を絡め取って包み込み地上に落とした。
葵と鈴蘭を乗せた牛車は無事にうつしよへと旅立って行った。

*:大筒(おおづつ)とは、人間が抱えて撃つことの出来る大砲。弾丸の重さが50匁(もんめ、約187.5グラム)以上のものを大筒という。

うつしよに着いた葵と鈴蘭

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