ロッキー4/炎の友情(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ロッキー4/炎の友情』とは、1985年に製作されたアメリカ映画。『ロッキー』シリーズ第4作。監督・脚本・主演はシルヴェスター・スタローン。当時の東西冷戦下のアメリカとソ連を背景としたストーリーは、過去3作とは大きく趣の異なる作品となっている。ロッキーの宿敵であり親友であるアポロが、引退後再びリングに立つことになった。だが、挑戦者であるソ連の長身ボクサー・ドラゴの殺人的パンチによって、リング上で死んでしまう。ロッキーはドラゴを倒すため、敵地ソ連へと旅立つのだった。

ロッキーとドラゴの試合は、一進一退の激しい攻防が続き、ロッキーの素晴らしい精神力と根性に対して、ドラゴの応援一色だったソ連の観客も次第にロッキーにも声援を送るようになった。そして14ラウンド終了後のインターバル、観客のロッキーコールに不満を示す政府高官を見たコロフが、ドラゴのコーナーに行きトレーナーを罵り、さらにドラゴに対して「勝て!バカ者が!」と、ドラゴの頭を小突く。怒ったドラゴがコロフを片手で持ち上げて吐き出すように言ったセリフ。

最強のボクサーとするために、国を挙げてドラゴは鍛えられてきた。それに応えるため、言い換えれば国のために戦ってきた。だが、残りが1ラウンドとなった今、彼にはただ己の全てを賭けて勝つことしか考えられなかったのだろう。このセリフは、追い詰められたドラゴを見事に表現している。

俺は変わり…あなたたちも変わった…誰でも変われるはずだ!"If I can change...and you can change...everybody can change!"

ドラゴにKO勝ちを収めたロッキーの肩には星条旗がかけられ、その後、リング上での勝利者インタビューに応えるロッキーは、ソ連の観客に向かって話し始める。その中の最後に言ったセリフ。

ロッキーは最初に、「リングの上で、2人の男が殺し合いをしました。しかし、2,000万人が殺し合うよりも良いことだと思います。」というメッセージを送る。
本作では、とことんまでロッキー陣営(アメリカ)とドラゴ陣営(ソ連)の対立が描かれている。観客とロッキーの間にあった憎しみの感情が、試合を通じて変わっていったことに触れ、「誰でも変われるのだ」というメッセージには、ロッキー=スタローンの戦争に対する世界平和への考えが込められており、感動のラストシーンとなった。

アポロの死

アポロとドラゴのエキシビション・マッチ。
ドラゴの強烈なパンチが何発も顔面に炸裂したアポロがグロッキー状態に追い込まれた第1ラウンド終了後、ロッキーはインターバルでアポロに「これ以上は無理だ、殺されるぞ」と試合中止を勧めるが、アポロは「絶対に試合を止めるな」とロッキーに頼む。続く第2ラウンドでもアポロはドラゴにめった打ちにされる。デュークが試合を止めるように叫び、ロッキーがタオルを投げようとしたその瞬間、ドラゴの強烈なパンチを顔面に受けたアポロはリングに倒れそのまま動かなくなってしまう。勝利しても冷徹なままのドラゴを睨みながら、 リング上でアポロを抱きかかえるロッキーだった。

ロッキーも含め、周りは皆エキシビジョン・マッチだからと楽に考えていた試合だが、アポロとドラゴの2人にとっては本気の試合だったのだ。それだけに試合を止めることができなかったロッキーにとっては悔やんでも悔やみきれない思いが伝わってくるシーンである。前作では恩師ミッキーの死があり、今度は恩人でもあり、ライバルでもあり、友人でもあったアポロが死を迎える。『ロッキー』ファンにとっては、レギュラーメンバーが次々にいなくなることは寂しい限りである。

山頂でドラゴの名前を絶叫するロッキー

ドラゴとの試合に向けて、ロシアの大自然の中でトレーニングを開始するロッキー。
スパーリングは一切行わず、雪道のロードワークをメインに木や石やソリなどを使った独自のトレーニングに終始した。トレーニングが続く日々の最中、唯一気掛かりだったのが試合に反対をするエイドリアンだったが、彼女が考えを改めロシアまでやって来たことで、その後のロッキーはそれまで以上に集中して様々なトレーニングに励んだ。そして、トレーニングの仕上げには延々と走って雪山を登り、山頂に着くなり太陽に向かってドラゴの名前を絶叫するのだった。

もはや理屈ではないロッキー独自のトレーニングをやりきった事によって、自身のテンションを高めて、ドラゴ戦に臨むという意気込みが伝わってくるシーンとなっている。
因みに「ロードワーク」というのはボクシングのトレーニングにおいての基本だが、『ロッキー』のキーワードでもある。1作目では最初は息が上がっていた階段を走って上れるようになることで成長が描かれ、2作目では多くの子どもたちともに走るシーン、3作目では海岸でアポロを走って抜き去るシーンが印象的だった。

『ロッキー4/炎の友情』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

出世作となったドルフ・ラングレン

映画『エクスペンダブルズ』来日記者会見スタローンとラングレン。

アメリカ合衆国でのモデルの仕事を経て、1985年に端役として『007 美しき獲物たち』に出演し映画デビューしたドルフ・ラングレン。
本作のドラゴ役については、当初「背は高いがヘビー級ボクサーを演じるには線が細すぎる」として選考から外れていた。しかし本人の熱心な売り込みと、空手で鍛えたボクシングにはない軌道のパンチが監督のシルヴェスター・スタローンの目に留まったという。その後、スタローンと共にウェイトトレーニングに励んだ結果、ほぼ筋肉のみで25ポンド(約11.3kg)の増量に成功。これによりドラゴ役を正式に打診され、アクション俳優としての大きな飛躍のきっかけを作った。

しゃべる自走式ロボットが登場

ポーリーの誕生日にロッキーたちからのプレゼントとして、バースデーケーキを運んでくる等身大のロボット。
自走式で言葉を話し、音楽を流すこともでき、電話の機能もある。当初は嫌がっていたポーリーだが、いつの間にか女性の声に変えさせ、恋人のように接するようになる。ロッキー・ジュニアの遊び相手にもなり、ソ連へと旅立つポーリーに、「忘れ物はないか」など心配する姿も見せる。
実はこのロボットは、実際にアメリカのInternational Robotics Inc.という会社がイベントや病院で利用する目的で作成したコミュニケーションロボットで、劇中のように声を代えられるオプションがあるようだ。現在は当時の面影を残しつつ、更に進化した最新型が広い範囲で活躍しているそうである。

ゴルバチョフの”そっくりさん”が出演

モスクワでのロッキーとドラゴとの試合会場では、ソ連の書記長を始めとする政府高官たちが着席する。書記長が観衆に向かって手を振ると、いっそうの大歓声が沸き起こった。
このシーンに登場する書記長の名前は劇中では明かしていないが、顔は明らかに映画の公開当時に就任したゴルバチョフ書記長である。
実は演じているのは彼の“そっくりさん”である。このそっくりさんは映画『裸の銃を持つ男』にもゴルバチョフ書記長役で出演している。

本作のノベライズが出版

劇場公開当時、スタローン自身の手によるノベライズが出版されている。
物語のアウトラインは映画とほぼ同じだが、映画ではほぼ描かれていないイワン・ドラゴのバックボーンや内面等が描かれており、 脚本執筆時のスタローンの構想が伺える内容となっている。
日本版は二見書房から発刊されている「サラブレッド・ブックス」。
タイトルは「小説 ロッキー4 炎の友情」。
昭和61年5月20日発刊初版、全318P。著:シルベスター・スタローン。訳:吉野博高。

政治的にも話題となった本作

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