ヒカルの碁(ヒカ碁)のネタバレ解説まとめ

『ヒカルの碁』とは、ほったゆみ(原作)と小畑健(漫画)による日本の少年漫画。集英社「週刊少年ジャンプ」にて連載された人気漫画作品である。囲碁を題材にした作品で、小学生を中心に囲碁ブームを巻き起こした。
テレビアニメ、小説、ゲームなど、様々な形でのメディアミックスも行われている。
平安時代の最強棋士・藤原佐為に取り憑かれた進藤ヒカルが、囲碁を通して出会った人々との中で神の一手を目指して成長する物語。

もうすぐプロ試験が始まるという時、和谷が学生名人・学生本因坊・学生十傑の3冠を取った門脇という強い人物が今度のプロ試験を受けるという情報を仕入れてきた。和谷や伊角は外来で強い人物がプロ試験を打つことに脅威を覚えた。噂されていた門脇は、プロ試験申し込み書を持って日本棋院にやってきていた。申込み前に肩慣らしとして院生と対局したいと考えた門脇は、たまたま近くを通ったヒカルを対局に誘った。
ヒカルは、本当の自分の力を知らない通りすがりのような一局だから佐為が打っても大丈夫と考え、佐為に打たせることにした。ネットでアキラと対戦して以来、ヒカル以外の人間と打っていなかった佐為は喜び、対局を楽しんだ。門脇はヒカル(佐為)の強さに驚き、本当に院生なのかとヒカルを問いただす。ヒカルの名を聞こうとする門脇から逃げるヒカルに、門脇は「碁を初めてどれくらいになる?」と呼びかけた。ヒカルと佐為は「千年」と笑い、立ち去った。
門脇は、院生のヒカルに大敗し、自分の実力不足を思い知り、プロ試験受験を1年遅らせ鍛え直すことに決めた。

院生研修が終わり、プロ試験が始まった。
1組上位8名は予選を免除されるため、ヒカルと仲がいい和谷や伊角は本選からの参加となる。いつもと同じように戦うだけと息込んで対局に向かうヒカルの前に、大人がたくさん現れた。ヒカルは知らないことだが、プロ試験は30歳まで受験資格があるため、外来として大人も参加する。院生は18歳までなので、ヒカルは大人との対局に慣れていなかった。ヒゲを蓄え大声で騒ぐ椿という人物がヒカルの初戦の相手だ。対局が始まると椿は一手も打たずに30分も席を外し帰ってこない。そんな椿にペースを乱され、昼休憩でも椿に蕎麦屋に連れて行かれ、完全にのまれてしまったヒカルでは椿に勝てるはずもなく、ヒカルは予選初日黒星となった。
予選2日目のヒカルの相手も、大人に決まった。扇子を閉じる音にさえ怯えるヒカルは2戦目も落とし、2敗となってしまった。
プロ試験予選は5日間有り、3勝した者から抜けていく。3日目、椿や大人にペースを乱されたくないヒカルは、時間ギリギリに対局室に入り、負けられない勝負に挑む。3日目の相手は同じ院生のフク。ヒカルは気心が知れた相手との対戦でようやくいつもの自分のペースで碁を打つことができ、初勝利を挙げることができた。
4日目、3勝した者が抜けたため、少数となり、ヒカルが苦手とする椿もいなくなっていた。ヒカルは院生1組下位の子供とあたり、勝利した。
5日目、3勝と3敗が抜け、残っているのは5人。抽選の結果、ヒカルは不戦勝となり、本選に進めることになった。

2勝2敗の院生を心配して棋院に来た和谷は、不戦勝で対局をしていなかったヒカルから2敗の理由を聞き、大人が苦手なヒカルの為に、碁会所で慣れさせることに決めた。
和谷と伊角、ヒカルの3人は、碁会所で団体戦をやりたいと交渉し、勝ったら席料タダ、負けたら碁石を洗うと約束して、碁会所で一番強い大人3人と団体戦をやることになった。
生意気な子供達が来たと、大人たちは面白がり、その勝負に乗ってくれた。互先ではヒカルたち3人全員勝利し、2回戦では相手に2石置かせてもう一度勝負した。それでも3人全員勝利し、調子に乗った和谷は、今度は3石置かせて勝負しようと言い出した。プロ試験を前に、このくらいのハンデを背負って勝てるくらいでなきゃいけないと和谷は言い、余りにも生意気な子供達に一泡吹かせると大人たちも勝負に乗ってくれた。

相手に3石置かせるということは、初めから20目、30目のハンデを背負っての勝負となるため、普通に打っていたのでは勝てない。ヒカルはこの差があっても勝てるように新手を用いて力強い碁を打っている。佐為は碁会所でハンデを持ちながら打つことは、ヒカルの成長に繋がると感じていた。

大人が苦手だったヒカルだが、団体戦に見立てた勝負で大人たちと対戦したため、苦手を克服し、次の日から毎日その碁会所に通うようになった。席亭が優しく親切で、ヒカルの成長に繋がるような強い人物と戦わせてくれるのもヒカルが碁会所に通う一因だった。

翌週、ヒカルは和谷と伊角と共に、強い人物が居るという碁会所に行き、先週と同じように団体戦を申し込み、3人は大人たちと対戦しまくった。
そうして、ヒカルは大人にも、ハンデを背負っての対局にも慣れ、鍛えられていった。

一方のアキラは、新人棋士として囲碁イベントに参加していた。本来は女流棋士の桜野が参加予定だったが、都合により参加できず、急遽アキラが参加することとなっていた。
アキラは4人を相手に多面打ちをすることになっていたのだが、その相手はイベントの運営に助力しているスポンサーである都議だったため、絶対に勝ってはいけないとアキラはスタッフから注意を受けていた。
桜野目当てでやってきた都議は、多面打ちの相手がアキラだったことに腹を立て、傍若無人な振る舞いをする。
床に落ちていた碁石を踏み、盤面に水滴のついたグラスを置く都議にアキラは不快感を持った。実力が足りていないにも関わらず見栄を張り置石を減らすよう命令する都議に対しアキラはため息をつくが、その態度を都議にたしなめられアキラはある決意をした。

その頃、ヒカルも常連となった碁会所で碁を打っていた。目算が苦手というヒカルに席亭は次の対局は持碁(引き分け)にしてごらんとアドバイスをする。
打つ早さを変えず、下手な碁で帳尻を合わせようとしないで自然と持碁になるように考えて打てと言う席亭の言葉に頷いたヒカルは持碁に挑戦する。
先ず1面で持碁に成功し、次は2面、3面と多面打ちに挑戦しつつ全ての面を持碁にするように挑戦したヒカルは、結局4面打ちで3人成功までできるようになった。
席亭は、ヒカルの成長の早さに驚いていた。

囲碁イベントで4人相手の多面打ちをしていたアキラも4人持碁を狙って打っていた。大切なスポンサーなので本来ならば気持ちよく勝たせなくてはならないのだが、どうしても都議の態度が許せなかったアキラは、頭の中で目まぐるしく調整しながら4人持碁を成功させた。
始めは偶然と思い、プロと引き分けたと喜ぶ都議たちだったが、4人全員持碁だったと知ると、アキラの力、プロの実力を知り呆然となった。

塔矢門下の芦原は、アキラがスポンサー相手に4人持碁をやったと聞き、最近なにかイライラしているのではと問いかけた。
10連勝を続けるアキラに、誰も追いかけてこないから気負うなと笑う芦原に、アキラは「でもプロ試験予選は通った」と呟いた。自分を追いかけてくるヒカルの存在をどうしても気にしてしまうアキラだった。

プロ試験本選前~洪秀英との対戦

ヒカルとの対局で死力を尽くしたが敗北し、悔し涙に暮れる洪秀英。

和谷と伊角と共にさらに強い人がいると聞いてきやってきた碁会所は、韓国人が経営する韓国人ばかりの碁会所だった。
その前によった近所のコンビニで、商品を落とした子供に声をかけたヒカルは、無視され肩に置いた手を振り払われ憤っていた。
碁会所で偶然その子供に出会ったヒカルは、声をかけた時、無視されたのは日本語がわからなかったからなのだと知り、怒りを解いた。
その子供は洪秀英と言い、韓国でプロを目指している子供だった。席亭はヒカルたちに秀英と打ってもらえと進めてきた。
碁の世界の事をほとんど知らないヒカルは、韓国にもプロがあることを知り驚いていたのだが、秀英はヒカルの無知を馬鹿にし、韓国の研究生は日本の院生のようにヌルクないとヒカルたちを鼻であしらう。
言葉は通じなくても、秀英の態度から馬鹿にされていると感じ取ったヒカルは秀英に対局を申し込んだ。
指導碁なら打ってやると帽子を指で回しながらヒカルを侮る秀英に怒ったヒカルは、秀英の帽子を叩き落とし「ニギレよ!」と勝負に入った。

ヒカルと秀英の対局中、伊角は席亭に秀英のことを尋ねていた。秀英は日本よりも大勢いる研究生の中で勝ち進み、順調にクラスを上げていた。しかし、このところスランプに陥り、クラスを下げ、それに腐ってしまった秀英は粘りもなく投げやりな碁でどんどんクラスを下げプロ試験にも落ちてしまっていた。落ち込む秀英を見かねた親が日本の親戚の所に気晴らしに遊びにこさせていたのだ。
韓国棋院で、躓いた秀英は常にイライラとしていた。
しかし、ヒカルに勝負を挑まれ、格下の日本の院生相手に負けられないと気合いを入れ直した。もし、自分が負けたらヒカルの名を覚えてやると言う秀英の言葉を聞いたヒカルは、絶対に自分の名前を覚えてもらおうとさらに気合いを入れた。

秀英優勢で対局は続いている。そこに、海王中囲碁部顧問の尹が現れた。秀英と対局しているのがヒカルと気づいた尹は、囲碁大会でアキラに大敗したヒカルが秀英相手に一歩も引かない碁を打っているのを見て、ヒカルの成長に驚いた。
盤面を見ていた尹は、ヒカルの打った一手の意味が分からず、戸惑う。秀英もなかなか強いと思っていたヒカルが打った一手を悪手と見なし、がっかりしていた。
しかし、佐為はヒカルの思惑に気づき、ここにいる誰よりもヒカルは上をいっているとヒカルの成長を喜んだ。
対局は、誰もが悪手と思った一手が好手となり、ヒカルの優勢に逆転、ヨセでもヒカルの打ち回しは光り、結局ヒカルの1目半勝ちとなった。

ヒカルに負けた秀英は悔しさにポロポロと涙を流しながら、約束通りヒカルに名前を聞いてきた。
ヒカルは誇らしげに「進藤ヒカル、オレの名前は進藤ヒカル!!」と名乗った。

席亭は、これまで調子よく上に上ってきたにも関わらず、ちょっとの躓きからスランプに陥り、クラス落ちという惨めさから目を逸らし、悔しさから逃げ出していた秀英がヒカルとの対戦により、目が覚めたと感じ、秀英のこれからの成長を予感していた。

尹は、これまでのヒカルの手合い3局を見ていた。囲碁大会優勝を決めた見事な一局と、アキラに大敗した一局、そのためヒカルの実力を測りかねていたのだが、今回の見事な対局を見て、佐為が打った海王中との見事な碁も幻ではなく確かにヒカルが打ったものだと確信したとヒカルに話しかける。
尹もまたヒカルの名を心に刻むと言い、ヒカルは嬉しさ誇らしさで最高の気分だった。
尹が見ているのはもう佐為ではない、ヒカルなのだと喜ぶヒカルは、次はアキラの頭の中にいる佐為の存在もいつか自分が消してみせると決意を固め叫んだ。
しかし、ヒカルに取り憑いている佐為はヒカルの言葉に小さな胸騒ぎを感じ始めていた。

プロ試験本選

プロ試験本選前に、ヒカルの弱点を克服させた和谷に怒りをぶつける飯島。

プロ試験本選が始まった。本選前、和谷や伊角と碁会所で慣れたせいか、ヒカルは大人相手にも落ち着いて対応できるようになっていた。予選で会った苦手な椿に会っても落ち着いていられた。
初戦、ヒカルの相手は同じ院生の飯島。予選ではおどおどとしていたヒカルの落ち着きぶりに驚いていると、昼休憩時の時に、和谷と伊角がヒカルの大人に不慣れという弱点を克服させたことを知った。弱点を克服したヒカルは初戦に勝利し、その後の対局も落ち着いてのぞみ、連勝を続けた。
6連勝で迎えた7戦目、ヒカルの相手は苦手だった椿。しかし、椿戦でも落ち着いて対局したヒカルは勝利した。

ヒカルの成績を気にしていたアキラは、ヒカルが9戦目まで連勝していることを知った。今のヒカルの実力がどの程度なのか知りたいと思ったアキラは、ヒカルと同じくプロ試験を受けている越智の指導をすることにした。
越智の指導をすることで、アキラがヒカルの実力を知ろうとしていたことを知った越智は、アキラがヒカルを気にすることが気に触り、合格まで越智の指導をしたいと申し出るアキラを追い返した。
12戦目、ヒカルは体調不良で1敗、対する伊角は全勝で12戦目を迎えていた。
院生の中でトップクラスの実力を持つ伊角だが、ヒカルの成長の速さを目の当たりにしており、持ち時間を多く使い慎重な碁を打っていた。
昼休憩の時、アキラの指導を受け、ヒカルに注目するようになった越智は、ヒカルと伊角の対局を見て、伊角がヒカルを恐れて慎重になっているのではと伊角に話しかけた。
越智は、アキラに指導碁を受けたことを伊角に話し、アキラがヒカルのことばかり気にしていることを伊角に告げた。その話を聞いた伊角は、ヒカルが院生になりたての頃、アキラのライバルと言われていたことを思い出し、また、ヒカルが洪秀英との対局でみせた見事な打ち回しを思い出し、ヒカルに対し恐れを抱いてしまった。
午後の対局が始まり、伊角は越智に言われたことを気にしながらも、慎重に碁を打つ。伊角優勢で対局は進み、このまま行けばいいと思った時、伊角は石を当て間違い、打ち直しをした。指が離れた後の打ち直しは反則となる。
ヒカルは伊角が反則をしたのではないかと思うが、言っていいものか迷っていた。逆転を狙っている一手があるにはあるが、確実に勝利するためには伊角の反則を告げればいい。どうしても勝ちたいヒカルは迷い、後ろで見ていた佐為は相手の反則で勝った試合で、今後ヒカルが乱れるのではと危惧し、伊角に反則を指摘しようか迷うヒカルを窘めた。
今回の対局はもう負けと諦め、反則の指摘をして1勝もらおうと迷ったヒカルが伊角に声を掛けようとした瞬間、伊角の方が一瞬早く投了を告げた。伊角も自分の反則に気づき、言い出そうか言い出すまいかずっと迷っていたのだが、とうとう言い出せたのだ。
昼休憩の時、盤面を見て伊角の勝利を確信していた越智は、伊角が負けたことに驚き、2人の対局に何かがあったのだと悟った。

13戦目、伊角もヒカルも前日の後味の悪い碁で調子を崩し、敗戦。佐為はこうなることを恐れていいたのだ。せっかく伊角から1勝拾ったものの、後味の悪い勝ち方で調子を崩したヒカルは、12戦目の途中で終わってしまった対局を佐為と打ち直し、気持ちを立て直した。

14戦目、ヒカルは立ち直ったものの、伊角は気持ちを立て直すことができず、また、越智から辛辣な言葉をかけられ、格下相手の対局でも負けてしまった。
15戦目、伊角の相手は越智。これまで全勝している越智は、負けが続いている伊角に対し強気になり、対局前に伊角に暴言を吐きまくる。越智の暴言に怒りを覚えた伊角はかえって落ち着き、いつも通りの対局をすることができ、越智を下した。
越智との対局がきっかけで伊角は自分を取り戻し立ち直った。

17戦目、ヒカルは院生の本田に負け3敗となった。ヒカルを意識する越智は、ヒカルが負けたことを喜び、勝者の本田に話しかけた。「どうだったの?今日の一局は」と問いかけてみると、本田は青ざめた顔で「…やっと勝った…いや、負けたと思ってた。数えたら半目だけ残ってたんだ」と言い、とても勝った気がしないと帰っていった。
越智は、ヒカルの存在に脅威を感じ始めていた。危機感を持った越智はアキラを呼び、指導を受けることになった。アキラに対しても居丈高な態度を取る越智に対しアキラは、プロ試験が終わるまでの3週間、指導をしている時だけは先生と呼ぶようにと言った。そして、対ヒカル戦に関しては役に立てると語り、ヒカルと洪秀英との一局を越智に見せた。アキラは海王中の尹からこの対局を教えられ、今のヒカルの実力を知ったのだ。越智はその対局を見て、侮っていたヒカルの実力の高さを知り3週間でヒカルに勝てるようになるには短過ぎると言い、アキラの教えを請うことになった。

21戦目を終え、越智は20勝1敗。和谷19勝2敗。ヒカル、伊角が18勝3敗。本田17勝4敗と上位5人は揺るがず、ヒカルが苦手だった椿は合格を諦め、プロになるのはヒカルに任せた、とヒカルに気持ちを託した。

22戦目、伊角が本田に負け、伊角と本田の勝率が並んだ。
25戦目を終え、越智の合格が決まった。残る2戦負けても越智の合格は変わらない。
26戦目、ヒカルは和谷と対局する。師匠の森下に「プロに来い!」と激励をもらった和谷は優勢で対局を進めている。ヒカルの黒石を押さえ込めば勝てる、黒の生きる道はない、と和谷は勝利を確信した。
冷静に盤面を見ていた佐為は、気づきにくく難しいが黒の生きる道はあると気づいていた。問題はヒカルがそれに気づくかどうか。長考し黒の生きる道を考えるがヒカルには見つけることができない。しかし、もし佐為だったら、と考えてみたヒカルは、1本の生きる道を見つけることができた。黒は蘇り和谷は自身の負けを認めた。

最終戦、ヒカルは越智と対戦する。越智はアキラの指導を受け自信を持ってヒカルに望む。

越智はアキラに指導を受け、強くなったとヒカルを挑発する。ヒカルはその言葉を聞いて、アキラは自分を気にかけているために越智の指導をしたのではと考え、越智にアキラはヒカルのことを何か言っていたかと尋ねてみた。しかし越智は、アキラはヒカルのことなんか全く気にしていないと嘘をつくのだが、ヒカルは越智の失言から話の矛盾に気づき、やはりアキラは自分を気にしプロになるのを待っているのだと確信した。

プロ試験最終戦、合格するのは3人。越智は既に合格を決め、ヒカルと和谷が3敗。伊角は4敗。伊角が負ければ合格はヒカルと和谷になるが、ヒカルと和谷のどちらかが負けたら伊角とのプレーオフとなる。
ヒカルの相手は強豪越智。和谷の相手は和谷が苦手とするフク。伊角の相手は順当にいけば負けるはずのない相手。
最後の合格者が決まる最終戦が始まった。

ヒカルはアキラが越智を通じて自分を見ていると確信し、気合を入れた。対局はヒカルの甘い一手を見逃さなかった越智が優勢で進んでいたのだが、ヒカルも越智の隙を見逃さず徐々に追い上げる。

伊角は早々に勝負を決めて、ヒカルと和谷の対局を待っていた。どちらかが負ければプレーオフ。どちらも勝てば伊角は不合格となる。落ち着かない気持ちを持て余しながら伊角は棋院の外で2人の対局が終わるのを待っていた。
やがて雨が降り出し、伊角が棋院の中に戻ると対局場では和谷が嬉しそうに涙を流す姿があった。和谷がフクに勝利し、2人目の合格者となったのだ。
ヒカルの対局を待つ伊角だが、対局場がざわざわしても誰も自分を呼びに来ないことに不安を感じていた。そしてたまたま現れたプロ試験受験生が伊角の顔を見て、気まずそうにしたのを見て、ヒカルの勝利を知った。

アキラは棋院でプロ試験の結果を知り、ヒカルと越智の対局を見たいと思い越智の家を訪ねるのだが負けた対局は見せたくないと越智に門前払いを受けてしまった。
ヒカルの実力を知りたいと思ったアキラだったが、ヒカルがプロになったことにより、自分の目でヒカルの力を確かめようとヒカルを待ち受ける。

ようやく長かったプロ試験が終わり、合格を決めたヒカルだが、楽しそうに碁を打ち、大会について話す葉瀬中囲碁部の姿を見ると一抹の寂しさを感じてしまう。
それでも、ヒカルは寂しさを振り切りアキラのいるプロの世界に一歩足を踏み入れた。

新初段シリーズ

新初段シリーズで、ヒカルの背後から凄まじい威圧感を感じる塔矢行洋

4月からプロとして活動を始めるヒカルは、これから対戦する強豪たちを思い浮かべ、期待で胸が高鳴っていた。
一方で佐為は、これからプロとして戦うのはヒカルで、自分ではないこと、皆がヒカルに期待し、かつて佐為が打った一局でさえも今のヒカルだと思われ、自分の存在が希薄になるような不安に苛まれていた。ヒカルはヒカルで、佐為には無限の時間があるのだからと自分のことを優先させていた。
以前のように佐為に打たせたのでは、最近ようやく払拭できてきた佐為の影を背負わなければならないとヒカルは思っていた。

プロとして活動する前、トッププロと対戦する新初段シリーズ。
ヒカルの相手は、アキラの父、塔矢行洋に決まった。これまで多忙を理由に新初段シリーズの相手を断っていたが、以前からヒカルの存在を気にしていたため、ヒカルの相手をかってでたのだ。
その知らせを聞いたヒカルは喜び、昨年のアキラと座間王座の戦いのように、自分の実力を存分に発揮し、アキラに今の自分を見てもらおうと気勢をあげた。しかし、佐為が「私に打たせてください」と言い始めた。
棋譜も残り雑誌にも載ってしまうこの1戦。佐為の力を見せてしまうわけにはいかない。不満そうな佐為だったが、ヒカルは「3人目のヤツに取りついてから打たせてもらえよ」と佐為の言葉を一蹴した。

新初段シリーズ、ヒカルは塔矢行洋から自分が指名したと聞かされ、「キミの力を見せてもらおう」と言われ、緊張した面持ちで幽玄の間に入った。
すると、佐為が塔矢行洋に対戦するように、ヒカルが座るはずの座についてしまった。ヒカル以外に佐為は見えず、しかし、ヒカルは佐為を押しのけて座ることができない。いつまでも立ち尽くすヒカルを周囲は不審がる。ヒカルは佐為がずっと塔矢行洋と対戦したがっていたことも知っており、複雑な心境になってしまった。

ちょっと座っただけ、と座から立ち上がった佐為だが、悲しそうにヒカルに背を向けて、ヒカルが頭の中で話しかけても返事をしない。
佐為の様子に業を煮やしたヒカルは、佐為にハンデを背負わせて戦わせてみてはどうかと考えた。新初段シリーズは、トッププロとデビュー前の新人との戦いなので、逆コミ5目半という新人に有利なルールとなっている。これで普通に打たせたら、佐為が絶対に勝ってしまう。そんなことになったらまたヒカルは注目を浴び、自分の力で打つことができなくなってしまう。
そこで、佐為に15目のハンデを背負わせて戦えばいいのではないかと思いついたのだ。佐為のそれでもいいという真剣な様子を見て、ヒカルは佐為に対局を任せることにした。

記者室では、桑原本因坊や緒方九段、塔矢アキラといった実力者が集まり、対局を見守っていた。こんなトッププロ達に注目されるヒカルに、観戦に来ていた和谷や越智は驚いた。桑原と緒方はどちらが勝つか賭けようと勝負を始め、対局を観戦していた。

佐為の初手、20分の長考の末、ようやく第一手が打たれた。ヒカルと佐為の中だけで決めた15目のハンデのため、佐為は周りから見れば無茶な手ばかりを打っている。
対戦相手の塔矢行洋は、荒れた碁に見えるこの対局に何かがあるのでは、と感じ、さらに14歳であるヒカルの背後から威圧感のようなものを感じていた。

結果は、佐為が投了し、対局は塔矢行洋の勝利で終わった。対局後、塔矢行洋は「…何のハンデもナシに打ちたかったよ」と声をかけた。ヒカルが何かを隠し対局に望んだことを塔矢行洋は見抜き、「この次打つ時は互先で」と語った。
記者室で対局を見ていた桑原も、ヒカルがハンデを背負って対局していたことを見ぬき、一見荒れた碁を打ったヒカルの評価を変えることはなかった。

新初段シリーズを終えたヒカルは、自室で今日の対戦のことを振り返っていた。いつかは互先で塔矢行洋と打たせてやる、と佐為に言うが、佐為にそれはいつなのだと問い詰められ、佐為を詰ってしまう。佐為はヒカルばかり成長し、自分はヒカル以外と打てないことに落ち込み、その様子を見ていたヒカルは、佐為の気晴らしのために囲碁イベントに佐為を連れて行くことにした。

イベント会場につくと、そこは人と熱気でいっぱいだった。販売コーナーに行ってみると碁盤なども売っている。佐為は、本かやと表示された碁盤が偽物だと見ぬき、ヒカルに指摘させるのだが、ヒカルでは子供と侮られ相手にしてもらえない。
さらに、本因坊秀策の署名がされている600万円の碁盤が、虎次郎(本因坊秀策の幼名)の手によるものではないと見ぬき、指摘した。
これには御器曽プロが関わって詐欺を働いていていたため、その場はうやむやになってしまった。
怒りが収まらない佐為が会場を見回っていると、先ほど詐欺を働いていた御器曽プロが相手をいたぶるような指導碁を打っていた。相手は戦意を喪失し、早々に投了しようとしているが佐為はまだダメではないと励ます。ヒカルも声をかけるが、やる気をなくした相手は席を立ち、代わりにヒカルが打てと席を譲った。

御器曽は、先程から邪魔ばかりするヒカルに腹を立て、逆転できなかったら会場から出て行けと言い、虎次郎の名を汚された佐為は怒り、逆転できたら秀策の署名入りの碁盤を引っ込めろと条件を出し勝負が始まった。

他の会場では倉田プロが指導碁をしていた。倉田の周りには倉田のファンが集まり、楽しそうに会話をしていた。先ほどヒカルに席を譲った人物は、自分も倉田プロの指導碁が良かったと、御器曽プロの指導碁で散々叩かれたことを愚痴った。後ろで見ていた子供がまだ逆転できると言っていた、と話しているところに、ヒカルが逆転したと情報が入った。
興味を持った倉田は御器曽の指導碁のところに行き、終局した盤面を覗き込もうとした。すると、御器曽は倉田から隠すように盤面を崩し、逃げるように去っていった。
ヒカルは御器曽に約束を忘れるなと声をかけたが、御器曽は振り返りもせずに逃げてしまった。

ヒカルから話を聞いた倉田は、本かやと表示されている偽かやの碁盤を取り下げさせ、さらに秀策の碁盤も引っ込めさせた。

倉田のことを知らないヒカルに驚きつつ、倉田はヒカルのことを本因坊秀作の署名鑑定士として覚えると言って会場に戻っていった。

sai vs toya koyo

ネットの中のsaiと塔矢行洋の対決

ヒカルのプロとしての生活が始まった。昇段のかかる「大手合」を年10局程、その他、夏になるとタイトル戦の予選も始まり、予選を勝ち進めば忙しい毎日を送ることになる。
とうとう、アキラと同じ世界にたどり着いたヒカルは、新入段免状授与式で会ったアキラに嬉しくて話しかけようとした。しかし、アキラはヒカルに目を向けることなくヒカルの言葉を無視し立ち去った。
アキラは、今年度の大手合初戦の相手がヒカルだと知り、意識していたのだ。
ヒカルも新入段研修でデビュー戦の相手がアキラと知り、気合を入れ直した。
4月4日、アキラとの大手合の日、ヒカルはプレッシャーを感じながらも、アキラとの対戦を楽しみにしていた。碁笥を持つヒカルの手が武者震いでカタカタと震えている。ヒカルとアキラの中学囲碁大会の時に、アキラの手もカタカタと震えていたのをヒカルは思い出した。その時のアキラも今のヒカルと同じ気持ちだったのだと、ヒカルは理解した。

大手合が始まる時間寸前になってもアキラの姿はない。ヒカルは碁盤の前で待つが、時間が始まってもアキラは姿を見せなかった。しばらくすると、棋院の人がヒカルを呼びに来た。呼ばれて行ってみると、アキラの父・塔矢行洋が心筋梗塞で倒れ、そのためアキラは手合いを欠席するということを聞いた。

知らせを聞いた3日後、ヒカルは塔矢行洋のお見舞いに病院を訪れた。病室には回復した塔矢行洋と囲碁サロンの市河や常連の広瀬、緒方九段がいた。
そこでの会話で、入院中の手慰みにと緒方が行洋にネット碁を勧めたことをヒカルは知った。
ヒカルがネット碁に反応したのを見た市河は、やはりヒカルはネット碁をしていたのだと呟き、緒方はヒカルがネット碁をしていた時期がsaiが出現していた時期と同じことに気づき、不審に思った。
見舞い客が去り、病室にはヒカルと行洋の2人だけになった。ヒカルは行洋にsaiとネット碁で対局して欲しいと熱心に頼み込んだ。名前も明かさず、素性もわからないsaiとの対局に行洋は難色を示すが、ヒカルの必死な様子にほだされ、対局を了承した。しかし、十段防衛戦の合間の気晴らしと行洋が言ったため、ヒカルはつい、本気で打ってくれ、負けても真剣じゃなかったからなどと言い訳しないで欲しいと、言い募ってしまった。
行洋はヒカルの言葉を聞き、プライドを刺激され、saiに負けたら引退すると宣言した。そんなことは望んでいないとヒカルは必死に引退宣言を取り消して貰えるように懇願するのだが、行洋は自分の言葉を取り消しはしなかった。

十段戦第4局は地方で行われる。まだ入院中の行洋は病院先から妻を伴い対局場に向かった。行洋が心筋梗塞で倒れたため不戦敗となった1局を取り返し、行洋は緒方を下し2勝2敗となった。十段戦の勝敗は最終第5局に持ち越された。

行洋はこの緊張感を保ったままsaiとの戦いに臨みたいと、のんびりしたいとぼやく妻を連れてすぐに入院先の病院に戻った。

saiとの対局の前日、行洋はsaiとの対局に集中したいため、対局当日は妻子も面会客も全て断り、面会謝絶にして欲しいと医師に頼んだ。
対局当日、アキラはいつもは病院へ行っているはずの母が家にいることに不思議に思い、尋ねてみると、行洋がネット碁に集中するため来なくていいと言われたと母は言う。
始めは乗り気でなかった行洋がネット碁にのめり込むことを不思議に思うアキラだが、その日は若手棋士の研究会があるため、家を出た。

行洋とsaiの約束の時間が来た。ヒカルはネットカフェで行洋のログインを待っていた。
toya koyoの名を見つけたヒカルは、対局を申し込んだ。
コミは5目半の互先。持ち時間は3時間、行洋が先番で対局は始まった。

ネットを通じて伝わる行洋の気迫を感じたヒカルは、5冠の棋士である行洋とsaiとの対局を目前で見られることに高揚した。
行洋は、saiの打ち筋を見てsaiは只のアマチュアではなく、また自分の知る棋士でもないと直感していた。自分が負けたら引退するという言葉を撤回する気はない、むしろ勝ったら名を名乗らせるという気概を持って対局に臨んだ。

その頃、ネットの中では、昨年の夏ネット界で話題になっていたsaiと塔矢行洋が対局していると気づかれ、世界各国で視聴者の数がすごい勢いで増えていた。
アキラも若手研究会の場で、今頃、父がネットをしていると話題にし、試しにネットを繋いでみると、父がsaiと対戦していることを知り、愕然とした。
なぜ、行洋がsaiと打っているのか、偶然なのか、誰かがセッティングしたのか、アキラはヒカルが父の見舞い来たことを思い出していた。
緒方も自宅で行洋とsaiの碁を観戦していたが、ヒカルがsaiの知り合いで、この対局をセッティングしたのではと考えていた。

対局は進み、僅かに黒(行洋)有利だが、佐為の一手により形成は逆転、残るは細かいヨセを残すのみとなった。終局まで読みきった行洋は自分の半目負けが分かり、投了した。

ネット上では行洋に勝ったsaiとは何者なのか、議論が高まり、そしてアキラは、なんの答えにもなっていないが、saiとは、昔のヒカルなのだと結論づけますます疑問が膨らむばかりとなってしまった。

佐為はこの一局に満足していた。行洋の研ぎ澄まされた一手一手に佐為は歓喜に震え、行洋に十二分に応えられた自分が誇らしいと感動していた。
佐為がヒカルに丁寧に礼を言うのだが、ヒカルは盤面に釘付けで微動だにしない。おもむろに口を開いたヒカルは、数手前の行洋の一手について、行洋が切断に備えた一手を別の場所に打っていればその後の展開は黒有利となり佐為は負けていたと指摘した。
「どう!?佐為」と誇らしげに言うヒカルの顔を見た佐為は、この一局をヒカルに見せるために自分は千年の時を長らえていたのだ、と悟った。
そして、ヒカルにこの対局を見せ、役目を終えた自分はもうすぐ消えてしまうということにも気づいてしまった。

翌日、行洋の「負けたら引退する」という言葉を思い出したヒカルは行洋の入院先を訪ねた。行洋はsaiはヒカルなのかと問い、新初段シリーズで対戦した時の気迫をネット上でも感じたと言う。
慌てて否定するヒカルに行洋はsaiともう一度打たせてくれと懇願した。名を明かせとは言わない、ネットでいいと行洋は言い募る。ヒカルはネットならばsaiと対戦させられると思い、再戦させる代わりに引退を諦めてくれと行洋に頼み込んだ。

この会話を扉の外で緒方が聞いており、それに気づいたヒカルが慌てて逃げようとするのだが緒方に掴まり、「オレにも打たせろ」と迫られてしまった。さらにそこにアキラが現れたためヒカルは緒方の隙を突いて逃げ出した。
緒方はsaiとヒカルの関係を行洋に問い質すが、行洋はヒカルとの約束を守りはぐらかした。

緒方から逃げ切ったヒカルは一息つきながら、佐為に笑顔で行洋とはまた打たせてあげられると話しかけていた。しかし、神の意思を悟り自分の時間が残り僅かだと悟った佐為にはヒカルの言葉はただ虚しく聞こえるばかりだった。

和谷やヒカルが参加している森下九段の研究会で、ネットでのsaiと行洋の検討をしていた時、ヒカルは自分が見つけた行洋が勝利するための一手を披露し、その場で賞賛を受けた。
佐為は、周囲がヒカルの実力に気づき、期待し始めていること、自分には無い未来がヒカルに輝いていることに、ヒカルを嫉妬と羨望の気持ちでいっぱいになってしまっていた。

さよなら

佐為が消える直前、佐為は自分の役目が終わったことを悟った。

長野で行われている十段戦最終局、行洋の碁はsaiとの対戦を経て変化していた。タイトル戦最終局であるにも関わらず新手を次々と繰り出す面白い一手を打つようになった。結果は敗北し、十段位を防衛できず弟子の緒方に譲ることになったが、碁が若返りまだまだ変化が期待できるとプロ棋士・倉田は評価していた。
たまたまラーメン屋で倉田に会い、行洋の十段戦の評価や息子であるアキラと名人戦の2次予選で対戦し勝利した話を聞いたヒカルは、今自分がどれほどの実力なのか、試してみようと倉田に勝負を申し込んだ。

入った碁会所で、テーブルに置かれた碁笥を手に取ると、白石と黒石ではなく白石だけだった。席亭が誤っておいてしまったと言うが、倉田はそれを面白いとしてヒカルに一色碁を打とうと言い出した。

ヒカルは初めての体験に怯みながら一色碁を打ち始めた。盤面が白一色に変わっていく。碁会所で打っていた客も盤面を覗き込み一色碁を目で追いかけるが、次第に追える者が少なくなってきた。
ヒカル優勢で対局は進むが、ヒカルが打った甘い一手で倉田の碁は息を吹き返した。真剣に打ち合っていた倉田だが、今対面で打ち合っている相手は、タイトルを持っている棋士でもなく、一色碁が初めての今年プロになったばかりの新人であることに気づいた。その事実に、倉田は下から追いかけてくるのは塔矢アキラ一人だけでなく、ヒカルもまたその一人だと強く感じさせられた。
他のことに気を取られた倉田が、どこまで進んだかわからなくなり、内心動揺していると、ヒカルが投了を宣言した。真っ白な盤面上で自分の甘さ、失敗を検討しているヒカルに倉田は色紙に「倉」の字だけを書いたサインを渡した。公式戦で倉田相手に勝利したら続きを書いてやるとヒカルに言った。
倉田がヒカルを1人の棋士として認めた瞬間だった。

その時、碁会所のテレビが、塔矢行洋引退の報を知らせた。

碁界は騒然となり、行洋が持っていた4冠はどうするのか、スポンサーはどうなるのかと混乱に陥った。
多くの棋士が塔矢家に訪れ行洋と語り、碁を打ち、帰っていく。
周囲は、行洋引退に心配するが、行洋自身は、しがらみからの解放と、タイトル戦をするための長期移動がなくなりむしろすっきりとしていた。
妻やアキラも、父の好きにさせようと静観している。

数日後、アキラは日本棋院中部総本部で対局をし、ヒカルは東京で対局を迎える。ヒカルにとって、プロ初手合いとなるはずだったアキラとの対戦が行洋入院のためアキラが欠席したため、この日がヒカルのプロ初手合いとなる。3段相手の対局でもヒカルは落ち着いて碁を打ち、対局に勝利した。佐為はヒカルの成長に驚くが、その夜の自宅でのヒカルとの検討でヒカルの甘い手を指摘した。ヒカルの慢心を打ち砕くとともに、八つ当たりのように「ヒカルなんか私に勝てないくせに」と言ってしまった。
ヒカルは自分がいなければ碁石すら持てないくせに、と言い返し2人は喧嘩になってしまった。

翌日、ヒカルの祖父の家の蔵に泥棒が入ったとの連絡が来た。
ヒカルは佐為にせがまれて、佐為が棲んでいた碁盤が無事か確かめに行くことにした。蔵に碁盤はあったものの、碁盤に染み付いていたシミが薄くなっていることにヒカルと佐為は気づいた。佐為はもう自分に残された時間は僅かだと悟り、のんびり祖父と碁を打つというヒカルに「私はもうじき消えてしまうんです」と叫んだ。
しかしヒカルは、最近カリカリしていた佐為のわがままだと決めつけ、佐為の言葉に耳を傾けなかった。

日本棋院主催の囲碁ゼミナールでヒカルは指導碁を担当することになった。プロ棋士として初めて泊まりでイベントに参加する。
公開早碁対決では緒方が参加する。saiとの関係を問われたくないヒカルは、緒方とはなるべく接触しないようにと緒方の姿を見るとさりげなく逃げ回っていた。

夜、ヒカルが指導碁をしていると、ゼミナール参加者に誘われしたたかに酔った緒方が現れた。「saiと打たせろ」という緒方にsaiとの関係を否定し断るのだが、佐為は、これだけ酔っていたらただの戯言にしかならないから、打っても大丈夫だと勝負を受けることにした。
ヒカルは、緒方に自分と打って欲しいと頼みつつ、緒方の十段位祝いに佐為と打たせてやろうと考えていた。
緒方は、ヒカルで我慢すると言いながらその対決を受けた。

月明かりの中、佐為と緒方の対局は始まった。したたかに酔ってはいるものの緒方はヒカル(佐為)の強さを感じていた。
緒方はヒカルの練達な打ち筋、鋭い攻撃を見て、この対戦がまるでsaiと打ったかのような錯覚を感じていた。酔っていた緒方は簡単な石の生き死にの見極めを間違えてしまい、ヒカル(佐為)の勝利となった。
昨夜のことを深く突っ込まれたくないヒカルは、早朝に東京に戻った。
へとへとになって自宅に戻ったヒカルに、佐為は一局打とうと誘い、疲れているヒカルは乗り気はしなかったものの、あくびをしながら佐為との対局を始めた。

佐為はもう自分は消えると悟り、ヒカルと向き合っていた。未来のあるヒカルを羨み、なぜ自分が消えなければならないのかと嘆いていた。虎次郎とも別れたくなかった、ヒカルとも別れたくない、しかし役目を終えた佐為はもうすぐ消えるのだと自分の時の終を悟り、静かにその時を待っていた。
千年前に命を絶ち、碁盤に潜んでいた佐為。140年前、佐為は虎次郎と出会い虎次郎の体を借りて本因坊秀策として碁を打ち続けた。
虎次郎が佐為のために存在したというのならば、佐為はヒカルの為に存在した。ならばヒカルもまた誰かの為に存在しているのかもしれない。これから先、千年二千年と積み重なり、神の一手に続く遠い道のりが続いていく。ヒカルに塔矢行洋との対局を見せたことで、佐為は自分の役目は終わったと、静かに消えていった。

ヒカルは、ぼんやりと盤面を見つめていたが、佐為の番になっても佐為が打たないことに苛立ち顔を上げると、そこにいるはずの佐為の姿はどこにも見えなくなっていた。

佐為を求めて

佐為を失い、佐為の偉大さが分かったヒカル。自分は打たないから佐為を戻してと慟哭する。

2年以上ともに過ごしたが、佐為がヒカルから離れることはなかった。しかし今、家中どこを探しても佐為の姿はない。ヒカルは佐為が棲んでいた碁盤の元へ走ると、そこに佐為の姿はなく、碁盤にあったシミがきれいに消えていた。ヒカルは数日前蔵に来た時、佐為が自分はもうじき消えると叫んでいたことを思い出した。
佐為が自分に何も言わずに消えるなんて、そんなことは嫌だと思ったヒカルは、佐為が虎次郎と過ごした因島に行き、佐為を探すことにした。
途中、偶然ヒカルが院生の頃通った碁会所の常連・河合に出会い、因島に同行してもらえることになった。
石切神社・秀作記念館、竹原の宝泉寺、糸崎八幡宮、慈観寺、本因坊秀策に縁のある場所に行ってみるのだが、どこにも佐為の姿はない。東京巣鴨の本妙寺にある秀策の墓にも佐為はいなかった。最後に棋院に行ったヒカルは、そこでお化けが出そうなところと聞いて、古い棋譜が置いてある資料室に行ってみた。
そこで、本因坊秀策が打った棋譜を見たヒカルは、佐為は天才だったのだと改めて気づいた。
だから、虎次郎は自分では打たず、佐為に全てを打たせていたのだ。ヒカルは自分が打ちたいばかりに、佐為に満足に打たせずにいたことを後悔した。
「佐為に打たせてやればよかったんだ、はじめっから…。誰だってそう言う。オレなんかが打つより佐為に打たせた方がよかった!全部!全部!全部!オレなんかいらねェ!もう打ちたいって言わねェよ!だから。神さま!お願いだ!はじめにもどして!アイツと会った一番はじめに時間を戻して!!」とヒカルは嘆いた。
ヒカルの悲痛な叫びが資料室に響くが、誰からの答えもなくヒカルはただ佐為を失った悲しみと後悔に泣くだけしかできなかった。

2日後、ヒカルの手合いの日。日本棋院にヒカルが来ないことを気にかける和谷とアキラの姿があるが、ヒカルがその日棋院に現れることはなかった。

もう打たない

自分はもう打たないから戻ってこいと佐為に念じて手合いをサボるヒカル

佐為を失ったヒカルは、もう打たないと決めて手合いも院生と若手棋士のトーナメント戦である若獅子戦にも行かず、ずっとサボっていた。何事にもやる気がなくなり日々をぼんやりと無気力に過ごすヒカル。
アキラは手合いに来ないヒカルを心配し、葉瀬中までやって来た。図書室で無気力に顔を伏せているヒカルの横に座ったアキラは、ヒカルになぜ若獅子戦に来なかったのかと問いただす。
ヒカルは「もう打たない」と話した。「ふざけるな」と激昂するアキラだったが、ヒカルは「ごめん」と言い逃げ出した。

同じ研究会に所属する和谷もヒカルを心配し会いに来て、同期の越智や今年プロ試験を受験する仲間たちの頑張りを話すのだが、ヒカルはそっぽを向いたまま和谷の話を聞かない。院生仲間だった伊角は中国に渡り修行をしていると話した和谷は、ヒカルに伊角がプロになった時、サボっていたと言えるのか、恥ずかしくないのかと畳み掛ける。「碁は打ちてーんだろ!?打ちてーよなっ!?」と言う和谷からヒカルは耳を塞ぎながら逃げ出した。

その頃伊角は、中国で腕を磨いていた。
所属する九星会の先輩たちに誘われて中国のプロの中から選ばれた精鋭が暮らす中国棋院で研修をしていた。
九星会の先輩たちが帰国する日、伊角は自分よりも小さな趙に負けたことに納得できず、もう一度対局したいともう一日残ることに決めた。しかし、趙は地方での対局があるため数日は戻らないということで、趙が戻るまでの数日、伊角は中国棋院の好意で研修を続けられることになった。

棋院には和谷に良く似た楽平という10代前半の小さな子供から30歳位までのプロが住んでおり、訓練室でリーグ戦をしてしのぎを削り合っている。
伊角もそこに混ぜてもらい実力をつけていくことになった。

言葉が通じる人がほとんどおらず、気を張る伊角には、和谷に良く似た小さな楽平の姿を見る時だけが和める時間だった。

しかし、楽平と対戦した伊角は、和谷に似た姿で幼い楽平の実力を見誤り、楽平に負けてしまった。楽平に馬鹿にしたように笑われ、仲間たちの所に行った楽平が自分のことを笑っている気がして、伊角は気が気ではない。リーグ戦に参加している人々の口から断片的に自分の名前だけ聞き取れ、何を言われているのか気になりストレスが溜まる。訓練室の対戦を観戦していても、中国棋院の精鋭たちの鋭い一手や意見に口をはさめず、段々と伊角は自信がなくなってきていた。

そんな時、日本語を流暢に操る楊海が伊角に話しかけてきた。好意的に話しかけ、ホテル暮らしをしているなら滞在中自分の部屋に住んでもいいと言う楊海に対し、卑屈になっていた伊角はそっけない態度で楊海の申し出を拒絶した。
日本から父親が電話をかけてきて、伊角は自分が何の連絡もなしに、中国に留まっていたことに気づいた。ここで自信を失わず逆に自信をつけることができれば、と2ヶ月後のプロ試験まで中国棋院で修行を続けると、伊角は父に話すのだった。

ホテルを引き払い、楊海の部屋を訪れた伊角は、部屋に置いてもらえるように頼み込んだ。楽平に負けて笑われたという伊角に対し楊海は伊角の実力を見ると言い、対局を始めた。その後、伊角の実力を認めた楊海は、伊角を鍛えていく。
楊海は、楽平と同じ雲南省出身のため、目をかけていたのだが、まだ幼い楽平は遊んでばかりでなかなか碁の勉強をしない。
同年代の趙が棋戦から帰ってくると、楽平は早速趙と遊ぼうとしている。中国の棋戦は日本よりもハードなため、10代でプロになったとしても遊んでばかりいたらすぐに成績を落とし、中国棋院を追い出されて地方に戻されてしまう。楊海は、同郷の楽平がそんなことにならないように、伊角を利用して楽平にやる気を出させようとしていた。
趙を連れて遊びに行こうとしている楽平に1週間後伊角と対戦して負けたら真面目に訓練に参加するようにと楊海は言い、一度伊角に勝って、伊角が弱いと思っている楽平は、自分が勝ったら遊ぼうと何しようと何も言うなと楊海に言い、その勝負を受けた。

伊角の実力は高く、楽平に負けるとは思えず、プロ試験だって受かる実力を持っていると楊海は感じていた。昨年のプロ試験、何があったのかと問う楊海に、伊角は人の言動に心が乱れ、対局中に大きなミスをして自分を失い、立ち直るのに時間が掛かり3連敗したことが響いてプロ試験に落ちたことを話した。
楊海は、伊角のことを心のコントロールが下手なのだと指摘し、心のコントロールは性格ではなく習得できる技術なのだと教えた。
伊角は楊海の言葉を聞き、意識が変わり、落ち着いて対局に取り組めるようになっていった。
1週間後、楽平との戦いで伊角は勝利し、それがきっかけで落ち着いて対局できるようになり、本来の実力をいつでも発揮できるようになってきていた。そして2か月後、伊角は自信を持って日本に帰国することができるようになっていた。

その頃ヒカルはプロを辞めようと考えていた。
葉瀬中のあかりや三谷、碁会所でヒカルの成長を見守っていた大人たちも、ヒカルが手合いに出ず、不戦敗が続いていることに気を揉んでいた。

囲碁部の大会が行なわれる時期が来た。三谷やあかりら3年は最後の大会になる。懐かしい気持ちで囲碁大会を見学していたヒカルはかつて囲碁部員として大会に臨んでいたこと、その頃の気持ちなどを思い出していた。佐為を失った今、打ちたいと思ってはいけないと自分を戒め、もし自分が碁を打ってしまったら佐為は二度と戻ってこないような気がして、会場から逃げ出すヒカルだった。

この一局から

自分の碁の中に佐為の存在を見つけたヒカル

keeper
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@keeper

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