ニル・アドミラリの天秤(ニルアド)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ニル・アドミラリの天秤』とは、女性向け恋愛アドベンチャーゲーム『ニル・アドミラリの天秤 帝都幻惑綺譚』原作のアニメである。大正25年の帝都で、人を死に至らしめる書物を巡る謎に、ヒロイン久世ツグミが翻弄されながらも立ち向かう姿を描く。

『ニル・アドミラリの天秤』の概要

『ニル・アドミラリの天秤』とは、2018年4月期のアニメ、およびオトメイト(アイディアファクトリー内の女性向けブランド)原案の女性向け恋愛アドベンチャーゲームのシリーズ名である。アニメは、2016年発売の『ニル・アドミラリの天秤 帝都幻惑綺譚』を原作としている。アニメは全12回。
アニメ制作はゼロツー(代表作は『DIVE!!』『奴隷区 The Animation』など)、監督はたかたまさひろ(代表作は『Super Seisyun Brothers -超青春姉弟s-』など)、シリーズ構成・脚本は金春智子(『かくりよの宿飯』『明日のナージャ』など)が担当している。

大正25年、帝都では稀モノの存在が人心を惑わしていた。子爵令嬢・久世ツグミの、平民との縁談が整いかけていた矢先、弟が稀モノの被害者となる。調査に訪れた帝国図書情報資産管理局(通称フクロウ)職員の話で、ツグミは、人を死に追いこむ稀モノという書物の存在を知る。弟所有の稀モノに、炎のような光を見たツグミは、特別な能力者としてフクロウにスカウトされる。

架空の都市・帝都の物語とされ、地名は「ウエノ」「ヨコハマ」など片仮名表記されている。ただし、実存する歌謡(『ゴンドラの歌』等)がそのまま使われ、関東大震災を連想させる帝都震災が起こったという設定があり、世相が似ている。以上のことから、現実世界から派生した、虚構性の大きいパラレルワールドとも考えられる。

『ニル・アドミラリの天秤』のあらすじ・ストーリー

稀モノとの遭遇とフクロウ

久世(くぜ)子爵家の令嬢・ツグミに、海運で財を成した平民の息子との縁組が持ちこまれた。弟のヒタキは「ツグミの結婚は身売りに等しい」と猛反対し、部屋に閉じこもってしまった。その後ヒタキは突如、焼身自殺を図る。一命をとりとめたヒタキは帝都大学付属病院に入院することとなった。
ショックを受けるツグミの前に、帝国図書館の職員である朱鷺宮栞(ときみや しおり)、尾崎 隼人(おざき はやと)、鴻上 滉(こうがみ あきら)が現れた。彼らはヒタキが自殺を図った原因が稀モノ(まれもの)という、情念や記憶の宿る特殊な本だという。にわかには信じられないツグミは、問題とされる本を包む謎の光・「アウラ」を見るのだった。

アウラが見える能力を役立てるため、ツグミは帝国図書情報資産管理局、通称フクロウに入った。それまで屋敷に閉じこもっていたツグミは、はじめてのことばかりで戸惑う。尾崎たちに連れられてはじめての巡回に出ても、一冊も稀モノを見つけることができない。落ち込むツグミだったが、徐々に仕事にも慣れ、フクロウのメンバーと次第に打ち解けていくのだった。

カグツチとカラス

フクロウのメンバーがある日カフェで食事をしていると、暴漢に医学書を燃やされている医学生・鷺澤 累(さぎさわ るい)と遭遇する。その後街で累と再会したツグミは彼に心を開き、たずねられるまま、自分の身の上やフクロウとして知り得た情報を教える。
ツグミは累を襲ったのがカグツチと名乗る集団であることを知る。カグツチは市民から怪しい本を奪ってその場で燃やすという行動をしていた。また一方ではカラスという、稀モノを生み出す一派が暗躍していた。カグツチもカラスも、市井を脅かす存在である。フクロウと警視庁は、書物と市民生活を守るために、これまで以上に連携を強固にすることとなった。

そんな折鵜飼首相の子息・鵜飼 昌吾(うかい しょうご)が、ヒタキと同じ日に稀モノの影響で自殺未遂を謀り、フクロウと共同生活をすることになった。しかしフクロウの面々の配慮も通じず、昌吾は傲慢な態度で周囲を見下し、特にツグミに風当りが強い。
ある日、昌吾にダンスホール「ナハティガル」の招待状が届く。ツグミには、昌吾の護衛を兼ねての潜入捜査の指示が下されるのだった。調査を進めるうちに「ナハティガル」のオーナーである四木沼 喬(しぎぬま たかし)がカラスの首謀者ではないかということが判明した。

翡翠の秘密

ライラックを口に押しこまれた女性の死体のそばに、汀紫鶴(みぎわ しづる)の著作『ライラック恋夜』が置かれるという事件が、立て続けに起こった。世情を慮って行動を慎むように隼人たちが忠告しても、紫鶴はどこ吹く風で出歩いている。
紫鶴のファンであるヒタキは、連続猟奇事件に酷似した小説があると、姉のツグミに話す。件の小説は、紫鶴の師匠に当たる作家・森恒犀鳥(もりつね さいちょう)の『煉獄島殺人事件』だった。

またある日星川 翡翠(ほしかわ ひすい)と巡回に出たツグミは、ヨコハマの遊女が書いた本の情報を得る。執着する翡翠のために買い手を探したツグミは、その本が「ナハティガル」の四木沼 薔子(しぎぬま しょうこ)の手元にあることを知る。薔子はツグミをナハティガルに招きいれるものの、自分にとって大切なものだからと見せてもくれなかった。
ツグミは、単独でナハティガルに入ったことを朱鷺宮 栞(ときみや しおり)に諭告され、翡翠にもとがめられた。しかし、本の筆者が翡翠の母親であると確信を得たツグミは、翡翠を連れてナハティガルに向かう。翡翠を見た薔子は、彼に過去の友人の姿を重ね合わせる。翡翠の母は、薔子の学友だった。この件をきっかけにツグミと翡翠は絆を強めていくのだった。

裏切り

カラスの暗躍により、稀モノで殺された議員が多く報告されるようになってきた。カラスの黒幕は四木沼喬と憶測されているものの確固たる証拠はなく、フクロウのメンバーたちは暗澹たる思いを抱えることとなる。

ある日電車に飛び乗ったツグミは、そこで喬と出会い、ツグミに「カラスのもとへ来るように」と唆す。そして来なければ身の回りに不幸が起きること、フクロウの中にすでにカラスが潜んでいることもにおわせるのだった。
それ以来ツグミの周囲にはカラスの羽が置かれているようになり、だんだんと精神的に追い詰められていく。
そんな時滉が部屋に現れ、彼はツグミに自分がカラスであることを打ち明け、「ツグミを守る」と言ってナハティガルへ単身乗りんでいく。しかし喬に詰めるものの、血が苦手である滉はあっさり返り討ちに遭ってしまうのだった。

滉の裏切りを信じられないフクロウ一同だったが、一日も早い真相解明と、カラスの一掃を改めて誓った。四木沼の脅威を感じながら、ツグミは入院中の弟の見舞いに行く。弟のヒタキは、ツグミの護衛である隼人が気に入らず当たり散らす。
隼人が顔を曇らせた理由を、ツグミは数日後に知る。隼人には、フクロウ入局に至る哀しい過去があった。隼人の妹は稀モノの本を読んでしまったことがきっかけで命を落としてしまったのだった。

事件の真相

隼人の学生時代の先輩であり、新聞記者として働く葦切拓真は稀モノである手紙を読んでしまったことにより自殺未遂を起こす。カラスや稀モノについて調査を進めていた彼は何者かに狙われてしまったようだ。フクロウは葦切が残した手帳により、ナハティガルの地下で人為的に稀モノを作成していることや、その中心に笹乞が関係していることを知る。笹乞は過去に本を出版しており昌吾も読んだことがあるという。

アパートへ帰る道中、暴漢に遭いナハティガルへ連れていかれたツグミ。喬に自分の血を継ぐ子供を産んでもらうと告げられ襲われそうになるが、そこに滉が現れて身代わりになり、ツグミを逃した。ツグミは薔子にかくまってもらい窮地を脱する。一方、偽の稀モノを作成していることを突きとめた累は、カグツチの仲間と共にナハティガルの中へ突入する。そのカグツチに紛れ隼人と翡翠もツグミの捜索を行っていた。そんな中、翡翠は人体実験を行う大学教授の百舌山と対峙する。百舌山は「翡翠の母は翡翠を守るために人体実験の犠牲になった」と煽り、翡翠は怒りで我を忘れそうになる。そんな折に現れた母の幻影を見て冷静さを取り戻した翡翠は、「殺す価値もない」と判断して百舌山を警察に引き渡そうとする。しかし油断したところを仕込み銃で撃たれてしまうのだった。

一方自分を認めてほしいと思うあまり、稀モノを作り続けていた笹乞は「笹乞の書いていた小説が好きだった。たとえそれが稀モノであったとしても、魅力的であった」という昌吾の言葉に動かされ泣き崩れる。
滉はある事件をきっかけに異母兄弟である四木沼の言いなりとなっていた。しかし、自分には守りたいものがあると気付いた滉は四木沼を捕らえ、自身の枷も解き放つことができた。次々とカラスを追い詰めるフクロウだったが、卑劣な人体実験を行う百舌山の前に累が立ちはだかる。累の両親について話し出した百舌山は、彼に衝撃の事実を告げる。累は百舌山と薔子の間にできた子供だったのだ。怒りに燃える累のもとに現れた薔子は、「百舌山は自分が殺す」と百舌山に銃を向けて累を守る。薬物を用いて反撃してきた百舌山から薔子を累が庇い、2人は無事だった。
気球に乗って脱出を図った百舌山だったが、地上に降り立って間もなく、稀モノが空から降ってくる。炎に包まれた百舌山の姿を背後から、怪しげな人物が眺めていた。

無事にカラスの一派を捕らえることができたフクロウ。これから平穏な日がはじまると思ったのもつかの間、筆跡から隠が稀モノを作成していたことが発覚する。フクロウのメンバーたちは隠の家へと向かった。一方それを知らないツグミは隠とともにヒタキの退院を祝いに久世家へ行くことになった。隠は「昔稀モノを書庫で何冊か見た」と、ツグミとヒタキを書庫へと誘う。しかしそれは罠であり、彼はツグミとヒタキを閉じ込めて本当の目的を明らかにする。それは孤独だった自分に優しくしてくれたツグミとヒタキを道連れに、炎の中に消えることだった。幻覚の炎の中に捕らわれたツグミは、隼人の妹や朱鷺宮の夫が隠が書いた稀モノによって命を落としていたことを知る。間一髪のところを朱鷺宮と隼人に救われたツグミ。「自分を殺せ」と告げる隠に対し、ツグミは生きて罪を償うように諭したのだった。

その後朱鷺宮から今後の去就について尋ねられたツグミは、「フクロウこそが自分の居場所だ」と語り、実家に戻らずそのままフクロウで働いていくことを決める。そして保留にしていた婚約者のもとに向かうと、そこにいたのはなんと隼人だった。彼は偽名を使い、ツグミのことを守り続けていたのである。隼人は「フクロウでの活躍を応援している。でも絶対あきらめない」と力強く宣言するのだった。

『ニル・アドミラリの天秤』の登場人物・キャラクター

フクロウ(帝国図書情報資産管理局)の関係者

久世ツグミ(くぜ つぐみ)

CV:木村珠莉
18歳 3月18日生 身長157㎝
帝国図書情報資産管理局探索部所属
1、2年前に女学校を卒業し、自宅で花嫁修業をしていた。海運で財を成した八代家との縁組が決まった矢先、弟の自殺未遂事件により稀モノを見る能力が目覚めた。勧誘を受けてフクロウに入る。
幼少時、病弱な母親が実家で戻ってしまった(11話で健在であることが判明)ため、弟には母親代わりでもあり、過保護気味。
父親の事業は経営難ではあるが、ツグミとヒタキが悠々自適で暮らせる程度には裕福。父親の決めた相手と結婚することで、婚家から資金援助を受けて父親を助けられると信じていた。父親から先方に申し出て、縁談は進んでいない。
女学校時代は合唱部に所属し、家事をしながら無意識に口ずさんでいることがある。料理の腕前はなかなか。

尾崎隼人(おざき はやと)

CV:梶裕貴
23歳 4月15日生 身長176㎝
帝国図書情報資産管理局探索部のリーダー格。
ヒタキの自殺未遂直後に、滉とともにツグミたちに稀モノの情報をもたらした。ツグミのアウラを見る力を見込んで、フクロウにスカウトする。
大学時代に、妹を稀モノがらみで亡くしている。アメリカ留学後、フクロウに入った。
せっかちでありながら、恋愛には奥手。

鴻上滉(こうがみ あきら)

CV:岡本信彦
20歳 12月23日生 身長180㎝
帝国図書情報資産管理局探索部所属
仕事以外では、同僚とも深いつきあいをしない。業務には熱心で、合理的に動く。情にもろい性格を自覚し、わかりにくい優しさを持ち合わせている。血を見ることが苦手で、ツグミがささいな切り傷を負っただけで、滉は色を失った。腹部に黒い羽根の刺青がある。
7話でフクロウを離脱する。

cocoa13
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@cocoa13

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