刀使ノ巫女(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『刀使ノ巫女』とは、studio五組が製作するアニメ。日本刀を使って戦う「刀使(とじ)」と呼ばれる少女たちの、戦いや日常を通して友情を紡いでいく様を描く。魅力的なキャラクターや日本文化を色濃く反映した世界観などが人気を呼んでいる。ストーリー面は二部構成になっていて、少女たちが逃亡劇を繰り広げながら、刀使を陰で操る敵と戦う第一部、少女たちの日常を絡めながら、新たな戦いを描く第二部に分かれている。

「なんにもいらないから…覚えていてくれてれば…それでいいんだよ…」(燕結芽 第11話)

折神邸での決戦時、結芽は薫・エレンのペアと対決する。可奈美との戦いを望む結芽は「時間がない」と苛立ち、薫とエレンを討ち取るとすぐさま可奈美のもとへと向かう。しかし、途中で力尽きて倒れてしまう。
結芽は将来を期待され、神童とまで呼ばれる刀使だった。しかし、病魔に侵され刀使の夢を立たれ、家族に見捨てられてしまい、病院で一人、死を待っているような状態だった。ノロを体内に入れることで病気をごまかして戦っていたが、それでも体が限界を迎え、結芽は可奈美との対決が叶うことなく息を引き取った。これはその結芽が息を引き取る直前の、一番最後のセリフである。
それまで、強さを誇示することに狂気じみた執着を見せていた結芽だったが、すべては自分の死後も誰かに自分の存在を覚えていてほしいからだったことが明かされる。己の命の灯が短いことを悟った少女の、たった一つの願い。それまで完全に「ヤバい敵キャラ」だった結芽の行動のすべてに納得がいくセリフであったと同時に、結芽役の水瀬いのりの好演もあり、この一言に結芽の切実さがにじみ出ていた。

なお、結芽の死後、結芽の持っていたストラップを真希が持っている描写がなされ、最終回でも真希がそのストラップを見ながらも物思いにふけるシーンがある。結芽の「覚えていてくれればそれでいい」という願いは果たされた。

「わかってない…痛いのはあなたが可哀想だから…」(糸見沙耶香 第12話)

折神邸での決戦時に沙耶香が雪那に対して発したセリフ。沙耶香と舞衣は夜見を倒し、沙耶香は雪那に御刀を向ける。もともと、雪那の指示通りに行動していた沙耶香だったが、可奈美たちと出会い、雪那の『道具』でしかない自身の生き方に疑問を抱くようになる。舞草で仲間たちと過ごすようになりその想いはさらに強くなり、ついには雪那に御刀を向けた。それは雪那への決別を意味するものだった。

しかし、沙耶香は雪那に御刀を向けることで胸が苦しくなると吐露する。雪那は自分に許しを請えば、そのような痛みを覚える不要な感情は取り除くと沙耶香に語りかける。その時、沙耶香が返した言葉がこのセリフである。

雪那のもとを離れて舞衣や可奈美たちと共に過ごし、友情をはぐくんできた沙耶香。彼女の心に宿った感情は、すでに雪那の想像を凌駕するものであったが、雪那はそのことにすら気づかず、自分の元に戻ってくれば、再び以前のような自分の『人形』に戻せると勘違いしていた。
沙耶香に宿った感情の強さにすら気づかない時点で、実は雪那の方が人間的な感情を失った『人形』に近い存在だった。だからこそ、「かわいそう」と沙耶香は発したのである。
沙耶香が仲間たちとの短くも濃厚な日々の中ではぐくんできた感情の大きさが垣間見れるセリフである。

「らしいね。でもこうして戦ってる!」(衛藤可奈美 第12話)

折神邸でのタギツヒメとの決戦に臨む可奈美たちだったが、6人がかりでもタギツヒメには敵わない。タギツヒメは、折神紫を越える刀使はこの世にはいないと言おうとするが、可奈美は「紫、久しぶり!」と、まるで自身が母親である藤原美奈都であるかのような発言をし、さらには美奈都を彷彿とする動きを見せてタギツヒメを驚愕させる。その際のタギツヒメの「あり得ない…藤原美奈都は死んでいる!」との言葉に返したセリフ。

「すでに死んでいる」と言われても否定するどころか、「らしいね」と自身が死者であることを笑みを浮かべながら平然と肯定するところに、美奈都の芯の強さが垣間見れる。

当初は美奈都が可奈美に乗り移ったものと捉えられていたが、夢の中で美奈都は何もしていないと明言。可奈美自身の言葉、可奈美自身の強さであったことが明かされる。夢の中で美奈都が可奈美に稽古をつけることで、美奈都の強さは確実に可奈美に継承されていた。タギツヒメが「折神紫を越える刀使はこの世にいない」と言いかけた時に、すでに他界している母ならきっと紫を越えられる、と可奈美が母の強さを信じてたことも伺える。親子二代の絆の強さも分かるセリフである。

「マイマイがお姉さんキャラなのはよーくしってマース。でも、たまには甘える方に回ってもいいんじゃないデスか?」(古波蔵エレン 第14話)

第14話「家族の情景」は舞衣とエレンの日常や家族を主軸に置いたエピソード。それまでの逃亡劇とは違い、事件は起こるもののゆったりとした時間が流れている。

タギツヒメとの戦いから4か月後、舞衣が危険な戦いに身を投じたことを知った舞衣の父・孝則は、舞衣に刀使をやめるように告げる。その後、孝則が買収したノロの研究施設でエレンと再会した舞衣は、ノロを強奪しようとするフードの刀使と戦う。舞衣が実際に戦う姿を見た孝則は、舞衣が刀使として戦うことに理解を示し、舞衣が美濃関に刀使として残ることを認めるが、一方で父親として舞衣が危険な戦いをすることが心配であることも告げる。
その様子を見たエレンは舞衣にこのセリフを耳打ちする。エレンの言葉を聞いた舞衣は、子どものように父親に抱きついて甘えた。

エレンに対するファンの評価は概ね一致していて、「陽気な楽天家に見えて実は一番周りが見えている」「能天気に見えて実は一番冷静な頭脳派」という声が大多数。片言の日本語でハイテンションに振る舞い、初対面の人間にもあだ名をつけるフレンドリーさを持つエレン。だが、彼女の本質は意外と冷静さ、気配り、頭の良さにある。その一端が垣間見れるのがこのシーンだ。

舞衣は三姉妹の長女として、また柳瀬財閥の社長の霊場として、常に「お姉さんキャラ」として振舞っている。それは可奈美や沙耶香のような友人たちの間でも変わらない。
だが、舞衣だって普通の中学生の女の子。たまには親に甘えたい時だってある。しかし、まじめな性格ゆえに、何かきっかけがないと親に甘えることができない。そのことを察したエレンが、舞衣に親に甘えるきっかけを作ったのである。舞衣の家族との確執を描きつつも、最終的にはわだかまりが解けるという情景を描いた第14話だが、エレンの冷静なアシストがあったことも忘れてはならない。

「刀使だからって何も考えずに斬るのはやめておけ。よく考えて斬れってことだ」(益子薫 第15話)

出典: pbs.twimg.com

第15話「怠け者の一分」はファンの間でも特に人気のある回だ。怠け者の薫と、まじめすぎる沙耶香をメインに据え、対照的な二人を描いている。特に、薫はボケにもツッコミにも回ることのできるキャラクターであり、沙耶香を相手にボケ役に回る薫がとにかく面白い。その一方で、『荒魂との共存』という波乱編と軸のなるメッセージが込められた重要な回でもある。

山の中で荒魂を捜索していた薫と沙耶香。やっと見つけた荒魂は小動物程度のサイズだった。薫は特に害のある荒魂ではないと判断して見逃そうとするが、沙耶香が荒魂に斬りかかる。
薫は沙耶香を止めるが、「刀使は荒魂を斬るもの」「荒魂は放置すれば人に害をなす」と教わってきた沙耶香にとって、薫の行動は不可解だった。一方、薫は沙耶香の行動や言い分の方が正しいと認めつつ、「お前の言い分だと、益子が絶賛放置プレイ中のこいつ(ねね)も斬らなくちゃな。斬れるか沙耶香?」と問いかける。ねねと仲良くなっていた沙耶香は御刀をおさめ、「私が間違っていた」と口にする。薫はどちらが間違っているという問題では無く考え方の相違だとし、このセリフを言った。

だが、その後荒魂が狂暴化。薫は「益子の歴史じゃこんなことザラだ。だから、けじめのつけ方も心得てる。考えて…、信じて…、それがダメだったときは、誰よりも先にそいつの牙を受け、剣を向ける。それが益子のけじめだ。だから俺がやる」と、自ら荒魂を切り伏せた。
「荒魂=有害なものではなく、本当に有害なものかどうか自分の目で見て、ちゃんと考える」という薫の考え方は沙耶香に大きな影響を与える。第18話では沙耶香はタキリヒメやイチキシマヒメ、さらにはタギツヒメとの対話の可能性を考えていた。その後、荒魂が暴れる理由が喪失感、寂しさからくることを知った沙耶香は最終回で荒魂を斬った後、「もうさみしくないから」という言葉を口にしている。沙耶香が荒魂に対する考えを変えるきっかけとなったのがこのシーンである。

「まったく…気付いていませんでしたの。どうしても溝を開けられたくない方がいたからですわ!」(此花寿々花 第17話)

出典: tama-yura.jp

真希にノロを受け入れた理由を問われて寿々花が返した言葉。その後、真希の「たったそれだけのことで?そんなに想われる相手が羨ましいよ」という言葉に対しては、寿々花は真希をにらみながら「鈍感」とだけ返している。

折神家親衛隊第一席の真希と第二席の寿々花。寿々花にとって真希は越えるべきライバルであり、だからこそ差をつけられたくなかったのだが、その一方で、単独行動をとっていた真希を激しく叱責したシーンから、一人でタギツヒメを追っていた真希を心の底から心配していたことがうかがえる。寿々花にとって真希はライバルであると同時にかけがえのない仲間なのであり、真希の強さに対しては憧れや慕情に近いものを感じていることをこのセリフで匂わせている。そんな寿々花の気持ちに気づかず、「どうしても溝を開けられたくない相手」が誰か他人のことだろうととぼけた答えを返す真希と、それに対し「鈍感」となじる寿々花。なんだか片想い中のやり取りを見ているようで微笑ましい。「胎動編」では敵だった真希と寿々花も、「波乱編」ではこのようなシーンで彼女たちの内面を描き出しており、メインの6人だけでなく真希と寿々花の魅力も際立っている。

「だって獅童さんも此花さんも、何もわかっていないから」(皐月夜見 第18話)

市谷・防衛省にいるタキリヒメに対して、タギツヒメと近衛隊が襲撃を仕掛けた。タギツヒメに従う夜見も荒魂を散布しながら市ヶ谷へと向かうが、そこに元親衛隊の真希と寿々花が立ちはだかる。真希と寿々花は夜見に、紫が健在であることを伝え、ともにまた紫に忠を尽くそうと呼びかける。さらに、これ以上雪那の命令に無理やり従うことはないと、夜見に親衛隊に帰ってくるように説得するが、夜見はそこで笑顔を見せる。これまで笑ったことのない夜見の笑顔に驚く真希と寿々花。このセリフは、なぜ夜見が笑ったのかの理由にあたるセリフだ。

第18話時点では明かされていないが、夜見が忠義を尽くす相手は雪那だった。夜見自身のゆるぎない意志のもと、夜見は雪那に対して忠を尽くしていた。真希と寿々花の言う「紫に忠を尽くす」も、「雪那の命令に無理やり従っている」も、夜見から見れば見当違いだったのだ。

真希と寿々花は親衛隊として夜見と長い時間を共に過ごした相手でもある。ドラマCDなどでは、親衛隊のメンバーも任務時間外は意外とふざけたやり取りをしていて、その会話の輪の中にはきちんと夜見の姿もある。しかし、その真希と寿々花にしても、夜見のことを理解していなかった。彼女の笑みには、そのことに対する残念さや、人に理解されにくい自分への自重も込められていたのかもしれない。

「…どうなんでしょう」(皐月夜見 第19話)

出典: www.tororo.online

タギツヒメたちが拠点とするホテルに姿を現せた真希と寿々花。二人の目的は、夜見に会って彼女の意志を確認することだった。夜見が無理やり雪那に従っているのではなく、自分の意志で行動していることを確認する二人。その別れ際、寿々花は夜見に「あなたは今幸せ?」と問いかける。その答えがこのセリフである。

幸せかと問いかけられて「どうなんでしょう」と答える。このセリフについて、夜見役の渕上舞がWebラジオ「とじらじ」の中で自身の考察を語っている。

夜見にとって、落ちこぼれだった自分のことを見つけ、力を与えてくれた雪那のために尽くすことが幸せだった。たとえ雪那から虐げられていても、雪那のそばにいて忠を尽くせればそれだけで幸せなのであり、さらに言えば「虐げる」という形でも雪那が夜見のことを見てくれている、夜見に接してくれていることが彼女にとって幸せなことだった。
しかし、夜見は自分の幸せが、他人の思う幸せや世間一般に描かれる幸せの姿とは違うことを理解しているのではないか。
だから、寿々花に「あなたは今幸せ?」と問いかけられた時、夜見本人としては幸せを感じているが、それが寿々花の思う幸せとはおそらく一致しないこと、寿々花には理解できないであろうという事を察して、「どうなんでしょう」と答えたのである。

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