毒姫(Dokuhime)のネタバレ解説まとめ

『毒姫』とは、朝日新聞出版よりNemuki+コミックスで発売された漫画。全5巻。作者は三原ミツカズ。
全身が猛毒の暗殺用の寵姫「毒姫」のリコリスは隣国グランドルの国王を暗殺するためにグランドルへと送り込まれる。そこで出会う3人の王子との激動の運命を描く。
キャッチコピーは「誰も抱きしめる事のできない姫と誰にも抱きしめられなかった王子。ふたりが欲しかったものは自分以外のぬくもり」。

靴違え

戦争孤児を指す。作中ではシッカがこれにあたる。
物資を死体からも盗むほど困窮しており、死体から靴を盗むため左右揃った靴がはけず、靴が違うことが多いというのがその由来。

庶民の出であるグランドル国王(ハルの父親)はこういった靴違えの子供たちをメイドや兵士として分け隔てなく雇用した。
グランドル王城には、身分を問わず雇い入れるグランドル国王の人柄に惚れ、忠実に仕える靴違え出身のメイドや兵士も多い。

『毒姫』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

私は「毒姫」。この腕は何も抱くことを許されない。愛しい者であればあるほど

第1話の締めとなるシーン。
愛しいものほど遠ざけなければ自らの毒で殺してしまうというジレンマに悩むベラドンナの思いが吐露されたモノローグである。
愛しい者(アセビ)を自らの毒で殺さないためにあれだけ厳しく拒絶して遠回しに守ったのに、結局アセビは殺されてしまい、そしてアセビが遺した花すら手に握れば枯れてしまうという切なさが書きつづられている。

この第1話は毒姫がどのような存在であるかを説明するエピソードとなっており、この話をきっかけに「毒姫」を読み始めたという読者も多い。

カイトの非才

ベッドではなく裸で机の下で眠るなど、物語の序盤から「ぼんやりさん」(知的障害の暗喩的表現)と称され、3つの子供のうち「無能な子」にあたると思われていたカイトが実は「優秀な子」であり類まれなる才能を持っているということが判明する15話より。

誰よりも一番に「(問題集が)解けた!」とメイドに報告するハルと、ペンを弄んでやる気のないマオ、そして問題文を見ることなくノートに黙々と字を書き続けているカイトという描写がこの1話前(14話)にあり、上記のコマはそのシーンの真相解明となっており、カイトは「無能な子」だというのはミスリードであったがここで発覚する。
カイトは問題文を一瞬見るだけで問題文を記憶し(瞬間記憶能力)、そしてノートを上下逆さにした状態で文字を書けるという非凡な才能を持っていたのである。また、ガーレ率いる王族派と父(グランドル国王)が出かけたと聞き、王族派によって父が連れ去られたのだと、メイドや執事が誰一人気付いていない中、カイトだけが推理する。そして「連れ去られたとするならば、監禁先は水門の独房だ」ということを即座に推測し、国王でなければ解錠方法を知らない水門に至る13個の錠を自力で解錠するなど、カイトが驚異的な知恵と知識を持っているということが判明する。

また、マオがハルに「(グランドル国王になりすますなら)他国に流れている河川も把握しているはずだよね?」とテストのように問題を出す中、皿を引っ掻いて落書きしているように見せかけ、ハルが間違ってしまった部分まで正確に河川を描くというシーンもある。

「立ちっぱなしもなんですから、おかけになりますか?」

グランドル国王が即位し、周辺国の王を招いての晩餐会でのシーン。

水資源を独占している前王に煮え湯を飲まされてきた周辺国の諸王たちは、今までの鬱憤晴らしにグランドル国王に嫌がらせをしようと相談し合う。
それは、囚人たちを王族に変装させ、変装した囚人たちの皿に毒を盛ることで殺し、「自分の食事も毒が混ぜられているのかもしれない」とうろたえるグランドル国王を笑おうというものだった。
ミトラガイナ女王の主導によって実行されたこの計画だが、諸王の予想に反してグランドル国王は毒死する囚人たちを意に介することなく平然と食事をしていた。
「毒死した者たちが王でないのは見抜いていた」と囚人であることを看破したグランドル国王は、笑顔で諸王へ「立ちっぱなしもなんですから、おかけになりますか?」と毒死した死体が多々横たわるテーブルを指した。

グランドル国王の異様さを示すシーンとなっている。
この狂気に似た性格はマオ、カイトに受け継がれている。

メイドの毒死

ガーレに「お前の正体は毒姫だろう」と言われ、しらばっくれたリコリスの前に連れてこられたのはリコリスを慕うリコリス付きのメイド、シッカであった。
ガーレは「リコリスが毒姫でないなら、このメイドがリコリスの血を舐めても平気だろう」と決定的な審判を突きつける。
自らが毒姫であり、存在するだけで周囲を害する(実際、シッカもリコリスが発する毒に犯され、失明などの症状を起こしていた)ことを隠していたリコリスに、「大丈夫、リコリス様は嘘なんてつきません」とリコリスの無実を証明するためにシッカはリコリスの血を舐める。
血を舐め、「ほら、なんともありません」と笑うシッカだが、直後、リコリスの血の毒によって死んでしまう。

リコリスのために「なんでもない」と嘘をつくシッカ、自らが毒姫であることを隠したために自分を慕うシッカを殺してしまうリコリスの悲哀が描かれる切ないシーンである。
死にゆくシッカの姿が足元しか描かれず、徐々に血が垂れていく(そして出血量が多くなっていく)という間接的な表現もまた読者に切なさを訴えている。

リーゼの最期

イスキア国から兵が押し寄せ、戦いとなったグランドル王宮での様子より。
この時ガーレはすでにグランドル国王(に扮したマオ)に首をはねられており、ガーレの付き人をつとめるベガは主人の仇を討つよりも恋い焦がれたリーゼと共に逝くことを選んだ。
耳が聞こえないリーゼは状況がわかっておらず、イスキア国が攻めてきたこともわかっていない。足手まといのリーゼを置いて逃げるメイドたちにもきょとんとした顔をしており、まったくといっていいほど現状を理解していない。
無邪気に「今日のケーキは何かしら?」と問い、いつものようにガーレの演出している「きれいな世界」で生きるリーゼの手を取り、ベガは狂気的にリーゼに崇拝を寄せる。
その背後ではイスキア兵に殺されていく兵士やメイドの悲鳴が響き渡っており、扉一枚を隔てて先頭の残酷さとベガの狂気との対比が際立っている。

「毒姫」の話数は「第○話」ではなく「Sin,○」(Sinは罪という意味の英単語)となっており、このシーンは主君であるガーレを放ってリーゼを狂愛するベガの罪が完成した瞬間とも言える。

keeper
keeper
@keeper

目次 - Contents