ib(インスタントバレット)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ib(インスタントバレット)』は漫画『かぐや様は告らせたい』で一躍有名になった赤坂アカによる青年漫画作品。『電撃マオウ』(KADOKAWA)にて2013年9月号から2015年8月27日発売の同年10月号まで連載された。単行本は『電撃コミックスNEXT』(KADOKAWA)レーベルから全5巻で出版され完結済み。理不尽な境遇で育ち、悪意を原動力とする超能力「ib(インスタントバレッド)」に目覚めた少年少女たちの物語。彼らは世界滅亡という確定した未来を前に、誰がどのように世界を滅ぼすのかを争い合う。

『ib(インスタントバレット)』の概要

『ib(インスタントバレット)』は漫画『かぐや様は告らせたい』で一躍有名になった赤坂アカによる青年漫画作品。『電撃マオウ』(KADOKAWA)にて2013年9月号から2015年8月27日発売の同年10月号まで連載された。単行本は『電撃コミックスNEXT』(KADOKAWA)レーベルから全5巻で出版された完結済みの作品。
1巻ごとにサブタイトルが付いており、1巻が『世界の終わりとボーイ・ミーツ・ガール』、2巻が『やさしくなりたい、優しくなれない人々』、3巻が『過去と未来に初恋を』、4巻が『怖がりだよと、一度でも言えたなら』、5巻の最終巻が『ハッピーエンドなんか、いらない』となっている。
孤独な少年深瀬黒(ふかせくろ)が、とあるクリスマスイブにib(インスタントバレット)と呼ばれる超能力に目覚め、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていくというダークファンタジー。ib(インスタントバレット)の能力者となった子供たちのほとんどが不遇な者であり、その人生を含めて描く作品であること、また世界を救うのではなく世界を壊す戦いであるということから異色な作品となっている。
この作品は半ば打ち切りのような形で連載を終了した。5巻のあとがきに書かれているが、『ib(インスタントバレット)』は赤坂アカにとって高校時代から構想しているライフワークのような作品だという。連載中には語り切れなかった各キャラクターの裏話や、ib(インスタントバレット)というタイトルの意味など、回収されていない部分が多い。赤坂アカはこの結末を不完全燃焼だと感じており、いずれまた別の形で続きを書きたいと語っている。それは続編として書き出すのか、また1から作り直すのか、別タイトルで別の方面から切り込んでいくのか、漫画ではなく小説にするのか、詳細は未定。

『ib(インスタントバレット)』のあらすじ・ストーリー

プロローグ「世界の終わりとボーイミーツガール」

高校2年生の深瀬黒(ふかせくろ)は孤独な日々を送っていた。この世界の全ては自分の敵であり、愛や友情の大切さを説く世界には価値がないと思っている。面倒事は暴力で解決し、アニメや漫画を趣味にして寂しく過ごしていた。また黒には、過去の火事で亡くした幼馴染の綾倉十色(あやくらといろ)といろはの姉妹が幻覚として見えていた。そんなクリスマスイブの夜、恋人や友人と楽しそうに過ごす人々を横目に「こんな世界とっとと終わればいいのに」と思った途端、目の前に真っ黒な怪物が現れる。黒の近くでその姿を目撃した少女、姫浦瀬良(ひめうらせら)は「やっと見つけた 私の敵」と呟く。黒は半ば強引に巻き込まれる形で、どこからともなく爆弾を召喚する魔法のような力を持つ少女、瀬良 と共に倒すことになる。

しかし、実は黒い怪物こそが黒の持つ能力であり、怪物は彼の望む通りに破壊行動を行っていた。黒が能力の詳細を確かめるためにまたいくつかの破壊行動を試したことで、次の事件を警戒した瀬良は再び彼を呼び出す。瀬良は不運な事故から父親を失い、世界への復讐の機会を伺っていた。そして明確な敵を見つけ、それを倒し自分が正義のヒーローになるということに異常な執着を見せる。
そんな2人の元へ、魔女の格好をした1人の少女が現れる。彼女もまた特異な能力の持ち主であり、世界に20人ほどいる能力者をインスタントバレットと呼んでいた。自らを調停役だという魔女は、インスタントバレットの1人が黒たちの住む町に核を積んだ人工衛星を落とそうとしていると警告する。町の人々や自分自身の命にはあまり興味のなかった黒。しかし、かつて救えなかった家族のような存在、綾倉姉妹を追い詰めた世界の理不尽そのものを憎む気持ちが湧き上がる。そして同じく理不尽に思える人工衛星を、自身の能力を使って消滅させる決意をした。
一方、瀬良は自分達に芽生えたインスタントバレットの能力が悪意を原動力にした破壊願望から来ていると見抜く。瀬良は悪意の能力者たちが町に集まりつつあることを察して、人工衛星を落とすことで能力者たちを一掃しようと画策していた。しかし黒に計画を阻まれたことで、瀬良はクリスマスイブに出会った怪物が彼の能力によるものだったと確信する。また瀬良の能力がただの爆弾の召喚に留まらず、世界中の爆弾を支配するものだと知った魔女は彼女を警戒し始める。魔女に計画を見抜かれて詰め寄られるも、瀬良は悪びれもせず、普段通りの日常を送る人々を見て「この世界には『誰も気付かなかった悲劇』がごまんと溢れてる」と語るのだった。

第1章「やさしくなりたい、優しくなれない人々」

年末年始の休暇明け、黒と瀬良は高校で意外な再会を果たす。二人は同じ高校に通う生徒であり、隣のクラスに所属していた。しかし瀬良は今までとは異なり素っ気ない態度をとる。
一方で黒は魔女に誘われて他のインスタントバレットの能力者と出会う。一人は「世界の端っこ」と呼ばれる閉鎖空間を作ることができる少年、諸木亮太(もろきりょうた)。もう一人は奇抜な服装をした不思議な少女、藤波木陰(ふじなみこかげ)だった。三人を引き合わせた魔女は、そこで自分の能力を公開する。彼女の能力は「ラプラス」と言われる未来視の力だったが、見た未来は変えることができないのだという。しかも、その能力によって100年後の地球が滅んでいることを確認しており、インスタントバレットによって人類が滅亡することは既に確定していた。
魔女は絶望的な未来を伝えた上で、なるべく誰も傷つかない形で世界を終わらせるために話そうとする。しかし、世界に暗い感情を持つ黒や木陰はこれを歓迎し、どうせ終わることがわかっている世界ならば、自分こそがインスタントバレットを使って世界を終わらせるのだと主張する。

それから木陰は単独で世界滅亡に向けた準備をし始める。黒は相変わらず喧嘩をする日々の中、6年間昏睡状態にある深瀬いろはの入院する病院へ通っていた。黒はいろはとその姉の十色(といろ)のことを今でも幻覚に見ている。しかし実際の二人は6年前の火災によってアパートの崩落に巻き込まれ、十色は亡くなり、いろはは一命をとりとめたものの重い意識障害に陥っている状態だった。火事の後に黒と共に引き取られたいろはは、現在は深瀬いろはという名前になっていた。お見舞いに訪れ続けていた黒は、いろはの入院先の病院でとあるヤクザ者に出会う。真田(さなだ)というその男は木陰を探していると話し、黒に彼女の居場所を尋ねてきた。黒は木陰に先手を取られないように、その居場所を伝えることを約束する。
木陰と真田は、1年前に起きた怪事件「マリアドラッグ事件」の関係者だった。黒は彼らによってばら撒かれたドラッグによって死者が出ていることを知る。話を聞き、黒は木陰の動向を探るために彼女を匿っている亮太の元へ話を聞きに行く。亮太は世界が滅びることには無関心だったが、知っていることを話そうとする。マリアドラッグ事件でばら撒かれたドラッグは特殊な麻薬であり、快感や幻覚作用は一切ないが強い毒性と依存性があった。一見してただの毒薬のようであったが、なぜかこのドラッグは無償で分け与えられていた。そんな話の途中で木陰本人が現れ、自分はもう後に引けないのだと涙ながらに訴える。
直後、木陰の準備は整い、電波塔を包み込むように巨大なツタ植物が現れる。木陰は自身のインスタントバレットで創造した植物を使って、世界中に新たな毒を撒き散らそうとしていた。それを止めようと向かう黒の前に、亮太が立ち塞がる。

亮太は自慢の蔵書を「いい本棚だ」と褒めて貰えた、ただその一言だけで彼女を守ろうとした。世界に大切な人など一人もいない亮太にとっては、それだけでも命がけで立つのに値する言葉だった。孤独な黒にも、その気持ちを理解することができた。立ち向かう自分に対してインスタントバレットの能力を使わない黒の姿を見て、亮太は黒には木陰を殺すつもりはないと察し、彼女と対話をするようにと最終的には道を譲る。
インスタントバレット同士の争いごとには調停者として中立を貫いていた魔女だったが、木陰の元に向かう黒に対して一つだけ情報を与える。それはマリアドラッグの本当の効力。その効果は「人にやさしくなれる」たったそれだけのことだった。しかし、このドラッグにハマるヤクザなどの自分を変えることができずに人を傷つけるばかりの人々にとっては他にはない中毒性を発揮した。「変わりたい そう思うだけで変われたのなら どれだけ幸せだったろう」一度マリアドラッグの魅力に取りつかれた真田はそのように語った。

木陰はシングルマザーの元で育ち、体で生活費を稼ぐ母のことで心無い言葉をかけられていた。その結果、木陰は人類がこれ以上繁殖しないように性欲と妊娠を阻害する毒を新たに生み出し、世界にばら撒くことにする。それは緩やかな人類衰退の道だった。
木陰の目的を知った黒の目の前で、瀬良が奇襲を仕掛ける。植物の崩壊と共に落下する木陰を救ったのは、黒と亮太、そして魔女の三人だった。結局、髑髏躑躅(どくろつつじ)と呼ばれた巨大な植物による人類滅亡の未来は、瀬良の爆弾によって阻まれたのだった。
世界を滅ぼしうる脅威として力を見せてしまった木陰は、警察庁警備局の「カラフル」という組織に目を付けられることになる。それは情報操作に長けたインスタントバレットの能力者を含む、他のインスタントバレットの能力者たちを殲滅しようと考えている組織だった。彼らと敵対関係になった三人は利害の一致を得てやっと一つのチームを組むことになる。しかし三人を引き合わせた魔女は、明かせない秘密を抱えたままでは仲間になれないと言ってその場を離れていく。その秘密の中には、魔女自身が誰よりも早く死んでしまうのだという未来視の結果も含まれていた。

第2章「過去と未来に初恋を」

巨大花事件の後、カラフルが次のターゲットとして選んだのは木陰ではなく魔女の方だった。そして魔女自身も、未来視によって自分の人生が残り一週間しかないということを理解していた。いつからか黒に恋心を抱いていた魔女は、最後のワガママとして黒への接触を図り、同じクラスに転校生としてやって来る。そして残り時間をなるべく共に過ごしたいと考えた魔女は、黒に告白を決心した。
しかし多くの秘密を抱え、意味深な言動を繰り返す魔女のことを黒は素直に受け入れられない。告白したことでかえって気まずい距離ができてしまったことを悔やんだ魔女は、残り日数が三日間まで迫ってきたこともあり、黒に対して一日でいいから彼女のふりをして一緒にデートをして欲しいと頼む。共に時間を過ごし、恋人らしい行為に及ぼうとしたところで、流石に黒は拒絶反応を示す。「こういうことはもっと時間をかけて関係性を築いてからするものだ」という彼の主張に対し、魔女は「時間がない人はどうしたらいいの」と思わず自分のタイムリミットを伝えてしまう。

魔女と名乗る少女、古砂夢(ふるすなゆめ)は幼い頃に両親に暴力を振るわれた上で捨てられ、施設で育てられた。誰にも愛されず、誰も愛することができないのではないかと絶望していた彼女だったが、未来視によっていつか自分が黒という少年に恋をするのだと知る。そのことに希望を見出した少女は、それを心の支えのようにして生きてきた。一度はカラフルのインスタントバレットの能力者と取引をしたこともあったが、カラフルのリーダーが持つ全知無能の力によっても一度観測してしまった未来を変えることができないのだと知った。そこで古砂夢は愛する黒のことすらも利用して、彼に更なる絶望を与えることで悪意によるインスタントバレッドの能力を強化し、彼にこの世界を壊してもらおうと画策する。
夢の死期について嘘の情報を渡されていた黒だったが、彼女がカラフルのメンバーによって殺されかけた現場になんとか駆け付ける。しかし愛する人の姿を見て幸せな感情に満たされた夢は、悪意によって発動するインスタントバレッドの能力を完全に失ってしまう。仲間の応援を呼び、なんとかして彼女を救おうともがく黒だったが、その目の前で無情にもカラフルによって夢は殺害され、黒に絶望を与えるという彼女の目的は達成されることになった。

絶望と怒りによって力を暴走させる黒。実は目の前にいるいろはは彼の幻覚などではなく、いろはのインスタントバレッドの共感の力によって見えていたものだった。カラフルは仲間であるいろはの力によって黒の視界を奪い撤退する。遅れて応援に現れた亮太と木陰は魔女の遺体を回収し、暴れ回る黒を気絶させて秘密基地へと逃げ帰った。夢との付き合いが一番長かった亮太は、秘密基地の中に彼女を埋葬する。
目覚めた黒は自分の無力さを嘆き、再び喧嘩をしながら力を暴走させた時の怒りや憎しみを思い出そうとする。これからどうすべきか途方に暮れた黒だったが、自分の服のポケットから夢の遺書を発見する。そこには彼女の謝罪と願いと共に、驚くべき頼みごとが書かれていた。
夢のインスタントバレットの能力は未来視、時間操作、そして時間旅行だった。その能力により、身寄りがなくて困っていた彼女は、幼い頃の自分を自分自身で引き取って養っていた。それを知った黒たちはまだ9歳の夢に出会い、彼女の面倒を見ることにする。

第3章「小さな世界に弾丸は降り注ぐ」

ずっと自分の幻覚だと思っていたいろはの策略によって、黒はカラフルのメンバーに拉致されてしまう。幻覚ではなく、インスタントバレッドの能力によって黒の周囲に現れていたいろはは、黒のことも姉の十色のことも大切に思っていた。それ故に、新たな仲間を得てから十色のことを忘れて思い出さなくなりつつあった黒のことを責める。
6年前のトラウマを突きつけられて気を失った黒の前に、瀬良が現れる。そしていろはの足元に転がる黒と、十色の姿を見下ろして、黒のインスタントバレットの能力の本当の意味を悟る。それは創造の力。破壊衝動の化身として獣の姿を生み出したことにより、それ以前から作り出されていた十色の存在は希薄になり始めていた。いろはは姉が忘れ去られることで消滅することを恐れて焦っていた。そして姉が消えてしまわないようにと瀬良に協力を求めるが、彼女はそれを断る。瀬良は十色を守ることで破壊の獣が消えてしまうことはつまらないと感じ、また同時に最後のインスタントバレットの能力者が十色なのだということに気が付いて不愉快に思っていた。
瀬良が黒に向かって放った爆弾を十色は自身の能力で防ぎ切る。しかし十色も自分の能力についてはまだ理解が追い付いていなかった。綾倉十色は確かに6年前の事故で亡くなっていた。しかし、黒の創造の力によって十色にもまた意思があり、その意思にインスタントバレッドが宿ったのだった。カラフルのメンバーは黒もいろはも利用して彼女の能力を手に入れることを画策していた。そして病院で眠っているいろはの体を人質に取ってまで黒を脅迫する。カラフルのメンバーの一人である雁金アイジ(かりがねあいじ)は「契約」のインスタントバレットの能力者であり、1度取り交わした約束に絶対的な拘束力を持たせる力を持っていた。その力で十色をカラフルへ譲り渡せと迫る。

脅迫に応じたように見せかけた黒だったが、十色とカラフルの契約は上手くいかない。それは黒といろはの記憶を元に作られた深瀬十色という存在が、生前の綾倉十色とは全くの別物だったためだった。十色は自分の意思を持ち、黒やいろはに寄り添いながらも、二人に偽物なのだと思われることを極度に恐れていた。彼女を生み出した黒自身も、そして生み出された十色の方も、これまで会話をすることで関係性が破綻することを恐れてきたことを改めて自覚する。そして初めて対話を行うことで時間を稼げたいろははカラフルに反撃を行い、三人はなんとか家まで逃げ帰ることができた。
十色のインスタントバレットは「英雄」と呼ばれ、一度だけ天国へと通じる扉を開いて魂をその先へ導く能力だった。カラフルの目的は十色のインスタントバレットによって死者を魂へと還元し、天国への扉をくぐること。全人類が一度肉体を捨てることで、食事も戦争も必要しない存在となり、そして亡くなった人々とも再会を果たす。少なくともカラフルのリーダーはそれが滅んでしまう世界での救済になると信じていた。

最終章「ハッピーエンドなんか、いらない」

カラフルは本格的に人類を一度肉体から解放するという名目で殺戮の準備を進める。それは瀬良の能力を使って、世界中にある爆弾を奪う行為だった。流石に各国もあらゆる爆弾を紛失したことは隠し切れず、世界的に大きなニュースとなる。
世界のあちこちで暴動が起き混乱した状況の中で、カラフルのリーダーは亮太と木陰、幼い魔女が隠れる「世界の端っこ」を訪れる。リーダー自身も自分達のやっていることが感情的で何の保証もない恐ろしい行為だという自覚はあった。しかし、これ以外の方法を思いつかないのだと語る。リーダーは元々インスタントバレットの能力者達に居場所や意味を与えるためにカラフルという組織を立ち上げた。そしてインスタントバレットの能力者達を制御するために、全治無能と呼ばれる能力を使って彼らの過去を知った。その結果、人間社会に上手く溶け込めずにいる不器用で純粋な彼らのことを知れば知るほど、強い愛着を抱くようになっていた。

瀬良が世界に爆弾を落とす準備をして隠れていることを知った黒は、彼女を止めるために居場所を探し始める。その前に立ち塞がるカラフルのメンバー達だったが、十色や木陰達の援護によって黒はリーダーが待ち受ける神社まで辿り着く。瀬良が悪役ではなくヒーローになることを望んでいると知っていた黒は、彼女を悪役にしないために彼女を探し出すのだと決意を示す。その姿を見てリーダーは瀬良からの伝言を伝え、「彼女を救ってやって欲しい」と後を託すのだった。
瀬良は自分の悪性に気が付き、ヒーローには程遠い資質にずっと悩まされてきた。黒はそんな彼女に向かって「自分はお前よりも間違っている。お前の敵だ」と呼びかける。黒の中にある強い憎悪と、人を救いたいと願う優しさとは同居していた。その行動は瀬良が操る爆弾を消費させるために攻撃を引き付ける行動にも見えたが、紛れもなく世界を壊すほどの悪意の塊だった。以前よりも圧倒的に成長した黒の破壊衝動の表れである獣と黒の姿を見て、瀬良は改めて「やっと見つけた わたしの敵」と言って嬉し涙を流した。

孤独や理不尽によって深く傷付いたことでインスタントバレッドの能力を得た少年少女達は、黒と瀬良の戦いを見ながら自分達の境遇に思いをはせる。瀬良の持つ爆弾が最後の一発になった時、改めて黒は声をかける。目の前にヒーローになりたいと願い、その力を持つ人物がいるということを知り、黒は何者にもなれない苦しみから解放されて悪役になることができたと瀬良に感謝する。一方の瀬良も、黒という悪役が現れたことによって正義の味方になれたこと、役割を与え合うことで初めて関係性を作れた喜びと感謝の言葉を返す。
お互いの感情に整理をつけて満足した二人は、能力を使い切って共倒れにしようと話す。合意の握手をしようとしたところで、時間旅行で現れた魔女こと夢が仲裁に入る。魔女はここで二人が心中するような結末は望んでおらず、また命を捨てる選択をするには早いと諭す。最終的に人々の思いはすれ違い、少年少女の思惑とは異なって世界は延命を果たした。

『ib(インスタントバレット)』の登場人物・キャラクター

主要人物

深瀬黒(ふかせくろ)

1巻1話で自分がインスタントバレッドの能力で生み出した「獣」に話しかける深瀬黒(ふかせくろ)

高校2年生の男子生徒。破壊衝動を具現化した「獣」と呼ばれる黒い化け物や、かつて死んでしまった綾倉十色の幻覚を実体化する「創造」のインスタントバレットを所持する少年。暴力でしか他人と関わることができなかったが、他のインスタントバレットの能力者たちと出会うことによって変化していく。幼い頃に親に捨てられている。綾倉家の火事と同時期に祖母を亡くし、いろはと共に深瀬家に引き取られた。

姫浦瀬良(ひめうらせら)

1巻3話で魔女から町に衛星を落とそうとしたことを追求される姫浦瀬良(ひめうらせら)

高校2年生の女子生徒。世界中の爆弾を操作する「破壊」のインスタントバレットの能力者。生まれつき倫理観が欠如している面があり、ヒーローに対して強い憧れを抱いている。自分がヒーローになるために自分の敵となる存在を探し求めている少女。その精神面での危うさと爆弾を自由自在に召喚や起爆できるという強力な能力から、最も世界滅亡の原因となりうる存在でもある。

魔女/古砂夢(ふるすなゆめ)

初めて深瀬黒(ふかせくろ)に本名を名乗る古砂夢(ふるすなゆめ)。

黒いローブとつば広の帽子という魔女の格好をしてインスタントバレッド達の調停役を名乗る少女。本名は古砂夢。変えることのできない未来を観測する未来視、時間操作、時間旅行の3つの特性を持つ「時間」のインスタントバレットの能力者。深瀬黒に対していつからか恋心を抱いている。

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