秒速5センチメートル(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『秒速5センチメートル』とは、2007年に公開された日本のアニメーション映画作品およびそれを原作とした小説・漫画などの派生作品。「君の名は。」(2016年)で有名な新海誠監督の劇場公開長編第3作目。思春期から成人までの男女の心の距離と速度をテーマとした3つの短編の連作。現実の現代日本を舞台に、少年・少女を主人公とした恋模様や葛藤が描かれる。

突如ロケットが空へ飛び立ち、それを二人で見上げるこのシーンは、パンフレットやポストカードなどでも使用されることも多い、本作の象徴的シーンの一つ。
「このシーンは最初から描こうと決めていたので、舞台は種子島にした」と新海監督は語る。そして本編で花苗が語るように、二人は同じものを見つめているようで全く違うものを見ている。

明里との心の距離(第三話)

本作を締めくくるように第三話のタイトルとともに流れ出す主題歌「One more time, One more chance」。ここから先はセリフは登場せず、ミュージックビデオのように映像のみで綴られる。各キャラクター達の経てきた課程やその後が、ダイジェストで描かれる。
「いつでも捜しているよ どっかに君の姿を」と歌詞にあるように、貴樹は明里の姿を探し続けていた。劇中では歌詞を表現するかのように様々なショットが描かれている。
そして曲が終わるとともに、貴樹が明里との心の距離を自覚し、前に進むことで物語は幕を閉じる。

『秒速5センチメートル』の用語

秒速5センチメートル

本作のタイトルにして、心の距離と速度をテーマとした本作の象徴するキーワードの一つ。舞い散る桜の花びらが地面に向かって落ちゆく速度とされている。
実際には無風状態で秒速50センチメートル程度とも言われている。
貴樹にとって明里を想起させる言葉でもあり、第二話では花苗がNASDA(宇宙開発事業団)のトレーラーの速度が「時速5キロなんだって」と発言した際に動揺する様子が描かれている。

H-IIロケット

第二話の舞台となる鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられるNASDAのロケット。
劇中では貴樹と花苗が見上げるシーンが描かれる。1994年から1999年まで7回打ち上げられているが、劇中の1999年10月半ばには実際には打ち上げは行われていない。

両毛線(りょうもうせん)

第一話と第三話で登場する、貴樹と明里が利用した路線。劇中では小山駅と岩舟駅が登場。新海監督はほぼ全作で自らロケハンを行っているが、本作では駅で撮影された写真などが公開されている。
劇中で登場した電車は高崎車両センター所属の湘南色(緑色とオレンジ色)の115系だが、2018年3月16日で定期運行は終了している。

小山駅

貴樹の乗る電車が大雪で止まってしまい、手紙も飛ばされてしまうというシーンが描かれる。駅構内で立ち食い蕎麦屋も登場しているが、この店舗は2015年3月31日に閉店。
また、本作の主題歌は小山駅構内BGM「One more time, One more chance(PIANO Ver.)」として2018年4月から6月30日まで使用される予定。

岩舟駅

駅からの道は本作のポスターなどにも使われている。
2016年の新海監督作「君の名は。」が大ヒットを記録すると、聖地巡礼に訪れるファンが急増したという。
この駅を選んだ理由について新海監督は「中学生が一人で行くには遠く、大人にとってはたいしたことがない距離で北関東をイメージし、訪れた雰囲気で決めた」と語っている。
また、この駅は2004年の岩井俊二監督作品「花とアリス」の冒頭シーンでも登場している。新海監督は「花とアリス」を高く評価しており、本作に岩舟駅を登場させたのはオマージュでもあると語っている。

深宇宙探査機 ELISH(エリシュ)

第二話と第三話に登場する、NASDAによって作られたという設定の架空の宇宙探査機。
1999年9月16日に種子島宇宙センターで打ち上げられたとされている。
第三話の2008年時点では海王星まで到達しており、海王星大気の詳細データの取得に成功したと科学雑誌Newtonで記述されている。海王星を通過後、太陽系外の深宇宙を探査する予定。
第二話では自分自身がどこまで行けるか悩んでいた貴樹にとって、想像を絶するほど遠くへ進んでいく存在とされている。

『秒速5センチメートル』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

チョビとミミ

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