超時空要塞マクロス(MACROSS)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『超時空要塞マクロス』とは、タツノコプロ・アニメフレンド制作の日本のロボットアニメ。 1982年10月から毎日放送(MBS)製作、TBS系列で放送された「超時空シリーズ」および「マクロスシリーズ」の第1作目である。飛行機好きのごく普通の少年・一条輝が、突如襲来してきた異星人との戦いの中でリン・ミンメイと早瀬未沙という2人の女性との恋をし、友情に生き、成長していく物語である。歌と文化と異星人との戦いを軸に、輝、ミンメイ、未沙の三角関係など、様々な人間模様が描かれている。

必死の思いで地球に帰還したマクロスだが、マクロスは異星人艦隊に目を付けられており、マクロスに住む南アタリア島の住民は公式見解では反統合軍ゲリラによって全員死亡したことになっていた。 そのため統合軍本部は住民の受け入れを却下、マクロスの地球退去命令を下した。
グローバルは断腸の思いで自らテレビカメラの前に立ちその命令をマクロスクルーと市民に伝え、深々と謝罪した。 その後を引き継いだミンメイが、いつかきっと地球に帰る日を信じましょう、と言って「マイ・ビューティフル・プレイス」を歌った。
ミンメイの歌が流れる中、演台から動けず肩を落とすグローバルを、なぜかカイフンがねぎらったのだった。

軍人嫌いのプロ市民とファンからいわれていたカイフンが、なぜ彼をねぎらったのか、その意図はいまだに不明である。
その後多少カイフンの態度が軟化するかと思いきや、まったくそのようなことはなかった。 最終決戦に協力してくれと言われたら文句を垂れ、終戦後は何事もなかったかのようにふたたびプロ市民として輝たちに反発するようになるので、ますますこのシーンの意図が分からなくなっている。 ただ魔が差しただけかもしれない。

マックスとミリアの星間結婚

第25話「バージン・ロード」より。悪い意味での伝説となった、マックスとミリアの初デートシーン。
マックスは輝と一緒にゲームセンターに行った時にミリアと出会い、次の日にデートの約束を取り付けた。 だがミリアにとってマックスは、戦闘時とゲーセン、2回も自分を負かした憎い敵だった。 次の日、公園で待っているマックスを、ミリアはナイフを持って襲い掛かった。 戸惑いながらもマックスはミリアとナイフで決闘し、辛うじて勝利した。 3度も敗れたミリアは涙を流し、マックスに「殺せ」と促すが、マックスはその姿に惚れてミリアにキスをした。 ミリアは抵抗せずマックスに身をゆだねた。

文章で書くとごく普通のツンデレなカップル誕生物語なのだが、動画を見たら全くそういう印象を感じないであろう。 すべてはスタープロクオリティと呼ばれる伝説級の作画崩壊のせいである。 出会いから結婚までが1日という超高速結婚など、どうでもよくなるほどの作画崩壊と言わざるを得ない。 「くっ…殺せ!」から「か、かわいい…」までの流れから、俗にいう「くっころ」の元祖という説もある。

エキセドルの熱唱シーン

第26話「メッセンジャー」より。ブリタイ艦隊とマクロスが正式に和平交渉をすることになり、ブリタイ艦隊の外交使節はマイクローン化した記録参謀エキセドルだった。 情報収集を得意とする彼は、マクロスと接触したころからマクロスの持つ文化に興味津々だった。 マクロス市内を案内されたときは、ここぞとばかりにエキセドルはあれこれ質問攻めにしたので同行した副艦長は困っていた。
グローバルたちとの会見は友好的なムードで進行するも、エキセドルはマクロスの力の源である超能力者を連れて来いといってきた。 グローバルたちは何のことかさっぱりわからなかったのでエキセドルは、自らその超能力を発した存在がミンメイであることを証明するため「私の彼はパイロット」を熱唱したのだった。 その姿を見た輝やスパイ3人組は、エキセドルの言う超能力とはミンメイの歌のことだと察したのだった。 ゼントラーディ人にとっての歌は、地球人以上に精神的に影響を与える媒体だったのだ。

エキセドル本人は、交渉の行方を左右する重要人物を呼び出すためその情報を自らの行動で示唆しているにすぎないのだが、地球人から見れば強面のおじさまが振り付け付きでアイドルソングを歌っているようにしか見えなかった。 そして視聴者にとっては予想外のギャップ萌えであった。
マイクローン化すると脳も小さくなるので巨人だったころの記憶容量とは全く違うのだが、あのエキセドルの行動はマイクローン化したことで記憶や感情が激減したことと関連があるかもしれない。

輝の鬱屈

第27話「愛は流れる」より。最終決戦での輝は、バルキリーのモニターからミンメイとカイフンのキスシーンを目撃する。
ミンメイの歌を盾に作戦行動をするというのは輝の案だが、それにキスシーンを加えたのはエキセドルだった。 ゼントラーディ人にとってキスという行為は空前絶後のカルチャーショックを与える最高の行為だからだ。
だが、輝にとってはミンメイとカイフンのキスシーンでしかなかった。 出撃前に輝はミンメイとのファーストキスをしていた。 それから大して時間は経過してないのに、今度はカイフンとキスをしている。 そしてミンメイは「小白竜(シャオ・パイロン)」を歌い始める。

自分の優柔不断を棚に上げてカイフンに嫉妬しているのか、そうやって嫉妬している自分に苛立っているのか。
その複雑な心境が輝の表情と、「小白竜」のイントロに合わせた「アターーック!」の叫びと、バルキリーの戦闘ぶりににじみ出ている。 バルキリーの戦いぶりは『大空舞う 銀(しろがね)の翼 燃える瞳 闇を裂く』という「小白竜」の歌詞そのものだった。

バルキリーの銀の翼が宇宙を舞い、板野サーカスの粋を集めたミサイル攻撃が闇を割く。
輝とミンメイの心は遠く離れていたが、2人の正義のための行いは悲しいほどシンクロしていた。

幼い輝と若かりしフォッカーの姿

第28話「マイ・アルバム」より。終戦後、地球は荒廃していた。
だが、輝は偵察中にタンポポ畑を発見した。 自然がよみがえりつつあるのを喜ぶ輝。
マイ・ビューティフル・プレイスのメロディとともに幼いころ、フォッカーと戯れていた光景を思い出していた。

まだ何も知らない子供だった自分と、ごく普通の飛行機乗りだったフォッカー。
空を飛ぶことだけで幸せだったあのころ。
あの頃の思い出も、フォッカーも、2度と戻らない。
それを証明するかのように、タンポポ畑のそばには量産型バルキリーの残骸が残っていた。
いつ墜落したのかわからない。 パイロットの姿はない。

輝とフォッカーの遠い過去は、作中ではこの回にしか見られない貴重なシーンである。

後に『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』の監督を務める高山文彦演出による。
ほのぼのした自然や日常生活と、ぬぐい切れない戦禍の跡や忘れ去られた兵器の残骸を同時に描くのが得意な高山の技が光る名シーンである。

朽ち果てたゼントラーディ人

物語冒頭とラストに出てくるゼントラーディ人の死体である。

彼がいつ、どのように死んだのかはわからない。
わかるのは、この兵士はミンメイ人形を大切に持ちつつもアーマーを脱ぐことをせず、市街地に行くこともなく、マイクローン化することもなく、カムジンたちに合流することもしなかった。 自分が所属していたであろう戦艦のそばで朽ち果てていた。
そして、この兵士は孤独であった。 ミンメイ人形の歌だけが友だった。

ミンメイ人形のオリジナルであるミンメイ本人はそのころはカイフンを失い、歌に対する情熱もなくなっていた。 孤独にさいなまれるのはミンメイだけではない、自分をこんな風にしたのはミンメイだ、責任取ってくれ、もう一度歌ってくれ、とこの死体は訴えているのかもしれない。

ミリア「子供を抱きたかったら自分で作ればいいだろう」

第30話「ビバ・マリア」より。輝、未沙、クローディアがマックス親子を訪問し、未沙がコミリアを抱かせてほしいとミリアに頼んだ時の返事。
返答しようのない未沙達を見かねたマックスがミリアに「抱っこさせてやれ」というと、ミリアはコミリアを未沙に向かって放り投げた。 ゼントラーディ人との混血なので地球人の赤ちゃんよりも骨格がしっかりしてるから、とマックスのお墨付きらしい。 ミリアの態度はコミリアをとられて怒っているのではなく、コミリアがちやほやされて喜んでいるとマックスは言っていた。

それよりも重要なのは、ミリアは「産んだ」と言わずに「作った」と言ったことである。
そしてミリアは出産に関しては何も言わないのに「キスはいいものだ」と言っているのも謎である。 実際ミリアが出産の苦しみを体験したならばそのことに関して何か言うだろうし、帝王切開であってもそれなりの意見は言うはずなのに何もないということは、それらを経験していないのかもしれない。 そして、このころ地球ではゼントラーディ人は誰でもマイクローン装置を自由に使えることになっていた。 マイクローン装置は本来クローニングのための装置であることも、コミリア誕生の秘密と関係があるかもしれない。

そして、21歳独身女性で、子どもと一緒にいるシーンは1度もない未沙がなぜか赤ちゃんを抱っこし慣れている様子や、19歳である輝の子どもが欲しいという願望を持っているのも謎である。

カイフン主導の帰れコール

マイクローン装置をカムジンたちが奪取する恐れがあるので、今まで所有している自治体に管理を任せていたのを軍の管轄にすることになった。 輝はトラッド・シティへその旨を説得しに向かった。 軍の管轄になっただけで今まで通り自由に使えると輝は言ったのだが、それに反発したのが、ミンメイのコンサートのため当地を訪れていたカイフンだった。
カイフンはゼントラーディ人や地球人をたきつけて、説得しに来た輝に帰れとシュプレヒコールを浴びせる。 その光景を車の中から見ていたミンメイは、輝が正しい、と言い出せなかった。
輝はやむなくマイクローン装置を置いて引き上げたが、その後カムジンたちがトラッド・シティを強襲し、マイクローン装置はすべて奪われた。 自分の至らなさを悔やむ輝とは逆に、カイフンは自分のせいでこうなったことに全く気付かぬ風にさっさとミンメイとともにトラッド・シティを後にするのだった。 ミンメイが輝にひかれつつあることにも気づかぬ風だった。

やはりカイフンにはプロ市民姿がよく似合う、と言ったところか。
自衛隊が不当にたたかれていた時代のメタファーだろうか。

余談だが、カイフンのほほの線は傷ではない。

カムジン親分の「文化的な」生活

戦力を補充したカムジンたちは、ミンメイとカイフンを人質にして戦艦と交換しようとした。
カイフンは「一度は文化にあこがれたじゃないか」と説得をするが、カムジンは一笑に付した。
「もう文化はお前らだけのものじゃない」と言い切るカムジンはラプラミズを呼びつけて「これが文化だ!」といってラプラミズにキスをした。
文化とは、異星人の行為や技術そのものだけとカムジンは思っているので説得は不可能だとカイフンは愕然とするのだった。

この時文化=キスされたラプラミズは今まではカムジンを利用していただけなのが、マックスにキスされたミリア同様この時から本気でカムジンに惚れたようだ。 しかしミリアと違う点は、闘争本能を押さえきれなかった点と、文化的教育をうけなかった点であろうか。 カムジンたちの覚えた修理や改善の文化は、すべて戦闘に関するものばかりだったのだ。

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