おおきく振りかぶって(おお振り)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『おおきく振りかぶって』とは、ひぐちアサによる日本の漫画作品。講談社「月刊アフタヌーン」にて2003年11月号より連載が開始された。従来のスポーツ漫画にはない繊細な心理描写や日常の細やかな描写が高く評価され、2006年には第10回手塚治虫文化賞「新生賞」を受賞した。2007年、講談社マンガ賞も受賞し、累計発行部数1000万部を突破。全く新しいタイプの野球漫画として高く評価されている作品。
弱気で卑屈な性格の投手・三橋を中心に、1年生だけしかいない県立西浦高校野球部が甲子園を目指す物語。

オレがお前をホントのエースにしてやる。そのかわりオレの言うとおりに投げろよ。首振る投手は大嫌いなんだ。

西浦野球部初顔合わせの時、自分の投球に自信がない三橋に自信をつけさせるために捕手である阿部が三橋に言った言葉。
三橋は、中学時代ヒイキでエースになったとチームメイトから蔑まれ、ひどいいじめを受けていた。そのため、自分の投球に全く自信がもてず、高校に進学しても野球を続ける気は持っていなかった。
しかし、野球への未練を振り切れず、野球部のグラウンドに足を運ぶと、監督の百枝に見つかり無理やりグラウンドに引っ張りこまれてしまった。
捕手の阿部に、投げてみないかと誘われたが、三橋は自信がなく卑屈な態度で誘いを断ろうとした。しかし、阿部の「マウンドをゆずりたくないなんて投手にとって長所だよ」という言葉に三橋は顔を上げ、「投手としてならオレは好きだよ」の言葉で投げる気になった。

弱気な三橋に自信をつけさせるため、いかにも飛ばしそうな花井を打ち取らせて自信をつけさせようとした阿部が花井と三橋の3打席勝負を言い出した。
阿部の挑発に乗った花井との勝負の前、三橋との打ち合わせで阿部が三橋に言ったセリフ。「オレがお前をホントのエースにしてやる。そのかわりオレの言うとおりに投げろよ。首振る投手は大嫌いなんだ」

阿部には投手に対しての不信感が根強く有り、自分のいいなりに投げる投手こそが理想とこの頃は考えていた。
阿部は後に、自分のこの考えを後悔・反省することになるが、ヒイキでエースと言われ続けた三橋には魅力的な言葉に感じた。

三橋が西浦のエースになるきっかけとなった言葉。

引用:おおきく振りかぶって 1巻

野球をホントに楽しめるのは…ホンキで勝とうとする人間だけよ

三橋が花井との3打席勝負に勝ち、阿部が三橋のまっすぐの特異性について説明した時、阿部は三橋の球は遅いけれど武器になる球で、それを効果的に使い、尚且つ1点取ってくれる打者と守ってくれる野手がいれば甲子園に行けると部員たちを鼓舞した。
しかし、武器になると言われた三橋はムリですと青ざめ、部員たちの士気を思い切り下げた。
その時に発した百枝のセリフ。
「野球をホントに楽しめるのは…ホンキで勝とうとする人間だけよ」

やる前からムリ無理言ってチームの士気を下げる三橋に1番はあげないと言い、三橋のトラウマを克服させるために、トラウマの原因となった三星学園との練習試合をすることに決めた。
エースになりたいなら弱気な性格を変えて見せろと三橋の本気を試した。

百枝の強い意志を感じる名セリフ。

引用:おおきく振りかぶって1巻

阿部が三橋の努力を認め、三橋のために尽くしたいと心から思ったシーン

三星学園との練習試合の日、かつてのチームメイトと合わなければいけない三橋はいつも以上に挙動不審になっていた。
三星の叶から声をかけられた三橋は、プレッシャーに耐え切れずその場を逃げ出した。
叶の方が三橋よりも上なのに、三橋がいるせいで叶がエースになれない三星学園の状況に不満を感じていた三星の捕手・畠は、中学時代から三橋に辛くあたり、いじめを繰り返していた。
今回の練習試合で三橋がまだ野球を続けていると知った畠は、逃げ出した三橋を追いかけ、三橋に野球を辞めさせるために「腕を折る」と脅していた。
そこに阿部が何気なく助けに入り、事なきを得たが、その現場を目撃したことで阿部は三橋が抱えていた傷を知った。
蹲り泣きじゃくる三橋の手を握った阿部は、三橋の掌に在る無数のタコに気づいた。
このタコを作るまで、9分割のコントロールを得るために、三橋はどれだけの努力をしたのだろう。
それにも関わらず、三橋の努力を認めず三橋の存在を否定し、理解しないままチームを追い出した三星学園のかつてのチームメイトに憤りを感じた阿部は、思わず涙をこぼした。

三橋の手を握りながら、努力を続ける三橋をいい投手だといい、投手じゃなくても三橋が好きだと阿部は言った。三橋の努力を報わせてやりたい、三橋の力になりたいと強く感じた阿部は、それが捕手の役割なのだと理解した。

三橋は、自分のいいなりになるただの駒、阿部の理想の投手として扱っていた阿部が、三橋のためにと考えを改めた瞬間。
三橋も阿部を信じ、2人の間に絆ができた名場面。

引用:おおきく振りかぶって 1巻

クソレフトー!!

西浦対三星戦において、パーフェクト試合をしていたにも関わらずレフト水谷のエラーによりパーフェクトがなくなり、その時に阿部が心の中で叫んだセリフ。

中学時代三星学園に通っていた三橋は、ヒイキでエースになったとチームメイトから嫌われ抜いていた。
三橋の自信を根こそぎ奪い、弱気で挙動不審な人物にしてしまったのは、元チームメイトからのいじめが原因だった。
それでも三橋は自分が悪いのだから、嫌われるのは自分のせいであると受け止めていた。

阿部は、三橋の投球、努力などを認め、西浦に必要な投手であると感じているのだが、三橋の様子は三星に未練を残しているように見える。
それならば、自分と組めば、三振を取れるし勝利を得ることもできると思わせ、三星よりも西浦を選んで欲しいと思っていた。そのために、出来れば三星からパーフェクトやノーヒットノーランなどの成績で勝利したいと阿部は考えていた。

その思いが強かったため、何でもない簡単なフライにも関わらず落とした水谷に対して「クソレフトー!!」と激しく憤ったのだ。
しかし、これは三橋へ尽くしたいという阿部の強い思いの表れ。水谷への罵倒ではあるが三橋を勝たせてやりたいという阿部の捕手としての気持ちから出た言葉。
阿倍の三橋への献身気持ちがよく現れている名セリフ。

引用:おおきく振りかぶって 2巻

ホントのエースになる!!

中学時代、ヒイキのエースと言われ、出場すれば負けていた三橋。叶にエースを譲れと言われても譲ることができず、それゆえにいじめを受け、最終的には捕手からサインを出してもらえなくなっていた。

しかし、西浦では皆に必要とされ、阿部からもサインを出してもらえる。打たれても落ち込んでも優しい言葉をかけてくれるチームメイトに支えられ、三橋は因縁の三星との対戦を投げきることができた。
西浦の勝利が決まった瞬間、三橋はガッツポーズを決めながら「オレはここでーホントのエースになる!!」と心の中で強く思った。
三橋が西浦の一員として、西浦のエースとしての三橋が生まれた瞬間だった。

卑屈な三橋が中学時代のトラウマを克服した名セリフ。

引用:おおきく振りかぶって 2巻

三橋が畠たちに中学時代のことを謝罪され、戻ってくるよう誘われたが西浦を選んだシーン。

中学時代、叶だけは三橋はヒイキでエースになったんじゃない、実力でエースになったんだと言い続けていたが、誰も三橋の実力を信用せず、叶の言うことを信じていなかった。
しかし、西浦と対戦し、三橋の真の実力を目の当たりにしたことで、叶が言うように、中学時代、試合をめちゃくちゃにしていたのは、三橋の力を侮り、手を抜いていた自分たちなのだと畠を始めとする三星野球部は理解した。
帰ろうとする三橋を追いかけ、これまでのことを謝罪し、三星に戻ってくるように叶や畠は三橋を誘うのだが、三橋の答えは「戻らない」だった。
知ってる人も誰もいない西浦で寂しくないのかと問う叶に、ちらっと後ろを振り返り今のチームメイトを確認した三橋は、「寂しくない」と答えた。
試合中は、三星の方を羨ましそうに見ていた三橋だが、敵としてではあったが、三星と野球をしたことで、中学時代のトラウマを払拭することができた。
さらに、謝罪を受け、また対戦しようと約束を交わしたことで、完全に三星と決別することができた。

三橋が過去のトラウマを克服し、これから西浦で頑張ると決意をした名シーン。

引用:おおきく振りかぶって 2巻

捕手が投手につくした分を投手は信頼で返すのよね。信頼されるっていいもんでしょ。

シニア時代、最低な投手とバッテリーを組み、投手不信に陥っていた阿部。当初は三橋との関係も、信頼関係を築くのではなく、ただいいなりに投げる投手だから都合がいいと考えていた。
そんな時に、監督・百枝に「阿部くんは捕手がわかってない」と言われ、百枝に反感を持った。しかし、百枝と2人で話し、真剣な眼差しで手を握られてたことにより、少しだけ百枝の言うことを聞こうと思った阿部は、三星との対戦の前に畠に脅され怯える三橋の手を握ってみた。
すると、三橋の手が冷たく震え、緊張していることが分かり、尚且つ、その手に多大な努力の後を見つけ、こんなにも努力している三橋を傷つけ追い出した三星に対して憤りを感じ、三橋を勝たせてやりたいと強く感じるようになった。
百枝が言っていた捕手の役割を理解し、三橋のために動き出す阿部。
西浦野球部に三橋の置かれた状況を話し、どうしても勝ちたいと頭を下げる。三橋のために尽くした阿倍の努力を報われ、三星戦で勝利を得ることができた。

三星戦の前、緊張でしばらく眠れなかった三橋だったが、対戦後はぐっすりと眠り、お越しても起きないくらいだった。
百枝は、この安心は阿部が三橋に与えたものだといい、「捕手が投手につくした分を投手は信頼で返すのよね。信頼されるっていいもんでしょ」と言った。
阿部は、三橋の寝顔を見ながら「捕手からの一方通行じゃないんだ、オレは3年間お前につくす。西浦を選んで良かったって必ず思わせるからな!」と決意した。

道具として三橋を見ていた阿部は、三星との対戦を経て、投手不信を払拭し、成長を遂げることができた。

頑なだった阿部の心を成長させた百枝の一言。

引用:おおきく振りかぶって 2巻

やっぱ笑顔がいいね

西浦野球部が春の県大会を見学に行った際、三橋は阿部がシニア時代スゴイ投手とバッテリーを組んでいたと知らされた。
そのスゴイ投手とは武蔵野第一のエース、榛名元希。西浦が試合を観戦する学校のエースで、大会屈指の左腕と評判の投手だった。

栄口から阿部は榛名と同じ学校に行くのかと思っていたと言われた阿部は、激しい言葉で否定し、榛名のことを最低の投手といい、二度と組みたくないと言い切った。

榛名の投球を見て、自分との違いをまざまざと見せつけられ、落ち込む三橋を栄口は呼び、阿部になぜ榛名が最低の投手なのか、三橋に聞かせろと言い出した。

阿部は、シニア時代、厳密に球数制限をしていた榛名のこと、負け試合には全力を出さなかったこと、球数制限のため、勝手にマウンドを降りたことなどを話し、投手としての才能はすごくても二度と組みたくないと言った。

話を聞いていた三橋は、阿部が榛名に怒っている理由を、自分との野球を大切にしてもらえず、きちんとしたバッテリーになれなかったことが悲しく悔しかったのだと感じて泣き出した。

蹲り泣き出す三橋の態度を見た阿部は、三橋に「お前さァ、もうちょっと泣いたりキョドったりすんの、ガマンできたほうがいいぞ。マウンドでの話だぜ。そんなにカオに出たら守っててバックが困っちゃうからな。マウンドでは…そうねェ、無表情もいいけど…やっぱ笑顔がいいね。バックは安心するし相手はムカツクし、やってみな」

ニカっと笑った阿部の笑顔を見た三橋は、阿部には自分が投げるのだという気持ちを強く持った。
阿部と三橋の絆がまた一歩深まった阿倍の一言。
これまで無表情が怒ってる顔ばかり見せてきた阿部が珍しく見せた笑顔が印象に残る。

引用:おおきく振りかぶって 3巻

ならオレ3年間ケガしねェよ、病気もしねェ!お前の投げる試合は全部キャッチャーやる!

taz046
taz046
@taz046

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