おおきく振りかぶって(おお振り、Big Windup!)のネタバレ解説まとめ

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『おおきく振りかぶって』とは、ひぐちアサによる日本の漫画作品。講談社「月刊アフタヌーン」にて2003年11月号より連載が開始された。従来のスポーツ漫画にはない繊細な心理描写や日常の細やかな描写が高く評価され、2006年には第10回手塚治虫文化賞「新生賞」を受賞した。2007年、講談社マンガ賞も受賞し、累計発行部数1000万部を突破。全く新しいタイプの野球漫画として高く評価されている作品。
弱気で卑屈な性格の投手・三橋を中心に、1年生だけしかいない県立西浦高校野球部が甲子園を目指す物語。

『おおきく振りかぶって』の概要

『おおきく振りかぶって』とは、ひぐちアサによる日本の漫画作品。講談社「月刊アフタヌーン」にて2003年11月号より連載された。累計発行部数1000万部を突破した大人気野球漫画。
テレビアニメが2007年から第1期、2010年4月から第2期がTBS・毎日放送他で、放送された。
野球漫画に革命をもたらしたと評される作品で、従来のスポーツ漫画にはない繊細な心理描写が丁寧に描かれており、高い評価を受けた。
軟式から硬式へとかわったばかりで新入生10人しかいない、しかも女性が監督を務める野球部が甲子園を目指すという王道を受け継ぐ筋書きでありながら、斬新な表現方法により「野球漫画に新風を吹き込んだ」と評価され、2006年第10回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した。
2007年第31回講談社漫画賞一般部門を受賞。
文化庁メディア芸術祭10周年企画「日本のメディア芸術100選」マンガ部門に算出された。
2010年12月25日発売の「月刊アフタヌーン」2月号にて作者が1年間休載することが発表され、休載期間中はショートストーリー「小さく振りかぶって」を不定期連載。2011年11月発売の「月刊アフタヌーン」1月号より連載が再開された。
休載の理由は作者産休によるものと判明した。

物語の舞台となっている埼玉県立西浦高校は、原作者ひぐちアサの母校がモデルとなっており、作者はこの作品を描くために足繁く母校に足を運び取材を続けているという。
「おおきく振りかぶって」は「おお振り」と略して呼ばれている。

中学時代、群馬県で祖父が理事を務める学校で「ヒイキでエースをやらせてもらっている」とチームメイトから疎まれ、トラウマを抱えてしまった三橋廉。埼玉県の西浦高校に進学し、軟式から硬式に代わったばかりで1年生のみの新設野球部に入部することになった。そこで、投手に不信感を抱く捕手・阿部や天才肌の4番打者・田島、他、チームメイトと出会い関わることで三橋は「ホントのエース」に成長してく。
1年生10名しかいない無名高校野球部が甲子園を目指す奮闘を描く物語。

『おおきく振りかぶって』のあらすじ・ストーリー

ホントのエースになれるまで

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西浦高校野球部初顔合わせで、「投げてみない?」と捕手・阿部に誘われたが、自信がなくてうずくまる投手・三橋

埼玉県の西浦高校に進学した三橋廉は、野球部募集のチラシを手にグラウンド周辺の様子を伺っていた。三橋は、中学時代群馬県の三星学園野球部に所属し、投手をしていたのだが、祖父が経営する学校でエースナンバーをもらっていたため、「ヒイキでエースになった」とチームメイトから疎まれていた。さらに、フォークを駆使する好投手・叶修伍が三星に居たため、叶にエースナンバーを渡せと言われ、それでもエースナンバーもマウンドも譲らなかったため、チームメイトからは嫌われていた。三橋は小柄で体重も軽く、まともな投球指導も受けていないため、球威はなく球速も遅い。しかも捕手の畠から極端に嫌われていたため、サインを出してもらえず、まともにリードしてもらえず、試合はいつも負けてばかりだった。
このため、自分に自信が持てず、極端に自虐的で暗い性格になってしまっていた。
エスカレーター式の三星学園ではなく、隣県埼玉の西浦高校に入学した三橋は、自分が野球をしたら人に迷惑がかかるから、野球をやってはいけないと思いながら、諦めきれずにグラウンド周辺を徘徊していた。
するとそこを野球部監督の百枝まりあに見つかり、グラウンドの中に連れ込まれた。

西浦高校は今年、軟式から硬式になった新設チームで部員はまだ1年生のみで10人しかいない。三橋の他に投手がいないため、三橋はこのチームでならば自分が投げていいのではと思うのだが、自信がなく、捕手・阿部隆也から「投げてみない?」と誘われても素直に頷くことができない。泣き出し、蹲った三橋から中学時代の話を聞いた阿部は、「マウンドゆずりたくないのなんて、投手にとって長所だよ」と三橋に話す。阿部の言葉に立ち上がった三橋は、阿部の構えるミットに投げ込むことになった。おどおどした態度と後ろ向きな言葉ばかりを言う三橋に閉口しながらも、三橋の球を受けた阿部は、三橋の曲球に気づいた。三橋の球種を確認した阿部は、自分に自信がない三橋に自信をつけさせようと、中学時代4番を打っていたという身体も態度も大きい花井梓を3打席勝負に誘った。花井は、野球部のグラウンドに来てみたものの、監督が女性であったことに不満を持ち、入部しないと口にしていた。阿部に挑発され指名を受けた花井は、自信たっぷりに「でかいの打てちゃうけど?」と言うが、阿部はさらに花井をあおる言葉を発し、花井を力ませる。サインの確認をするため、三橋と2人になった阿部は、まだグズグズと負けると泣き言を言う三橋に「お前をホントのエースにしてやる、そのかわりオレの言う通りに投げろよ。首振る投手は大嫌いなんだ」と威嚇した。
花井との3打席勝負、阿部のリードを受け投げる三橋は、阿部に煽られて力む花井を打ち取っていく。打席を重ねるごとに、花井も三橋の曲球に気づくが捉えることができない。阿部の力強いリードを受け、花井を打ち取った三橋は、阿部の配球の力に驚き、尊敬するようになった。
阿部は、三橋の曲球・「まっすぐ」について部員に説明しながら、三橋には制球力という武器もあるということも説明する。「今まで自分の力の使い方を知らなかったようだけど、投手としてお前は十分魅力的だと思うよ」と三橋に語る阿部に、三橋は「阿部くんがスゴイんだと思う…」と言う。阿部は部員に、三橋がいて球を取ってくれる野手がいて1点取ってくれる打者がいれば甲子園に行けると話しチームの士気を盛り上げる。
それでもムリだと騒ぐ三橋に対し監督・百枝はやる前からムリムリ言ってチームの士気を下げるような人に1番はあげないと言い、中学時代に負ってしまった三橋のトラウマを取り除くために、GW明けに三橋が逃げてきた因縁の三星学園と練習試合をすると宣言した。
そして、1年生だけの新設チームは動き始めた。

GWに合宿を行った西浦野球部は、野球部顧問で数学教師の志賀から練習の質を上げるためのメンタルトレーニングを受け、効率よく練習をこなしていく。
百枝は三橋のコントロールの良さは全力で投げていないからだと見抜き、体幹を鍛え速い球を投げられるように訓練が必要だと指摘する。しかし阿部は三橋の制球力と曲球があれば勝ち進めると反論する。むしろ全力投球でコントロールが定まらなくなる方が悪いという。
少しでも球威を上げたい三橋は阿部の言葉無視し百枝の言う通りの訓練を開始する。
中学時代、シニアのチームに所属していた阿部は、自分勝手な投手に振り回されて、投手不信に陥っていた。その点三橋は阿部の言うことに忠実でマウンドで自己主張をしない、阿部の理想の投手だった。
合宿の夜、1人でボール磨きをしていた阿部のところに百枝がやってきた。練習中に「阿部くんは捕手をわかってないね」と百枝に言われた阿部は、三橋の育て方についても百枝と意見が食い違っていたため、百枝に反感を持っていた。百枝は1チームにはほっといても良い選手が1人2人入るがそれだけでは足りない、阿部が3人目の良い選手になれれば、と話す百枝に阿部は反抗し、自分と百枝とでは目指す捕手の型が違うので、3人目にはなれないと言う。意味がわからないと反抗する阿部の手を強く握り百枝は「大丈夫、わかるよ」と言いながら阿部の目を見つめる。すると百枝の真剣な眼差しに負けた阿部は「どーすりゃ……いんすかっ」と百枝に白旗を揚げた。
百枝はニッコリと笑い「私のしたこと、三橋くんにしてごらん。イロイロなことがわかるよ」と言う。

それから阿部は三橋とコミュニケーションを取ろうと色々と話しかけるのだが、いちいちビクビクと驚き、言葉はどもりがちで人間不信に陥っている三橋とは会話が続かず、意志の疎通ができない。試合を明日に控え、眠れているか聞いただけなのに言葉はどもり目を合わせず、嘘をつく。そんな三橋に呆れた阿部は、この合宿で三橋と近づいたカンジが全然しないといい、それを聞いて涙ぐむ三橋に明日は全力投球しないで自分の言うとおりに投げろと命令し、三橋に背を向けた。中学時代のように嫌われるのではないか、何を言っても呆れられてしまうのではないか、中学時代のように嫌われてサインを出してもらえなくなったらせっかく三星を出たのに意味はないと三橋は落ち込み、ますます眠れなくなってしまった。

そして三星との試合当日、かつてのチームメイトに会うのが怖い三橋はいつも以上におどおどビクビクしてコントロールも最悪な状態になっていた。三星の投手・叶に話しかけられた三橋は、恐怖のあまりグラウンドから逃げ出した。三橋を嫌い、中学時代全くサインを出さなかった捕手・畠は三橋が逃げた事を聞くと三橋を追いかけ、なんでまだ野球をやっているのかと三橋を脅す。自分たちは三橋がマウンドを叶に譲らず3年間負け続けたことを許していない、腕折らなきゃ三橋にはこの怒りは分からないかと畠は三橋の真横を蹴りつけた。
そこに三橋を探しに阿部がやってきた。畠は阿部がやってきたことで会話を中断してその場を去った。会話を聞いていながらさりげなく三橋を助けた阿部は、畠が言ったセリフの真意を三橋に問いただした。ひどいいじめにあいながら、畠は悪くない、自分が叶にマウンドを譲らなかったのが悪かったと震えながら泣く三橋の状態を見た阿部は、百枝にされたように三橋の手を握り、三橋はいい投手だと励ました。しかし三橋は、阿部の言葉を信じず、嘘だとさらに大きく号泣し始めた。
なかなか泣き止まない三橋の手を握っていると、阿部は三橋の手にあるタコに気づいた。シュートのタコ、スライダーのタコ、こんなにたくさんのタコを作り、あの見事な9分割のコントロールを身につけるためにどれだけ努力を重ねたのだろうと阿部は思った。三橋の努力を認めず、三橋から自信を奪い、野球部から追い出した三星野球部に憤りを感じた阿部は、三橋の手を握りしめ、泣き出した。阿部の様子に気づいた三橋は顔を上げ、阿部の顔を凝視した。阿部は三橋に「お前はいい投手だよ、投手としてじゃなくてもオレはお前がスキだよ!だってお前がんばってんだもん!!」と言い、三橋の手を握り締めた。三橋のためになにかしてやりたい、三橋の力になりたいと強く思った阿部は、これが百枝の言っていた捕手の役割なのかと思い至った。
阿部の言葉が届いた三橋は顔を上げ、落ち着くことができた。

三橋と阿部が一緒に戻ってきたことで、2人の間に何かあったと気付いた百枝は、西浦の選手たちに、この試合は三橋が西浦のホントのエースになるための大事な試合だと檄を飛ばす。三橋が欲しいか、と大声を出す百枝に阿部は「欲しい!!」と叫び、それにつられた他の選手たちも三橋が欲しいと叫び、三橋に皆に必要とされていると分からせた。

なんとなくつられて三橋が欲しいと乗ってしまったと話す花井に阿部は、三橋と三星学園の関係を語りだした。中学時代のトラウマを克服させるためにはこの試合どうしても勝つ必要があると語り、どうしても勝って欲しいと阿部は皆に頭を下げた。
三橋を自分の駒としてしか見ていなかった阿部が三橋のために動く姿を見て、百枝はこの試合は西浦にとって大きな意味を持つものになると確信した。

そして西浦先攻で試合は始まった。
三星の先発は叶。三橋のせいでマウンドに上がれなかったにも関わらず、落ち着いたプレーで西浦の打者を3人で打ち取った。1回裏、三星の攻撃、かつてのチームメイトに睨まれていると自覚しながら、三橋は阿部のミット目掛けて阿部のリード通りに投げ込んでいく。阿部も技術の高さを見せつけるようにミットからいい音を響かせ、打者3人で打ち取った。2回表、西浦の攻撃は4番・田島から。抜群のセンスで見事叶のフォークをとらえ2塁打を打った。しかし、後続が続かず走者を塁に残して攻撃は終わってしまった。百枝は抜群のセンスを持つ田島でも体が小さいためにホームランを打つことができない、だから田島を活かすためには後続の力が必要なのだと選手に話した。
2回裏、三橋を舐めきっている三星ナインは、阿部のリードと三橋のコントロールに翻弄され打ち崩すことができない。叶は4番・織田に三橋の曲球を伝え、よく球を見るようにとアドバイスする。4回表、西浦待望の先取点が入った。顔色が変わった叶のもとへ三星の内野は集まるが、相手はあの三橋なんだから落ち着けというチームメイトの言葉に叶は「いいかげんにしろ」と怒り出した。三橋はいい投手で、これまで試合に負けていたのは三橋を贔屓だと決めつけて、試合に手を抜いていた他の選手たちのせいだと叶は言う。今4回まで三橋にパーフェクトで抑えられているのは、捕手の力が大きい、今まで負けていたのは畠のせいだという叶に、集まった内野陣はもめ始めた。高校から三星に入った織田が場を取りなし収まるが、叶は三橋を舐めないで真剣に試合をして自分を勝たせて欲しいと畠たちに頼んだ。叶の言葉を聞いた畠は、三橋より叶の方が上だと証明するために必ず逆転すると円陣を組んだ。

羨ましそうに三星の円陣を見る三橋に阿部は、三星より西浦の方が良い、西浦を選ばせてやると息巻き、ここまでパーフェクトをしている三橋に記録を残してやりたいと思っていた。
7回、レフトのエラーで出塁を許してしまったが、次を討ち取ればまだノーヒットノーランができると考えた阿部は、これまでの配球を考えた。4番・織田に対して三橋に要求した球は内にシュート。三星の監督から三橋の曲球対策を授けられていた織田は1球目、目を瞑り強振し、すぐさま阿部のミットの位置を確認した。織田は、これまでの配球と三橋のコントロールの良さから次の球は内にシュートと見切った。三橋は1球目織田が目を瞑っていた事や長年の経験から内にシュートは打たれると予感したのだが、首振る投手は大嫌いと言われていたため、首を振ることができず、阿部が要求したように内にシュートを投げた。3塁打を打たれた阿部は呆然とし、ノーヒットノーランも完封も消えたことにショックを受けた。5番・畠は三橋が投げるまっすぐの癖を見切り、ホームラン。西浦は逆転されてしまった。阿部のリードでも打たれてしまうと思う三橋だが、立たなければマウンドには立てないとして、逆転のショックを隠しグラブを構えた。その後は打ち取りチェンジになったものの、自分のせいで逆転されてしまったと怯える三橋は、ベンチに入れずベンチ横の隅に蹲る。三橋の心情を理解した阿部は、この逆転は三橋に記録をつけたかった自分の落ち度であると謝罪し、三星に未練がある三橋のために、はっきり差をつけて勝ちたかったのだと言った。
8回表、西浦の攻撃。無死満塁で4番・田島に回り犠打で同点、5番・花井がセーフティバントを決めて逆転に成功した。そのまま点が取れずに試合は進み、9回裏、三星の攻撃。4番・織田を三橋のまっすぐで三振に打ち取り試合は西浦の勝利となった。

試合後、畠をはじめとする三星の選手たちは三橋に中学時代のことを謝罪し、三橋に償うために三星に戻って来いと誘った。弱々しくも戻らないという三橋の言葉に叶は怒り、やっとみんな三橋の力を認めたのになんで帰ってこないのかと詰め寄った。三橋は中学時代、皆と野球がしたかったといい、今日三星と野球できてよかったと笑顔で話した。叶は、敵として戦って寂しくないのかと三橋に言うが、三橋は西浦ナインを振り返り、寂しくないよと笑って言った。
三橋が三星の呪縛から解き放たれ、西浦のホントのエースになった瞬間だった。

試合前、緊張でほとんど眠れず、三星との試合で疲れきり眠ってしまった三橋を気遣う阿部に百枝は「捕手が投手につくした分を投手は信頼で返すのよね。信頼されるっていんもんでしょ」と話しかけた。
阿部は三橋の安心しきった顔を見ながら3年間三橋に尽くすことを誓った。

スゴイ投手

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春の県大会で、スタンドにシニア時代にバッテリーを組んでいた阿部を見つけた榛名が、一年前より自分の球威は増しているからまた捕れなくなっていると宣言したシーン「よく見とけ」

春の県大会ベスト8の試合を見学に来た西浦高校。
そこで阿部はグラウンドから1人の選手に呼びつけられた。阿部を呼びつけた選手は榛名元希といい、シニアで阿部とバッテリーを組んでいた1つ年上の投手だった。
榛名は大会でも注目を浴びるほど豪腕の左投手で、名門と呼ばれる強豪校も榛名の投球を見にやってきていた。
榛名は阿部にどこの高校に進学したのかなどと聞きつつ、自分の球はかつて組んでいた時よりも凄くなっているからよく見とけと言った。
栄口は榛名のことを「スゴイ投手」と評し、シニアでバッテリーを組んでいた阿部は榛名と同じ学校に進学すると思っていたと阿部に言う。
それを聞いた阿部は絶対に嫌だといい、榛名を「最低の投手」と評した。

ブルペンに入った榛名の投球を見た三橋は、自分とは全く違う剛速球を投げる榛名見て泣くほど驚いた。そんな榛名の球を受けていた阿部が、自分の球を褒めてくれるが、その言葉を鵜呑みにして調子に乗ってはいけないと三橋は思った。野球は投手1人の勝負ではなく、チームでするものだから、自分が投げさせてもらえるならば、一生懸命投げようと三橋は思った。

栄口から榛名がなぜ最低なのかと聞かれた阿部は、シニア時代の話を始めた。
榛名が中学2年、阿部が1年の時に阿部が所属するシニアチームに榛名が入部してきた。
中学の野球部で故障したため、人に対して攻撃的で、防衛本能剥き出しにしてくる榛名は阿部やチームメイトにとって非常に扱いにくい選手だった。
監督の命令で榛名と阿部はバッテリーを組むことになったが、当時体の小さかった阿部に対し、榛名が思い切り投げられないと不満をこぼすと、阿部はそこまで下手ではないと反論した。その言葉に責任を持てと榛名は言い、阿部に対して手加減なしで容赦なく投げ込んでいく。おかげで阿部の体には榛名の球を受けそこねた時にできた痣が無数に出来てしまった。半年が過ぎ、榛名の球を取れるようになった阿部は、エースになった榛名の球を唯一捕球できる捕手としてレギュラーになっていた。
榛名は剛速球投手なため、コントロールが悪い。それでも配球を組立て、サインを出すのだが、榛名はサインに従わず、自分勝手に投げたい球を投げる。指示に従えという阿部に対し、榛名は投手には首を振る権利があると反論した。関東ベスト16、これに勝てばベスト8という試合、榛名が投げる前に5点取られ、榛名は既に負け試合と断じていた。それでも阿部は、榛名がたった1球でも全力投球をしてくれたら流れが変わるかもしれないと思い、榛名に全力投球して欲しいと頭を下げた。しかし榛名は阿部の要求を拒み、負け試合で全力投球をして怪我をしたくないと言った。厳しい展開の試合の中、阿部は榛名に速球を投げて欲しいと頼むのだが、しつこいと一蹴されそれ以上言ったらマウンドを降りるとまで言った。榛名が四球を出し、無死満塁の場面で、榛名は球数を計算し、80球になったためマウンドを降りた。榛名は厳密に球数制限をしていてどんな場面であっても80球以上は絶対に投げなかった。
榛名のその姿を見た阿部は、公式戦であるにも関わらず、勝負を捨て、自分勝手にマウンドを降りる榛名とそれを許すチームに幻滅し、自分は何のために榛名の球を捕っていたのかと疑問に思うようになった。結局その試合は負け、トイレで泣いていた阿部に榛名は「泣くほどのことかよ…」と言った。阿部は榛名のその言葉に激昂し、榛名の胸ぐらを掴み、壁に押し付けた。すると榛名は逆上し、怪我をしたらどうするのかと阿部を睨みつけた。
結局、榛名にとって阿部たちシニアのチームはただの練習道具に過ぎなかった。
このことから阿部は榛名の実力は凄いと思っても、チームのエースとしては最低で、二度と組みたくない相手だと語った。
その話を聞いていいた三橋は、阿部が榛名を許せないのは、チームのエースとしてではなく、自分とやっている野球を大事にして欲しかったから怒っているのだと理解した。阿部には榛名ではなく自分が投げるのだという決意を三橋は固めるのだった。
最終回、2死で走者はなし、ボールカウント2-1という状況で、榛名は阿部の方をちらりと見て合図を送ると、たった1球、全力の投球を阿部に見せた。阿部も榛名の合図に気づき、西浦の4番・田島に榛名の全力投球を見ておけと指示を出した。
捕手が捕球できず榛名の全力投球はたった1球に終わった。
榛名が所属する武蔵野第一高校と浦和総合は武蔵野第一の勝ちとなり、西浦は試合を見終わるとすぐに帰っていった。
観客席を振り返った榛名は、阿部に待ってろといったにも関わらず帰られたことに怒り出した。榛名が故障した当時を知る武蔵野第一の控え捕手・秋丸は、榛名が故障のため一番腐っていた頃、なんだかんだぶつかりながら榛名と真正面から向き合いずっとつきあっていた阿部に対し、感謝していた。昔からの知り合いであっても、当時腐っていた榛名は目が荒み、家でも学校でも人を寄せ付けず怖かった。しかし、シニアチームに入り、阿部が榛名と向き合ったおかげで榛名はゆっくりと昔の榛名に戻っていったのだ。今榛名が当たり前に投げているのは阿部のおかげだと秋丸は思っていた。

西浦野球部が結成されて1ヶ月が経ち、花井梓が主将に決まり、副主将に同じクラスの阿部と内野の中心として栄口が指名された。
夏の大会に向けて、西浦野球部も動き始めた。
部員が10人しかいない西浦野球部はそれぞれ代えがいないが、特に投手と捕手はもう1人ずついないと連戦をこなせない。
三橋の他にも投手経験のある花井と沖が投手の練習を始め、田島が捕手として練習を始めることになった。
エースナンバーを他の人に渡したくない三橋は情緒不安定になり、捕手が阿部でなくなることに対しても抵抗し始めた。
阿部は丁寧に控え投手と控え捕手の必要性を三橋に話し、阿部が受けてくれないといい投手になれないという三橋の不安を取り除くために、3年間怪我をせず、三橋の球は全て阿部が受けると約束をした。これによって三橋は不安が取り除かれることになった。

捕手の善し悪しをいう場合、肩の強さ・フットワーク・頭の良さなどが重要視されがちだが、投手の力を引き出すためにはコミュニケーション能力も重要となってくる。ただでさえ扱い難い三橋に対し、阿部は苛立ちながらも非常に上手く立ち回っている。バッテリーの関係について百枝は満足していた。
選手1人1人に対し課題はたくさんあり、夏の大会までにめいいっぱい育てようと百枝は決意を固め、選手たちも夏大に向けて決意を新たにするのだった。

挑め

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西浦エース・三橋VS桐青エース・高瀬

夏の大会に向けた練習試合を全勝で終わり、西浦高校は試験週間に入る。百枝は選手たちに赤点取ったら試合には出せないからしっかり勉強しろと言い渡す。赤点になりそうな三橋と田島の勉強を見るため、他の部員も一緒に勉強をすることになった。
全員で入れる場所ということで、三橋の家が提供され、全員で三橋のうちに行った。そこで三橋手作りの投球練習場を見つけた阿部は、近くで見たいと言い、部員全員を誘って投球練習場を見に行った。阿部の目的は三橋の凄さを部員に分からせること。三橋に的を指定して投げさせてみると、三橋は寸分狂わず阿部の指示通りの所に投げ込んでいく。9分割を投げ分けられる三橋のコントロールの良さを目の当たりにした部員たちは、三橋の凄さを理解した。阿部は、野球センスの塊で大抵のことは上手くこなす田島に三橋の9分割が真似できるかと尋ねると、田島は「努力のタマモノだろ、マネはできないよ」と言った。部員たちから認められた三橋は、田島から甲子園に行こうと言われ、行きたいと力強く言えるようになっていた。野球部で出会った初日、「ムリだ」と言って百枝にケツバットを受けた三橋が、甲子園に行きたいという気持ちを持ったことを阿部は喜んだ。三橋の弱気は変えられないし、変わらなくても良い、自分のサイン通りに投げさえすれば性格なんてどうでもいいと思っていた自分を反省した阿部は、三橋がこれまでしてきた努力を無駄にしないように、全部活かして三橋を勝たせてやりたいと思うようになっていた。

夏の大会に出場するため、組み合わせ抽選会場を訪れた西浦野球部。三橋はトイレで武蔵野第一の榛名にぶつかり、注意されたもののケガの心配をされて、親切にしてもらったことで榛名に懐くようになった。
抽選会にて主将・花井は初戦の相手に去年の優勝校・桐青高校を引き当ててしまった。初出場であるにも関わらず強豪校に当たってしまい、多くの部員は1回戦負けを覚悟した。しかし、田島は桐青相手でも勝てるのではないかという。阿部も田島の意見に同調し、桐青のデータをきちんと分析してしっかり守れば、三橋が完封するから大丈夫だという。対桐青に向けて練習時間が足りないため、今後は朝5時に集合し、夜9時に練習を終わるというメニューを組み、部員一丸となって桐青に挑むことになった。

強豪校相手の試合で緊張していてはいつもの力が出ないため、ピンチの時でもリラックスできるようにメンタルトレーニングを始め、ピンチの時はサードランナーを見ることで緊張を緩和できるように訓練を続けていく。
選手たちの頑張りに触発された三橋や田島と同じクラスの浜田は、野球部の応援団を作り、試合を盛り上げる。保護者たちも集まり始め、保護者会が発足した。
そして、西浦対桐青の試合が始まった。

1回表、西浦の攻撃。立ち上がりに苦しむ桐青の2年生エース・高瀬準太をとらえ、得点圏内に走者を進めるものの、4番・田島が高瀬の決め球フォークとシンカーを空振りし、惜しくも得点できなかった。1回裏、桐青の攻撃では、三橋のゆるい球と桐青打線をしっかりと分析した阿部のリードによって6球でチェンジとなった。
2回表、ランナーコーチ(ベースコーチ)についた田島は、高瀬の牽制を2球見ただけでモーションを見切り、その後西浦の走塁に助けた。2死走者1・3塁の場面で、リードを広くとりすぎた1塁三橋が牽制球で挟まれ、その隙に3塁花井がホームに突っ込み、西浦が先取点をあげた。
緊張のため、3塁に走者がいたことを忘れ、1塁走者をアウトにすることしか考えつかなかった高瀬は、西浦に先制され自分が緊張していたことに気づいた。挟まれた三橋の必死の形相がツボに入った高瀬は、それでようやく目が覚め、本来のピッチングに戻った。三橋は2回裏の桐青の攻撃も3人で抑え西浦リードで試合は進む。
小雨が降る中で続けられ4回裏桐青の攻撃。1死1・3塁の場面でのスクイズを凌ぎ、この回も無得点で抑えた三橋だったが、雨で足が滑って転びそうになってしまった。阿部は今日のやたらテンションが高い三橋の様子が気になっていた。西浦の投手は三橋だけ、急増投手の花井と沖では桐青打線を抑えることはできない。阿部は三橋に異変が起こらないように気を配っている。5回表西浦の攻撃、三橋はデッドボールで出塁し田島の指示により盗塁成功。次の打者阿部は、グラウンドの荒れた部分を狙いプッシュバントを決め、走者1、3塁となった。続く泉がアウトとなり、バッターは栄口。桐青のスクイズ警戒が解けたところを狙ってスクイズを決め、西浦は2点目を追加した。5回裏、これまで阿部は変化球主体で配球を組み立てていたが、5回からはまっすぐを使い始めた。変化球でヒットを打たれ1死1、3塁。桐青の監督は雨でグラウンドが荒れているため、ゴロを指示するのだが、三橋のまっすぐは打者の予想の軌道より上を通るので、どうしても打ち上げてしまう。基本はボールの下を叩き打ち上げて打ち取れるのだが、強打を誇る桐青打線の打球はよく伸び、犠打となり1点が入った。
6回裏、桐青に1点取られ同点、7回表、西浦は無得点で終わり、7回裏桐青の攻撃。雨足が強くなり、いつもならファールになるゴロも転がらないラッキーヒットが2つ続き嫌な流れになってきた。マウンドの足場が滑り、三橋が暴投をし、桐青に3点目を与え、逆転を許してしまった。さらに桐青打線は打ち上げてしまう三橋のまっすぐの軌道を見始めたため、三橋の球数が増えていく。球数は7回まででそんなに多くはないものの、1球も気が抜けない桐青打線に向かって投げている三橋の消耗は激しい。
ベンチに戻った三橋が席を離れるのを不審に思った阿部は三橋を追いかけると、シャワー室でユニフォームのまま水を浴びて火照りを冷ます三橋の姿を見た。三橋の体力は限界に来ており、握力もなくなっていた。それでも三橋には自分が投げるという強い意志だけはある。三橋の状態に戸惑う阿部と下を向く三橋の前に、三橋のいとこ・瑠里が現れ、三星学園が7回コールドで勝ち、叶も7回を3人で抑えたと知らせた。関係者以外立ち入り禁止の場所のため、瑠里はすぐに追い出されたが、叶の頑張りは三橋に体力を取り戻させた。8回表、西浦の攻撃、巣山が出塁し、4番田島、好打者と認識されている田島には厳しいところを付かれ、今のところヒットはない。4番なのに打てず、この試合ではもう自分の打順は来ないと落ち込む田島だったが、すぐさまランナーコーチに出て、盗塁の指示を出す。桐青ベンチも田島がランナーコーチに出た時だけ盗塁してくる西浦に気づき、高瀬のモーションを盗んだのは田島だけなのだと西浦の監督は気づいた。1死満塁で迎え7番・水谷の打席、水谷が打った打球はセカンド方面に飛び、セカンドの足が雨で滑ったため水谷の打球はヒットとなり、1点が入り同点となった。
8回裏、桐青打線は三橋をとらえ始め、1死1、3塁、打者はヒットを打ち、ホームでのクロスプレーで阿部は体格のいい走者に吹っ飛ばされてしまった。ブロックの甘さを反省する阿部だが三橋は阿部が怪我をしたのではと真っ青になっていた。まだ西浦のピンチは続き、次の打者にはピッチャーライナーを打たれ、サードランナーをホームでアウトにするため、阿部はすぐにバックホームの指示を出した。しかし、阿部の怪我を恐れた三橋は返球がワンテンポ遅れてしまった。今度は阿部がしっかりと走者をブロックし、アウトとなったのだが、阿部はバックホームを躊躇した三橋に怒りを顕にした。阿部は三橋にくだらない心配で試合をぶち壊すなと言い、二度と逆らうなと言うとホームに戻っていった。その後は打者を三振に打ち取り、この回は1点のみ、桐青に逆転を許してしまった。
9回表、先頭打者阿部が出塁し、次の打者・泉も続き走者1、2塁となった。2番栄口がバントを決め1死2、3塁。3番・巣山は三振に終わり、4番田島の打席となった。これまでノーヒットの田島だが、選球眼は一級品。田島は小柄なため高瀬のシンカーにバットが届かず、ここまでノーヒットとなっていた。桐青バッテリーも小柄な田島ではシンカーに手が出ないとして決め球として使ってきた。2ストライクと追い込まれた3球目、高瀬が投げたシンカーを、振ったバットの遠心力で右手指3本のところまでバットをずらして打ち、ヒット。走者2人が戻り西浦が逆転した。
9回裏、三橋のまっすぐ対策のために球筋を見始めた桐青打線。阿部はまっすぐを決め球として使いアウトを取ろうとするのだが、中学時代、まっすぐを打たれ続けてきた三橋は怖くてまっすぐを連投することができない。三橋の恐怖が分かった阿部は、まっすぐではなくシュートを要求するのだが、雨と疲れにより回転が甘く思うところに決まらず、先頭打者が塁に出てしまった。コントロールには絶対の自信を持っていた三橋が自分の思うところに投げられなかったショックは大きく、マウンドで膝をついてしまった。三橋が崩れたら替えの投手がない西浦はそこでおしまいになってしまう。阿部は三橋を奮起させるために「三橋!!投げらんねぇなら替わってくれ!!」と三橋を怒鳴りつけた。三橋は投げることに強いこだわりを持ち、他の人にマウンドを譲りたくないという強い気持ちをいつも持ち続けていた。ヒイキでエースになっていた三星学園では、どれだけ打たれてもマウンドを譲らずに済んでいたが、ここではただの一選手である三橋は、監督の命令があれば花井や沖にマウンドを譲らなければならない。この大事な場面で、三橋以外にマウンドを任せられる選手はいないと阿部は分かっているが、あえて三橋を突き放し、三橋が自力で立ち上がれるように仕向けた。
阿部の思惑通り、マウンドを誰にも譲りたくない三橋は立ち上がり、グラブを構えた。まっすぐを投げ続けることは怖い、しかし、投げられなくなるのはもっと怖いとして三橋は阿部の要求通りに投球する。2アウト、3番島崎の打席で、三橋の球を捉えきれず打ち上げた打球はサードの頭を越えた。咄嗟に田島がグラブに打球を当て、ショート巣山の前に落とし、ファーストでアウトになるところが、足場が滑り巣山が暴投し1死1、3塁になった。ここで桐青は4番・青木に回った。まっすぐは打たれ始め、変化球も打たれている。もう自分は桐青に攻略されていると怯える三橋に、バックを守っている選手が檄を飛ばす。中学時代、誰にも声をかけてもらえなかった三橋は、もうボロボロの状態なのに、マウンドを譲らない三橋に声をかけてくれる西浦ナインに励まされ、阿部の構えたミットに向かって思い切り投げ込んだ。三橋のまっすぐは青木に打たれセンター前に飛んだ。センター・泉が飛び込んでキャッチしアウト、サードランナーがタッチアップでホームを狙う。カバーに入ったライト花井がホームに矢のような返球をし、ホームでタッチアウト。

夏の全国高等学校野球選手権埼玉大会、西浦高校は強豪桐青高校を5対4で破り、初戦を突破した。

桐青から千羽鶴を託され、次の試合へのエールをもらった西浦高校は、次の試合に向けて準備を始める。

翌日、力の限り投げた三橋は熱を出し、三橋を心配した阿部は三橋にメールを送るが返信がない。三橋は、試合中阿部に怒鳴られたことを気にしていて、阿部にどう対応していいのかわからなくなっていたのだ。三橋と同じクラスの田島や泉が三橋の家に行くと聞いた花井と阿部も2人についていき、三橋の家に行った。
「昨日はかっ勝手してスミマセンでした…!」と土下座をする三橋に阿部たちは驚き、勝手とは何のことだと聞く。すると阿部に替われと言われたのに替らなかったことだと三橋は言う。それは三橋を奮起させるための嘘だと阿部は言い、誤解は解けるのだが三橋のビクビクは直らない。泉から昨日の試合の総評をもらった三橋は、チーム全員が三橋のがんばりを褒めていることに驚いた。ぶるぶると震える三橋に泉や花井は、頑張っている投手に声を掛けることは別に普通のことで、特別なことではないのだと教えた。
逃げるように三星を出る三橋に叶は「お前がやってるのは違うんだ、ここでやめちゃだめだから!」と声を掛けていた。その時は叶の言葉の意味がわからなかった三橋だったが、西浦での野球が本当の野球で、苦しい時、ボロボロになった時に声をかけてもらえるのは普通の事だったのだとようやく理解した。
中学時代、ヒイキのエースと言われ、空気のように無視され続けていた三橋は、その中でも自分を理解し、やめちゃダメだと助言をくれた叶に「野球をやっててよかった。修ちゃん、ありがとう」とメールを送った。

三橋は、中学時代のトラウマからようやく脱することができたのだった。

3回戦

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対戦する崎玉高校ベンチの様子

3回戦の相手を偵察するため野球場に来た西浦野球部。崎玉高校と岩槻西の対戦を偵察する。実力的には岩槻西が上だが、崎玉の投手はスクリューボールを決め球に持つ好投手で、1年には10割バッターがいる。どうしても投手が気になってしまう三橋がスクリューを投げる投手に見入っていると、阿部が声をかけてきた。
阿部は、エースの三橋を心配し、桐青戦で3kgも体重が落ちてしまった三橋にあれこれ注意する。まだ成長するだろう三橋に少しずつ球速を上げていこうと言う阿部に三橋はムグムグと手で口を隠し、言いたいことも言わずに逃げてしまった。三橋と意思の疎通ができない阿部は苛立ちつい大声を出してしまうが、気の弱い者にとって阿部の大声は怒っていなくても、たとえ笑い声でも怯えてしまうのだと沖は諭す。三橋とこのまま意思の疎通ができないままではいけないと阿部はいろいろ工夫しているのだが、中々上手くできずにいたため、沖のアドバイスに従って、大声を出さないように気をつけて三橋に話しかけると、これまでになくスムースに三橋に話が通じ、阿部はこの大声が原因で意思の疎通ができなかったのだと理解した。

崎玉と岩槻西の試合は、崎玉の1年生のサヨナラホームランで決着がつき、3回戦西浦と対戦するのは崎玉高校となった。

桐青戦の最後の打席、バットをずらして打ったことで右手を負傷した田島の代わりに4番には花井が入ることになった。3回戦は田島負傷の余波で打順もポジションも変化する。崎玉戦に向けて、ミーティングをする中で、阿部は崎玉戦ではコールドで勝ちたいと言い出した。まともに投げられる投手が三橋しかいないため、少しでも三橋の負担を減らしたいという阿部の思惑だった。百枝は阿部に賛同するが、主将花井は難色を示す。10割打者の5番の対策を聞かれた阿部は、5番は敬遠すると話す。崎玉の5番は崎玉の精神的な支えであるため、5番が敬遠されるとなると、ベンチは腐ると踏んだからこその提案だった。
三橋は、阿部の気遣いがわからず、三橋が崩れたら負け、という言葉を勘違いしていた。本来は、花井や沖ではまだ公式戦で投げるレベルにないので三橋が投げられなくなったら負けたも同然、という意味だったのだが、三橋は、替われと言われても替わらないから負ける、と勘違いしていた。それを栄口に指摘され、誤解が解けた三橋。三橋の思考はまだまだネガティブで中々うまく気持ちが伝わらないのだが、阿部の努力もあり少しずつ分かり合えるようになっていく。

崎玉先攻で試合は始まった。三橋は1回を3人で抑え、その裏の攻撃では、攻撃が繋がり2点先制することができた。2回表、阿部は作戦通り5番を敬遠し、投手三橋は崎玉側応援席からヤジを受けることになった。阿部の思惑通り、崎玉ベンチの士気は頼みの5番が敬遠されたことで下がり、2回も無得点に終わった。西浦は2回にも1点を入れ0対3。3回裏にも押し出しで1点を入れ0対4となった。4回にも田島の見事な走りで点をいれ0対6、西浦は順調に点を重ねていく。5回表、崎玉はファースト田島が何かおかしいことに気づいたのだが、それに付け込み点を取ることができない。田島は右の手の負傷で送球ができないのだが、三橋を送球に使ったり、足でアウトにしたりと大活躍する。

この試合で百枝は花井の実力を引き上げることを目的としていた。花井は実力的には西浦No.2なのだが、No.1の田島の野球センスが良すぎて、田島のライバルにはとても成り得ない。これからの西浦の成長のためには、花井の実力を上げて、田島のライバルとなり2人で競いあうことで更なる成長を期待できると思っていた。
そのために百枝は、田島負傷で4番の座に座った花井に、プレッシャーをかけ、それに打ち勝って成長してもらおうとしていた。花井自身も田島と自分との差を歯がゆく思っており、自分の中では田島をライバルとして見ていた。しかし、当の田島からはライバルと認識されていないことを悔しく感じていた。

5回は両チームとも無得点に終わり、6回表西浦の攻撃。崎玉の1年生捕手・佐倉はまだ捕手としての経験も浅く投球の組立などは投手に任せきりになっている。さらに、野手上がりの2年生投手・市原も投手としての経験が浅い。捕手に頼ることもできないため投手の負担は大きい。6回裏、西浦の攻撃は、9番・三橋の打席から始まった。三橋は長年の経験から市原が捕手にリードされていないことに気づき、ホームベースにかぶさるように構えることで次にどこに投げるかを予想、ヒットを打った。1番・田島がバント、2番・栄口もバントを決め、2死3塁。市原は3番・泉を敬遠し、2死1、3塁でこの試合ノーヒットの4番・花井との勝負を選んだ。1球目のスクリューを見送り、2球目、花井の打球は外野を抜け、三橋・泉がホームに生還し花井は2打点を挙げた。走者・花井は3塁まで行こうとするが、佐倉の肩の強さのおかげでアウトとなった。

7回表、ここで点が入らなければコールドとなる。先頭打者をフライに打ち取り、1死。次の打者・佐倉のような強打者と公式戦で戦っておきたい阿部は、この打席だけ敬遠を避け勝負に出た。外野を思い切り下げ速球で挑むと、打球は大きく伸びたがセンター・花井がフェンスギリギリで受けアウト。最後の打者を三振に打ち取り、0対8、7回コールド西浦勝利で試合は終わった。

この試合で花井は成長し、小柄な田島が背の高い花井にコンプレックスを持っていることが分かり、これから2人はライバルとして競い合っていく。

帰りの電車で崎玉高校と一緒になった西浦野球部。崎玉の佐倉から練習試合で勝負して欲しいと言われた三橋は、7回の佐倉の鋭い打球を思い出して「しない」と言いはる。
今回の試合で佐倉を敬遠したのは、自分に力がないからだと思っていた三橋は、佐倉からの申し出に頷くことができなかった。そんな三橋に阿部は、どんな剛速球投手にでも敬遠は提案する、チームが勝つ確率が高い方をいつも選んでいるだけなのだと説明した。阿部は三橋に対し、練習メニューや日常生活のことまで口を出し、三橋を気遣うのだが、周囲は阿部の細かさ、うるささをうっとおしく感じていた。しかし当の三橋は自分は大切にしてもらっていると思い、さらに頑張ろうと思うのだった。

4回戦、西浦は港南高校の対戦に勝利し、次は美丞大狭山高校との対戦になる。桐青と繋がりがある美丞大狭山高校の監督とコーチは、西浦が桐青を破った時点で西浦に注目しており、そのデータを念入りに分析していた。三橋の曲球、制球力、田島の実力、などを調べ上げ、西浦に付け込む点があるならば捕手の配球パターンにあると目星をつけていた。

5回戦

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対戦する西浦の配球データの解析をした監督をイマイチ信用していなかった部員が、監督の予想が的中していたことに驚き「オレら監督を信じますね!」と宣言し、「ようやくかよ!」と返した美丞大狭山高校の20歳の若き監督。

西浦対美丞大狭山の5回戦が始まった。
1回表狭山の攻撃、1回戦の桐青との試合からずっとデータをとり、阿部の配球を研究してきた狭山打線は、阿部の配球を見切り楽々と打ってくる。打球の見送り方、打ち方など、違和感を覚えるものの、打者の苦手をついているはずの阿部には打たれる理由がわからない。
ヒットの後、4番で主将の和田に2ランホームランを打たれ3点を取られてしまった。
1回裏西浦の攻撃、西浦も狭山に負けず、投手の球を捉えるのだが、狭山の好守により点が入らない。
2回表、西浦のピンチは続きさらに1点を追加されることになり、三橋は狭山用に作ったデータは役に立たないのではと思い始めた。データを読んでいた三橋は、打たれたコースは打者の苦手コースだったと気づき、阿部と百枝に進言する。阿部は自分の配球の癖を読まれていたことを知り、狭山打線を攪乱させるために、いつも阿部の指示通りに首を降らない三橋に、ダミーで首を振らせる作戦に出た。
2回裏、ベンチからグラウンドを見ていた田島は、打者によって守る位置を変えている狭山の守備を見て、自分たちは研究されていると気づいた。百枝は選手に自分たちは研究されてきているので相手の研究の裏をかくようなバッティングにするよう指示を出した。
3回表、狭山打線のからくりに気づいた阿部はクリンナップを3人で抑える配球をみせた。
3回裏、8番から始まった西浦打線。先頭打者の水谷がヒットで出塁し、9番三橋がバントで2塁に送るが捕手が2塁に送球、際どいところだがセーフとなり、三橋自身もセーフとなり走者1、2塁となった。1番泉もバントで2、3塁に走者を運んだ。2番栄口がヒットで1点を返し、続く3番巣山がバントで送り2死2、3塁、4番田島は三振となり西浦の得点は1点に終わった。
4回表も三橋は狭山打線を打ち取り、その裏、西浦は1点を返し4対2と追いついてきた。

スタンドから観戦していた美丞大狭山のコーチ・中沢呂佳の隣に、中沢の後輩で桐青の主将・河合が座った。
狭山の捕手・倉田がベンチを出入りする際にチラチラと中沢を伺うように目線を送るため、河合は中沢と倉田の間に何らかの指示があるのではと考えていた。
スタンドから指示を出すことは禁止された行為であるため、河合はさりげなく中沢の様子を見ることにした。

5回表、狭山に1点を追加されるものの、4番を三振に打ち取り5対2となった。
ベンチに戻り、百枝と配球の確認をしていた阿部の「三橋に首振らせて」という言葉に引っ掛かりを覚えた百枝は、阿部に投手に首を振らせるサインがあるのかと問いただした。
本来、投手がサインに首を振るのは当たり前のことなのに、これまでの試合で三橋が首を振ったことを見たことがない。
百枝はこの歪なバッテリーの関係に教育的指導の必要性を感じた。
阿部は、三橋が首を振らないのは、初対面の時に首を振る投手は大嫌い、首を振るな、と自分が言ったせいだと理解していた。阿部は罪悪感を感じつつも、三橋は自分のリードに満足しているから首を振らないのだから、わざわざ今更自分の意志で首を振れなどと言わなくてもいいと思っていた。

5回裏、泉・田島・花井の活躍で2点を返し5対4と追いついてきた西浦打線。
狭山の捕手・倉田はどんどん縮まっていく点差にある恐怖を感じていた。

それというのも、狭山にはもう1人正捕手を務めていた選手がいたのだが、倉田は、コーチ・中沢の言う事を聞けば、レギュラーに推薦してやると言われ、その言葉に頷いていた。本来、倉田がこの試合の捕手に選ばれたのは自身の努力によるものなのだが、中沢は自分の推薦があったから倉田が捕手に選ばれたのだと倉田に伝えていた。中沢が倉田にさせていたのはラフプレー、相手選手にわざとぶつかり怪我をさせるということだった。
点差が縮まると中沢からラフプレーの指示が出るかも知れないと倉田は恐れ、スタンドの中沢の存在を常に意識していたのだ。

6回表、狭山の攻撃は無得点に終わり、6回裏、西浦の攻撃。先頭打者阿部が四球で1塁に進むが後続が続かず西浦も無得点。

7回表、狭山の8番・倉田は、これまで自分がしたラフプレーで怪我をした選手のことを思い返し反省していた。自分がコーチの言うことに逆らえば次からはレギュラーを外される。倉田は、これまで自分が怪我をさせた相手を思い、心の中で謝罪し、自分はラフプレイの責任を取って、高校で野球を辞めるから、この試合だけは全力でやりたいと考えていた。
先頭打者・倉田が2塁打を打ち、9番は三振に打ち取ったものの、1番川島にセーフティバントを決められ、1死1、3塁の場面。スクイズを読んでいた西浦バッテリーは、大きく投球を外したものの、上手く打者に当てられた。ファースト沖が打球をさばいたもののホームへの球がそれ、滑り込んできた倉田と阿部が交錯した。
それた送球を捕ろうと阿部は体勢を崩し、滑り込んできた倉田をスパイクで踏まないよう不自然な体勢で着地し、転倒した阿部は足を負傷し立てなくなった。

阿部が蹲る姿を見た倉田は「オ、オレじゃない!今のは」と叫び、動揺した。

阿部のケガは膝の捻挫で、途中退場となり、捕手は田島が受け持つことになった。三橋の球は全部自分が捕る、と三橋と約束していた阿部は、約束を破ったことを気にして三橋の腕を強く掴むが何も言えず、俯くだけだった。三橋は阿部に、「…アウトあと2つ取ってくる、よ」といい、阿部の気持ちを落ち着かせた。

三橋・田島バッテリーは試合で1試合も組んだことがない。その為、田島はリードが不慣れなため、経験が長い三橋を頼る。三橋は田島に頼られたことにより、今は自分がいろいろ考えなければいけないのだと実感した。そして、今まで自分の意見を言わず、阿部の言いなりに投げていたことを反省した。組立・配球という難しい事を阿部一人に背負わせていたことに気づき、この試合に勝って阿部との関係を変えなければならないと三橋は思い始めていた。一方の阿部もまた、「首を振るな」と言い、三橋に考えることをさせなかった事を反省していた。三橋から受ける絶大な信頼、盲信を心地よいと感じ、投手が首を振るという当然の権利を取り上げていた。阿部は深く反省し、この試合が終わったら、もっと三橋と話し合い、より良い関係を作らなければと強く感じていた。

7回、西浦の攻撃。4番田島は打席に立つが、次の回の配球について考えてしまい、打席に集中することができない。田島は4番としての責務を果たせないことに苛立ちを感じていた。8回表、なんとか狭山の攻撃を凌ぎ0点に抑え、8回裏、西浦の攻撃。花井・泉の活躍で1点返すことに成功した。
そして最終回、狭山の攻撃。西浦バッテリーの組立は基本田島が行うが、まだ田島が不慣れなためボール・ストライクの指示は百枝から出ていた。百枝のサインが狭山に読まれ、西浦バッテリーはピンチに陥った。狭山の4番にスリーランを打たれ点差が広がり11対5。西浦ナインに緊張が走ったが、投手・三橋が声を出しチームの支えとなった。9回裏、田島の活躍で1点返したものの後続が続かず、野球初心者である西広が三振に倒れ、11対6で試合終了となった。

この試合で西浦はそれぞれが足りないものを自覚し、特にバッテリーにとって、一方的な関係を解消する大きな転機となった。

狭山の倉田のプレイに違和感を感じ、倉田と中沢の間に何かあると感じた桐青の河合は倉田に忠告し、倉田もこの試合によって中沢の命令に逆らおうとする気持ちに変化していった。

西浦高校野球部の夏は終わったが、すぐに秋大会が始まる。
それに向けて野球部一同は意識を切り替え準備を始めた。

また始まる

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美丞大狭山戦で敗れた西浦野球部が目指す目標を決めるシーン。初回アンケート。

夏の大会は終わったが2週間後の新人戦、さらに1ヶ月後の秋大会に向けて、西浦高校野球部は、部員全員の意識・目標を統一させることにした。
選手全員それぞれの目標を出し合い集計すると、初回の統計では甲子園出場と甲子園優勝とに分かれてしまった。後日、熟考した選手が次々と目標を変え結果を統計すると、今度は全員が甲子園優勝を目標として掲げてきた。
百枝は全員の意思が一致したとして、これから甲子園優勝を目指すためのメニューを課していくと宣言した。

負傷した阿部の家を訪ねた三橋と田島は、美丞大狭山との試合を振り返り反省をしていた。田島は、阿部負傷のための突然の交代で、何の準備もしていなかったがために、試合中配球に気を取られて4番なのに打席に集中しきれなかった事を後悔していた。
阿部が新人戦に出ないのならば、前もって心の準備をしておきたいと田島は言い、阿部にしっかりと治せと言う。

阿部と三橋は、これまでのバッテリーのあり方を反省し、お互いに力を合わせて頑張ろうと誓い合った。

百枝は、部員たちの希望通り、甲子園優勝を狙えるメニューを与え始める。
まずはメンタルトレーニング、これまでのサーキットも3倍に増やし、日常生活の全てを野球のことを意識して過ごすように指示を出す。

百枝は、不測の事態に備えて、もう1人捕手を用意したいと考え、田島以外に一番適性のある花井が捕手の練習をすることになった。
4番と三橋を支える捕手の兼任はキツいと考えた花井は、阿部がいない間の正捕手を田島ではなく自分がすると言い出した。
それは、花井が田島を4番として認めているからこそ出た言葉なのだが、花井を田島のライバル、田島を越える打者に育てたい百枝には、花井の弱気、自分を下に見た発言を残念に思った。「自分が4番を打つ」と言えるほどの自信をつけて欲しいと百枝は願うのだった。

新人戦に向けての合宿が行われることになった。
負傷した阿部も参加することになり、三橋との関係改善のため、2人は多くの時間を一緒にいるように指示された。
三橋は阿部の病院通いにランニングで付き添い、ケガの経過を知ること、朝食を2人で協力して作ること、これが百枝から出された課題だった。
これまでは、阿部が一方的に三橋に言いたいことを言うだけだったが、合宿の朝食作りという点では、三橋の方が主導権を握ることができ、それから少しずつお互いに言いたいことが言える関係に向かっていく。

西浦は負けてしまったが、夏の大会はまだ続いており、準々決勝では武蔵野第一と春日部市立が対戦する。まだ80球の投球制限をしている榛名は4回から登板予定。
1~3回までは3年生のエース、香具山が登板していたのだが、3回途中で3点を取られ降板した。
リリーフとしてマウンドに上がった榛名は9回までを0点に抑える好投を見せた。9回表、武蔵野第一が追いつき同点となり延長10回表、ついに逆転に成功した。
80級制限を設けていた榛名だったが、緊迫した試合となりもはや球数は関係なく試合に勝つために投げるような気持ちに変わっていった。
10回裏、春日部市立の4番から本塁打を打たれたものの、11回表、榛名自身が本塁打で取り返し再び逆転、11回裏は榛名が3人で抑えて、武蔵野第一が5対4で勝利となった。

阿部はシニアでの経験から榛名に悪感情を持っており、榛名が自分たちより勝ち進んでいくことをよく思っていなかった。
阿部が榛名を意識していることを知っている三橋は、阿部に「今、榛名と組んでいたら」などという仮定を口にしてしまう。
阿部が辞めたら困る、という意思表示なのかもしれないが、「西浦辞める?」「キャッチャー辞める?」とわざわざありえない仮定まで持ち出していちいち心配する三橋に対し、阿部はイライラして大きな声を上げてしまうのだ。

その頃、武蔵野第一の榛名は、準決勝の相手、強豪ARC戦では先発させて欲しいと主将に願い出ていた。3年投手・香久山の気持ちを考えながらも、ARCに勝つためにはそれしかないとチーム一丸となっていた。

準決勝

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夏大準決勝。武蔵野第一対ARC学園。100球を超える投球で疲れが見えてきた榛名。

西浦高校は準決勝の武蔵野第一対ARC学園の試合を見学に来ていた。
三橋は、阿部が榛名に拘る理由を、凄い投手の榛名と本当のバッテリーとして組むことが出来なかったからだと思っていた。

先発の榛名は、強豪ARCの打線に初回から捕まり、3点を取られてしまった。榛名は捕手交代を願い出て、幼馴染の2年秋丸を捕手に指名した。
秋丸は、小さい頃から榛名の壁(練習相手)として榛名の球を捕り続けていた。そのため、榛名の癖や気持ちを誰よりも理解し、正捕手が捕れない速球もノーサインで捕れる程の実力を持っていた。
しかし、練習嫌いで野球に真剣に取り組まず、榛名の球を捕る以外のことは素人並みの秋丸だった。

秋丸が捕手になったことで、榛名は加減することなく速球を投げられるようになった。
初回に3点取られたものの、それ以降は無失点に抑えた榛名。7回表、武蔵野第一の攻撃で2点を返し、1点差となった。
7回裏、秋丸のミスが出て3点を追加された武蔵野第一、榛名は秋丸への怒りを感じていた。
正捕手が捕れない球を捕れる秋丸が、もっと真剣に野球に取り組んでくれれば、と榛名はいつも秋丸に発破をかけていたのだが秋丸は飄々と榛名の期待を裏切り、榛名は秋丸への期待を持たないことにしていた。
8回表、武蔵野第一が2点を返して、その裏、ARCの攻撃。秋丸の守備の拙さが露見しているのでそこを付かれて追加点を取られてはいけないということで、捕手を交代することになった。
榛名が疲れ始め2点を取られ、さらに榛名の投球は乱れとうとう10点目。榛名の渾身の投球もARCに捕らえられもう1点追加され、9回を戦わずしてコールドで武蔵野第一は敗れてしまった。

試合を観戦していた阿部は、榛名がチームのために全力で投げている姿を見て、理不尽な思いに駆られていた。高校の大会は真剣に投げるのに、シニアの県大会ではなぜあのように試合を投げてしまったのか、自分だって全力で投げてもらえたら、いいリードができたのにと、悔しく思ってしまっていた。

試合後、榛名に聞きたいことがあると三橋が言い、阿部と三橋は榛名を訪ねた。
阿部は榛名を目の前にすると、シニアでチームのことを考えない自分本位のプレーをしていた頃の榛名を思い出してどうしても口調が嫌味めいたものになってしまう。
「最後の球が今日一番速かったと思います。中学ン時ならあそこで全力はなかったっスよね」と言う阿部に対し榛名は、「はァ?なんで?中学だろうがなんだろうがあそこは全力だろ」と返し、阿部は榛名に対する怒りが抑えられなくなってしまった。阿部はシニア時代大量得点差があった負け試合であっても榛名が全力で投げてくれれば、試合の流れを変えられると思っていた。しかし、榛名は自分の肩を守るため、80球の投球制限をきっちりと守り、マウンドを降りた。
榛名は、阿部がその事をずっと怒っていたとようやく気づき、阿部に謝罪した。阿部も自分が負傷した今だからこそ、負傷して腐っていた榛名の気持ちが少し分かるようになっていた。榛名から、「あの一番辛かった時代に阿部がずっと付き合っていてくれたから、嫌な時間が1年で済んだ」と、榛名から感謝の気持ちを伝えられた阿部は、ようやく榛名へのわだかまりを解くことができた。

榛名は試合を観戦に来ていたシニア時代の監督に出会い、当時のことを謝罪した。榛名は当時、どれだけシニアで迷惑をかけていたのか、支えられていたのか知り、監督に深々と礼をするのだった。

三橋は、榛名の肩を触らせてもらい、その柔らかい筋肉に感動した。三橋は、榛名のような筋肉、筋力が足りないと実感し、それを補うために振りかぶって投げるのだと、阿部に宣言した。阿部もそれに賛同し、次の大会に向けて、春までに4つ目の変化球を物にしようと提案するのだった。

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男の中に女の子!紅一点バンド特集!

バンドの中に一人だけ女の子がいるバンドってありますよね!通称「紅一点バンド」! メンバーとの関係は?もしや恋人関係とかあるの?と色々想像が膨らみますよね! 有名なところで言うと、サザンオールスターズがそうですよね!紅一点の原由子さんは ボーカルの桑田佳祐さんと結婚していますし、あながちありな話なのかも。 というわけで紅一点バンドについてまとめてみました!

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