刻刻(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『刻刻』とは、堀尾省太による漫画作品、及びそれを原作としたアニメ作品。主人公である佑河樹里は、ある日兄と甥を誘拐したという脅迫電話を受ける。そして止界と呼ばれる時が止まった世界に入り、謎の集団と対峙し、家族と困難を乗り越えていく。謎多き世界の中で、家族を想う佑河家の奮闘を描いたSFサスペンス作品となっている。

『刻刻』の概要

『刻刻』とは、「増刊モーニング」(講談社)で2008年第10号から2014年11月号(第86号)に不定期に連載された堀尾省太による日本のSF漫画である。2014年47号の『モーニング』(講談社)では『プレミアム読み切り劇場REGALO』の枠で『刻刻 番外編-300日後-』が掲載された。アニメーション制作会社のジェノスタジオが制作を担当しアニメ化もされた。2018年1月から3月までTOKYO MXほかにて放送され、同年5月25日に全12話を収録したBlu-ray BOX(TEXA-001〜4)が発売された。
日常生活を送るどこにでもいるような普通の家族が、ある石を所有していることによって大きな事件に巻き込まれていく。主人公である佑河樹里と祖父であるじいさん、父親の佑河貴文はその石を狙う宗教団体の画策により、石の力で止界という時の止まった世界へ行くことになる。純真実愛会という名の宗教団体は佑河家が石を使う瞬間を狙っていた。教祖である佐河順治を中心に会員たちと雇われた男たちは、佑河家から石を奪おうと襲い掛かってくる。時の止まった世界で活動するには「霊回忍(タマワニ)」と呼ばれるクラゲのようなものが体内に入ることで可能となり、物語の中で重要な役割を担っている。
止界を自由に行き来出来る止界術のためには石が必要だが、佐河の狙いは止界術を使い何百年も生きて世界の行く末を見ることだった。目的のためには信者や雇った人間の命も厭わず樹里たちを追い詰めていくが、冷静な判断がゆえに事態は思ってもいない方向へと進む。
日常の時間が停止しているリアルな描写と、現実世界には存在しない異形の存在が物語をより混乱へと導く。刻々と変化する状況に次の展開が読めないスリルをもたらす作品である。

『刻刻』のあらすじ・ストーリー

止界へ

一見普通に見える佑河(ゆかわ)家の人々は、実はそれぞれに少しずつ問題を抱えていた。主人公である佑河樹里(ゆかわじゅり)は28歳ながら就職活動中で恋愛も上手くいっておらず、兄の翼は引きこもりだった。父親の貴文は会社をクビになり中年ニートと自虐している。どこか諦めムードの空気が定着したのは樹里の妹である早苗が父親を明かさず子どもを産んでからだった。
そんなある日、樹里は早苗に甥っ子である真の迎えを頼まれたが、ゲームばかりしている兄の翼に行かせることにした。久々に外に出て真を迎えに行った翼だが、帰り道で突然真と共に誘拐されてしまう。
佑河家には身代金を要求する電話が来たが、指定された時間に到底間に合うものではなかった。追い詰められた中、樹里の祖父であるじいさんは息子の貴文と樹里を呼ぶ。そして「努力」「両国国技館」と刻まれた石を持ち出し、手のひらを切って流した血を石の穴に入れると、クラゲのような浮遊したものが樹里たちの中に入ってきた。クラゲのようなものは「霊回忍(タマワニ)」と呼ばれるもので「止界」という、止まった世界で活動するために必要な存在だった。
驚く貴文とは裏腹に、樹里は自身が幼い頃に祖父と止界に入っていたことを思い出す。
過去に樹里はじいさんに連れられて止界へと来ていたことがあった。当時飼っていた愛犬のアンドレが寿命で死にそうな時、アンドレの死を樹里に受け入れさせるために時間を止めて説得していたことがあった。そのことは夢だと思い込まされていたが、同じ状況となり当時の記憶が蘇る。
そうして止界に入った樹里たちは翼と真を助けに向かう。しかしこれは佑河家に止界術を使わせる作戦であり、止界を信仰の対象とする「真純実愛会」という宗教団体が仕組んだものであった。実愛会が持つ石は属石と呼ばれエンジンのない貨物列車と例えられている。「努力」と書かれた石は本石と呼ばれ、同時に発動することにより属石の周りの人間も止界に入ることが出来た。実愛会の狙いは本石を佑河家から奪うことであった。後始末などの汚れ役のために雇われた男たちは、多くの情報を知らされないまま、金でつられ止界へとやって来た。またほとんどの信者は止界術を使い世の中のために利用するという志だったが、教祖の佐河や副代表の柴田はそれぞれの思惑が渦巻いていた。

強襲

実愛会の罠だと知らず翼と真の救出に向かい、3人は急襲される。貴文は背後から頭を殴られ意識を失い、樹里とじいさんも襲われ絶体絶命となってしまう。樹里は真を守るように覆いかぶさっていたが、じいさんは「真は連れて行けねえ」と言いながら樹里の腕を掴む。そこへ雇われ組の一人が殴りかかるが、真を残し樹里とじいさんの姿は消えていた。瞬間移動の様子を見ていた実愛会の教祖である佐河とナンバー2の柴田はじいさんを「本弟子」と呼び、佑河家の血によるものだという。
じいさんは続けて瞬間移動するが、短距離しか飛べず方向も不安定なためうまくいかない。逃亡を阻止しようと雇われ組の阿南が真を人質にし、殺そうとすると背後に巨大な異形が現れた。それは一本足に二本の長い腕があり、首から上は木の枝が生い茂っているかのような姿だった。体には呪文のようなものが書かれ、背中には大幣(おおぬさ)のような飾りが施されていた。
じいさんはそれを「管理人」と呼び、佐河は止界で止まっている人間・止者(ししゃ)への殺意に反応して出現するのだという。
阿南は管理人に気づかず真へ殺意を向けたため頭を握りつぶされ殺されてしまう。
その隙に樹里とじいさんは逃げ出すことに成功するが、自分たち以外に動く人間はいないはずの世界に佐河たちがいたことで混乱していた。今後のことを考えあぐねていたところ、貴文を忘れていることを思い出す2人であった。
その頃、気を失っていた貴文はそのまま実愛会に捕らえられてしまっていた。
落ち着けるところへ移動した樹里とじいさんは貴文の救出計画を練っていた。管理人は止まっている者を守る存在で、動く人間は警戒対象となる侵入者とみなす。貴文は管理人の守護下にないため急いで助け出す必要があった。また管理人は止界で遊び過ぎた人間のなれの果てであり、佑河家の先祖だという。

止者となっていた翼だが、死亡した阿南の霊回忍が翼の中に入り意識を取り戻す。その横で佐河は、樹里たちを追おうと動き出す柴田を冷静に止めていた。管理人の出現で実愛会の会員たちは茫然自失となっていた。管理人を「神ノ離忍(カヌリニ)」と言い、「大円行記」の通りの姿だったと会員は自身の使命を確信するが、雇われ組の飛野は柴田に神ノ離忍の存在を聞いていないと抗議する。佐河は「この世界には一定のルールがありそれに従い身の安全を考えている」と諭した。翼が様子を静かに窺っているところに1人の女が現れ、意識を失っている貴文の頭を足蹴にし、険しい表情で見下ろす。
その女は間島と言い、佐河から第二班の伝令を聞き、神ノ離忍の事は伏せておくように言われる。

一方、樹里たちは貴文を助けるため行動に移す。貴文を助けだし合流しなければ、一度術を解いて佐河たちと違う時間帯の止界へ移りたくても、貴文を止界に置き去りにすることになり、二度と会えなくなってしまうからだ。
貴文を救出した後、止界に入り直し翼と真を助け出す算段をつけ、じいさんは貴文の救出へ、樹里は石を確保しに行くことになった。
その話の流れでじいさんの瞬間移動について樹里は言及する。樹里はやってみようと力むが出来ず、じいさんは「「飛ぶ」としか表現のしようがない」と話し、止界へ入るときに体に入ってきた霊回忍との相性によるものでじいさんの「じいさん」も出来なかったと言う。
そして2人はそれぞれ目的の為に動き出し、じいさんは実愛会に連れられて行く貴文を見つけ後を尾ける。
場面は変わり、翼は状況が呑み込めないまま一人取り残されていた。縛り付けていたガムテープを自ら破り真の元へ行く。真は止者のため全く動かず、翼は誘拐された時に翼の手を放してしまった後悔と共に真を抱えて病院へ行くためその場を後にした。

能力の覚醒

22年前の出来事を思い出しながら、間島は伝令を伝えるため佑河家に待機している第二班の元へ歩いていた。
第二班と呼ばれる雇われ組と実愛会の会員は佑河家を占拠し、雇われ組は間島の噂話をしながら食事を取っていた。素肌にチェック柄のシャツを着ている男は間島に興味を示し、レイプを企む。
じいさんのいた離れでは男が部屋中に取り付けた盗撮カメラを回収していたが、そこへ間島が到着する。
間島は佐河からの伝令を伝えるため班員を集めるように指示し、止界術に使う石を神妙な面持ちで見つめた。そして班員が集まったところで神ノ離忍のことは伏せつつ、これまでの経緯とじいさんの瞬間移動に注意するように伝えた。そこで一人だけ特務として佐河の元へ行くよう指示し、間島に興味を示していた男が行く事となった。男は特務を受けることにより他のメンバーより優位に立てる狙いがあった。

その頃、翼は真を抱えながら病院を探し回っていた。止界という世界を理解できず、止まっている人間に話しかけるが反応はない。一人止界に放り出されているようだった。
じいさんは佐河たちが本部の建物に入っていくところを尾け、そこが宗教団体の施設であることを知る。敷地内へ乗り込もうとしたところに特命を受けた男がやって来た。じいさんは身を隠し動向を探るが、男は何も気づかず建物内へ入っていき、会員に声を掛け中庭に案内される。
中庭にはシートが広げられており、真ん中に縛られたまま止者となっている会員が置かれていた。男には雨合羽とナイフを渡され、佐河はその会員の処分をするように命じた。
その間じいさんは本部内へと侵入し中へと進んで行き、何も知らない男は止者を殺そうとナイフを向ける。じいさんが二階の大広間の部屋へ来ると、佑河家にある石に似た石を見つける。石と同じ場所には盗撮した映像を映し出す機械も置いてあり、自分たちが止界術を使う映像で止まっていた。それを見て驚くじいさんだったが、窓の向こう側には神ノ離忍が出現していた。
男は神ノ離忍に頭を握られ抵抗空しく潰されてしまう。嘔吐する会員もいる中、佐河は冷静なまま神ノ離忍の考察を続ける。霧散して消えていく神ノ離忍の砂のような物を手に取りそのまま舐めて味を確かめ、神ノ離忍がエネルギーを消費し縮んでおり、それが有限であることを推察する。

樹里が家へと向かう中、じいさんは以前から実愛会に狙われていた事を悟った。思考が頭を駆け巡る中、神ノ離忍が窓の向こうにいることに気がつく。霧散した神ノ離忍を眺めているうちに落ち着きを取り戻し貴文を再び探し始める。見張りが立っている部屋を見つけるが、隙が無く様子を窺うじいさんの一方、佐河と柴田は神ノ離忍について話し込んでいた。神ノ離忍を無力化するためには人を殺させエネルギーを消費させるしかなく、止界を暗殺術として使いたい柴田にとっては邪魔な存在だからだ。佐河は神ノ離忍は術の創始者が人体をベースとした人工物であること、間島の登場により止界の存在が実在することに感動したと語る。止界自体には興味のない柴田を見据え、創始者の心境に思いを巡らせていた。
中の様子を窺っていたじいさんだが、リスクを考え石を確保しているであろう樹里と一旦落ち合うことを考える。
しかしその頃佑河家では第二班が樹里を待ち構えるために家の中で待機していた。
帽子をかぶる長い髪を一本に束ねた男は、退屈しトイレだと言い外へと出る。また瞬間移動の話を聞いていた雇われ組の迫は人知れず瞬間移動を試みようとするがその瞬間を間島に見られ笑われてしまう。笑って気の抜けた間島は迫に意味深になぜ参加したのかを尋ねる。外へと出ていた帽子の男は用を済ませた後、自転車に乗っている止者の女性に目をつけた。同じころ樹里は家へとやってくる。見張りの男は樹里を発見し仲間に知らせ、警戒態勢になるが樹里は家へ入る前に何かに気づき警戒態勢を取った。樹里の目線の先には先ほどの帽子の男が、目を付けた女性の服の中に頭を突っ込んでいるところだった。樹里は襲ってきた輩の仲間と見なし、即座にその目的が石であることに気がついた。
樹里を捕まえようと一気に動き出す第二班だが、帽子の男が玄関に入ってきたところに樹里が乗り込んで行き、帽子の男の顔に膝蹴りを繰り出した。そのまま石を探す樹里だが石は見当たらず、そこへやって来た会員に押さえつけられてしまう。迫も続いて行こうとするが、間島は迫を引き留め「危ないよ、不用意に近づいたら」と忠告する。
絶体絶命の中樹里の目が白く光り、羽交い絞めしている男に手を当てると霊回忍を強制的に追い出し止者にした。突然の事態に困惑し戸惑う敵を次々と止者にしていき、石を持ち出し逃げることに成功する。その一部始終を見ていた間島翔子は22年前の奇妙な符合を思い出し、自身の記憶にあった出来事を確信する。

22年前のある日、樹里とじいさんが止界術を行った際に間島一家も属石を持っていて発動させてしまっていたのだ。当時間島は両親と兄の4人で母親の叔母の形見分けに行った帰りだった。間島は形見として珍しい石をもらっていたが、兄がそれを根に持ち意地悪をけしかけていた。父親に怒られ泣いている兄に間島は形見の石をあげることにした。妹から石を奪うように受け取った兄の手は涙で濡れており、石の穴へと涙が流れていった。それと同時に樹里とじいさんもまた石に手を重ね術を発動させていた。湯河家の石が発動したことにより、間島の石も発動してしまい、突然止界に閉じ込められてしまった。
状況が全く呑み込めない間島家はどんどん不安に掻き立てられていく。不安に耐え切れず、最初に父親が神ノ離忍と化し宙へ浮いて行って消えてしまう。次いで母親も神ノ離忍化していき、兄も追いかけるように宙に消えていってしまった。1人になった間島は泣きながら彷徨っていると、偶然樹里と出会い樹里の能力によって止界から出ることが出来た。しかし佑河家の術に巻き込まれたことによって間島は両親と兄を失うことになってしまったのである。
樹里もまた、逃げる際に間島と目が合ってから幼い頃に止界で彼女と出会っていたことを思い出していた。

家族の救出作戦

時は少し遡り、佐河の計画により神ノ離忍に殺された半裸の男からは、霊回忍が抜け出ていった。その霊回忍は真っ直ぐに真の方へ向かっていき、体へと入っていった。動かない真を横に、病院の前で座り込む翼は途方に暮れていたが、霊回忍が入った真は、誘拐され泣いていた時の続きのまま動き出した。驚く翼であったが、真の無事を確かめると再び歩き出した。真を守らないといけない重圧とどうしていいかわからない不安とで翼は少しずつ神ノ離忍になりかけていた。そんな翼には目もくれず、動かない世界を自由奔放に動き出す真に翼は振り回されるが、真の「帰る?」の一言で翼の目的が決まり、神ノ離忍化の危機は人知れず去ったのだった。

一方、樹里に逃げられた第二班の潮見は佐河へ報告へ向かった。間島は神ノ離忍となった家族が樹里の能力により、助け出すことが出来ないかと微かな希望を持っていた。
報告を受けた佐河は動き出し、人質として捕えていた貴文を呼び出し交渉を始める。佐河は言葉巧みに今回の騒動は佑河家側に原因があり、実愛会の正当性を訴えた。困惑する貴文を柴田は容赦なく暴力で追い詰めていった。

その頃じいさんは実愛会の狙いに気づき、家へ石を取りに行った樹里が危険であることを悟り、まずは集合場所へと急いでいた。しかしそこに樹里の姿はなく、家へ向かおうとしたところに樹里が現れた。
石を持つ樹里に安堵したが、樹里が裸足で首にも痣がついていることに気がつく。樹里が襲われたことを知ったじいさんは、樹里に石を取って来させた自分を責めた。
そして本部で見聞きしたことを樹里に話した。樹里もまた起こったことを話した。樹里はなぜ止界の事を黙っていたのかをじいさんに問いただす。じいさんは貴文と翼は心もとなく術の事は伝えないと決めていたという。
そこで樹里を止界に連れて行ってみた。しかし感情的になった樹里が無意識に能力を発動させてしまい、じいさんは止界から追い出されそうになってしまった。動けなくなって樹里とはぐれてしまったが、必死に術をかけ直し止界に留まり、樹里を探していた。樹里のいる止界と一瞬でもずれていたら、樹里を止界に閉じ込めてしまい、二度と会えなくなってしまう。樹里を探している途中で止者となった間島の姿も見かけるが気に留めているどころではなく、樹里を見つけた時は膝から崩れ落ち安堵した。
そんな経験から樹里に止界術を伝えることもまた危険と判断し、誰に相談することもなくここまで来てしまったという。しかし家族に相談しなかったことを納得できない樹里は食いつき、しばらく押し問答しながら翼と真が誘拐された場所へと向かっていった。しかしその場所には真の姿も翼も見当たらず、連れていかれたのかと思われた。しかし翼を縛り付けていたテープの外し方や、最初に殺された阿南が止者になっていることから、霊回忍が阿南から抜け出し翼に入っていき、翼が真を連れて逃げ出したと推測した。
同じ頃、佐河との交渉の席にいた貴文は、石を実愛会に返すという条件で手打ちにするという案を出され、じいさんの説得係として動くよう言われていた。

佑河家で待機している第二班では、樹里に膝蹴りを食らった帽子の男が止界を出ると主張し始める。間島が止界から出るには樹里が持ち出した石が必要であり、今の状態では無理であると言うと、男は怒り出した。嗜める加藤と言い争いになり、ヒステリーを起こした男は止者を殺そうとし神ノ離忍に殺されてしまった。
しかし登場するたび力を使って小さくなる神ノ離忍はとうとう崩れ落ちてしまう。崩れた砂の塊のような中から、丁髷を結った江戸時代の人物と思われる人間がミイラ化した状態で現れた。神ノ離忍の存在を知らなかった加藤と迫は、驚く様子を見せない間島に質問を投げかける。間島は加藤と迫に22年前に自身が体験したこと、家族が神ノ離忍になったことを話し、樹里の力で家族を止界から解放するための協力を仰いだ。
間島の事情を知った加藤と迫は間島に協力しようとするが、瞬間移動で突如現れたじいさんと樹里により加藤は止界から追い出され止者となってしまう。翼と真が家に帰ってくるだろうと考えた二人の、家の安全を確保するための作戦であった。
間島と迫は再び逃げる2人を追うが、見つけることは出来ず身の安全のため本部に戻ることにした。
本部の前では貴文がじいさんの説得役として入り口で待機していた。佐河からの差し入れのつまみを食べながら、止界術を隠していたじいさんに不満を募らせ思考を巡らせていたが一向にじいさんと樹里の姿は現れない。
樹里たちは家の状態を確認した後、貴文を助け出しに動き始めているところだった。そうこうしているうちに間島と迫が本部へとやって来た。
2人からの報告を聞いて柴田は怒るが、佐河は神ノ離忍に興味が尽きない様子だった。迫は本部に向かう最中に間島が、佐河の好奇心が家族に向けられるのが嫌で、神ノ離忍になったとは話していないと言っていたことを思い出していた。
神ノ離忍がいなくなったことを知った柴田は止者を人質に取り、見せしめに一人殺してじいさんと樹里の投稿を促せばいいと提案をする。過激な提案に間島は消えた神ノ離忍一体だけとは限らないからやめた方がいいと主張する。その主張に佐河は食いついた。神ノ離忍がまた出るかどうか佐河自身が止者を使い呼び出すこととなった。

佐河はこれまでの経験から、殺意の強さで神ノ離忍が攻撃してくるかが決まると予想し、殺意をコントロールすれば神ノ離忍を呼び出すことが出来ると考えた。
中庭にそのまま置かれていた会員に対し佐河はナイフを突きつけた。柴田を見張り役に付け殺意を徐々に上げていこうとするが神ノ離忍は現れる様子がない。さらに殺意を上げようとした時、柴田は何かに気がついた。
柴田が指を刺す方向に目をやると、そこには上半身だけの小さな神ノ離忍が浮いていた。そこにいる全員が息をのむ中、柴田は嘲笑いだし、その神ノ離忍を蹴り飛ばした。
自分の家族かもしれないと思っている間島は心中穏やかではなかった。小さな子供のような神ノ離忍の体をよく見ると見覚えのある服がくっついているのがあり、それが兄であることを物語っていた。
柴田はさらに調子に乗りナイフを持ち止者へ向け神ノ離忍を挑発する。小さな神ノ離忍は柴田の腕に掴みかかりへし折ろうとする。すると今度は間島の横に大きな神ノ離忍が現れた。それには母親の面影があった。
腕を握りつぶされ悶える柴田に、母の神ノ離忍は巨大な腕を振り上げ頭を弾き飛ばした。頭が吹っ飛び建物の窓に当たって落ちたところを、さらに巨大な神ノ離忍が握りつぶした。3体の神ノ離忍はそのまま砂のように消えていった。その巨大な神ノ離忍が消えていく時には父親が着ていたジャケットが見られたのだった。
その場にいた全員が放心状態の中、間島は動揺を隠しきれず、やりどころのない怒りを貴文にぶつけた。
貴文が間島に傘で叩かれているところを遠巻きにじいさんと樹里は見ていた。

投げやりになっている間島を心配し、迫は佐河を裏切り家族を助け出す提案をする。
じいさんと樹里は貴文の前に現れ、貴文は佐河の意向を伝え始める。貴文は自分が石の主導権を握ろうと考え、連れ去ろうとするじいさんを抑え込み説得しようとする。
隠れている会員や雇われ組は隙を伺い3人を囲む機会を狙っていたが、樹里とじいさんの連携により貴文は瞬間移動で連れ去られる。会員たちは追いかけるが、じいさんと貴文は揉めながらも瞬間移動で逃げ出していく。
さらに追いかける中には迫と間島の姿もあった。

その頃、下坂という会員が佐河の指示により佑河家へと来ていた。佑河家で止者にされた惨状を目の当たりにしたところに翼と真が帰ってきた。真の声が聞こえた下坂は止者になった仲間を浴室に隠し身を潜めた。
母屋にいる翼と真の元へ、下坂は包丁を手にして向かい出す。部屋の戸を開けるとそこには真がいた。そこへ翼がやってくると下坂は包丁で攻撃してきた。翼は間一髪のところで攻撃を避けると真に逃げるように指示し、下坂と取っ組み合いとなった。とっさに首を絞め下坂は動かなくなってしまった。翼は逃げた真を探し始めるが中々見つからない。そこへ樹里たちが家に到着し翼を発見するが、真の居場所が分からなくなり、精神が不安定になったことで神ノ離忍化しかけていた。樹里は必死に繋ぎ止め、霊回忍を追い出すことで神ノ離忍化を阻止した。
同じ頃に佑河家へと来た間島と迫は隠れていた真を発見する。真には翼を助けるためと言いくるめ、一緒に行動するように説得した。真を人質として樹里たちに言う事を聞かせ、家族を助け出す作戦だった。
樹里たちに逃げられた会員たちは佐河へ報告し、佐河自身が佑河家へと赴くことになる。

ビルの屋上から真に大声で樹里を呼び出させ、間島と迫の作戦は始まった。間島はビルの入り口で待ち伏せし、駆けつけた樹里たちにナイフを向け、牽制する。間島は神ノ離忍を呼び出すから、樹里に霊回忍を追い出すように指示をする。樹里はその神ノ離忍が間島の家族であることを推測していた。両者の間に禍根を残しつつも、樹里たちは進んで間島への協力体制を取った。
樹里は神ノ離忍に飛び乗るため隣のビルの屋上へ行き、間島は神ノ離忍を呼び出すために止者に向けて殺意を向ける。しかし一向に神ノ離忍が出る気配はなかった。しかし貴文がどの程度の殺意までなら大丈夫なのかを試そうとしたところ、すぐさま神ノ離忍は現れた。樹里は神ノ離忍に飛び乗り、霊回忍を追い出そうとするが、3体がくっついている状態だったため上手くいかない。神ノ離忍はなおも貴文に襲い掛かり、じいさんの瞬間移動でギリギリ逃げている状態だった。樹里がさらに霊回忍を追い出したところで神ノ離忍は砂のように崩れ落ちた。最後は間島に危害が加わらないように止まった形であった。しかし中から出てきたのは変わり果てた両親の姿だった。
しかしそこには生きている子供の姿のままの兄が立っており、霊回忍がズルルと出ていき止者となった。
目的を達成した間島と迫は佑河家と行動を共にすることとなった。

佐河の目的

佑河家にやって来た実愛会の7人は佐河と潮見を残し二手に分かれて石を探し始めた。佐河は止者となった翼を見て神ノ離忍になりかけていたことを悟る。佐河はこれまでの情報を照らし合わせ、神ノ離忍化の要因はその人間の精神状態に起因すると結論づけた。
間島の目的も家族の解放であることを薄々気づいていたが、気にもかけず興味は神ノ離忍に向けられていた。そして佐河は潮見に己の本当の目的を話し始めた。
佐河の目的は止界術を世の中のためや人助けに使うのではなく、自分自身のために何百年も生き、この世の行く末を見ることだった。自分に協力すれば実愛会を潮見に譲るとし、そのかわり自身の肉体の管理を頼む考えを示した。それを陰で聞いていたのが狂信的な信者の宮尾だった。石を探していた5人で集まり佐河の裏切りを伝えると、5人は佐河への不信感を抱き始めた。
その頃樹里たちは、間島の家族を車に乗せて止界から出た後の準備をした後、改めて間島と迫が樹里たちに協力体制を取ることを確認する。迫は雇われ組が、今後一切佑河家に関わらないようにするという約束をし、その代わり自分たちのしたことを不問にするという約束を交わす。
貴文は真を守る役目となり待機し、貴文以外の4人は佑河家へと向かった。会員の一人が見張っているところに、迫と間島が仲間のふりをして近づき話しかけた。2人が情報を聞き出したところで、樹里がじいさんの瞬間移動で現れ会員を止界から追い出すことに成功した。
宮尾と飛野は2人で石を探していた。飛野が道路に寝転がり休憩を取っていると、街路樹の茂みに浮かせて隠されていた石を見つけた。

一方で佐河は体内にいる霊回忍をコントロールしようと試みていた。潮見と共に家から出ようとしたところに、石を持った宮尾と飛野、残された会員2人が家へとやって来た。
宮尾たちは事前に、ひとまず佑河家を片付けるまでは佐河に従っているふりをしようと打ち合わせしていたが、宮尾は湧き上がる感情をコントロールできず、佐河へ実愛会の存在意義を問う。佐河ははっきりと実愛会の教義の教えを否定し、止界術の使用を禁じる。高ぶる感情のため、鼻血まで出す宮尾は佐河との決別を決心し、ナイフを取り出した。
佐河は好機とばかりに自身の霊回忍をコントロールし自我を保ちながらの神ノ離忍化を始める。
その実験として自分の意思で宮尾の攻撃を防ぎ山井を殺せるかを試す。山井は神ノ離忍化した佐河に首を握り潰され殺されてしまう。
とっさに負傷した宮尾を連れ逃げ出した飛野だが、宮尾は槍を作りだし再び佐河の元へ行こうとする。そこへ内情を知ろうとした迫が合流した。取り残された田辺は佐河の実験台として止者となった翼を殺すように命じられる。自身が神ノ離忍として止者を守る行動を取るかどうかを試すものだったが、様子を見に来た樹里が田辺を止界から出し阻止した。佐河は消耗したエネルギーを補給するためにスーパーに行ったと推測し、連れ出された翼を救出するために樹里たちもスーパーへと向かう。間島が潮見を佑河側に引き込もうとするが失敗しスーパーの屋上に追い詰められてしまう。間島は殴られ倒れこむが、助けに来た樹里とじいさんに気を取られた佐河のアキレス腱を切り事なきを得る。屋上から落ちた佐河は使いものにならなくなった足首を引きちぎり、動けなくなっているところに宮尾たちが遭遇し、さらに佐河を追い詰める。
しかし佐河は神ノ離忍の力で不完全だが足を再生させ反撃する。槍を奪い、よろけた宮尾をすり抜けた槍は飛野を貫通することになる。致命傷を負った飛野だが、佐河もまた消耗しその場を去った。その隙に樹里たちは翼を回収することができ、宮尾とも一時休戦となり佐河を共通の敵とした。

総戦力

貴文は真を連れ安全な所にいるはずだったが、石の主導権を握り止界術を自分の欲のために使おうと考えていた。そのため石を探そうと真を連れて家へと向かっていた。
樹里たちは潮見を止界から出そうと佐河の前へ行き、潮見を誘き出す作戦を実行した。しかし失敗に終わりじいさんはナイフで手を切ってしまう。そのナイフを置き樹里たちは家へ向かう。
その頃、死に面した飛野は神ノ離忍と化す。そして家についた真の元へ一直線に向かってきた。真を守るため貴文は神ノ離忍の前に立ちふさがるが、捕まってしまう。握りつぶされそうなところを、真が「じーじーをはなせ!」と言うと神ノ離忍は手を離した。「止まれ」と言えば止まり、真が神ノ離忍を操っていることは明確だった。
ちょうどそこへやって来た樹里たちは貴文が神ノ離忍を操っていると勘違いし、神ノ離忍化した飛野を佐河と戦わせることを思いつく。
作戦を立てているとおもむろに佐河がやって来た。間島と真が避難しようとその場を離れると神ノ離忍も真について行ってしまい、対抗する術がなくなりバタバタと逃げることになる樹里たちだが、混乱の最中に貴文は真を連れてどこかへ行ってしまった。
宮尾だけは佐河と対峙し、その結果腕を切り落とされてしまった。追い込まれたところに、じいさんの血の付いたナイフを見つけた潮見がやって来て、佐河と共に消えていった。
宮尾は戻ってきた樹里たちに応急処置をされ、佐河と潮見の話していた「じいさんの血を見つけた」こと、「石はあっち」「試す」と聞いたことを話す。間島はじいさんの血を使い止界から追い出すつもりだと感づき、佐河たちが行った方へと向かった。
石に手を置いていないと術は発動しないと思っていたじいさんは楽観視していたが、潮見が石の穴へじいさんの血を入れると術が発動を始めた。佐河と潮見は巻き込まれないようにその場から離れ、じいさんの体から霊回忍が抜け始める。ピンチを悟った樹里は、じいさんの瞬間移動で石の元へ行くことに成功し、術を止めるには石を破壊するしかないと判断し瞬時に破壊した。
それは止界から出る術が樹里の能力しかなくなり、樹里は止界に取り残されることを意味した。
佐河と潮見は異変に気がつき、石の元へ向かうと破壊されていることに気がつく。潮見は瞬時に止界から出る方法が樹里に頼るしかないことを悟り、佐河もまた瞬時に潮見が佑河家に寝返ることを読み取って瞬く間に二人は対立した。潮見は樹里の元へ行き、じいさんの瞬間移動で佐河から逃げ出した。
じいさんはすぐさま潮見をタコ殴りにした。潮見もまた殴られる理由を理解し大人しく殴られていた。樹里が止界から出られなくなったことに絶望するじいさんを横目に、潮見は淡々と佐河の目的や情報を伝える。
まずは佐河の居場所を突き止めるため、石の元へ瞬間移動したようにじいさんの能力で探ってみたが行く事は出来なかった。次に居場所が分からなくなっていた貴文と真を探すため、試してみるとすぐさま瞬間移動を成功させた。
そこには樹里たちの登場に驚く貴文と、神ノ離忍を操って佐河と戦闘をしている真がいた。追い詰められた佐河は神ノ離忍化した飛野の中身を食らい肉体の回復を図り、飛野は外殻が崩れガリガリの姿となって真の元へ戻った。まだ回復しきっていない佐河は逃げていくが、樹里はチャンスを逃すまいと追い詰めていく。ある一軒家の子ども部屋まで追い詰めたところで、佐河は休戦を提案する。そのかわり樹里を止界から出すというものだった。追いついたじいさんはその言葉に翻弄される。さらに佐河は自身の過去を語りだした。
教祖の息子という特殊な境遇だったことから、同年代との関わりが薄い佐河だったが、同い年の会員の息子とは友情を築いていた。しかし親同士の不倫を知り、佐河と友人の関係を歪めることとなった。それから5年後、父親が病死した時に事態は変わる。高校生になっていた佐河に友人は、「今度は教祖になった順治君が自分に奉仕する番だ」と言ってきた。やりきれない感情を神棚にぶつけると偶然にも壊れた神具の中から石が出てきた。それは実愛会に伝わる文献に登場する石に酷似しており、佐河は止界の存在を発見した。止界の存在を心の拠り所とし、友情も割り切り止界の研究にのめり込むようになる。
佐河は自分がいかに平凡で人間臭いかを語り、樹里が説得に応じるように仕向けるが、樹里の意思は固かった。佐河から霊回忍を追い出そうと能力を使うが佐河も抵抗し、簡単には追い出されない。しかし確実に弱体化している佐河にトドメを刺すため、樹里はカッターを手にした。じいさんは樹里の代わりに自分がやるとカッターを持つ。そこへ貴文が乱入し模造刀を佐河に突き立てた。貴文はいまだに石の主導権を握ろうとし、模造刀を何度も突き刺し、自分が頼りになることをアピールする。
あっけにとられるじいさんと樹里の横で、体が崩れ落ち死んだように見えた佐河だったが、目玉と脳だけが残り砂煙と共に逃げていってしまった。

樹里のゆくえ

逃げた佐河を追う樹里たちは民家と民家の間に糸を張り巡らし目玉と脳、そして肺まで再生している佐河を発見する。貴文は止めを刺そうと模造刀を振り下ろすが、糸の強度はカミソリのように鋭く、貴文の指は切り落とされてしまう。樹里はとっさに貴文を止界から出すが、佐河はさらに糸に囲まれ繭の状態になってしまった。
どうすることも出来ない樹里たちは潮見の提案で後始末をすることにした。意識を取り戻した宮尾は本石が破壊されたことに動揺し繭の形となった佐河に縋るが、佐河の再生のための養分にされそうになり、樹里が寸でのところで止者にした。それ以降変化のない状況となり、落ち着いてきたところで、樹里は止界に取り残される心の準備をしていく。
しかし佐河を見張っていた間島が異変を感じ取る。糸の範囲が伸びていたのだ。佐河がさらに追い詰めてきたと思われたが、樹里は繭の中が胎児になっていることに気がつく。
間島はそれを聞き効率よく再生するために霊回忍がそのように作り始めたと推測した。一度はひるむがそれでも決着を付けようと霊回忍を追い出そうとする。しかし予想以上の成長速度により繭から生まれ出てしまう。
樹里たちはその姿を見て育てることを決意する。警戒する潮見だが、間島の見解は佐河の細胞で分裂を繰り返して育った本物の子どもであり、佐河の脳細胞は養分に使われ消えてしまった。
その時点で佐河の記憶や意思は消えてなくなり別人格であると結論付けた。

それぞれを止界から出し、じいさんと樹里は赤ん坊を止界の中で育てていた。霊回忍を追い出すのは衝撃が強いから首が座ってからと決めていたからだ。
じいさんは樹里と止界にいようと決心していたが、寝ている間に樹里の手で止界から出されてしまう。
再び時間が動き出し、じいさんは元の世界へ戻ってきたことを理解した。だが樹里の姿はどこにも見当たらなかった。迫は約束通り仕事の終わりを仲間に告げようとするが、止界から出た反動で誰もが二日酔いのような状態になっていた。間島は兄をトラックの助手席に乗せ、安堵の表情を浮かべていた。そしてそのまま町の中へと走り去っていった。
じいさんは泣き叫ぶ赤ん坊と、樹里が書き残したノートを見つけた。ノートの最後には「ちょっと遠出します。帰ってきたらまた書くね」とだけ書かれていた。

止界の中で赤ん坊の世話をしているうちに5か月になり、樹里は葛藤する。
止界から出せる程成長したが、赤ん坊の存在が樹里の決心を鈍らせていた。しかし意を決し止界から出すと樹里は家を出ることにした。自分なりに止界で暮らしていくため心を整えようとしての事だった。
町中を歩いていると霊回忍の深海魚のような存在を見かける。それは片目がくりぬかれており、樹里を見た後はふいとそっぽを向き消えていった。樹里は止界の事を考え始めると次第に思考が止界に取り込まれ始め、神ノ離忍へと姿を変え始め、宙へと浮かび上がっていく。
混濁しつつある意識の中、小さな光を見つけ最後の力を絞り、光の方向へと向った。それは人の形をしており触れた瞬間意識が途切れ、起きた時は見知らぬ女性が飛野を成仏させていた。
その女性は止界へ入るための石を作った人物の嫁と名乗った。樹里から顛末を聞いた女性は自身の生い立ちを教える。彼女は生まれつき霊回忍が体内にある状態で歳を取らず、殺されかけたところを一緒に逃げてくれたのが夫だったと言う。夫に止界を教え、よく連れてきたのが彼女で、「マリヤ」と書かれたキャバクラの名刺を渡し樹里を止界から出してくれたのだった。

それから約5年後と見られるある日、佑河家には平和な日常が戻っていた。貴文は指のリハビリがてら成長した元佐河とテレビゲームをし、孫のように接していた。引きこもりだった翼は独り立ちをし、じいさんが使っていた離れは賃貸に出す話が出ていた。成長した真と貴文の妻も登場し、みんなで遊園地に行くところだった。樹里は離れで寝そべっていたが、そこにじいさんの姿はなかった。起きてじいさんの写真を眺めていると、元佐河は樹里を「ママ」と呼び仲のいい様子を見せる親子の姿は希望にあふれていた。時計は佑河家の平和な日常を刻んでいく。

『刻刻』の登場人物・キャラクター

佑河家

佑河 樹里(ゆかわ じゅり)

CV:安済知佳

佑河家の長女で28歳。アニメでは次女(21歳)という設定に変更されている。
本作の主人公であり、6歳の頃にじいさんに連れられ止界へ行っている。その時は樹里が飼い犬のアンドレが死んでしまうのを受け入れられず、じいさんが説得するためと同時に、樹里が止界術の後継者にふさわしいかどうかを試すために止界へと連れてきていた。だがじいさんの説得を素直に聞かず、樹里は高ぶった感情をじいさんに向け、止界から追い出す能力が発現してしまった。間一髪で止界に留まったじいさんだが、樹里のカッとなりやすい性格を危険だと判断し、止界の事は夢だったと思いこませ、樹里は止界の事は知らずに生きていた。
同じ時に止界に迷い込んだ間島とも接触しており、一連の事件が起きるまで忘れていたが、間島も樹里の能力で追い出された一人である。
カッとなりやすい性格の上、行動力があるので突っ走ることが度々あるが、その判断力の高さと覚悟の強さで数々のピンチを乗り切っていく。
止界での樹里の特使能力は相手に触れ「霊回忍」を追い出し止者にすることである。それは「神ノ離忍(カヌリニ)」にも有効であり、間島の家族を止界から解放することにも成功した。この能力は佑河家にとって強力な武器であり、止界から脱出できる手段にもなった。
原作では翼に「男に捨てられたうっぷんをヒトに向けるなよ」と言われており、就職活動中であることから私生活はあまり上手くいっていないことがうかがえる。
愛情深く、家族思いの所があり、赤ん坊になった佐河に対しても惜しみなく愛情を注いだ。

じいさん

tsujimo
tsujimo
@tsujimo

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