【深夜廻】二人の少女ユイとハルを巡るストーリーのネタバレ解説・考察まとめ

田舎町で共に過ごす二人の少女、ユイとハル。夏のある日を境に、彼女達は怪物達がはびこる異形の街へと迷い込み、離れ離れになってしまう。深夜の街を廻り、互いを探す少女達。その中で見えてくる二人の「過去」と「真実」についての解説と考察。

ユイの真意を知り、絶望するハル。そんな中、ゲーム開始直後と同様に、再び「操作説明」が始まる。
移動方法やアイテムの使い方を、かつてのユイ同様に実行しながら、山の奥へと進んでいくハル。
ユイが自殺するまでの行動をなぞる形で、ハルはユイが首を吊った大樹へとたどり着く。そこには、かつてユイが首を吊った赤いリードが、そのまま残されていた。
操作説明に従うと、かつての親友と同様ハルも首を吊り、自殺する。
親友が残した真実に耐えきれなくなったハルは、ユイがそうであったように、押し潰された心のまま自ら命を絶った。
これこそ、本作「深夜廻」の「バッドエンド」ルートである。

真実に辿り着くには

巧妙に仕掛けられた「黒幕」の罠

出典: i.ytimg.com

ハルが最後に行う「チュートリアル」。ここに隠された「罠」を見破れるか

通常通りにプレイを続けていると、多くの人間がハルの自殺というエンドに辿り着くかもしれない。
しかし、このゲームにはきちんと事件の「真実」が明かされる「グッドエンド」なるものが、存在している。
グッドエンドに辿り着くためには、山頂に至る道の途中にある掲示板に、ヒントが隠されていた。
そこに書かれていたのは「山で何かに語り掛けられても、けっして言う事を聞いてはいけない」というもの。
実は、最後に始まる「操作説明」こそ、このゲームがプレイヤーを巻き込んで仕掛けた、一つの「罠」だった。
ハルに語り掛ける操作説明は全て、今回の事件の「黒幕」が語り掛けている言葉であり、その通りに行動してしまうと、黒幕の思惑通りにハルは命を絶つことになる。
残された赤いリードまでたどり着き、あえて戻ろうとすると、チュートリアルは「先に進んでください」と指示してくる。しかし、これに無理矢理逆らい続けることで態度が一変。隠れていた「黒幕」は本性を現していく。
謎の声に自殺しろと責められる中、ハルは無意識に「もういやだ」と叫ぶ。これによって、かつてハルを追ってきていた怪異・コトワリさまが出現。声を発していた謎の地蔵を破壊してくれる。
コトワリさまはハルを襲わず、彼女に「赤いタチバサミ」を渡す。コトワリさまの真意は分からないが、ハルは謎の声の正体を知るため、山の奥へと進む決意を固める。

突如、目の前に流れる「過去」の映像。そこには、ハルを救い出すユイの姿が

コトワリさまから授かったハサミを頼りに、山の奥へと続く洞窟を進むハル。
蜘蛛のような怪異が襲いくる中、ときおり、ハルの目に謎の映像が差し込まれる。
それは、かつてこの洞窟にハルとユイが辿り着き、気絶しているハルをユイが外へと連れ出す姿だった。
この洞窟の奥に、自分自身が知らない「過去」があると確信し、進むハル。
そんなハルの前に、先程彼女を死へと誘い、そして今回の全ての事件の「きっかけ」を作った存在が、姿を現す。

全ての元凶、「山の神」

姿を現す異形・山の神。ユイとハルを怪物の世界へと誘った元凶である

洞窟の奥へ辿り着いたハルの前に、巨大な怪異が姿を現す。
それこそが、ユイとハルを怪物だらけの夜の世界へと誘い、今回の事件を起こした元凶だった。
巨大なその存在はハル達が足を踏み入れた「山の神」であり、ハルをあの世に引き込もうと、襲い掛かってくる。
今までにない苛烈な攻撃をしのぎながら、コトワリさまから授かった「タチバサミ」を使って、山の神が張り巡らせる「赤い糸」を断ち切り、抵抗するハル。
戦いの中で山の神は優しく語り掛けてくるが、これもあの「操作説明」同様、全てが罠。山の神の言葉に逆らい続けなければ、一瞬で敗北することになる。
全ての糸を切り裂いたことで、山の神は悲鳴を上げ、遂に姿を消した。

最後の最後、ハルは友人との「縁」を「切る」という決断を下す

山の神を退けたことによって、一件落着したかのように見えたが、ハルの前に再び、変貌した姿のユイが姿を現す。
ハルの左腕にがっちりと「赤い糸」を巻き付けるユイ。何度もハサミでそれを断ち切るも、ひたすらに絡みついてくる糸がハルを足止めする。
洞窟が崩れていく中、ハルはユイに必死に語り掛け続ける。怪異になってしまったユイに、助けれなかったことを謝るハル。そしてついにハルはある決断を下す。
「こんなの、もういやだ」というハルの言葉に反応し、出現するコトワリさま。
巨大な赤いハサミはハルの「左腕」ごと赤い糸を全て断ち切り、ハルとユイの「縁」を完全に断ち切った。
血だらけになりながらも、歩いていくハル。しかし、消耗から彼女はその場に倒れてしまう。

倒れたハルを、チャコの元へと送り届けるユイ

山のふもとで、ハルとユイの帰りを待っていた愛犬・チャコ。
そのチャコの元に、ハルをかついだユイが姿を現す。
怪物の姿ではなく、元通りになったユイはハルを洞窟の中から救い出し、チャコの元へ送り届けていた。
気を失ったままのハルを見詰め、何も言わず、ユイは彼女の手を離す。
死者になったユイと、彼女を探し続けたハル。
深夜の世界を廻っていた二人の少女の別れで、「深夜廻」のストーリーは幕を閉じる。

不明点についての考察

ユイとハルの別れ、という形でエンディングを迎える「深夜廻」だが、メインストーリーをクリアしただけでは、事の経緯など、全てが語りきられていない部分も、多々存在する。
このゲームには町を探索することで手に入る、さまざまなアイテムが存在し、それらの説明文を紐解くことで、一連の事件に関連する様々な側面が見えてくるようになっている。
ユイとハルは、なぜ山の神に魅入られたのか。コトワリさまとは何だったのか。
クリア後に手に入るアイテムの内容なども加味して、それらについて考察をしていく。

ユイについて

出典: trend1128.com

ユイはいったい、どういう経緯があって自殺してしまったのか

冒頭、首を吊ったことによって死者となり、以降、怪物達の世界に取り込まれていくユイ。
クリア後に街を探索する中で、彼女の残したメモが見つかり、これによって事件に至るまでの過程が見えてくる。
メインストーリー中でも明らかになるが、ユイの父親は家族を置いて蒸発しており、それ以降、彼女の母親は精神的におかしくなっていた。
ここでストーリー中のユイをよく見ると、顔の至る所に「包帯」を巻いていることが確認できる。
元々、ユイの家庭は崩壊寸前だったことから、恐らく、母親からユイは家庭内暴力を受けていたのではないか、ということが読み取れる。
街の中で見つけれるアイテムの一つ「パチンコ玉」の説明からも、ユイの父親がパチンコに入り浸っていたことも示唆されており、父親は行方不明になったというよりも「家族への愛情が消え去り、妻と娘を放って行方をくらませた」という事だと思われる。
また、クリア後に手に入るメモからは「ハルの代わりにクロが死んだ」という衝撃的な内容が明らかになる。
元々、あの山に迷い込み「山の神」に先に出会っていたのはハルだったのである。
山に迷い込み、山の神に誘われたハルを救うため、ユイは愛犬であるクロと共に洞窟の奥へと赴いていた。
そこでハルを救う最中、クロが命を落とし、それが本編の冒頭へと繋がっていた。

絶望に押し潰されるユイ。しかし、思えばこの時から「山の神」は彼女を誘っていたのかもしれない

親友を救うも、壊れていく家庭と愛犬の死、親友との別れに耐えきれなかった彼女は、自殺の道を選ぶ。
だが、この冒頭の自殺のシーンも良く考えてみると、全てユイの意思がそうさせたのか、というのは疑問が残る。
というのも、ラストシーンでハルがそうだったように、ここで「操作説明」を語りかけてくるのはシステムの声ではなく「山の神」の誘いである可能性が高い。
ハルを救う事に成功したユイではあったが、それ以降、山の神に目をつけられてしまったのではないか。
彼女が残したメモの最後には、こう記されている。
「ハルの代わりにクロが死んだ。あれから、クロが私を呼んで泣いている。いかなくちゃ」
この一文を見る限り、どうもユイにはずっと山の神が語り掛け続けており、山の奥で首を吊るように仕向けた可能性が高い。
ユイに続いて山の神は引き続き、ハルの命も奪うために幽霊となったユイを利用し、再び山へとおびき寄せる。
ハルはコトワリさまの力を借りて山の神との「因果」を断ち切るわけだが、ハルが自殺しかける一歩手前で、良く聞いていると「犬の鳴き声」が聞こえる。
今までの経緯から、チャコの鳴き声にも思えるが、この時チャコは山の外で帰りを待っていることから「あれは死んだクロの声だったのではないか」という説もあがっている。
かつて、山の神からハルを守って命を落としたクロが、死してなお、山の神の魔の手から、ハルを救ったとも考えれる。

そもそも「山の神」とは

実は冒頭でもさりげなく、姿を現していた「山の神」

今作の最後の敵であり、ユイとハルを怪物の世界に巻き込んだ張本人だが、この存在については謎が多い。
明確な描写はないが、ユイの残したメモや、山の神がしきりに口にする「カワイソウカワイソウ」「たすけてあげて」「一緒においで」などの言葉を加味すると、山に迷い込んだ生者に語り掛け、死者の世界へと誘っている、ということが考えられる。
ユイを山に呼び寄せた際も、死んだ愛犬・クロが呼んでいるかのように偽って彼女をおびき寄せるなど、一度でも邂逅した人間には、かなりの執念深さを持っていることもうかがえる。
山中の掲示板に「山で聞こえてくる声に返事をしてはいけない」という警告文まで書いていることから、元々この山では有名な存在で、そもそもユイとハルが足を踏み入れた山自体が、かなりいわく付きの場所だったのでは、と考えられる。
山の神に続く洞窟の入口にも大きな地蔵が祀られていたことから、古くから生者を連れ去る神として人々には認知されていたこともうかがえる。
自身に邂逅したユイをあちらの世界に引き込み、彼女に「縁」があるハルもまた、山へと誘い続けた。
それが、今回の事件が起こるきっかけだったのかもしれない。

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