ここはグリーン・ウッド(GW)のネタバレ解説・考察まとめ

「ここはグリーンウッド」は那州雪絵による少女漫画作品。白泉社「花とゆめ」に連載された。単行本は全11巻。少女漫画ながら男性ファンも多い作品。
私立緑都学園に入学し、変人の巣窟と噂される緑林寮(通称:グリーン・ウッド)に入寮した蓮川一也が、個性的な先輩・同輩に囲まれて過ごす学園生活の日常を描く作品。

緑都学園の保険医をしている一弘は一見暇そうに思われるが、活発な男子高校生たちは割と頻繁に怪我をするし、多感な時期のためカウンセラーとしても生徒の相談にのっているため割と忙しい。
本日も弟・一也が保健室に運び込まれてきた。体育の授業後、教室に戻ろうとしたところを何者かに投げつけられたものが顔に当たったのだ。それ以降、一也は何者かに階段を突き落とされたり、水をかけられたりと被害が続く。一弘のもとには一人の生徒が悩みがあるとして放課後通うようになっていた。

ある日、石灰用のスコップを一也は投げつけられ、たまたまその現場を見ていた忍は、投げた生徒はこの学園の生徒ではなかったと証言した。光流、忍、一也、瞬の4人が投げた生徒を追いかけると、彼は保険室に入り一弘と話し始めた。最近一弘にはある一人の生徒とのホモ疑惑が噂されており、彼はその噂の相手だった。4人が身を潜めつつ話を伺っていると、その生徒は一弘に思いを打ち明け始めた。一弘は彼の話を頷きながら聞き、受け入れ態勢を取ろうとしたその時、泣きながら一也が侵入してきて、すみれは本当に一弘が好きなのに男子生徒とホモ行為に及ぼうなどとは許せないと叫んだ。

噂の相手だった生徒は、一也の罵詈雑言の尻馬に乗り、一弘を罵倒し始め、それに気づかれると彼は自分の正体を明かした。
彼は一弘の妻・すみれの従兄弟・神田利幸で海外の大学に留学しているはずだった。すみれの事が好きだったのだが、自分の留学中にすみれが一弘と結婚してしまったため、すみれを蓮川兄弟から取り戻そうとして嫌がらせをしていたという。
神田はすみれを必ず取り戻すと宣戦布告をして去っていった。

翌日、学校の近くで神田に呼び止められた一也は、彼に言われるまま喫茶店についていった。それを目撃した瞬は一弘と光流・忍に知らせ、その後を追った。
神田は一也に一弘の悪口を言いまくり、一也にとっても初恋の相手であるすみれを一弘から離そうと言ってきた。何かあった時頼れる両親も親戚もいない蓮川家より、父が弁護士をし、本人も弁護士を目指し将来有望な自分の方がすみれにふさわしいと神田は熱弁をふるう。一弘の職業についても馬鹿にされ、一也は黙っていられずテーブルに手を激しく叩きつけ「うるさあい!!」と泣きながら叫んだ。「おまえなんかにわかっ…」とそれ以上は言葉にならずその場から走り去ろうとした一也を、背後にいた一弘が抱きとめた。
一弘は神田の主張を聞いており、すみれを交えてちゃんと話そうと提案した。一也を溺愛している一弘は、一也を泣かせた神田を許せず、神田にしばらく立ち上がれないほどの大ダメージを与えようと決意していた。

冬休みになったある日、一弘の自宅を訪れた神田は、すみれから発せられる幸せオーラに当てられ、何も言うことができない。しかも、すみれの「夏にはおかあさんになるんだって♡」という言葉にショックを受け、神聖視していたすみれに子ができたと絶望し、アメリカに帰っていった。同席していた一也も同じようにショックを受け、瞬の実家の旅館に逃亡した。

瞬の家で、すみれとの出会いから初恋、そして自分に好意を持っているのではという勘違いを経て、「お嫁に来てもいい?」という言葉に浮かれそうになったその時、後ろに控えていた一弘の様子から自分のもとに嫁に来るのではなく、兄の嫁として家に来たいと言っているのだと理解し、失恋したことを洗いざらい瞬に話した。自分も好きだと言いたかったけれど、すみれの嬉しそうな笑顔を見ていたら何も言えなかったことなど全てを告白し、生まれてくる子供をきちんと祝福することを一也は初日の出に誓ったのだった。

春はあけぼの

作中に、Nの文字を頭につけた作者と思しきキャラクターが登場し、「まずはじめにみなさん、大事なお話があります。グリーン・ウッドは今回から進級します!!」という宣言により2年生に進級することが決まった一也たち(それまでは3年ほど一也たちは1年生のままで何度か同じ季節を巡っていた)。
それに伴い、緑林寮でも世代交代が行われ、一也は新寮長に任命された。去年の自分たちがやったようにやればいいという光流だが、一也はひと月も入院していたため、その経験はない。伝統もしきたりも恒例も何も知らないのだ。入寮日の係りの人選を任され、さらに恒例で第1回の集会の時に新寮長は皆の前で一曲歌うと一也は聞かされた。

入寮日、新2年生たちは一也を中心にわいわいと話し合いながら新1年生を迎える。光流のような威厳やカリスマ性はなくてもみんなで一緒に役目をこなす一也たちに光流たち3年生は安堵する。
第1回目の集会時、光流から入寮の心得と一也の紹介をされ集会は始まり、一也は「慣例にのっとり蓮川一也歌います!!」と宣言して歌いだした。先輩たちが笑いをこらえる中、一也は2番まで歌い切り大きく息をついた。すると光流が笑いながら「やっぱおもしれえから来年から恒例にしよーぜっ!!」と高らかに宣言した。一也はまたしても光流に騙されたのだ。一也は光流を思い切り殴りつけ、そのままの勢いで賭けの上がりの計算をしていた忍の下に駆け込み、忍の顔面を殴りつけ、掛金を没収した。

王子さまを探せ!

光流のもとにアイドル歌手の新田美恵子から連絡が来た。光流か忍に頼みたいことがあるので来て欲しいというのだ。呼び出された場所に光流、忍、一也、瞬で向かうと、CMに出てみないかと誘われた。クライアントが新鮮な素人を使いたいとの要望だったので、アイドル顔の光流か端正な顔立ちの忍に話が来たのだ。忍は、家が芸能界のような派手な世界を嫌うということで断り、光流は美恵子やマネージャーに頼まれ、断れなくなっていた。目立ちたがりやの光流があまり乗り気でないことを疑問に思った一也と瞬は、是が非でも光流にCMに出てもらおうと学校中に噂をばらまいた。忍は光流の実家にも連絡を入れ、周りからのプレッシャーと期待に負けた光流はCM出演を受けることにした。

撮影当日、光流は緊張しながらも撮影は進み無事終了した。撮影の見学に来ていた一也たちは、光流が緊張するという珍しい場面を見られて面白がっていた。
そんな時、忍は撮影カメラマンの助手として働いていた兄・旭を発見した。旭は3年前から家を勘当され音信不通だったのだ。忍は旭の元婚約者である六条倫子に旭の行方を知らせた。
しばらくして光流のCMが放送された。モテる光流には近所にファンが大勢おり、CMが放送されると光流を知る人々からお祝いの電話等がたくさん入るようになった。しかし、光流は自分に電話が来たと放送が入るといちいちビクビクしている。光流の弱点が発見できるかもしれないと一也たちは情報収集に力を入れ始めた。光流を訪ねて緑林寮に来た光流の後輩たちに、光流の実家は近いのに、なぜ寮に入ったのか理由を尋ねてみると、秘密でも何でもないけどそれを知らされていない一也たちは、光流の信用がない、と言われてしまった。その言葉にショックを受けた一也は、忍にその事情を尋ねてみた。
すると忍は、光流は実家である光龍寺の前に生後2週間ほどで捨てられていた子供だったと一也に教えた。光龍寺の夫婦は光流を養子にして、光流が拾われた日に生まれた正十と一緒に兄弟として育てたのだたという。そのことは近所に知れ渡っていたため、光流は幼い頃から真実を聞かされており、両親は光流と実子・正十を分け隔てなく愛情を注ぎ育ててきた。しかし、光流の方が2週間程早く生まれていたため、光流が長男ということになっており、光龍寺の後継者として、親戚や檀家が問題視しているらしい。
家族は光流の好きにしていいと言っているのだが、正十は光流を慕っているため、光流がいつか家を出ていってしまうのではと警戒しているのだ。
光流が中2の時、光流の写真が雑誌に掲載されることになったのだが、正十が雑誌を見た光流の本当の親が名乗り出てくるかもしれないとして、激しく反対したため、雑誌掲載の話は流れてしまった。
だから、今回のCMでも正十が怒るのではないかと光流は心配していたのだ。

忍は、一也が信頼されていないから話さなかった訳ではなく、単に話題に出なかっただけだと話した。

忍から旭の居場所を教えられた倫子は旭を訪ね撮影所を訪れていた。そこで旭と話し合った倫子は自分のことは忘れて幸せになって欲しいという旭に見切りをつけた。旭が何も言わず失踪した後もずっと待っていた倫子は旭の煮えきれない態度に怒り、「さよなら」というと、忍や旭に何も言わずに転居し、行方知れずとなった。

あーらしをーおーこして

光流の中学時代の後輩・五十嵐巳夜が夜、緑林寮にやってきた。かなり乱暴に侵入しようとしたため、寮母と乱闘になり、彼女は寮からたたき出されてしまった。玄関先での騒ぎを聞きつけた一也が様子を見に行くと、口汚く寮母を罵っている巳夜の様子がわかった。すると光流が玄関に現れて巳夜の手を引きどこかへ連れて行った。2人のただならぬ様子を不審に思った一也は寮長として様子を見てくると言い、2人を追った。寮の近くで話している2人を見つけた一也は、巳夜が不良グループに付け狙われていて、家にも学校にも行けない状態だと知った。頼るところが他にどこにもなく、光流を頼ってきたのだが、既に寮長でもない光流が女子を寮内に連れ込んでしまったら、光流だけでなく寮長である一也の責任にもなってしまう。光流は巳夜を家に返そうとするのだが、一也は自分が寮長なのだから寮長権限で巳夜を匿うと宣言してしまった。
寮母の目を盗み、巳夜を寮内に入れた一也は、自分の部屋を巳夜に明け渡し、同室の瞬は忍の部屋に行ってもらうことにした。一也は巳夜の安全のため、一晩中部屋の前で見張りをする。光流の本意ではなかったが、自分を頼ってきた後輩のため、仕方なく巳夜の事情を聞くことにした。
巳夜の話によると、巳夜の学校の女生徒が、愛誠学院の不良グループの縄張りで勝手なことをして、不良グループの反感を買ったらしい。巳夜の学校の生徒たちが不良グループに捕まり、総番に話を付けると言われ、巳夜の名前を出されたことが原因だった。本来巳夜は総番なんてものではないのだが、自分に被害が及ばないように、彼女たちに名を使われ隠れ蓑にされてしまったのだ。巳夜のところに愛誠学院の不良グループから何度か呼び出しが来たのだが、身に覚えもない巳夜はその呼び出しを何度も無視していた。すると、しびれを切らした不良グループたちが巳夜の家や学校で待ち伏せるようになった。
なんで自分は総番じゃないと言わないのだと光流は怒り、これからどうするのかという光流の問いに、巳夜はとりあえず仲間を集めて人数が揃ったら呼び出しに応じようと思うといった。

翌日、一也たちが学校に行っている間、巳夜は昔の仲間に声をかけ人数を集めることにし、夕方寮近くのファストフード店で光流と落ち合うことになった。ところが、昨夜巳夜をガードするため、こたつで夜を明かした光流は風邪をひき、待ち合わせ場所に行けなくなってしまった。待ち合わせ時間を一時間も遅れて迎えに行った一也に巳夜は不安そうな泣き出しそうな顔を見せた。一也は巳夜のその表情がとても印象に残った。一也と一緒に寮に戻り、仲間が全く集まらなかったとを巳夜は光流に報告した。光流の風邪がひどい状態なのを見た巳夜はこれ以上の迷惑はかけられないと寮を出て他の友人に泊めてもらえるよう頼んでみるという。昼間、風邪で早退した光流が巳夜の家の周りを確認し、不良グループたちが待ち伏せしていないことを確認していたので、自分の家に帰るよう一也は説得するのだが、巳夜はオバケが出るから家には帰りたくないと泣き出してしまった。それはただの家鳴りなのだが、母が単身赴任で海外に行っているため、現在の巳夜は一人暮らし。家鳴りを知らなかった巳夜はオバケと勘違いして家に帰りたくなかったのだ。
巳夜の勘違いを笑い飛ばす一也に巳夜は怒鳴り返しながら泣き出してしまった。

家に帰るという巳夜を送る一也は、巳夜に光流から聞いた男に合わせて不良をやるのは良くないことだと言ってみた。すると巳夜からは男に合わせているのではないと反論された。幼馴染である小泉典馬は賢くて優しいのだが、へそ曲がりでバカで可愛くない自分が一緒にいたら、典馬が悪く思われてしまう。典馬は巳夜を好きだと言っているのだが、将来結婚でもすることになったら、典馬が恥をかいてしまう。その時になって嫌われてしまったら辛いから、今、嫌われておこうとしているのだと巳夜は言う。
自分に自信がない巳夜は典馬は母に頼まれているだけで、本当に自分が好きなわけではないと断言する。しかし、一也はそんなことをぐちぐちを悩む巳夜を可愛いと感じてしまったのだ。巳夜に不安がらせている典馬に対し、一也は憤りを覚えるのだった。

巳夜の家に着くと、そこには昼間はいなかった愛誠学院の不良グループが張り込んでいた。彼女たちが無理やり巳夜を連れて行こうとした時に、警察を装った忍の声が響いた。その声に驚いた不良グループたちは、巳夜に場所と時間を告げて、今夜そこに必ず来いと脅し逃げていった。
巳夜は自分で蒔いた種だから落とし前をつけるとして1人で行くことを決意し、走り去った。

一也と忍がすぐに寮に戻り光流に事情を話すと、光流は自分が生徒会長だった時に対立グループが喧嘩をふっかけてきて、たまたま勝ってしまったために舎弟ヅラされるようになってしまっただけの関係だが、後輩だから自分が助けに行くと言って出て行ってしまった。一也も付いていこうとしたのだが、忍や瞬に馬鹿者と言われ、自分ではどうにもできない。どうしたらいいのかとオロオロする一也を横目に忍や瞬は動き出した。

指定された橋の下に巳夜が到着すると、愛誠学院の不良グループの他に、男子が数人巳夜を甚振ろうと待っていた。そこに女装した光流が合流し、2人で複数人を相手に戦おうとしていた。
するとそこに一台のバイクが両者の間に割って入ってきた。それは瞬に頼まれた緑林寮OB・古沢のバイクだった。驚く光流の耳に「待たせたな五十嵐!加勢に来たぜ!」と叫ぶ声が聞こえた。周りを見ると橋の上にも土手にも人だかりができており、強面を前面に出し、後ろには人数揃えのための弱々しいメンツを並ばせ、巳夜にはこれほどの後ろ盾があるのだと愛誠学院の不良グループに知らしめた。おまけに、忍に呼び出された渚が黒塗の高級車で黒服・サングラスの下僕を連れて現れ、その筋の本物が現れたと勘違いした不良グループは慌てて逃げていった。
この人数は、瞬や忍がOBや寮生を集めたものだった。

こうしてこの騒動は決着がついた。その夜、緑林寮に小泉典馬が現れ、巳夜を連れ帰った。巳夜と典馬の不自然な関係に納得がいかず、帰り際、振り返った巳夜の表情がどうしても忘れられない一也だった。

権謀術数体育祭

体育祭の時期となった。一也の所属するE組は一也を大将にしてスウェーデンリレーのアンカーに配置(各団の大将がアンカーを務める決まりがある)し、高得点を狙ってきた。一也が1年の時の驚異的な走りを生徒は覚えていて、各団は一也を警戒している。一也が何の種目に出るのか皆の注目が集まり、果ては事故を装い一也に怪我を負わせようという輩も出てきた。

何事もなく迎えた体育祭当日、一也は圧倒的な速さで一位を取り、E組の得点を伸ばしていく。体育祭が始まるまでは周囲の雑音に惑わされていた一也だったのだが、いざスタートラインに立てば、後は何も考えずに走ることが出来る。しかし、E組の期待を背負い最終種目のスウェーデンリレーに臨もうと思った一也の靴に蜂が入り込み、一也は刺されてしまった。保健室に運び込まれた一也はリレーに出場できず、棄権することになってしまった。保健室のベッドの上で一也はぐちゃぐちゃと色々な事を考えすぎて上手くできない自分を反省していた。

結局一也不在のリレーでE組は勝つことができず、逆転負けを喫してしまった。怒り狂うE組の生徒から一也が逃げている途中、なぜか巳夜にばったりと出くわしたのだが、巳夜はそのまま逃走し、一也はE組の生徒達に捕まり彼女の後を追うことができなかった。

体育祭の情報を知り、巳夜は一也に以前のお礼を言うために来たのだが、一也の顔を見たら思わず逃げてしまったのだ。巳夜は自分でもなぜ逃げたのかわからず、一方の一也も相手が居る巳夜のことは忘れなければいけないと思いつつも、忘れられずに悶々としていた。
そんな時に、体育祭を見ていた陸上部顧問の村上から陸上部に誘われ、一也は陸上部に入部することになった。

愛は勝つ

冬休みになり、光流の実家の光龍寺の大掃除を手伝いに行った一也は、そこで光流の出生に関わることを本人から聞くことができた。光流の両親も弟も祖父も光流を本当の子のように大切に育て、しかし光流の生き方を強制することなく尊重してくれている。光流自身も家族を大切に思っているのだが、やはりどうしても血の繋がりがない自分がこのまま家にいてはいけないと、高校を出たら家を出ることにしたと語った。光流の気持ちを聞いた弟の正十は「どうしてそう他人になりたがるんだ!?」と光流を責めるのだが光流は冷静に自分は他人だと言い切った。血は繋がっていない他人だけど、「他人は兄弟よりもおちるかな」という光流に一也は続柄は関係ない、要は愛だと励ました。

光流の家から帰る途中、最寄駅で巳夜と典馬に出会った一也は、動転して何の言葉も出てこないのだが、巳夜の泣き出す寸前の表情が気にかかった。光流に不良グループの一件についてお礼を言い、一也には上手く言葉が出ずに、ただごめんとしか巳夜は言えなかった。終始にこやかな典馬と目を合わせない巳夜の帰る姿を見ていた一也は鼻血を出しながら「くやしくて仕方ないんだ…!」と自分の思いを吐き出した。光流はこの時の巳夜の様子を見て、まだ一也にもチャンスがあるかもしれないと思い、巳夜の家の電話番号を一也のポケットに忍ばせた。
正月に熱を出し寝込んでいた一也は、兄・一弘に好きになった子に相手がいたらどうするかと尋ねてみた。すると一弘からは「おまえは自分が悪者になることを恐れているにすぎない」と指摘された。つまらないことをぐちゃぐちゃと考えすぎだと言い、まずは想いを告げた後、彼女が決めることだと諭した。

そして妻・すみれが一也のポケットに入っていたと持ってきた光流が書いた巳夜の電話番号が書かれた紙を渡し、どうするかは自分次第と励ました。兄の励ましと光流の控えめな協力を受け、一也が意を決して巳夜の自宅に電話をすると電話に出た巳夜は「ごめんっ…!」と言うなり電話を切った。
それでも諦めきれない一也は、新学期、巳夜の学校の前で待つことに決めた。しかし、巳夜は運悪く腕の骨を折って入院中で会うことはできず、病院に見舞いに行ってみても退院した後で巳夜には会えずじまいだった。巳夜に会いにいくと手紙を出し、巳夜の学校で待っていると、その手紙を持った典馬が現れた。巳夜が困るようなことはするなと釘を刺した典馬に一也は「…でもおれ五十嵐さんが好きなんだ」と告白した。一也が学校に来ることを知らずにいた巳夜は、2人の会話を聞いてしまった。一也にかける言葉もなく、立ち去ろうとする巳夜に「なんで逃げるんだ五十嵐!」と一也は叫んだ。

一也の言葉を聞いて、自分は逃げているのかと疑問に思った巳夜は、どうしたらいいのか考えた。一也のことを忘れ、このまま典馬と付き合っていれば親と喧嘩することもないし典馬と争うこともない。一也を忘れるのが一番いいのはわかっている。しかし、一也と知り合い関わったことで、逃げてばかりでは何もできないのだと巳夜は悟った。
「僕が巳夜ちゃんのこと一番よくわかってるからね。これからだってずっと巳夜ちゃんのこと守ってあげるから、巳夜ちゃんは今までどおりでいいんだよ」と言う典馬に巳夜は「でもおれあいつのこと好きなんだ」と本心を告げた。

1月22日の雨が降りしきる中、女の子が校門の前に立っていると誰かが叫んだ。一也が慌てて行ってみるとそこには巳夜が立っていた。巳夜は今まで電話に出なかったことや、学校まで会いに来てくれていたのに、無駄足を踏ませてしまったことを謝った。そして、典馬や母親と喧嘩してしまったが一也に会いたかった、そしてちゃんとした人間になりたいと巳夜は言った。一也は巳夜の肩をしっかりと掴み「大丈夫!おれがついてるよ…!」と言った。その言葉を聞いた巳夜は一也の胸に頭を預けた。
一部始終を見ていた緑都学園の生徒たちは傘を投げ出し大歓声をあげた。
その日、不幸な星のもとに生まれた地道な少年が勝ち取った一世一代のハッピーエンドのおかげで緑都学園は何年かぶりに近隣住民からの苦情を受けることになった。
それから2ヶ月の間、緑都学園並びに緑林寮内では「おれがついてるよ」という言葉が大流行したことは言うまでもない。

ホリディ

ある日の休日、緑林寮祭の準備や片付けなどで忙しく、仕送りを引き出しに行く時間を捻出できず、所持金が乏しくなってしまった光流と忍。次の日の放課後まで、2人合わせて132円で過ごさなくてはいけなかった。緑林寮では朝・夕の食事しか出ないため、昼食は自腹で調達しなければならない。寮内でいつも光流たちにからかわれたり騙されたりしている一也は光流たちの窮状を知り、それを寮内に放送で知らせた。光流が隣室にお金を借りに行ってもみんな固く扉を閉めて金を貸してくれる生徒はいない。
サンデーバンキング(休日でも現金を下ろせる銀行)に行こうにも、電車に乗らなければ行けない場所だった。
仕方なく2人は忍の100円を元手にパチンコで所持金を増やそうと画策する。まだ法定年齢に達していない光流はサングラスで顔を隠してパチンコで順調に所持金を増やしていた。すると、背後から一弘に声をかけられ、せっかく増やしたパチンコ玉を没収されてしまった。誰かに借金を申し込めばいいという一弘に、一也のせいで誰も貸してくれなくなったと抗議した光流。それならばと一弘はいくつかの菓子パンを2人に与えてこれで我慢しろといい、立ち去った。仕方なく路上でパンを食べようとすると、小さな女の子がパンに食いついてきた。どうやら母がパチンコに夢中になっていて、お腹がすいているようだ。光流が自分のパンを女の子に渡し食べさせていると、女の子の母親がやってきて、代わりに500円玉をくれた。
所持金が増えたと喜ぶ2人に、その500円玉を頂戴、という女性が現れた。その女性は車の中にキーを置いたままにしてしまったので、車を置いて帰ろうというのだ。忍は針金で女性の車を開錠し、女性はそのお礼にごちそうしてくれるという。元彼から手切れ金を渡され振られた彼女は、このお金を楽しいことにパッと使ってしまいたいのだという。彼女に気に入られた2人は彼女に誘われるまま野球観戦や買い物などに付き合った。夕食をご馳走になっている時に、昼間パチンコ屋の前で見かけた女の子が見知らぬ男に手を引かれて歩いている姿を発見した。光流は女の子に知っている人なのかと確認すると、女の子は知らない人と答え、男は女の子を抱えて逃げ出した。女の子を連れ戻すため、光流と忍は男を追いかけた。光流が前から追い詰め忍が背後から近寄り挟み撃ちにし、2人は見事誘拐犯を取り押さえた。
警官に保護されていく女の子に光流は「がんばれよ!」と声をかけると、女の子はピースサインで答えた。
男に振られた女性も光流たちの活躍に気持ちが吹っ切れたのか、「あたしも頑張って幸せになろっと!」と言い、2人を寮まで送り届けた後に帰っていった。

ほぼ無一文で出かけたにも関わらず、豪遊してきた光流と忍の運の強さに緑林寮の寮生たちは呆気にとられた。

2人で自室に戻ると、忍は光流に卒業後どうするのかと問いかけた。光流はさも当然のように「家賃折半として9万以下のとこな。おれ、それ以上出せねぇから」と言った。2人で9万は狭いと思いながら、忍の頬は緩んでしまうのだった。

『ここはグリーン・ウッド』の登場人物・キャラクター

蓮川 一也(はすかわ かずや)

CV:佐々木望

私立緑都学園1年生。緑林寮に入寮している。出身地、東京。身長161cm。体重48kg。血液型A型。特技は虚弱だが足が速いこと。

幼い頃に両親を亡くし、兄・一弘に育てられた。模範的な優等生であった兄に憧れ、兄が通っていた名門男子校である緑都学園に入学することを目標としていた。
受験期の家庭教師だった木谷すみれに淡い想いを抱いていたが、受験直前にすみれから「一也くん、私…一也くんのおうちにお嫁に来てもいい?」と言われ、一瞬自分のことが好きなのではと勘違いしたのだが、すみれの背後で頭を抱えていた兄の様子を見て、兄とすみれの結婚の事だったと初めて気づいた。
新婚家庭となった家に身の置き所がなくなった一也は学園の寮に入ることを決意。しかし、入学式前日に胃潰瘍を発症し入院、1ヶ月遅れの入学となってしまった。

緑林寮入寮後、同室の如月瞬が女性であると騙され、戸惑いながらも瞬を気遣いつつ生活していたのだが、入寮3日目の午後、とうとう瞬が男であると気づき、この一連の騒動が寮長・池田光流と寮生で生徒会長の手塚忍が黒幕だったと知った。怒り狂った一也は光流の部屋に押し入り思い切りその顔を殴った。殴られた光流は一也を気に入り、これ以降一也をおもちゃとして構いつつ、次期寮長として育てることにした。
何でもそつなくこなす兄を尊敬していたのだが、兄が男子校の保健医になったことに対し反感を抱き、兄に対して反抗的な態度を取るようになっている。

非常に素直で騙されやすい性格。頑固で負けず嫌いでもある。運動は得意で体育祭のスウェーデンリレーでは300m走るうちにトップとのおよそ100m差を縮めトップでアンカーにバトンを渡すほどの瞬足を見せた。
精神的疲労がたまるとすぐに鼻血を出したり、胃が弱かったりと虚弱体質に悩んでいる。
元々猛勉強してようやく入学できるレベルだったのだが、さらに1ヶ月も入学が遅れたため授業についていくのが難しいが、光流や忍に勉強を見てもらいなんとか授業についていっている。
2年の体育祭で一弘の同僚で陸上部顧問の生物教師・村上司郎に目をつけられ、無理やり陸上部に入部させられてしまう。
2年進学時に緑林寮寮長就任。
光流を頼り緑林寮に現れた五十嵐巳夜が心に残り、惹かれるようになる。
五十嵐には既に親公認の相手・小泉典馬がいたのだが、巳夜と典馬の関係がまだ入り込める隙があるとして彼女に告白をする。巳夜も典馬とは築けなかった関係を一也となら築けるとして一也を選んだ。

池田 光流(いけだ みつる)

CV:岩田光央

私立緑都学園2年生。緑林寮寮長。出身地、東京。3月2×日生まれ。血液型A型。身長176cm。体重58kg。視力右2.0、左2.0。色覚異常なし。珠算検定2級所持。
面倒見がよく後輩思いだが、悪のり悪ふざけも多く、一也のことをよくおもちゃにして遊んでいる。容姿端麗のため、年齢を問わず女性からモテるが女運は悪い。
緑都学園入学当時は補欠の一番で入学したのだが、その後の勉強により学年でも上位クラスの成績になった。
部活はブラスバンド部に所属(楽器はトロンボーン)しているが仮死状態と部長に言われている状態(もうちょっとで幽霊部員)。
実家は寺で長男。弟がいる。実は寺の前に生後2週間ほどで捨てられていたのだが、寺で引き取り養子となった。養父母は実の息子である弟と分け隔てなく育て、光流自身も家族に愛されていると感じているし、家族に対し親愛の情を持っている。しかし、光流は一応寺の長男であるがゆえに檀家や親戚から実子の弟とどちらを後継とするか問題視されており、そのため光流は高校卒業と同時に家を出る決心をしている。
兄を大切に思っている弟は光流のその決断を察して、憤りをあらわにしている。拾い子であることは近所中に知られているため、幼い頃からいじめや、からかいにあっていた。しかし、黙ってやられているような性格でもなかったため、やり返していたのでかなり喧嘩慣れしている。体中にたくさんの傷跡があるが、顔だけは傷を負っても数秒で治るという特技を持っている。

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