最上の明医〜ザ・キング・オブ・ニート〜（最上の命医）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『最上の明医〜ザ・キング・オブ・ニート〜』の概要

『最上の明医～ザ・キング・オブ・ニート～』とは、橋口たかしにより2008年1号～2010年13号の期間、週刊少年サンデーにて連載していた『最上の命医』の続編にあたる医療漫画作品。『最上の命医』は200万部を突破しており、前作『最上の命医』はドラマ化されている。作中で登場する手術や病気については図解でかなり詳しく分かりやすく描かれており人気の理由の一つでもある。2011年1月～3月の期間、テレビ東京にて毎週水曜日22から23時の間に放送されていた。主演、西條命役を斎藤工、多喜川菜月役を田中麗奈、神道護役を泉谷しげるが演じており主題歌はレミオロメンが歌う「Your Song」である。今回紹介する作品はその続編にあたる物語である。
ニートの王、キング・オブ・ニートを目指す主人公最上義明（もがみよしあき）は、ある日友人伊達正宗（だてまさむね）が交通事故で重傷を負い義明が応急処置を施したことで、一命を取り留める。これを機に最上は本格的に医者を志すようになる。高校時代では病気で苦しむ同級生にアドバイスをしたり、喧嘩で負傷した不良の応急処置を施したりと素人ながら医者志望の片りんを見せる。伊達や多くの仲間たちとともに医者の世界に蔓延るしがらみと戦い、その過程で治療が難しいとされる病気に対しても様々な治療方法を編み出していく本格医療漫画。コミカルなギャグシーンや医療漫画でありながら戦闘シーンの迫力もあり、医療＝お堅いというイメージを払拭されるところも見所の一つでもある。

『最上の明医〜ザ・キング・オブ・ニート〜』のあらすじ・ストーリー

高校生活

主人公の最上義明（もがみよしあき）は高校2年生で、自分勝手でだらしない性格をしている。何もしなくても一生楽に暮らせるという理由でニートに憧れ、学校にもあまり行かない日々を続けていた。
しかし交通事故にあった友人の伊達正宗（だてまさむね）の命を応急処置で救ったことをきっかけに、元々医者志望であった伊達と一緒に、医者を目指すようになる。

伊達の入院中、お見舞いに来ていた義明は小学生ほどの男の子が転んでいるのを見かける。その男の子は脳に腫瘍があり、手術にもリスクがあった。そこで義明は業界内でも評判の名医の所に相談にいく。その医者は相談の最中に出た最上の言葉をヒントに、発想の盲点をついた方法を思いついたのである。
後日談は語られていないが、手術の成功率が上がったため男の子はとても喜んでいた。

医者になるために

日々勉強に明け暮れる義明は順調に成績も伸ばしていき、中でも数学の模試判定は伊達も一目置くほどになっていた。そして伊達と義明は様々な医大を受験するが、なかなか良い結果が出なかった。そしてついに医師国家試験合格率ワースト1の偏卿（へんきょう）大学の医学部を受験する。

試験当日、いつものように伊達と義明は待ち合わせをしていたのだが、そこに釈紗英（しゃくさえ）も居合わせていた。釈は伊達や義明とは同い年の女子高生で顔見知りだった。
義明と伊達は釈が医者を目指しているということを知らなかったため、驚いていた。既に名門の帝王大にも受かっている釈だが、滑り止めとして受験しに来ていたのである。

三人ともそこそこの手ごたえで午前の試験を終え、午後の試験で事件がおこる。
釈のとなりに座っていた受験生の一人である女子高生が急に倒れたのである。釈はすぐに試験官に報告したが、その試験官は医学部の教師ではないらしく、応急処置もできなかった。
救急車を呼ぶが、到着より前に女子高生の容体が悪化する。状況を瞬時に理解した義明は、すぐに座りなおさせた。医者である義明の父が心臓外科でよく手術する病気だったため、義明は対応できたのだ。

救急隊が到着するも、倒れた女子高生はほとんど呼吸できなくなっていた。伊達と義明は瞬時に気管内挿管を行えば希望はあるということに気づいた。
救急隊はその作業を規定上行うことができないと反論し、やむなく義明は女子高生を抱え救急車まで走り抜ける。到底一人ではできない作業と判断した伊達は、自分の試験もなげうって義明に同行した。
麻酔なしでの気管内挿管は激痛を伴い患者も暴れるので、伊達が患者を抑え込み、その間に義明が気管内挿管を行う方針でいった。

釈も救急隊員を説得しながら義明たちの後を追った。釈たちが到着した時にはすべてが終わった様子だった。救急車の前に座り込んでいる伊達と義明の姿があった。
間一髪の状況ではあったものの気管内挿管は無事成功したのである。

この一件は義明たちの人生にとっての大きな幕開けとなるのである。

意外と世渡り上手

先日の一件もあり医大に受かることができた伊達と義明。二人は入学するまでの期間に少しでも学費の足しにしようと、ガソリンスタンドでバイトをしていた。しかし義明は気に入らない客の車のガソリンタンクに水を入れ、首になる。

バイトを首になった義明と巻き添えを食った伊達は代わりに雀荘で働き始める。義明はネット麻雀で全国1位になる程で、伊達もかなり麻雀が得意だった。店主の孫娘の面倒をみて、彼女の抱えている病気の解決の糸口を見つけたりする。

釈のマンションの隣人が義明たちが通う医大の教師の織田ということが判り、司法解剖の現場を見学させてもらえることになる。遺体の死因は警察の捜査情報では車内での練炭自殺ということだった。
義明、伊達、釈の三人は死体解剖室でじっくりと観察していた。作業は順調に進んでいたのだが、織田が遺体の摘出物の胃を切開している最中に急に倒れたのである。状況的に胃の中に劇物が入っておりその臭いを嗅いでしまったのである。

伊達や他の医者の調査により、その遺体は自殺ではなく他殺ではないかという可能性が浮上してきたのだ。織田が司法解剖していた遺体が他殺であった場合、一見、二次被害に遭ったように見える織田が本当の狙いであった可能性が考えられる。三人は犯人と疑わしき人物を問い詰めるも、決定的な証拠がないため、言い逃れでごまかされてしまう。

証拠を探すため、義明たちは遺体に細工を施した痕跡を辿ることにした。しかし、遺体は遺族に返還された後だったのである。義明は他の方法で証拠を見つけようと努力する。釈と伊達は諦めきれず遺族を説得し、もう一度司法解剖をするように促すが、その行動は無駄に終わる。

そして葬儀の日を迎えた。どうにかできないものかと考えていた釈と伊達の前に内視鏡を持った義明が現れた。それは司法解剖のように多額の資金も時間も必要ない最適な方法だった。それでも義明は抜かりなかった。事件の担当刑事を呼び、なんとか復帰を果たした織田が作業をやることで、言い逃れをできない状況を作り出したのである。そして犯人は捕まり、この事件は幕を閉じた。

義明の天敵

在学中に義明たちはオスキー（簡単に言うと診察の手順の確認テストのようなもの）を受ける。試験当日三人は受験番号の関係上、別々の教室に着席していた。
そのテストで審査員の一人が、義明に絡んできた。審査員の男は、義明と出会って挨拶程度の二言の言葉を交わしただけで、「性格が悪そうだから不合格」と言い放った。勘のいい義明はすぐ冗談と察し「俺は性格が悪そうなんじゃなくて悪いんだよ」と冗談で返す。

審査員とひと悶着あったものの試験は順調に進み、義明の順が回ってきた。内容は模擬患者を、指示通りに正確に触診などをするというものであった。
しかし義明はそこで模擬患者の異常に気づき、それを確かめるため手順を外す。その行為に審査員に不合格を下されそうになるが、先程絡んできた審査員の上杉謙神（うえすぎけんしん）も異常に気づく。

上杉は自称神を名乗り、かなりの医療技術を持った医者であった。この男も義明と同様に型にはまらない柔軟な思考をしており、ものすごく嫌味な話し方と独自の方針で治療をすすめる一風変わった医者であった。

その後、模擬患者の容体が急変するが、何とか無事に治療が終えられる。上杉は義明のことをかなり評価していた。

日本の医療常識が全く通用しない世界

上杉は上層部との話し合いの結果、医学生のアフリカ留学に同行することになる。
メンバーは義明、伊達、釈、そして受験の時に伊達と義明が救った女生徒、田村愛（たむらめご）の四人であった。四人は世界三大犯罪都市といわれるナイロビへ留学することになる。
かなり危険な場所なため一応拒否権も与えられた。しかし、経験をできるだけ積んでおきたいということで、満場一致で行くのに反対するものはいなかった。

ナイロビは日本と比べ物にならない程衛生状態が悪く、医者も患者の要望にまともに取り合おうとしない。しかしそんな場所だからこそ医者としての腕を上げるにはうってつけだという。上杉、愛を含んだ五人は現地の病院（助産院）へ到着すると早速、木から落ちたらしい男の子がいた。本来なら大病院へ搬送しなければいけない状態だったが、一番近い病院でも車で3時間かかるので、やむなく助産院で治療を行うという結論に行き着く。

結論が出たのはいいものの、日本の手術室で治療をするのとは全く状況が異なっていた。道具も衛生状態も整っておらず、手術をする環境としては最悪だった。それでも覚悟を決めた四人は無事に手術を成功させる。

やる気のない天才とやる気のある凡人

普段は義明の相棒として隣で支えている伊達だがこの日は違った。それはアフリカ留学中、木から落ちた男の子の手術を行った夜だった。
病院とは言ってもまともに施錠もできない建物。そんな状態で男全員が寝るのはまずいということで、伊達と愛、釈と義明が交代で睡眠をとることになった。

そこで娘を治療して欲しいという男が現れる。伊達はすぐに治療を行う準備を始めようとするが、必要な医療道具がそろわないという状況になった。それでもかなりの急病人ということでやむなく揃う道具で代用する。
伊達は自分は義明とは違い、地道に努力を積み重ねることでしか道を切り開けないということを自覚していた。それでもその愚直さで、誰にも負けなければそれでいいと考えていたのである。
今回の治療も、過去に有料で参加可能な医療実習に行っていた経験が功を奏したのであった。

起きた義明が瞬時に状況を把握し、伊達の作業が間に合わないところをサポートする形で治療に参加する。まともな治療器具も使えない状況の中で、持ち合わせの知識と道具で何とか患者を救うことができたのだ。

平聖中央病院の採用試験

医大の卒業間近に迫った義明、伊達、釈の三人は平聖中央（へいせいちゅうおう）病院の採用試験を受験することに決めた。その説明会に向かう道中の電車に、北海道出身の医大生で、同じ大学を受験する松前慶花（まつまえきょうか）と乗り合わせた。

説明会で説明を執り行ったのは桐生奠（きりゅうさだめ）。前作『最上の命医』で西條命と小児科設置を巡って敵対していた副院長である。今作でもその立ち位置は変わっておらず、強いて言えば一人の医者だった西條命と役職的上下関係が入れ替わった。現在は平聖中央病院の理事長を務める西條命と和解している。

採用試験の受験者は想定の数倍の人数を超えており、講義堂に収まらないほどだったため、選別が行われた。
選別は〇✖問題である。そして第1問が発表される。内容は「あなたは平聖中央病院を第1志望にしていますか」というもので、問題というよりは質問に近い形だった。
そして回答内容はインターネットで公開される。つまり、この場で〇と答えることは他の病院への就職を不利にし、本気でこの病院を狙うものしか受験できない仕組みだった。
これに不満なものは説明会を退席することが許可された。
問題は順調に進んでいき、講義堂に収まる程度の人数になる。そして次に出された問題は、本格的に医学的知識を求めるもので、ここからは私語は一切禁止というルールが追加されたのだった。

出された問題は一見シンプルな二択のようで退席するものは殆どいなかった。しかし、松前は退席ゲートへ向かう。続いて釈、伊達は立ち上がり、二人とも退席ゲートに向かった。
そこで義明は問題で提起されている内容とは別の病気があることに気づく。実はこの問題は表向きには〇✖問題となっているのだが、実は3択目の答えが存在していたのである。
そのことに気づいた義明は退席ゲートが実は本当の意味での合格者を決めるということにも気づく。
義明はかなりギリギリだったが、釈や伊達が通ったゲートに行くことができた。

アラスカ研修

予備試験の選別に残った義明たちは、二週間後に指定された海外の病院へ研修に行くことを命じられる。
人数が20人程度と少し多かったためいくつかの班に分け、別々の病院へ行くことになった。同じ大学出身の者を協力させないということで、義明、伊達、釈はそれぞれ異なる病院へ研修にいくことになった。

義明は、その中でもハードルの高いアラスカ最北端のエスキモー村（簡単に言うと北極）の病院に指定された。上層部の西條命と前作『最上の命医』から西條命を支えてきた天才外科医、桐生危（きりゅうあやめ）が話し合った結果、義明のようなタイプは厳しい環境で育てた方がいいということであった。

義明は他の医学生と共に現地へ到着した。同行した医学生は説明会で義明に話しかけていた松前慶花、切れ長の目を持ち若干長髪の竹中繫治（たけなかしげはる）、関西弁で明るく話す兵庫県の医大出身の吉川妙玖（きつかわみく）など義明含め少し癖のありそうなメンバーが集められていた。

現地の空港で義明はスノーモービルと車による事故に遭遇する。
義明は松前に協力を頼み、救護をする。スノーモービルには二人乗車しており、運転手は車の下敷きになり、足の切断面から出血していなかったので松前は即死と判断した。
車の運転手には特に目立った外傷はなく、スノーモービルに乗車していたもう一人の女性は、運よく雪の上に吹っ飛ばされて呻いていた。義明と松前は優先的にこの女性の応急処置を行った。
義明の診察の結果、女性は右足の脛を骨折していた。応急処置として、バスタオルをビショビショに濡らして女性の足に巻き付け、超低温の環境を利用し凍らせることで即席ギブスを作ったのである。

その後、数分もしないうちに救急車は到着し、義明たちが研修に向かう病院へ搬送された。
最初はただの骨折だと思っていた義明たちであったが、患者の右足は骨折にしては在り得ないぐらい腫れあがっていたのである。

しかし、それ以上に重大な問題は当医がそのことに気付いていなかったことである。今の義明は医学生で、治療に手をだすことは試験に不合格になったり、訴訟されるリスクがある。しかし、義明はそのリスクを覚悟で患者を救おうと覚悟を決める。

覚悟を決めた義明の前に気が付くと義明たちの指導医がいた。患者の担当医より話の通じる人物だったため、義明たちの覚悟と判断力を評価して「現状成績はB」と評価する。心強い後ろ盾を得た義明はすぐに治療に取り掛かり、手術に成功するのだった。

試験の結果は不合格

アラスカ研修を通じて試験に挑んでいた義明だったが、結果は不合格となった。義明と吉川には別途追加試験が言い渡される。
内容は半年後、航海練習帆船に練習生として乗船し、練習生としての仕事をはじめ船医の助手関係の仕事を担当することであった。

追加試験の船で、義明は船医として乗船することになっていた上杉と再会を果たす。乗船中、上杉に船医としての心構えや準備物を教えられる。

義明たちは日本とアメリカの中間地点、どちらの国に搬送するにも時間がかかる位置で嵐に見舞われてしまう。そこで航海士が甲板で倒れ、義明と上杉は手術を行うことになる。
嵐の船内、道具も不足する状況で手術は難航する。しかし義明の熱意に感化された助手として加わっていた練習生の協力もあり、患者は一命を取り留めたのである。

新たなる舞台、帝王大病院

平聖中央病院の試験として、アラスカ研修や航海練習帆船研修を通じて義明は申し分ないほどの好成績を残したが、西條命の推薦で帝王大病院へ配属されることになった。

第1志望の平聖中央病院に配属されなかったことを残念がってもいたが、父親と同じ病院ということもあり特に不満はなかった。
帝王大に着くと義明は担当の指導医の三好政安（みよしまさやす）のところに行く。そこで義明は三好の誤診を見抜く。

そして義明はその誤診されそうになった患者からの証言で、帝王大の医者のレベルが悲惨なものであることを知るのだった。

帝王大をぶっ壊す