いぬやしき(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『いぬやしき』とは奥浩哉による漫画作品、及びそれを原作としたアニメ作品。
冴えないサラリーマンの犬屋敷壱郎と高校生・獅子神皓はある日、公園で謎の光に包まれた。その光は宇宙人が起こした事故であり、命を落としていた二人は事故を無かったことにするために改造されて意識を取り戻す。
「人を助けることで生を実感する男」と「人を殺すことで生を実感する男」の戦いが描かれる。

『いぬやしき』の概要

『いぬやしき』とは『GANTZ』で人気を博した奥浩哉の漫画。2017年10月より「ノイタミナ」枠でアニメ化された。
アニメーション制作は「MAPPA」で、総監督は「TIGER & BUNNY」を手がけた「さとうけいいち」が担当した。

冴えないサラリーマンの犬屋敷壱郎は家族との仲がうまく行っていなかった。念願のマイホームを買うが、その小さな家は喜ばれることなく、犬を飼おうとしても文句を言われるだけだった。ある日、壱郎は胃ガンで、寿命が3ヶ月ほどだと診断される。家族にうまく言えず、公園で泣き腫らしていたところでまばゆい光を見る。それは宇宙人が起こした事故であった。宇宙人が自己の隠蔽をした結果、その時命を落としていた壱郎と、たまたまそこに居合わせた高校生・獅子神は宇宙人の技術でサイボーグ化して蘇るのであった。

「一般人が超テクノロジーを得る」という点は奥浩哉の代表作『GANTZ』と一緒だが、今作の敵は宇宙人ではなく、同じ人間であり、「人助けに自身の存在意義を見出した男」と「殺人を行うことで生きている実感を得る男」の対決を描いている。
58歳の初老の男性が主人公という所が奥浩哉の作品らしい。

『いぬやしき』のあらすじ・ストーリー

壱郎と獅子神の転変

犬屋敷壱郎(いぬやしき いちろう)は、冴えない老け顔のサラリーマン。家族からも蔑ろにされており、「誰からも必要とされていないのなら、どうして自分は生きているのか」と思い悩む日々を送っていた。
そんなある日、愛犬の散歩に出掛けた壱郎は、見知らぬ高校生ともども謎の大爆発に巻き込まれる。薄れゆく意識の中で、壱郎は誰かが「この星の知的生命体を殺してしまった」、「表面的にだけでもすみやかに復元しろ」と焦った様子でやり取りしているのを耳にする。

次に気が付いた時、壱郎は自分の体が生身のそれではなく機械になっていることに気づく。「どうやら自分は宇宙人か何かが起こした事故で肉体を失い、その事実を隠蔽しようとした彼らによって機械の体を与えられたらしい」と察する壱郎だったが、「今の自分は果たして人間と呼べるのだろうか」と新たな悩みを抱えていく。
その後壱郎は、人類の科学力を遥かに上を行く性能を持つ機械の体を使って、人助けを繰り返すようになる。誰かに感謝され、それを自身でも嬉しく感じるたびに、壱郎は「自分はやはり人間なのだ」との実感を得ていくのだった。

獅子神の暴走

一方、壱郎と同様に超常的な力を持つ機械の体を得た獅子神もまた、「今の自分は人間なのか」との悩みに苦しんでいた。やがて彼は「死に恐怖し、必死になって抗おうとする人間を見ると、自分も人間であると感じられる」ことに気づき、目についた犯罪者やいじめっ子を気軽に手にかけていく。やがてそれは“適当に選んだ顔も名前も知らない一家”といったように、無差別なものとなっていった。
やがて獅子神が殺人を繰り返していることは周囲に知られるようになり、我が子の凶行に苦悩した彼の母親は自ら命を絶つ。獅子神はこれに衝撃を受けるも、かえって歯止めが利かなくなり、より公然と大量殺人を重ねていく。

「もはや自分たちには獅子神を止められない」と悟った獅子神の友人たちは、彼と同様の力で人助けを続ける何者かがいることを知り、接触を試みる。その人物こそは壱郎であり、獅子神の友人たちは「どうか獅子神を止めてほしい、今のアイツはもう人間ではない」と彼に頼み込む。
自分が誰かと戦うことなど考えたこともなかった壱郎だが、獅子神の凶行と彼の友人たちの願いを知り、「他に誰もできないなら、自分があの少年を止めるしかない」と覚悟を固めていく。

超常者たちの対決

国家から公然と追われることとなった獅子神は、「自分が生きていくためには日本を滅ぼすしかない」と考えるようになっていた。獅子神が無差別な殺戮と社会への攻撃を繰り返していることを知った壱郎は、ついに彼との直接対決に臨む。
両者の戦いは、すさまじい破壊の応酬となり、最終的には僅差で壱郎が勝利を収める。力を使い果たして倒れる獅子神を見た壱郎は、後はトドメを刺すばかりという状態ながら、近くで起きた大規模な事故の被害者の救助を優先。多くの人の命を救うと同時、この姿が報道されたことで、家族たちにも今の自分が生身の存在でないことを知られてしまう。

これで本当に家の中での居場所を失ったと絶望する壱郎だったが、家族たちは「お父さんはお父さんだ」と言って彼を受け入れる。蔑ろにされる一方で、家族から愛されていなかったわけではないことを知った壱郎は、安堵と感謝に涙するのだった。
一方、壱郎が救助を優先したお陰でからくも逃げ出した獅子神は、友人たちからも拒絶されて自分が完全に居場所を失ったことを知る。それが自分が繰り返した殺戮の因果が巡った結果であることを悟った獅子神は、打ちひしがれながらも逃走生活を続けていく。そんな中、地球に接近する巨大な隕石が発見される。

人類の危機と2人の英雄

地球に迫る巨大隕石は、地球に衝突すれば恐竜が絶滅した時以上の壊滅的な被害を生み出すほどのものだった。そうなれば人類の絶滅も不可避という状況で、各国が協力して隕石の軌道を変えようとするも、この計画は失敗に終わってしまう。
「全て終わりだ、みんな死ぬのだ」と世界中の人々がパニックに陥る中、壱郎は「自分なら隕石の軌道を変えられるのではないか」と考える。地球を遠く離れての作業は、機械の体をもってしても命懸けのものとなることが予想されたが、壱郎は家族に「必ず帰る」と約束して地球を発つ。

宇宙に向かった壱郎は早速隕石の破壊に取り掛かるが、あまりの大きさに「十分に破壊するより先に地球に落ちてしまう」ことが判明。自分だけではどうにもならないと頭を抱える。ここに獅子神が現れ、「自分が隕石の近くで自爆すれば、軌道が変わって地球への衝突を避けられる」と言い出す。
「友人たちを死なせたくない」と言って獅子神はこれを実行し、隕石の本体は地球への衝突コースを外れるが、爆発で砕けた大量の破片はまだ地球への衝突コースを進んでいた。壱郎は家族と人類と地球を守るため、地球に向かう全ての破片を巻き込んで自爆。約束を守れないことを家族に詫びつつ、己の命と引き換えに世界を救う。

かくして地球は救われ、生き残った人々は日常を続けていく。壱郎の家族たちは、父の死を乗り越え、それぞれの人生を力強く歩んでいくのだった。

『いぬやしき』の登場人物・キャラクター

主人公

犬屋敷壱郎(いぬやしき いちろう)

CV:小日向文世
演:木梨憲武

58際のサラリーマン。年齢より老けて見え、娘の友達と会った時には「おじーちゃん?」と言われていた。
家族にはボソボソとしか喋れず、なぜかいつも震えている。
家族との仲はうまくいっておらず、相手にされていない。せっかく買ったマイホームも不満の声が上がり、犬を飼う際も家族は協力的ではなかった。
胃ガンで余命3ヶ月と申告されるが、家族にそれを告げることはできなかった。犬を連れて公園で泣いていたところで宇宙人が起こした事故に巻き込まれる。
その時、命を落としているが、事故をなかったことにしようとする宇宙人に改造されて生き延びている。宇宙人が話している会話によると兵器で改造したらしい。
家族に相手にされず、自身の体が機械になってしまったことで自身が何者なのか疑問を持っていたが、少年たちに襲われていたホームレスを救ったことで、自身の存在理由を得た。

獅子神皓(ししがみ ひろ)

CV:村上虹郎、藤田奈央(幼少期)
演:佐藤健

犬屋敷の娘・麻里とクラスメイト。だが二人にあまり接点はなさそうである。
整った顔立ちをしている。ジャンプを愛読しており、「ワンピース」のファンである。
犬屋敷と一緒に宇宙人の事故の遭遇しており、犬屋敷と同じく宇宙人の兵器で改造されている。
幼少の頃に「友達と家族以外(死んでも)どうでもいい。」と発言しており、幼稚園からの友達である安藤には思いやりを見せたが、赤の他人である一家の人間を顔色を変えることなく惨殺した。その際に「生きてる感じがする。」と発言しており、人助けで生の実感を得る犬屋敷とは対照的な存在である。

犬屋敷の家族

犬屋敷麻里(いぬやしき まり)

CV:上坂すみれ
演:三吉彩花

両親とは似ておらず整った容姿を持っている。クラスメイトからもその容姿があれば性格なんてどうでもいい、と言われるほどであった。
獅子神とクラスメイトだが話している描写などはなく、接点はあまりない。
新居に引っ越した際に一度は父親を褒めるが、その家は隣人の家で、隣のこじんまりとした家が引越し先だと知った時は「こんなもんか…」と言っていた。

犬屋敷剛史(いぬやしきつよし)

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@shuichi

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