イエスタデイをうたって(Sing "Yesterday" for Me)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

イエスタデイをうたって(Sing "Yesterday" for Me)は、集英社『ビジネスジャンプ』『グランドジャンプ』にて1998年から2015年にかけて連載された恋愛漫画。著者は冬目景。大学卒業後、特に目標が定まらないまま過ごす主人公・リクオとリクオの大学時代の友人・榀子、カラスを飼いならす不思議な少女・ハルらの悩みや恋愛模様を描く。

『イエスタデイをうたって』の概要

イエスタデイをうたって(Sing "Yesterday" for Me)は、冬目景によって1998年から2015年にかけて連載された恋愛漫画。
大学を卒業した後、目標なくコンビニでアルバイトをする生活を続けるリクオは、ある日カラスを連れた少女・ハルと出会う。ハルはたびたびリクオの働くコンビニに訪れるようになり、二人は少しずつお互いのことを知っていくようになる。一方、リクオは学生時代の初恋の相手だった榀子が東京に帰ってきたことを知る。恋愛、仕事、受験、家族、夢、彼らは悩み苦しみながら、自分たちの未来を手探りしていく。
当初連載されていたビジネスジャンプの休刊に伴いグランドジャンプに移籍。掲載の頻度は非常に少なく、全11巻という冊数ながら18年間の長期連載作品である。コミックス全11巻に加えて『イエスタデイをうたってEX ~原点を訪ねて~ 冬目景 初期短編集』、小説版『イエスタデイをうたって デイ・ドリーム・ビリーバー』が発刊されている。

『イエスタデイをうたって』のあらすじ・ストーリー

大学を卒業した後、目標もなくコンビニでアルバイトをする日々を続けるリクオは、ある日カラスを連れた少女・ハルと出会う。たびたびリクオのコンビニに顔を出すようになったハルは、廃棄する弁当をせびったり、悪びれもせずコンビニの万引きした商品をリクオに返したりと破天荒な面を見せる中で『あたしはリクオのことずっと前から知ってるんだ』と意味ありげに告げる。
その一方、リクオは学生時代の初恋の相手・榀子が高校教師として東京に帰ってくること、榀子が同窓会に訪れることを友人から聞く。卒業間際に榀子への告白に失敗していたリクオは、ちょうど郵便受けに入っていた同窓会の手紙を捨てる。しかし榀子は数日後リクオのコンビニを訪れる。かつての気持ちを思い出したリクオは榀子の「昔のように仲良くしたい」という言葉を受け、かつてのように遊ぶことを約束することになる。榀子との帰り道、ハルが鉢合わせたことで、ハルが榀子の元教え子だったこと、ハルが高校を中退したことをリクオは知る。

リクオは榀子とハル、それぞれと曖昧な関係を続ける。そんな日々の中でバイトの先輩に自分の逃げ腰・卑屈さを指摘されたリクオは、自分が社会のはみ出し者というフレーズに陶酔していたこと、自分の体裁を守ることばかりを考えていたことに気付く。リクオはその帰り道に榀子の家に寄り、昔から好きだったこと、今も好きであるということを榀子に伝えるが、榀子には友だちでいたいと言われてしまう。
榀子に失恋して3ヶ月。リクオは夜の公園で偶然榀子と出会い、リクオが友だちではなくなる不安から、あくまで友だちのままでいたいという榀子の思いを聞く。リクオは今まで通りでいられるわけはないと思うもののそれを口には出せずにいると、そこにハルが現れる。ハルは5年前の雪の日、リクオの受験票を拾ってあげて以来リクオに恋心を抱いていた。リクオと曖昧な関係を続けていたいと思う一方でハルの邪魔をしてしまうという気持ちから榀子の気持ちは揺れ動いていた。

榀子が教師をしている高校に、榀子を追うようにして榀子の幼馴染・浪が転校してくる。浪は幼い頃から榀子のことを好いていたが、年が7歳離れているということもあり榀子には弟としてしか見てもらえなかった。浪はクラスの女子たちのアプローチを意に介せず、事あるごとに榀子に近付くようになる。浪はリクオの存在を知るとすぐにリクオに近付いて榀子との関係を探り、進展のないことに安心する。そして『本当の敵』である榀子と同い年で6年前に死んだ浪の兄について話し始める。榀子は死んだ浪の兄、湧のことを今もなお好きでいた。榀子が湧に捕らわれ続け前に進めずにいることを知ったリクオは、榀子にあくまで友だちのままではいられない、好きでいるということを改めて伝えた。
湧のことを聞いたハルは榀子に、リクオを私が手に入れると宣戦布告する。

1年ぶりに実家に帰省した榀子は、湧の父から湧の遺品整理を手伝ってほしいと頼まれる。形見分けをすることで湧のことを忘れさせようという湧の父の思いは逆効果となり、思い出の品を目にした榀子はますます湧への想いを強くする。
ハルがリクオに、リクオと浪が榀子に、榀子が湧に想いを寄せる構図は続く。リクオはアルバイト生活に逃げ腰の続く自分が榀子に見合う人間ではないと考えるようになっていた。4人は親しい間柄ながら、それが恋なのか友情なのか、距離を計りかねるようになっていく。
リクオは写真ギャラリーでのアルバイトを始める。同じギャラリーで働く男性・湊はハルと同じ高校に通っており、ハルに対して好意を抱いていた。二人は徐々に距離を詰めていくが、ハルはリクオの嫉妬心を煽るために湊との関わりを続けている自分に気付き自己嫌悪する。ハルと湊が映画館に行く予定日の朝、ハルの飼うカラスが行方不明になる。動揺したハルが助けを求めたのは湊ではなくリクオだった。その日はリクオが榀子と約束をしていた日でもあったが、ハルとリクオは約束を諦めカラスを捜索した。後日、湊に交際を申し込まれたハルはそれを断り、再びリクオのことを正面から振り向かせようと決意する。

浪からの強いアプローチに浪との接し方が分からなくなった榀子は、リクオに相談を持ちかける。話をするうちに榀子は、自分が浪とリクオに対し真剣に向き合っていなかったこと、死んだ湧の中に自分が恋愛から逃げる口実を作っていたことに気付く。榀子はリクオと正月を過ごす中で、湧とは違った新しい『好きという感情』を見出し、リクオとの交際を始める。
二人のことを知ったハルは祝福をしたいという気持ちとリクオへの想いの間で揺れ悩み、気持ちの整理をつけようと大好きな祖母が住む実家へと逃げるようにして帰る。徐々にその居心地の良さに馴れ、帰ることをやめようかとすら考えていたハルに、ハルの祖母は「逃げていてもなんの解決にもならないよ」と呟いた。
一方リクオは榀子との関係に不安を抱えていた。自分への想いの曖昧さ、お互い遠慮しあう居心地の悪さ、顔色を探り合う関係が続いていた。そしてリクオ自身ハルへの想いを断ち切りきれず、気付けば居場所を告げず去ったハルの情報を集めていた。自分に都合の良い相手としてリクオは榀子を、榀子はリクオを当てはめようとしていた。自分に嘘をつくことが許せなくなったリクオは、ついに榀子に別れを告げる。

ハルは逃避行をやめ、現実を見つめて生きていくことを決意し東京への帰路を進む。そしてリクオは東京から単身、会えるかどうかすら分からないままハルの元へ向かった。数々の気持ちのすれ違いを繰り返してきた二人はここでもまたすれ違う。ハルの実家についたリクオは、ちょうどハルが家を出たことを知って急いで駅へ向かった。ついに駅で出会った二人は、誰もいないホームで口づけを交わしたのだった。

『イエスタデイをうたって』の主な登場人物・キャラクター

魚住 陸生 / うおずみ りくお (リクオ)

本作の主人公。大学卒業後、人生の目標が定まらないままコンビニでアルバイトをしている。
カメラを趣味としており、作中で写真ギャラリーの手伝いを始める。人物写真は撮らない主義。
大学時代から榀子に恋心を抱き、友達以上恋人未満の関係を続けていたがついに交際を始める。

野中 晴 / のなか はる (ハル)

カラスを飼いならす不思議な少女。バーでバイトをしていたことを咎められ高校を自主退学。ミルクホールという喫茶店で働く。
リクオの大学受験時に受験票を拾ってあげたことからリクオを気にかけ、次第に恋をするようになった。リクオの榀子への恋心を知りながらも逆転を狙い榀子に宣戦布告をする。

森ノ目 榀子 / もりのめ しなこ

リクオの大学時代の同級生。東京の大学を卒業後、金沢で非常勤講師をしていたが東京の高校に赴任。かつてはハルの副担任をしていた。
過去に恋心を抱いていた早川湧を亡くし、その思いを今も捨てきれずにいる。
リクオとは友だちとして曖昧な関係を続けようとしていたが、作中でついに交際を始める。

早川 浪 / はやかわ ろう

榀子を追って金沢から転校してきた榀子の幼馴染。榀子が好きだった早川浪を兄に持つ。
榀子のことを一途に想うが弟扱いから抜け出せず、自分自身を見てもらうため絵画の道で自己を示そうとする。

早川 湧 / はやかわ ゆう

浪の兄であり、榀子の幼馴染。
生まれつき病弱で、榀子が高校3年のときに亡くなった。
亡くなってから6年が経っても榀子は湧のことを慕い続けており、榀子を振り向かせようとする浪は『無敵のラスボス』と揶揄している。

湊 航一 / みなと こういち

マスコミ関係の仕事を目指す大学2年生。リクオがアルバイトをする画廊の同僚。
高校時代から同級生だったハルのことを気にかけ、リクオを慕うハルの気持ちを知りながらも交際を申し込むが失敗。
その後は大学を中退、海外を数年放浪する中で想い人を見つける。

『イエスタデイをうたって』の名言・名セリフ

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