赤髪の白雪姫(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『赤髪の白雪姫』とは、あきづき空太による少女漫画作品。白泉社LaLa DXで連載された後、LaLaに移籍。単行本は17巻まで刊行中。2015年7月よりテレビアニメ1stシーズンが放送され、2016年1月より2ndシーズンが放送された。生まれつき赤い林檎のような美しい髪を持つ少女白雪が、その珍しい髪色のせいで生まれ故郷を出ることになり、辿り着いた隣国で運命を切り開く物語。

『赤髪の白雪姫』 概要

「赤髪の白雪姫」とは、あきづき空太による日本の少女漫画。2006年に白泉社LaLaDXに読み切りが掲載され、それが好評だったため連載が開始された。2011年LaLaに移籍された。単行本は17巻まで刊行中。
2015年7月にアニメ化されTOKYOMX、アニマックス、BSフジ、読売テレビ、テレビ愛知で1stシーズンが放送された。2016年1月から2ndシーズンが放送された。
生まれつき林檎のような美しい赤髪を持つ白雪は、その珍しい髪色を自国の王子に気に入られ愛妾にされかかり、それを拒否した白雪は髪一束を残し、自国を出ることにした。辿り着いた隣国で力を貸してくれたのは第2王子ゼン。出会った2人が様々な人々との出会いの中で、成長し、運命を切り開く物語。

『赤髪の白雪姫』 あらすじ・ストーリー

出会い

タンバルン王国の下町に住む美しい林檎のような赤髪の娘・白雪は、第1王子ラジの愛妾候補に選ばれた。それを拒否するため、長かった髪を切り、その場に残し、生まれ故郷を後にした。辿り着いた隣国クラリネスの森にある一軒家で休憩をしていると、その家の主のゼンとお付のミツヒデと木々に出会った。薬剤師の白雪は塀から落下したゼンの捻挫の手当をしようとするが、ゼンは白雪を不審者とし手当をさせようとしない。白雪は自らの腕を傷つけ手当して見せることで、用いた薬は毒ではないと証明した。その行動を見たゼンは白雪を気に入り警戒を解き、白雪に手当を頼んだ。白雪が逃亡してきた事情を聞いたゼンは、「赤ってのは運命の色のことを言うんだろ」と言い、「今は厄介なだけでも案外いいものにつながっているかもしれないぞ」と白雪を励ました。
その家に、タンバルンから籠に入った真っ赤な林檎が届けられた。それには白雪が切った髪を束ねていたリボンと手紙が添えられていた。執念深いラジに途方にくれ、籠に入れられた林檎に自分を重ね、俯いていると、ゼンがその林檎を口にし、そのまま倒れてしまった。その林檎には毒が塗られていたのだ。ゼンが倒れた直後、タンバルンの使者が白雪を迎えに来た。ゼンの解毒剤を求め白雪は使者について行き、ラジ王子と対峙した。自分の身と引き換えにゼンを助けようとする白雪の元にクラリネス王国第2王子と名乗るゼンが助けに現れた。王子という立場から毒殺に備え、ゼンは毒に耐性を付けていたのだ。ゼンは、隣国の王子毒殺未遂などという愚行を黙っている代わりに、今後白雪には二度と関わらないことをラジに約束させた。
自分の存在はゼンにとって毒にしかならなかったと嘆く白雪に、ゼンは、「この場限りの毒か、これからのつながりかお前が決めればいい」と言った。白雪はゼンのいる国でゼンの行く道を側で見てみたいと思い、クラリネスで暮らすことになった。

宮廷薬剤師を目指して

ゼンの手助けをしたいと考えた白雪は、宮廷薬剤師を目指すことにした。ゼンの側近のミツヒデや木々は応援してくれている。しかし、何の身分もなく後ろ盾もない娘がゼンに近づくことをよく思わない貴族もいた。立場や階級を重んじる考えを持つハルカ侯爵は、ゼンに氏素性も分からぬ街娘を城に招くなと忠告をするが、ゼンは聞く耳を持たなかった。業を煮やしたハルカ侯爵は白雪が城に出入りできなくなるように、ゼンの名を騙り衛兵に白雪出入り禁止の通達を出し、白雪には刺客を放った。通達より早く、忘れ物を取りに王城のゼンの元に向かう白雪の前に一本の矢が刺さった。それにはこれ以上前に進まないよう警告文が結ばれていた。白雪は矢を抜き去りゼンの元へと走る。刺客のオビは警告をものともしない白雪に驚き、白雪を気に入った。地位や権力に目が眩んだ娘をゼンの側に置くわけには行かないと、白雪に剣を向けるハルカ侯爵に「私がここにいてはいけないのなら、その剣で斬り払って止めればいい」と白雪は言い放ち、脅されても屈しなかった。その態度にハルカ侯爵は白雪に向けていた剣を収めた。ゼンはハルカ侯爵にこのような事は二度とするなと釘を刺し、刺客・オビもミツヒデと木々に追い詰められた。ゼンと白雪が気に入ったオビはゼンの従者を名乗り、オビを目の届くところに置いておきたいゼンもそれを認めた。

宮廷薬剤師試験が始まった。白雪は試験会場である薬草園をチェックしていた。試験中の白雪を見つけたゼンは彼女が何者かに付けられていることに気づいた。不審者の動向を見るため、白雪のいる薬草園に身を隠すとそのまま白雪と共に薬草園に閉じ込められてしまった。どうやら受験者がライバルを一人蹴落とそうとやったことのようだ。白雪がゼンの友人であり、試験中に会っていたなどと噂がでると、試験に手心を加えられたなどの悪評が立ってしまう。迂闊に白雪に近づいてしまったことをゼンは悔やんだ。朝には視察が入るはずだからここから出られると、気持ちを切り替えた白雪は薬草園のチェックを始め、一つの花の異変に気づいた。その花・ユラシグレは間違った方法で栽培されると根から毒素を出す。これを放置しておくと他の植物にまで影響が出てしまうと、ゼンに手伝ってもらい、徹夜で全ての植物を正しい栽培方法に植え替えた。朝、薬室長・ガラクの視察が入り、王子に手伝わせたことを呆れられるが「王子を助けるかも知れない大事な薬草たちですので」と答え、ガラクを驚かせた。ゼンの友人として白雪を合格させることもできるというガラクにそんなことをすれば白雪はすぐに姿を消してしまうから、合否は公正にしてほしいとゼンは頼んだ。薬草園の間違いを探す、という試験に、間違いを指摘するだけでなく、全ての植物を一晩で植え替えた白雪は、見事合格し、宮廷薬剤師として王城に務めることになった。

ラクスド砦の異変

ゼンの直轄地・ラクスドからの連絡が途絶えた。ゼンと側近たちは視察に行くことにし、砦内で兵たちが倒れているのを発見した。そこには原因不明の奇病が蔓延していたため、王城に連絡が入れられなかったのだ。ゼンは、近くの町に出張していた白雪に応援を求め、奇病の原因究明と、兵たちの病を治すために動き出した。砦内の武器庫はもぬけの殻で、旅団を装った盗賊団に奪われてしまったようだ。白雪は、暖炉に使う薪に原因があると突き止め、兵たちの治療に取り掛かる。その薪は変装した盗賊団が意図的に置いていったものだった。ゼンは薪を置いていった盗賊団を探し出し、取り押さえることに成功した。程なくしてラクスド砦は元の状態に戻った。しかし、自分の体を休ませることなく、兵たちの治療をしていた白雪は過労で倒れてしまい、ゼンに叱られてしまった。自分が無理をすればいい話ではないと諭し、ゼンはこれからは二度と隠し事をしないと、白雪に約束させた。

イザナ王子帰還・ラジ王子の来訪

長く城を離れていたクラリネス王国第1王子・イザナが王城に戻ってきた。自分が不在の間、ゼンの側に居るようになった白雪とオビに対し、警戒を見せる。王族であるゼンが友人を持ち城に招くだけでも貴族たちには興味を引かれる話だが、それが珍しい赤髪を持つ娘で、それ以上の価値がないとわかれば皆がゼンを見る目が冷ややかになると、イザナは2人に圧力をかける。白雪がタンバルンのラジ王子の愛妾候補だったことを知ったイザナは、2人を離す為、ラジ王子をクラリネスに招待することにした。両国の友好の為、訪れたラジにイザナは白雪の話題を振り、会って行けと誘う。しかし、ゼンとの約束があるため、ラジは簡単には頷かない。むしろゼンの方が白雪を望んでいるのではないかと発言し、周囲を困惑させた。慣れない外交の為、胃を壊したラジは側近のサカキに薬を持ってくるように命令する。しかし、待っても戻ってこないサカキに痺れを切らし、勝手にその場から離れてしまった。その途中、宮廷薬剤師の仕事をしていた白雪にばったりと出くわし、白雪が手にしていた薬を自分用の物だと勘違いし、服用しようとした。持っていた薬を奪われた白雪は慌ててラジの手ごと薬を払ってしまった。その薬は飲み薬ではなく、外用の薬だったのだ。ラジの人の話を聞かない勝手で軽率な行動に、王子なのだからもっと自覚を持てと白雪は意見する。その言葉はラジの心にかすかな変化をもたらした。
ゼンの側から白雪を離したいイザナは2人のやり取りを聞いており、「あなたはラジどのといるのが向いてると思うなあ」と白雪に言うが、白雪はこの国を離れるつもりはないと言い切った。白雪の言動に笑みを浮かべ、イザナはその場を立ち去った。ラジがクラリネスを去る日、ラジはサカキに自分の代わりに城に向けて一礼させ、クラリネスを去った。

外交の場で白雪の名が出たことで、貴族の間で白雪を調べる者たちが現れた。それらを牽制するため、ゼンはオビを白雪の護衛に付けることにした。
ある日、薬室長のガラクに強い酒を飲まされ白雪は酔っ払ってしまった。酔っ払った白雪は言動が色々おかしいが、どうやらラクスドに行こうとしているらしいとオビは気づいた。ラクスドの失態の責任を取り、ゼンは管轄から外されてしまったのだ。白雪はそれをずっと気にしていたのだ。それを理解したオビは、行きたいならいつでも連れて行くけど、ラクスドにはもう自分が様子を見に行ってきたと白雪に話した。ラクスドの兵士たちがゼンと白雪に感謝の言葉を言っていた事や、ゼンの管轄を離れてしまってもしっかりやると決意を固めていたことを聞き、白雪は安心しそのまま寝入ってしまった。
白雪を狙ったオビのことを白雪が受け入れ、オビも白雪の信頼を得たとして、ゼンはオビに第2王子付き伝令役の身分証を渡した。オビは自称従者から、ゼンの本物の従者になった。

少女の鳥

ある日ゼンのもとへ王都ウィスタルの南に位置するブレッカ子爵領のユリス島に生息する鳥の保護を求めてキハル・トグリルという少女がやってきた。領主が代替わりし、新領主になったブレッカ子爵はその鳥の珍しい美しい羽に目をつけ、狩るようになったのだ。キハルの一族は古くからその鳥を操り共存してきた。ブレッカ子爵に何度も陳情するが受け入れてもらえず、第2王子に話してみろと王城に連れてこられたのだ。事情を聞いたゼンは本心ではキハルの味方をしたくても、国として動く案件ではないと判断し、領主と領民が話し合うようにとしか答えることができなかった。失意のキハルは王城の庭で気を晴らしていたが、その時、遠く離れた人物を呼ぼうとしている人を見つけ、鳥を使って手助けをした。それは、オビと白雪と上司のリュウだった。見事な鳥の技に驚いた白雪は、キハルの事情を知り、鳥を操る技を保護すればいいのではと思いついた。オビからそれを伝えられたゼンは、鳥使いの技を遠距離でも使えるのかキハルに確認し、クラリネスの新しい伝達手段として採用できるかどうか考試することになった。馬で往復40分かかる距離を鳥が25分で戻ることを条件に考試が開始された。目的地に鳥が目印とする胡桃石の鈴を持った人を置き、鳥の足に取り付けた書状にサインをして王城まで戻す。王城で鳥を操るのはキハル。目的地・ココクの見張り台で鳥を待つ役は白雪になった。ブレッカ子爵は白雪が不正をしないように見張るといい白雪と監視役の兵3名と共にココクに同行することになった。ブレッカ子爵はココクに着くと、白雪がゼンと友人であると知った上で、身分差をあげ、今後白雪の助けになるよう裏で支持するので、その代わりに鳥は来なかったと証言するようにと持ちかけた。それを断った白雪に腹を立てたブレッカ子爵はココクの見張り台に白雪を閉じ込め、目印の鈴を湖に捨ててしまった。一部始終を見ていた兵がブレッカ子爵に抗議するが、一兵士の分際で貴族に歯向かうなと一蹴されてしまった。抗議する白雪に、ゼンに泣きついたとしても貴族と平民の言う事だったら、たとえ本心とは違っても貴族の言う事を信じなければ、周囲からの反感を買ってしまうとブレッカ子爵は嘲笑った。白雪は、ブレッカ子爵のその言葉に「確かにあなたの言う通り…本心では動けない時があると思う。でもそれなら、私は全力であの人をそんな目には遭わせない」と言った。貴族の頂点の王族といえど、周囲の貴族をないがしろにしていては政は成り立たない。貴族社会のしがらみでゼンが本心を押し殺し行動しなければならない時は、ゼンが本心を貫けるように白雪や側近たちが全力で支えると白雪は宣言した。そして窓を突き破り、鈴を探すため見張り台の頂上から湖へ飛び込んだ。様子を見に来たオビと共に湖に落ちてしまった鈴を探すがなかなか見つからず、キハルの鳥が到着してしまった。
一方王城では時間間際になっても戻らない鳥を心配するが、残り2分で鳥が帰還し、考試成功となった。同時にココクの見張り台で行われたブレッカ子爵の不正行為が報告され、ゼンは急いでココクに向かった。
ブレッカ子爵は拘束され、ゼンは兵から白雪が語ったこと、起こった全てを報告された。本心で動けないような目には遭わせないと、湖に飛び込み怪我をしてまでゼンのする行いを守ろうとした白雪への思いが強くなったゼンは白雪を抱きしめキスをした。白雪もゼンが好きだと自覚し、お互いの思いが通じ合い、これから2人ともに歩くことを誓い合った。

白雪を狙う者~タンバルンからの招待状

ゼンと白雪を巳早という者が訪ねてきた。実はこの男は白雪がクラリネスに来て間もない頃、白雪の赤髪に目を付け、金持ちの貴族に売ろうと画策し、白雪を誘拐した人物だったのだ。巳早はゼンに捕らえられ投獄されていたはずだった。巳早によると刑期を終え港へ行った時に赤髪の娘を探している美少年に出会ったという。少年は城よりも相応しい場所へ白雪を連れて行くと話しており、それを知った巳早はその情報をゼンに売る為に城にやってきたのだ。白雪はなぜ自分を捕えようとするのか事情が知りたいとその少年を探し始めたが、なかなか見つけることができない。そんな折、ゼンと白雪はイザナから呼び出された。白雪にタンバルンから夜会の招待状が届いたという。何者かが白雪を狙う中、タンバルンへ向かわねばならない白雪を心配したゼンは、自分が信頼する者を白雪に付けたいとイザナに進言しミツヒデが白雪に同行することになった。白雪の出発が近づくが少年の行方はわからない。タンバルンに付いていく事ができないゼンは、深夜一人で剣の訓練を行いモヤモヤした気持ちを発散していた。それを見ていたオビは自分が勝ったら白雪の付き人は自分にして欲しいとゼンに勝負を持ちかけた。「あんたが守れない時は俺があんたの代わりに守る」とオビは言い、白雪の付き人はオビに決まった。
タンバルンに到着した白雪とオビは、ラジ王子の歓待を受け夜会まで一緒に過ごすことになった。クラリネスで白雪に世話になったと思いそのお礼の為に白雪を呼んだのだが、ラジの側近や王家の者たちには白雪をラジの側に置きたいという思いがあった。今まで傲慢で人の話を聞かないダメ王子だったラジがクラリネスから戻った後、国政に興味を持ったり変化が見られたのだという。白雪をラジの教育係としたい城の人々は2人を近づけようと画策する。
夜会当日、クラリネスのゼンからオビと白雪に通達が入った。件の少年がタンバルンに潜入し白雪を狙っているという。その連絡を受け取った直後、白雪は鹿月という少年と、イトヤという青年に攫われてしまった。
ゼンはイザナの制止を振り切りタンバルンに入り、白雪救出を目指す。イトヤに怪我をさせられたオビは単身白雪を追い、イトヤとその仲間である山の獅子の一団を見つけた。しかし、白雪と鹿月はイトヤが離れた隙に海の鉤爪という海賊に奪われていたのだ。海の鉤爪は目的の為には手段を選ばない人身売買にも手を染めるタンバルンでも手を焼く一味だった。山の獅子という自警団にいつも仕事の邪魔をされ、その仕返しをしようと山の獅子が狙っている娘を横から奪おうと鹿月とイトヤをつけていたのだ。かつて鹿月は海の鉤爪に囚われて、その美しい外見により貴族に売られ過酷な目に遭ってきた。王族に目をつけられ国を出なければいけなかった白雪を自分に重ね、貴族から奪い取ろうと白雪を攫ったのだと言う。ゼンとオビは合流し、白雪救出という同じ目的のため、山の獅子と手を組み海の鉤爪を追う事になった。ゼンは木々を海の鉤爪の船に乗りこませ白雪と鹿月の安全を確保し、ラジは商船の力を借り海の鉤爪の船をアジトに誘導した。巳早から情報を得たゼンたちは海の鉤爪のアジトに先回りし、敵の本隊が戻るのを待った。ゼンたちと山の獅子はアジトに到着した海の鉤爪を死闘の末破り、白雪は救出された。

山の獅子の頭、武風は実は白雪の父で、国を追われた白雪をずっと探していたのだ。武風に恩がある鹿月は武風の思いを知り、白雪を貴族から助け出そうと勝手に動き、白雪の意志を確認する前に攫ったのだ。しかしそれは過ちだったと鹿月は白雪に謝り、改めて父や自分たちと一緒に山の獅子として暮らそうと誘うが、白雪はゼンとともにクラリネスで暮らすことを選んだ。

中止になっていたタンバルン王城の夜会が催され、ラジと白雪は改めて友人となり、白雪の髪が伸びたら見せる約束を交わし、白雪はクラリネスへ帰還した。
クラリネスに戻った白雪にタンバルンのラジから「王家の友人」という称号が届けられた。今後王族や貴族との付き合いが増えるであろう白雪を心配したラジが、友人白雪のために贈ったものだった。白雪はタンバルンの国賓になった。

北の街・リリアスへ

北の関所のある街・リリアスからの報告が途絶え、宮廷薬剤師の上司・リュウと白雪が様子を探りにリリアスに出張に行くことになった。学問街として栄えた街で出会った学者や薬剤師たちとの交流はリュウや白雪に刺激を与えた。同時期に北へ来ていたイザナは、身分を隠し白雪たちと行動を共にすることになった。そんな中、子供や兵たちが腕や足に渦巻きのようなアザが浮かび上がり体温がどんどん下がる奇病が蔓延し始めた。白雪はイザナにリリアス封鎖を進言した。ゼンも北へ駆けつけ、リリアスの関所を利用する人々を別の場所へ誘導する役目を負った。ゼンはオビを白雪の助けに残し、自分は外からイザナから託されたリリアス封鎖で起こる混乱を収めるため奔走していた。古文書を読み解き、鈍く光る水が原因と分かった白雪は、その水を見たという子供と一緒にその場へ行くことにした。オビが2人の護衛に付き、その場へ行ってみると病の原因である植物の種を発見した。白雪は種をリュウに託し治療薬を頼み、原因の植物を探すためオビと共にもう一度外へ行き、オビの助けを借りて原因植物を見つけると、そこにはリリアスの薬剤師・シダンの姿があった。原因植物の名は「オリンマリス」。シダンが隠れて栽培していた種が光る植物だった。寒さの厳しい北の街リリアスでは美しい花を咲かせる植物は少ない。薬用でなく観賞用でも銀世界を彩る花を育てることはとても難しい。リリアスの学者にとって極寒の地で美しい花を咲かせることは悲願であった。シダンは光る種を付けるオリンマリスを研究し、白銀の道々に植えられたらと考えていた。道々に種が光る光景は、鮮やかな花が咲いたような景色になると思っていた。有毒植物として広まってしまえば、オリンマリスは厳重に管理されシダンの夢は叶わない。シダンは白雪にこの花の存在を報告しないで欲しいと頼むが、白雪は正々堂々と守るべき、と言い薬室長に報告をした。王城の薬室長でシダンの昔馴染みだったガラクは白雪の報告を受け、シダンをオリンマリスの研究及び管理者にし、今後も継続して研究できるように整えた。
シダンは研究と改良を重ね、いつか毒のないオリンマリスを咲かせようと決意を固めた。
リュウの治療薬も完成し、リリアスの奇病も落ち着きを見せた。オリンマリスは有毒植物として管理され、リリアスの封鎖は解かれることになった。

新王即位

白雪はゼンの住む一角に側近たちとともに部屋を与えられ、宮廷薬剤師の白雪は、ゼン王子の側近くにいる者だと城中に認識されるようになっていた。はじめはやっかみなどから嫌がらせを受けることもあったが、白雪は毅然とした態度で受け流し、王城内に白雪の存在は浸透していった。

クラリネス現女王・ハルトが退位しイザナが新王として即位することになった。ゼンは戴冠式で王冠をイザナに被せる役を仰せつかった。イザナの戴冠式の知らせは近隣諸国に届き、白雪は戴冠式に出席するタンバルンのラジ王子の案内役に任命された。一介の宮廷薬剤師である白雪の大役抜擢に王城の皆が驚き、タンバルンからの称号を白雪が持っていることが皆に知れ渡った。戴冠式は無事に終わり、イザナは王位継承と婚約を発表した。白雪はラジに伸びた髪を見せるという約束を果たし、ラジは故郷の王子が自分で良かったと白雪に認められるように頑張ると言った。その言葉を聞いた白雪はラジに負けないよう自分も頑張るとお互いを励ましあい、友情を深めた。

再びリリアスへ

宮廷薬剤師の上司・リュウとともに白雪はリリアスに赴任することに決まった。薬剤師兼研究員として派遣されるのだ。リュウはリリアスで2年間修行をし、北のウィラント城の薬室へ赴任する予定だ。ゼンと長く離れる不安と寂しさに白雪は涙を流すが、ゼンに手紙を書くと励まされ、笑顔で旅立って行った。
ゼンはオビを白雪に付けようとするが、オビの返事は保留。今まで誰にも縛られず、一箇所に留まらず流れていたオビにとって、そのままずっと同じ場所に留まることは覚悟が要ることだった。それでも、決意を固め、ゼンに返事をすることにした。オビはゼンに自分の白雪への気持ちを問われ、素直に好きだと答えた。その上でゼンから白雪の側にいて白雪を助けてやって欲しいと請われ、オビはリリアスへ行くことに決めた。
リリアスに赴任し、冬の風邪に絶対必要だという薬の調合に苦戦する白雪だったが、リュウとオビに助けられ、何とか作れるようになった。オビは白雪を誘い外へ行き、そこで自分がリリアスに来た訳を話す。そして、白雪に「あんたと主の力になる為と俺の為に居てもいいかい」と言い、白雪から快諾された。白雪はリュウを師とし、オビを味方とし、自分も2年後にウィラント城を目指すと目標を定めた。

灯りの花オリンマリス

白雪とリュウは奇病の原因となったオリンマリスを雪道の観葉植物とする研究を始めた。毒を無くすか溶け出さないようにしなければいけないのだが、なかなか上手くいかない。熱によって毒が溶け出すことはわかっているのだが、毒を流すために熱を与えると光の成分までが溶け出してしまい、光量が落ちてしまう。これを改善するためには植物学だけでなく鉱物学の専門家が必要と考えたリリアスの研究者たちは、ラタ・フォルゼノという人物に目をつけた。クセの強い煌晶石学者で人嫌い、リリアスで見つけようと思っても躱されてしまい見つからない。ちょうど王城の夜会に招待されていた白雪は、ラタが貴族であることを利用し、王城の夜会に呼び、そこで話を聞いてもらうことを思いついた。貴族の義務は果たさなければいけないラタは仕方なく王城へ向かい、そこで白雪とオビに捕まった。白雪はオリンマリスの為に助力を頼み、ラタは渋々ながら助力を約束してくれた。
ラタの指導で、種に熱を与え続ける煌晶石を作れるようになった白雪たちは、種を煌晶石に埋め込む方法を思いつき、何度も試行錯誤を繰り返し、毒のない種を作り出すことに成功した。

貴族襲撃事件

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