金色のコルダ(La Corda d'oro)のネタバレ解説まとめ

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「金色のコルダ」とはコーエーから発売されている女性向け恋愛シミュレーションゲーム。原案はルビー・パーティー。それを元にキャラクターデザイン担当の呉由姫が白泉社「LaLa」で連載していた漫画作品。コミックスは全17巻。テレビ東京系6局でアニメも放映された。音楽に関して全くの素人だった日野香穂子が音楽の妖精・リリに導かれて音楽の魅力にはまり、コンクールを通して知り合った人々との交流を深めていく物語。

『金色のコルダ』概要

金色のコルダとは2003年にPC用ゲームとしてコーエーから発売された女性向け恋愛シミュレーションゲーム。原案はルビー・パーティー。2004年にPS2用の移植版、2005年にPSP用の移植版が発売された。ゲームのキャラクターデザインを担当した呉由姫が白泉社「LaLa」にて同名の漫画を連載。2006年10月から「金色のコルダ〜primo passo〜」としてテレビアニメ化され、2009年3月と6月にスペシャルアニメ「金色のコルダ〜secondo passo〜」が放送された。2010年3月には「金色のコルダ ステラ・ミュージカル」としてミュージカル公演も行われた。
2011年にはソーシャルゲームサイトから「100万人の金色のコルダ」が配信されている。
金色のコルダで演奏されたクラシック音楽やBGM、キャラクターソングなどを集めたクラシックコンサートなども行われている。

音楽の祝福を与える妖精・リリから魔法のヴァイオリンを与えられた星奏学院2年・日野香穂子が、学内コンクールのメンバーに選ばれたことから物語が始まる。音楽のど素人でありながら魔法のヴァイオリンの力を借りてコンクールに参加し、コンクールメンバーとの交流を通じて音楽の魅力にはまっていく青春物語。

『金色のコルダ』のあらすじ・ストーリー

学内コンクール

私立星奏学院には音楽科と普通科がある。音楽科と普通科は校舎も違えば制服も違う、同じ学校でありながら殆ど接点がない。
この学院では数年毎に音楽コンクールが開かれており、音楽科でも普通科でも参加できることにはなっているのだが、毎回参加者は音楽科の生徒で構成されていた。この学内コンクールには妖精にまつわる話があった。妖精がコンクール参加者同士の恋の架け橋になるというお話で、対象の2人がヴァイオリンだった為「ヴァイオリンロマンス」と呼ばれていた。学内コンクールといえどもレベルは高く、優勝者の中には世界的に有名になる人もいるらしい。

普通科に通う2年の日野香穂子は、ある日学院内で空中に浮かぶ奇妙なものを見てしまった。そのまま逃げ帰ってしまったのだが、翌日、学内コンクールのメンバーに自分が選ばれていることを知った。何かの間違いに違いないと学内コンクール担当教諭・金澤紘人に問い質すと、「アレ」を見てしまったのだから仕方がないと言われてしまう。何が何だか分からないものの、「アレ」に会うために音楽科の練習室棟に出向いた。
空中に浮かんだ奇妙なものはリリという音楽の妖精でファータという種族だという。この学院の創立者に命を助けられ、恩を感じたリリは学院全体に音楽の祝福を与えているのだ。音楽を幸せの源と考えている彼らファータは世界が幸せに満ちるように、もっと音楽を身近に感じてもらえるように、ファータと相性の良い人間を探し、リリが開発した魔法の楽器を授けて演奏させ、世界中に幸せを満たそうと考えていた。星奏学院の音楽コンクールではファータが見える生徒や、フアータに認められた生徒は絶対に参加しなければならない決まりがあった。そこで選ばれたのがファータを見ることができ、ファータと相性の良い香穂子だった。
香穂子はファータのリリに誰にでも弾ける魔法のヴァイオリンを与えられ、これを使ってコンクールに参加するように言われる。楽器など何一つできない香穂子は無理だと断るが、誰にでも弾けるヴァイオリンのため、構えるだけで弾けるようになるという。しかし、この魔法のヴァイオリンも万能というわけではなく、自転車の補助輪のようなもので、曲を解釈し弾き手の感情が楽器と共鳴することによって音を奏でるものらしい。ヴァイオリンの構えや、弓の動きなどは支えてもらえるが、しっかりと練習しなければ、美しい音楽を奏でることはできない。ファータが見えるということは、香穂子は音楽的にも何らかの可能性が秘められているはずと言われ、その場からリリは消えてしまった。試しに音を鳴らしてみると思っていたよりも綺麗な音を鳴らすことができた。しかし、その音を聞いていたコンクール参加者で音楽科2年の月森蓮に、その程度の腕ならコンクールを辞退しろと言われてしまった。その高飛車な物言いに怒りを覚え、その場を立ち去るものの、魔法のヴァイオリンを抱え、どうしたものかと悩む香穂子だった。
その時、同じ普通科2年の土浦梁太郎が通りがかり、悩む香穂子の話を聞いてくれた。全くの素人であるにも関わらず参加しなければいけない香穂子を励まし、これからも何かあったら話を聞いてくれるという。混乱することばかりの一日だったが、味方を得て少し落ち着いた香穂子だった。ふと気づくとカバンがない。先程までいた音楽練習室に忘れてきたらしい。その部屋は先ほどの高飛車な月森が使っているはずなので、顔を見たくない香穂子は裏からこっそり取りに行くことにした。近づいてみるとそこからは澄んだ音色の美しいメロディーが流れてきた。初めて聞いたヴァイオリンの音色の美しさに香穂子は感動し、奏者の月森に素晴らしかったと絶賛した。香穂子はその感動の余韻に浸りながら屋上で魔法のヴァイオリンを構え、先ほど月森が演奏していた曲を見よう見まねで弾いてみた。香穂子の感動が楽器と共鳴し、美しいヴァイオリンの音色と旋律が学院中に響き渡ったのだった。

リリに頼まれたとはいえ、素人の自分がコンクールに参加することに理不尽さを感じながらも、一度引き受けたことはやり通そうとコンクール参加者の会議に出席した香穂子は、音楽科の女生徒に絡まれてしまった。普通科の生徒がコンクールに参加するなど図々しい、辞退しろと責められる。コンクール参加者の音楽科1年・冬海笙子も地味だの冴えないなどと責められ、香穂子は思わず言い返してしまった。その場はコンクール参加者の3年・柚木梓馬と火原和樹のによって収まったが、会議後、待ち伏せしていた女生徒にまた絡まれてしまった。そこに普通科で報道部2年・天羽菜美が現れ、香穂子の実力を図るため人前で演奏することを提案された。天羽に上手く言いくるめられ、双方その提案を受け入れることになった。懸命に練習する香穂子だが、思うようにいかない時に、火原から楽しんで演奏することを教えられた。約束の日、火原の教えの通り、音楽を楽しもうと演奏すると、素晴らしい演奏をすることができた。途中、周囲の人の多さに演奏が乱れると、火原が飛び入りで演奏に参加し、周囲を納得させられる演奏をすることができた。

学内コンクールは全部で4回行われる。1回毎に順位が決まり、全4回の総合点で総合順位が決まる。それぞれにテーマが与えられ、それに沿った選曲・演奏をしなければならない。星奏学院の学内コンクールはまず、楽しむことを第一とし、ヴァイオリン・チェロ・トランペット・フルート・クラリネットなどの演奏を審査することになる。
第1回目、第1セレクションのテーマは「ひらかれしもの」だった。

香穂子が帰宅途中、ふと気になる音に気づいた。その音に惹かれて探してみると南楽器というところからピアノの音が溢れてきた。思わず中に入ってみるとそこにはピアノを弾く土浦の姿があった。ちょうど伴奏者を探していた香穂子は店主から土浦はどうかと勧められるが、土浦はコンクールにひどい拒否反応を示していた。幼い頃コンクールで理不尽な思いをしたらしい。土浦は香穂子にピアノのことは誰にも言うなというが、香穂子の練習にはたまに付き合っていた。
伴奏者を探す香穂子に音楽科1年の庄司という女子がコンクールに関わりたいと伴奏者に名乗り出てきた。困っていた香穂子は庄司を伴奏者にし、第1セレクションに臨むことになった。練習は順調に進み、コンクール前日になった。庄司との練習を終えたものの、不安が残る香穂子は空き部屋に入り1人練習をしようとすると、偶然土浦に会った。誰もいないので景気づけに何か一曲弾いて欲しいと香穂子が頼むと土浦は渋々了承しショパンの曲を弾いた。土浦の素晴らしい演奏に香穂子は、もっと弾きたそうに見えるのになぜ隠すのか、理由がわからないと問う。コンクールを気にしているから、自分のことを気にかけてくれるのではないかと話すと、土浦から他人の心配より自分の心配をしろと怒られてしまった。

第1セレクション当日、正装した参加者たちが集まってきた。香穂子も慣れないドレスと靴で準備している。第1奏者から演奏が始まるが、香穂子の伴奏者・庄司が来ない。香穂子の演奏順は5番目。6番目の月森蓮に伴奏者を探しに行ってくるから遅れたら先に演奏していて欲しいと言い、香穂子は走り出した。
慣れない靴で探し回ったので足には靴ズレが起こり、痛くてたまらない。広い校内を探していると庄司の話し声が聞こえてきた。誰かと電話で話しているその内容は、わざと遅れることで香穂子を棄権させるということだった。どういうことかと問い詰める香穂子に庄司は「あなたに出場して欲しくないんです」と言う。庄司は月森に好意を持っており、同じ舞台に立つ香穂子が許せなかったのだ。2人を探しに来た月森が庄司のその言葉を聞き、庄司を叱責すると庄司はそのまま逃げ出してしまった。
伴奏者に裏切られた香穂子はそれでも棄権はせず、伴奏者無し、おまけに裸足で舞台に立った。ざわつく会場と庄司の裏切りに心が乱れ、演奏が崩れると、審査員から演奏中止の声が掛かった。金澤が必死に取りなそうとするが、伴奏者がいないことを責められ、もう棄権するしかないという時に土浦が立ち上がり「伴奏ならここにいる」と舞台に上がってきた。香穂子は土浦の伴奏に助けられ、なんとか最後まで演奏することができた。
第1セレクションの結果は1位月森蓮、2位柚木梓馬、3位志水桂一、4位冬海笙子、5位火原和樹、6位日野香穂子、という順位だった。
香穂子の伴奏をした土浦はその実力の高さを認められ、第2セレクションからコンクールに参加することがリリによって決められてしまった。

第2セレクションの準備が始まった。テーマは「信じるもの」。
第2セレクションには有名なピアニストである月森の母と楽器会社を経営している父親が招待されている。第1セレクションでコンクールに興味を持った生徒が多かったようで、学院内ではコンクールの話題で持ちきりで、月森の両親が招待されていることが度々話題に上っている。その度に月森にその話が振られ、月森は煩わしくて仕方がない。報道部の天羽のしつこい取材にもうんざりしていた。月森の両親がコンクールを見に来ることで月森が特別扱いされているとやっかみを持つ人間が出てきた。月森は常に人を突き放したような態度を取っていたため、反感を持つ人間も多くいたのだ。
ある日香穂子は、廊下で月森は性格が悪いと陰口を言う生徒たちに、月森は陰口を言うような奴よりも性格は悪くないと言い返してしまった。それに怒った生徒たちは香穂子に掴みかかろうとするが、そこを月森が割って入り、香穂子を助けてくれた。あのような輩には関わるなと忠告する月森だが、このところの言動がいつもよりピリピリしているように感じた香穂子は月森に「ご両親が来ると緊張する…とか?」と質問した。月森の演奏技術は高く、楽譜に正確で素晴らしい音楽を奏でる。しかし、人の心を動かすような素晴らしい音楽を奏でる有名な親の名を傷つけぬよう、もっと上を目指さなければ、もっと結果を出さなければ、とプレッシャーを感じていた。
第2セレクション当日、前回優勝の月森の演奏順は最後だった。1番目は第2セレクションから参加の土浦から始まった。音楽科ピアノ専攻にも負けない素晴らしい音楽を奏でた。2番目は前回最下位の香穂子。今回は金澤から紹介された伴奏者とともに、伸びやかな演奏を披露できた。月森は心を落ち着かせるために控え室で練習をしていたが、背後から何者かに襲われ、ロッカーに閉じ込められてしまった。演奏順が近づいて来ているにも関わらず控え室から戻ってこない月森を心配した香穂子や土浦が月森を探すが、音楽科の生徒に月森は学外に出たと言われてしまう。控え室に楽器を置きっぱなしに外出する月森ではないと香穂子が気づき、控え室を探索するとロッカーから月森の声が聞こえた。もう間に合わない、ライバルが1人減る方がいいと演奏を諦めようとする月森に彼の演奏を楽しみにしていた香穂子は、戻って弾いても意味がないなんて言うなと叱った。その言葉に月森と香穂子は協力してロッカーから脱出し演奏会場に駆けつけた。しかし、既に演奏時間は過ぎており、観客が帰り始めてしまっていた。先ほど「月森は学外に出た」と言っていた音楽科の2年が、不穏な会話をしているのを聞いた土浦は、彼らを捕まえ詰問すると、彼らは、高い実力を持ち、両親も有名人である月森を妬み、月森に両親の前で恥をかかせようと、ロッカーに閉じ込めたと白状した。土浦が月森を閉じ込めた犯人を捕まえ金澤に突き出すが第2セレクションは既に終わっており、月森は棄権ということになってしまった。
大会終了後、観客も審査員も誰もいない講堂で1人、第2セレクションで弾くはずだった曲を演奏していた月森の演奏を聴いた香穂子は、その高い技術力と表現力に圧倒されてしまった。まるでとらわれてしまったかのようにその演奏に惹きつけられてしまった。一緒に演奏を聴いていた月森の母は、コンクールや結果にとらわれすぎて、硬い演奏をする息子をいつも案じており、誰もいない講堂で伸びやかに自由に演奏する息子を見て、とても安心したと言った。
第2セレクションの結果は1位土浦、2位日野、3位火原、4位柚木、5位志水、6位冬海、7位月森、となった。

第3セレクションの準備が始まった。前回5位だった志水は、誰もが素晴らしい演奏をした中で、香保子の音が耳に残るのは何故なのだろうと疑問に思っていた。演奏技術が高いわけでも表現力に優れているわけでもない。しかし、香保子の音が素直で優しい音が、人の心に残ることに志水は気づいた。
一方、第2セレクションで良い成績をとってしまった香穂子は周りから褒められ、罪悪感を覚えていた。自分は魔法のヴァイオリンを使い良い成績を取った。それをとても苦痛に感じ始めていた。音楽科の生徒からヴァイオリンに対するアドバイスを求められた香穂子は、自分はそんなことを言う資格はないとその場から逃げ出してしまった。そんな香穂子を心配した星奏学院OB・王崎信武が香穂子を追いかけた。香穂子の自分なんかがコンクールに参加してはいけない、という話に、自分がコンクールに参加している時は、普通科の生徒には興味を持ってもらえなかったから、普通科の香穂子がコンクールに参加することはとても意味のあると諭した。王崎のほっとする雰囲気に心が和んだ香穂子は、魔法のヴァイオリンを使っていても、少しずつでも前に進まなければいけないと感じた。
ある日、香穂子は王崎からヴァイオリン教室の手伝いをして欲しいと頼まれた。ヴァイオリンの月森と香穂子、チェロの志水と王崎がビオラで参加しアンサンブルを演奏することになった。トランペットの火原は雑用係として参加する。初めはバラバラだった4人のアンサンブルも最後の方は美しく合わせることができた。小さな子供たちに基本を教えているうちに、自分も幼い頃からずっと習っていれば良かったと香穂子は羨ましく思った。魔法のヴァイオリンではなく、普通のヴァイオリンで今の自分はどんな音が出せるのだろうかと思った香穂子は、誰もいない部屋で普通のヴァイオリンを弾いてみた。第2セレクションまで進み、自分なりに真剣に一生懸命練習していたにもかかわらず、魔法のヴァイオリン無しの自分の演奏は聞くに堪えないほど酷い、素人同然の音だった。分かっていたことだったにもかかわらず、ショックを受けていた時、月森が先ほどの演奏を聴いていて、今の音はどういうことなのかと問い詰めてきた。月森に何も答えることができず、香穂子は月森を避けるようになった。何かの秘密を持ち、コンクールに参加している香穂子の音楽に対する姿勢を認めることはできないと月森に言われた香穂子は、今まで以上に練習をするようになった。鬼気迫る勢いで傍から見ていても無茶な練習をする香穂子をコンクールメンバーたちは心配する。頑張れという周りからの応援をプレッシャーに感じたことや魔法のヴァイオリンを使っているという罪悪感、頑張っていても認められないと月森に言われてしまったことなどで香穂子の頭は一杯になり、もう辞めようと、金澤にコンクール辞退を申し出た。金澤からは、全てを失くしてからでは遅いと保留と言い渡されてしまった。練習もせず、友人たちと遊びほうける香穂子を心配した土浦は香穂子を問い詰めるが、土浦とは違う、と言って話をしようとしない。火原は様子のおかしい香穂子の話を聞き「ヴァイオリンが嫌いになったわけじゃないんだよね…?」と質問する。香穂子は、リリに頼まれて始めたヴァイオリンや音楽を大好きになっている自分に気づいてしまった。ヴァイオリンを弾きたいと素直になった香穂子は、もう一度コンクールに参加しようと決意を固くした。
第3セレクション当日、月森の前でいい加減な演奏はしたくないと、香穂子は気合を入れて控室で練習していた。するといつもより弓の動きが鈍いような違和感を感じた。するとリリが現れ、もうすぐ魔法のヴァイオリンが壊れると言った。元々試作品だったこともあるが、練習量が大幅に増えたことにより、ヴァイオリンに大きな負荷が掛かり過ぎてしまったためだという。リリは、香穂子に伝えなければいけないと思いつつも、懸命に練習する香穂子を見ているとどうしても言えず、伝えるのが今になってしまったという。演奏できるのはあと一曲程度しかない。途中で壊れてしまっても、コンクール棄権だけはしたくないと香穂子は舞台に立った。切なくて美しい旋律で香穂子の演奏は始まった。聴衆も聞き入っていたが、途中から香穂子の音が変わってしまった。魔法のヴァイオリンが壊れ始めたのだ。音が揺れ、ピッチも乱れてしまっている。しかし、何とか最後まで弾き切りたいと香穂子は懸命に演奏し、最後の一音まで弾くことができた。しかしそのヴァイオリンの弦は全て切れ、ひどい状態になっていた。皆が心配する中、香穂子の表情は最後まで弾き切れたことで、どこか満足気だった。魔法のヴァイオリンは弦一本を残して、消えてしまった。
第3セレクションの結果は、1位柚木、2位月森、3位志水、4位土浦、5位冬海、6位火原、7位日野という順だった。

第3セレクションまで終わり、コンクールメンバーはこれまでを思い返していた。土浦は久しぶりにピアノ漬けの毎日を楽しく感じていた。香穂子に巻き込まれたとはいえ、何だかんだと楽しんでいる自分に気づいた。火原は、香穂子の様子を気にし過ぎて演奏に集中できず、第3セレクションで失敗してしまったことを落ち込んでいた。柚木は香穂子の言動に心が荒れ、感情的な演奏をしてしまったが、それが高評価に繋がった事を複雑に感じていた。魔法のヴァイオリンが消えてしまい、演奏ができなくなってしまった香穂子は、新しいヴァイオリンを手に入れたいと思い、優しそうな雰囲気だった王崎に相談しようと思いつく。王崎に会いに行くとそこには志水もいて、一緒に王崎の練習を見学することにした。志水は王崎の演奏を褒め、香穂子の音も聴きたいと言った。第3セレクションでの香穂子の演奏は決してうまくはなかったが、何故だか悪くなかったと思うと、志水は言った。一緒に練習する王崎と志水を眺めながら、ヴァイオリンを弾きたいと強く思う香穂子だった。
楽器店に赴いた香穂子はヴァイオリンがものすごく高価なものなのだと初めて知った。店先で呆然としているとそこに土浦が通りがかった。土浦に第3セレクション前に暴言を吐いて謝っていなかったことを思い出し、香穂子は土浦に謝った。土浦は目の前でため込まれるのが嫌だったのだと話し、香穂子はいつも心配して励ましてくれる土浦にお礼を言った。
どうしてもヴァイオリンが欲しいが、手に入れる方法がない香穂子は悩んでいた。その時、リリが現れ香穂子に普通のヴァイオリンを授けてくれた。魔法のヴァイオリンでなく普通のヴァイオリンでも弾けることができて嬉しい香穂子はリリに感謝した。早速弾いてみたが、予想通りの下手さだった。それでも、以前普通のヴァイオリンを弾いた時よりもうまくなっていたことに気づき、練習すればもっとうまくなると香穂子はより一層練習に打ち込んだ。ある日香穂子が練習をしていると月森が現れ、ヴァイオリンが以前と違うことに気づかれた。月森から「認めることはできない」と言われてからまともに話していなかった香穂子は、いい加減な気持ちで演奏しているわけではない、わかってもらえるように頑張ると話した。今は演奏することが楽しいと話す香穂子に、月森は香穂子はいつも感情論ばかりだと言った。香穂子は第2セレクションの後聴いた月森の演奏だって感情が溢れていたと言い返す。いつもの演奏と何がそんなに違ったのか、理解できない月森は香穂子に問うと、香穂子はその演奏に引き込まれたこと、圧倒されたことを月森に伝えた。

第4セレクションに向けての準備が始まった。テーマは「かけがえなきもの」。
魔法のヴァイオリンではなくなった香穂子の演奏は明らかにレベルが落ちていると噂になっていた。周囲から奇異の目で見られながらも明るく懸命に練習を続ける香穂子。ひたむきに頑張る香穂子の姿に、コンクールメンバーはそれぞれの思いを抱いていた。
元カノと再会した土浦は、もう一度やり直したいという彼女の言葉で、香穂子への思いがあることに気づいた。
さらに火原も月森と揉めて落ち込んでいたり、月森の前でいい加減な演奏はしたくない、などと言う香穂子がどうしても気になってしまっていた。。悩んでいるため演奏にも身が入らず練習も楽しくない。それでもどうにかしなくてはと公園で演奏をしていると香穂子と偶然出会い、一緒に練習することになった。元気のない火原に「先輩の演奏からはいつも元気をもらえるんです」と、演奏を楽しむことを教えてもらったのだと話した。その時、火原は香穂子への思いを自覚した。

第4セレクション当日、来賓が早く帰るため、良い演奏を聴いてもらおうと教頭が画策し、演奏順の入れ替えが行われ、中間順位1位の者から順に演奏をすることになった。
中間順位1位は柚木。柚木は名門の3男に生まれ、音楽は高校までと決められていた。家の事情とはいえ素晴らしい才能を持つ柚木が音楽を続けないことに香穂子や火原は残念な思いを持っていた。柚木にとって最後のコンクールで素晴らしい演奏を披露した。
中間順位2位は月森。高い技術力を誇る月森は、コンクールではいつも超絶技巧が必要な曲ばかりを選んでいた。しかしこの第4セレクションで選曲したものは、流れるようなきれいな旋律、穏やかで優しい音楽だった。以前の月森だったら絶対にしない選曲だったが、このコンクールで香穂子や他のメンバーに出会い、様々な経験を通じて月森にも変化があった。自分にとってかけがえなきものはヴァイオリン、そして音楽だと改めて気づいた月森だった。
中間順位第3位は志水。潜在能力の高さはピカイチでこれからどれだけ伸びるのか楽しみな生徒であり、純粋に音楽を愛し努力する志水の演奏は素晴らしいものだった。
中間順位4位は土浦。第2セレクションからの出場にもかかわらず4位に入っている。サッカー部に入っていたが、このコンクールを経て、両立はせずに真剣に音楽に向き合うことを決意した。
中間順位第5位は火原。明るく楽しい演奏に、普通科のファンも多いようだ。ただ音楽が楽しいという気持ちを皆に伝えたいと、思いを乗せて演奏した。
中間順位6位は冬海。とても綺麗な音を出すのに、性格が消極的過ぎて音が前に出ない。しかし、このコンクールに参加することで、自分の音楽を人に聞いてもらいたいという気持ちが出てきた。
中間順位最下位は香穂子。たった一本だけ残った魔法のヴァイオリンの弦をつけ、アヴェ・マリアを演奏した。他のメンバーに比べ明らかに簡単な曲にも関わらず拙い演奏に会場はざわついた。しかし、今まで支えてくれた人々を思い出し、このコンクールでの経験はかけがえのないものだった、ヴァイオリンが好きだという思いを込めて、香穂子は最後まで演奏した。その演奏は、拙いながらも人々の心に届き、帰ろうとしていた人の足を止め、今まで音楽に興味を持たなかった生徒に音楽の楽しさを伝えることができた。リリはその演奏を最後まで見届け、いつもそばにいるという言葉を残し、香穂子の前から消えてしまった。
学内コンクール総合順位は、1位月森、2位柚木、3位志水、4位土浦、5位火原、6位冬海、7位日野、という順だった。
香穂子の心に音楽というかけがえのないものを残し、他のメンバーにもそれぞれのかけがえのないものを残し、学内コンクールは終わった。

それぞれの進路

学内コンクールは終わり、コンクールメンバーたちはそれぞれ次に目を向け始めた。
これからも音楽を続けていこうと決意した香穂子はヴァイオリン上達の為には先生が必要だと考えた。オーケストラ部の手伝いをしている王崎に先生になってもらい、王崎の都合の良い時に指導を受けることになった。学院は、より優秀な生徒を確保するため、優秀な生徒を学外のコンクールに出場させたり、全国から優秀な生徒を集めた選抜合宿に生徒を参加させようと考えていた。選抜合宿に参加する生徒は、学内コンクールで上位だった2名、月森と柚木に決まったが、柚木が辞退したため、3位だった志水が参加することになった。
香穂子のクラスに転校生がやってきた。東京の国立付属高校からやってきた加地葵は、頭脳明晰、スポーツ万能、ルックスも人当たりも良く、とても華やかな人だった。そんな加地が香穂子を見つけると嬉しそうに近づき手を握り「君に会いに来たんだ」と言った。クラスには女子の悲鳴が響き渡り、その噂は瞬く間に学院中に広まった。香穂子に思いを寄せる土浦はその噂が気になっていた。香穂子は人々の視線が気になり人のいない屋上に避難していた。そこで月森に会い、月森が加地と香穂子の噂を知らないことになぜかホッとしてしまった。月森に選抜合宿の話を振り、もう次に進もうとしている月森に「なんだかコンクールとか一緒に出てたのがずいぶん昔のことみたいだね」というと、月森は学内コンクールなど過去のことで、もう昔を振り返っている暇はない、立ち止まるわけにはいかないという強い気持ちを語った。月森ともう一度同じ舞台に立ちたいと秘かに思っていた香穂子は、どんどん先に行ってしまう月森に寂しさを感じていた。
選抜合宿が気になっていた香穂子は、土浦と加地に連れられ合宿所を覗いていた。窓から中を伺っていると、金澤に見つかり、雑用として合宿に参加できることになった。合宿所の掃除や草むしりをしているところを月森に見つかり、恥ずかしさに香穂子はいたたまれなくなった。周りはヴァイオリンの技術も高く、可愛い女子ばかりなのに、自分はジャージで泥に塗れている。恥ずかしさのあまり手伝おうとした月森を強引に断ってしまった。月森と合宿に参加している女子とのセッションを聴いた香穂子は、同じ舞台に立ちたいなどと思うことすら図々しいと思わせるような素晴らしい別次元の演奏に衝撃を受けた。選りすぐりの実力を持つ選抜合宿参加者の中でも群を抜いてうまい月森の実力に、気後れしてしまった香穂子に、土浦は月森たちと同じように高みへ行きたくないのかと香穂子に問う。土浦は、音楽をやると決めたからには自分はそこまで到達してみせると宣言し、周りの目を気にして委縮し、立ち止まって何になると香穂子を励ました。選抜合宿最終日、合宿メンバーによる発表会が開かれ、月森の素晴らしい演奏に講師からアンコールの声がかかった。練習していない曲は弾けないと伴奏者が逃げてしまうと月森は伴奏者に土浦を指名し、練習なしのぶっつけ本番だったにも関わらず2人は素晴らしい演奏を披露した。2人の演奏を聴いた香穂子は彼らのような高みへ行くためには周りを気にして立ち止まっている暇はないと改めて強く感じた。

転校生・加地の香穂子へのアピールは凄まじい。何故自分がそこまで好かれているのか理解できない香穂子は加地に直接聞いてみると、香穂子のヴァイオリンが加地の憧れなのだという。「憧れ」という言葉に香穂子は月森を思い浮かべてしまった。加地の存在が気にかかる土浦は加地になんでそんなに香穂子がいいのか尋ねてみた。香穂子への思いを語る加地に土浦は「そんなたいそうな奴かあ…?」と疑問を口にするが、加地から土浦はどうしたいのか、何故動かないのか聞かれ、答えることができなかった。香穂子は日々練習に励んでいるが、どうしてもうまく弾けないところがあり困っていた。そこへ月森が来て軽く修正点を口にした。香穂子はそれを詳しく尋ね、月森に練習を見てもらった。どうしてもできなかったところが月森のおかげで弾けるようになり、嬉しさのあまり月森の手を握り喜びを表した。

土浦と香穂子は理事会とPTAの総会で一曲披露することになった。普通科の生徒にも幅広い教養を、というアピールのためらしい。2人は初めて一緒に合わせた曲を選択し、練習を開始する。楽しそうな香穂子の様子に土浦が訳を聞くと、月森に練習を見てもらえたと、香穂子はとても喜んでいたのだ。土浦がそんな香穂子の表情や加地に言われたセリフを思い返していると、公園で小さな子供に囲まれてヴァイオリンを弾く月森を見つけた。月森の意外な優しさに土浦は驚いて話しかけた。土浦は香穂子が月森に練習を見てもらえてとても喜んでいたことを伝えると、月森は今年の終わりに留学すると土浦に告げた。何故自分に言うのかと土浦は聞くが、月森から明確な返事は返ってこなかった。月森の留学話に負けられないと感じた土浦は金澤に勧められていた学外コンクールに参加することを決意した。
香穂子の指導をしてくれていた王崎も海外のコンクールに参加することになり、香穂子の指導は続けられなくなってしまった。代わりの先生を探そうという時、王崎や月森がかつて師事し、影響を受けた先生が星奏学院の講師として赴任することを聞いた。ぜひその先生に指導してもらいたいと香穂子は断られても何度もしつこく頼み込み、クラシック音楽コンクールに入賞することを条件に指導を引き受けてもらえることになった。
練習を続けているとはいえ、香穂子の実力はまだまだコンクール入賞レベルではない。それでも諦めずに練習していると、月森がなぜその先生にこだわりコンクールに出場するのかと聞いてきた。香穂子は、月森のヴァイオリンが憧れなのだと話し、その月森が影響を受けた先生に自分も習い、月森が辿った道を自分も辿ってみたいと本心を語ると、月森がコンクールまでの間、自分が指導するから諦めずに頑張って欲しいと香穂子を激励した。
留学の準備をしながら香穂子の練習を見るのは大変なことだが、月森は自分が言い出したことなのだからと根気強く遅くまで練習につき合っていた。香穂子も言われたことは翌日にはできるようにと練習に励んでいる。ある日、月森の都合で練習がだいぶ遅くまでかかってしまった。一緒に帰る途中、いつもの場所で別れようとすると遅い時間に女子を1人で返すわけにはいかないと月森が家まで送ってくれることになった。今までそんなことしたこともない月森の気遣いが香穂子にはとても嬉しかった。他愛のない会話や一緒に買い食いなどする時間はあっという間に終わってしまう。来年の話をする香穂子を月森は遮り、何か言いたげにするのだが口には出さず、そのまま香穂子を送り届け、帰ろうとしていた。香穂子は月森に大きく手を振りありがとうと見送った。その素直な香穂子の姿に月森は顔を赤らめて香穂子を見つめていた。その後、何度もチャンスがあっても香穂子に留学の話をできない月森を土浦はもどかしく思い、何故香穂子にだけ留学の話を言えないのか考えてみろと月森に話す。それでも理解できない月森に苛立った土浦は「俺は…日野が好きだ」と告白した。
ある日、香穂子は月森と一緒に、月森の知り合いのサロンコンサートに行くことになった。素晴らしい演奏を聴き、その感想を語りながら帰宅途中、香穂子の足に靴擦れができて歩きにくそうにしていることに月森は気づいた。月森は香穂子を待たせ絆創膏を買いに走り、香穂子の足を手当てした。香穂子のヴァイオリンの不思議な魅力について月森は語り、香穂子にこれからもヴァイオリンを続けていくのか、続けていればいつかどこかで道は交わるかもしれないと、話した。「いつか」とはどういうことかと問う香穂子に月森は留学することを告げた。短期留学だと勘違いした香穂子は月森を凄いと褒めるが、月森からはしばらく帰ってこないと言われてしまった。衝撃を受けた香穂子はそれ以上何も話せなくなってしまった。後日、月森にきちんとおめでとうと伝えていないことに気づいた香穂子は練習中の月森を訪ね、自分もこれから頑張ってずっと続けていくから月森も頑張れと気持ちを伝えた。

星奏学院の文化祭が行われる。学内コンクールメンバーは学院から演奏の依頼を受け、久しぶりに全員で同じ舞台に立つことになった。コンクール優勝の月森はソロで演奏を披露する。学内コンクールメンバーで立つ最後の舞台、香穂子は足を引っ張らないように練習を重ね、何とか目立ったミスなく演奏することができた。月森は第2セレクションで演奏できなかった超絶技巧のスケルツォタランテラとアヴェ・マリアを披露した。優しく美しい音楽に誰もが聞き惚れた。
文化祭終了後、月森は文化祭の演奏が素晴らしかったとたくさんの人々から賞賛された。特にアヴェ・マリアが素晴らしいと言われた。そのたびに、いつもの月森とは違う選曲だが、なぜあの曲にしたのかと聞かれ、あの曲を自分が選んだことはそんなに意外なことなのだろうかと疑問に感じた。確かに、今までの月森だったならば、高い技術をみせるため技巧的な曲を好んで選んでいた。技術的には簡単でメロディアスなアヴェ・マリアは選ばなかっただろう。
学校からの帰宅途中、偶然香穂子と一緒になった月森はアヴェ・マリアを選んだ理由を聞かれ、自分があの曲を選んだのはそんなにおかしいことかと言い返してしまった。それよりも香穂子こそ第4セレクションでアヴェ・マリアを弾いていたがなにか思い入れがあるのかと聞いてみた。香穂子はそれには答えず、月森にアヴェ・マリアを一緒に弾いて欲しいと頼んだ。香穂子は、月森が以前練習室で弾いていたアヴェ・マリアを聞いて、あんなふうに弾きたいと初めて感じたのだと説明した。月森は香穂子と演奏しながら、これまで香穂子と過ごした時間を思い返していた。何よりも他人にペースを乱される事を嫌う月森だが、香穂子にペースを乱される事を不快に感じていないことに気づいた。そして、香穂子が月森にこれからもバイオリンを続けていくと宣言した時感じた喜び、これが最後ではなく、彼女と道を違えないことにがとても嬉しかったと月森は気づき、香穂子への思いを自覚した。
香穂子と土浦が参加するコンクールが近づいてきた。香穂子は月森にコンクールを見に来て欲しいと頼み、月森はそれを了承した。しかしその日は月森が留学する日だった。月森は香穂子にそのことを告げられずにいた。月森が香穂子に何も伝えていないことに土浦は憤り、逆の立場で考えろと月森を責める。しかし月森は、逆の立場で考えたからこそ香穂子に言えないのだと土浦に言った。自分だったら絶対に演奏に影響が出てしまう。だから香穂子に何も伝えられないのだと月森は言った。

土浦が出場するコンクール1日目、学内コンクールメンバーたちと香穂子は土浦のコンクールを見に行った。土浦は圧巻の演奏で優勝を勝ち取った。次の日は香穂子の出番なので、皆に応援されるが、プレッシャーを感じ落ち着かない夜を過ごしていた。香穂子はなんとなく落ち着かない気持ちを紛らわそうと、月森の自宅付近をうろついていた。すると、月森が気づいて外に出てきてくれたが、大事なコンクール前日に何をしているのだと香穂子は月森に怒られてしまった。香穂子はお世話になった月森にどうしても今日お礼のプレゼントを渡し、顔を見て落ち着きたかったのだと話した。月森は何故自分に会いに来たのか、もう自分には関係ないと香穂子を冷たく突き放した。香穂子はもう一緒に弾いて欲しいとか、わがまま言わないし迷惑かけないようにするけど留学するまでは一緒にいることを許して欲しいと月森に頼んだ。しかし月森の返事はそっけなく、香穂子は図々しさを詫び帰ろうとした。香穂子の様子に動揺した月森は、背を向けた香穂子を後ろから抱きしめ、明日留学すると香穂子に告げた。
自分が月森を訪れなかったら何も言わずに行こうとしていたのかと月森を睨む香穂子に、月森は何も言えずにいた。香穂子は、月森にとって自分はそんな大切なことも告げてもらえないような存在なのかと、虚しく思いその場を立ち去った。たまたま外出していた土浦は俯き落ち込んだ様子の香穂子を見かけ話しかけるが、香穂子は何も言わず、ただ、土浦に笑顔を向けるだけだった。翌日、香穂子を心配した土浦は、朝に香穂子を迎えに行き、様子を伺う。香穂子の泣き腫らしたような顔を見て、月森が留学することを聞き、ショックを受けているのだと知った。土浦は、自分が月森をけしかけたからだと自分を責める。中々会場に現れない月森を探しに土浦は会場付近を走っていた。花屋の前で佇んでいた月森を発見して早く会場に行けと急かす土浦に月森は、香穂子を動揺させてしまったことを後悔していると吐き出した。いつも冷静でクールな月森が香穂子のことでこんなにも動揺している様に土浦は呆れるも、月森の心をここまで動かした香穂子のことを凄いと感じていた。ずっと練習を見ていた月森には香穂子の演奏を見届ける義務があると月森を諭し、会場へと向かわせた。月森の姿を会場に見つけられなかった香穂子だが、月森に教えてもらったことを全て出し切ろうと、思いを込めて演奏する。月森は2曲目に間に合い、演奏を聴くことができた。香穂子の演奏を聴き、香穂子と自分の道は違えていないと確信した月森は香穂子に会うことなく、会場を後にした。演奏が終わった香穂子は月森がもう行ってしまったと聞き、慌てて追いかけた。タクシーで去る月森に会えた香穂子はこれからもヴァイオリンをずっと続けていくと月森に約束し、見送った。

香穂子の気持ちは分かっていても自分の気持ちを伝えたかった土浦は、自分の気持ちを伝えた。これまでそんなこと全然思いもしなかった香穂子は動揺し、不自然な言動をしていた。しかしこれまでずっと香穂子を支え元気を与えてくれた土浦に対し、何の返答もしないのはいけないと、上手く言葉にできないながらも、その気持ちは嬉しかったと土浦に告げた。土浦は、香穂子の返答を聞き、自分の気持ちにけじめをつけることができた。

春になり、香穂子は3年生になった。留学した月森は海外でも話題で度々テレビでその活躍を紹介されている。月森の活躍を耳にするたびにますます差が開いている自分に香穂子は焦りを感じていた。そんな時に月森の所属するアンサンブルが日本で公演をすることになった。久しぶりに月森に会えると公演を見に行った香穂子だが、あまりにレベルの高い演奏に気後れし、月森に会わずに帰ってしまった。学院を訪ねてきた月森に会った時も、月森との差に卑屈な態度を取ってしまい、月森を失望させてしまった。香穂子たちはアンサンブルを組み、月森たちの前座として星奏学院大学の大学祭で演奏する予定だったのだが、急遽プログラムが変更になり演奏できなくなってしまった。それをしょうがないと納得している香穂子を見て、月森は「君を信じた俺が馬鹿だったというわけか」とその場を立ち去ってしまった。頑張ると月森に約束したにも関わらず、簡単に演奏を諦めてしまった自分を恥じた香穂子は、会場の外で演奏することにした。アンサンブルメンバーに支えられながら心を込めてヴァイオリンを演奏し、月森にその姿を見せることができた。
大学祭が終わり、香穂子は初めて月森の演奏を聴いた練習室の外にやってきていた。当たり前だがそこに月森の姿はない。すると、屋上からヴァイオリンの音が響いてきた。香穂子が聞きたいと、欲しいと思っている時に月森の音楽はいつも傍にあった。香穂子は演奏する月森の背に思わず縋り付いてしまった。突然抱きつかれた月森は驚くが、逃げようとする香穂子を引き止め、香穂子の演奏を聴いたことを話した。そして、もう一度信じていいのかと、香穂子に聞いた。離れたことで心が弱くなり、差が開いたことで卑屈になってしまった香穂子は今度こそ、月森を失望させないと改めてヴァイオリンを続けていくことを約束した。
月森はその言葉を聞いて、香穂子のひたむきさでまっすぐな音楽に香穂子自身に惹かれていると告白した。

香穂子にはもうその姿は見えないけれど、音楽の妖精リリは常に香穂子を見守っており、香穂子の恋の成就もきちんと見守っていた。香穂子が音楽を愛する限り、リリは香穂子に音楽の祝福を与え続けてくれる。これからも香穂子の周りには音楽が溢れ幸せが満ちるのだった。

『金色のコルダ』の登場人物・キャラクター

日野 香穂子(ひの かほこ)

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CV:高木礼子/演奏:中島優紀

星奏学院普通科2年2組。身長162cm。ヴァイオリン。
音楽の妖精リリを見つけてしまったことで、学院の音楽コンクールに出場を余儀なくされた。魔法のヴァイオリンを授けられ魔法の力により演奏技術をサポートしてもらいながら演奏してきたが、日々の努力で魔法に頼らず、自ら演奏できるようになった。
当初、高飛車な態度の音楽科・月森を苦手としていたが、彼の演奏を聴き、その演奏に憧れを抱くようになる。
裏表のない明るく素直な性格。根性も人一倍あり、難しい状況を跳ね返す行動力もある。
社会人の姉と大学生の兄が居る。

月森 蓮(つきもり れん)

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CV:谷山紀章/演奏:室屋光一郎

音楽科2年A組。ヴァイオリン専攻。身長178cm。4月24日生まれ。
父は元ヴァイオリニスト、母は有名ピアニストの浜井美沙。祖父母も有名な音楽家という音楽一家のサラブレッド。才能に加え努力も惜しまない為、演奏技術も高い。クールな完璧主義者。近寄りがたい雰囲気を持つ。音楽に対する姿勢は真摯で真面目。学業の成績もよく、英語とドイツ語も堪能である。
普通科の香穂子がコンクールに参加することを快く思わず、辞退しろと迫った時もあったが、次第に香穂子の音楽に対する姿勢を認めるようになった。
他人に自分のペースを乱される事を嫌うが、香穂子に乱されることは不快に感じないことに気づき、香穂子に頼まれ一緒にアヴェ・マリアを演奏したことで香穂子への思いを自覚した。

土浦 梁太郎(つちうら りょうたろう)

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CV:伊藤健太郎/子供時代:恒松あゆみ/演奏:岡田将

普通科2年5組。身長181cm。7月25日生まれ。サッカー部所属。理数系が得意。趣味は料理。硬派なスポーツマンで男子からの人望は厚い。面倒見のよい性格。
普通科から音楽コンクールに参加する香穂子を気にかけ、見守っている。家がピアノ教室のため、幼い頃からピアノの練習をしている。過去にコンクールに参加するが、理不尽な思いをしたことからコンクール至上主義を嫌っている。香穂子と知り合い、コンクールに巻き込まれたことで再び前向きに音楽に取り組む気になった。
何事にも一生懸命取り組むが何かと危なっかしい香穂子を放っておけず、面倒を見るうちに香穂子に思いを寄せるようになる。
香穂子の気持ちが自分にないことを分かった上で告白し、気持ちにけじめをつけた。香穂子への思いがありながらそれに気づかずにいた月森に、自身の思いを告白することにより、自覚を促した。

志水 桂一(しみず けいいち)

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CV:福山潤/演奏:多井智紀

音楽科1年A組。チェロ専攻。身長168cm。8月26日生まれ。
星奏学院に通うため遠方にある実家を離れ叔母の家に下宿している。簡易防音の部屋があるため弾きたい時に弾きたいだけチェロを弾くことができる。音楽の才能はピカイチでこれからどれだけ伸びるのか楽しみな逸材と言われている。物静かでマイペース。研究熱心で練習に没頭するあまり時間を忘れて練習してしまい、学院でもよく居眠りをする姿が見られる。
技術的には拙い香穂子の演奏だが、耳に馴染む優しい音を奏でる香穂子の演奏をずっと聞いていたいと話していた。魔法のヴァイオリンが壊れたあとの演奏も、悪くないと評価し、香穂子を喜ばせた。
志水にそっくりな姉と、妹、弟が居る。志水の衣装は姉の手作りが多い。

火原 和樹(ひはら かずき)

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CV:森田成一/中学時代:庄司宇芽香/演奏:阿部一樹

音楽科3年B組。トランペット専攻。身長178cm。12月12日生まれ。カツサンドが大好き。オーケストラ部に所属している。
明るく人懐こい真っ直ぐな性格。柚木梓馬と親友。中学時代は陸上部に所属していたが、学校の屋上でトランペットを吹く先輩に出会い、トランペットを始めた。
コンクールに参加し始めたばかりで戸惑っていた香穂子に音楽を楽しむことを教え、正門で初めて香穂子が演奏した時、一緒に演奏して香穂子を助けた。
香穂子に想いを寄せいているが、香穂子の気持ちを優先し、自分の気持ちを抑えている。
将来は教師になって、生徒と音楽を楽しみたいと思っている。

柚木 梓馬(ゆのき あずま)

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