おやすみプンプン(浅野いにお)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『おやすみプンプン』とは、2007年~2013年に『週刊ヤングサンデー』(~2008年)及び『ビッグコミックスピリッツ』(~2013年)に連載された浅野いにおによる漫画である。少し内気で自意識過剰、どこにでもいる普通の少年「プンプン」が転校してきた同い年の少女・田中愛子に一目惚れするところから、彼女との関係を軸に彼らの人生が導かれるように破綻していく様が叙情的、かつ実験的な手法とともに描かれる。

プン山プンプンパパ

プンプンの父。野球(読売ジャイアンツ)と宇宙が好きで、プンプンに宇宙について語ったり、天体望遠鏡をプレゼントしたりするシーンがある。どちらかというとプンプンはヒステリックなところがあるプンプンママよりも普段は優しいプンプンパパになついていた。リストラされ無職になって以降夫婦喧嘩が絶えなくなり、ヒステリーから包丁を持ち出しプンプンを殺そうとしたプンプンママを殴打したことが決定打となり、プンプンママと離婚することになる。

小野寺プンプンママ(プン山⇒小野寺)

プンプンの母。自由で奔放、自身の思いや感情に忠実、悪く言えば自己中心的でヒステリックな言動が目立つ性格。プンプンの目には後者の部分が色濃く映し出されていたため、基本的に全編を通じて折り合いが悪い。離婚後、離れて暮らすプンプンパパのフリをしてプンプンに向けて手紙を送っていたり、死の間際に彼に愛を伝えたりするなど愛情がなかった訳ではないが、癌により若くしてこの世を去ったこともあり最後までプンプンと和解できないままだった。

小野寺雄一

プンプンの叔父で、プンプンママの弟。美大の大学院卒業後、陶芸教室で講師をしていたが受講生やその娘を巻き込んだトラブルから退職。姉であるプンプンママの離婚を期にプンプンと同居生活を送ることになる。偶然訪れた喫茶店で再会した翠と恋愛の末に婚約。しかしその二年後に不倫、罪悪感から自殺を図るも未遂に終わる。繊細な性格で精神的に不安定なところがあり、本人や翠はプンプンと似ているところがあると認識している。

小野寺翠(旧姓大隈)

雄一の恋人、結婚相手。プンプンが小学生のときプンプンママが入院していた病院の看護師として初登場。後に近所の喫茶店のアルバイト店員として登場した際雄一と出会い交際、結婚する。雄一が不倫の後失踪した折、寂しさからプンプンと身体の関係を持ち、プンプンの初体験の相手となる。物語終盤では雄一の子供を妊娠・出産する描写がある。

南条幸

蟹江美雪の漫画家志望の友人。後に漫画家デビューする。プンプンが蟹江梓との初デートで訪れた絵画展で出会う。その際プンプンが感想ノートに残した感想とも呼べない詩文らしき文章にセンスを感じていたことから、後に再会した時絵本の原作執筆を依頼、後にプンプンとは恋仲になる。早稲田大学中退。学生時代に同級生と結婚した後に離婚。スレンダーで美しいルックスだが、整形手術によるものである。ずば抜けた行動力とコンプレックスの裏返しからくる高いプライドが特徴で、プンプンママと重なるところがある性格である。

『おやすみプンプン』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

愛子とプンプンのファーストキス

思いがけず告白したプンプンに愛子がキスでこたえるシーン。
1週目は微笑ましい小学生の恋のエピソードの、物語の結末やキャラクターの背景を知った2週目からは切ないシーンになる。倒錯的な見方を別にすれば、今後分かちがたく関わっていく二人の、おそらくはもっとも幸せな瞬間が出会ったばかりのこの場面だからである。

「小賢しい賞獲り漫画なんてその気になれば一人で描けんだよ」

プンプンとともに出版社に持ち込んだ合作漫画を編集者に酷評され、落ち込むプンプンに幸が投げかけたセリフ。
「平凡な日常で退屈を嘯く空気みたいな漫画」「絶望ごっこのオナニー漫画」と酷評され、もっと「前向きで分かり易い共感」を得るような漫画を求められる中で起こる「表現したいもの」と「売れるもの」の葛藤。単なるキャラクターとしての幸の強がりなのか、売れっ子作家となった作者である浅野の主張なのか。分かりやすい出口を描かない浅野作品の作風と重なり、この前段で交わされた編集者と幸のやり取りと合わせて作者である浅野の漫画観が垣間見える興味深い一言である。

「愛子ちゃん、僕はね…君に殺されたかった。」

mo1so2kyo30
mo1so2kyo30
@mo1so2kyo30

Related Articles関連記事

うみべの女の子(漫画・映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

うみべの女の子(漫画・映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『うみべの女の子』とは、『マンガ・エロティクス・エフ』(太田出版)にて2009年から2013年にかけて連載された浅野いにおによる成人向け恋愛漫画作品である。本作は、田舎で暮らす中学生たちの性や葛藤を描いている。憧れの先輩にフラれた中学2年生の女の子・小梅は、その腹いせに同級生・磯辺と初体験を済ませてしまう。はじめは自分に好意を抱いている磯辺を利用していた小梅だったが、1枚の写真をきっかけに2人の立場は逆転していく。

Read Article

ソラニン(浅野いにお)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

ソラニン(浅野いにお)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

浅野いにおによる青年漫画、及びそれを原作とした映画。「週刊ヤングサンデー」にて2005~2006年まで連載。2010年に実写映画化された。退屈なOL生活を送る社会人2年目の芽衣子と、音楽への夢を持ちつつも踏み出すことができないままフリーター生活を続ける恋人種田。二人が夢に向かって歩き出すところから、挫折、そして種田との死別を経て、芽衣子が新たな一歩を踏み出すまでが描かれる。

Read Article

NEW
デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション(デデデデ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション(デデデデ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』とは、『ビッグコミックスピリッツ』にて2014年から2022年にかけて連載された、浅野いにおによるSF漫画。その圧倒的な書き込みと秀逸なストーリーが高く評価され、第66回小学館漫画賞など数々の漫画賞に輝く。略称は「デデデデ」で、2024年に劇場版アニメが2部作で公開される。 東京上空に巨大なUFOが出現して3年。“UFOが存在して当たり前”の日常を謳歌する小山門出と中川凰蘭は、ひょんなことからそのUFOの墜落が間近に迫っていることを知る。

Read Article

素晴らしい世界(浅野いにお)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

素晴らしい世界(浅野いにお)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『素晴らしい世界』とは、2002年より浅野いにおが『サンデーGX』で連載していた漫画作品。厳しい父親を持つ息子や友人関係に悩む女子中学生、何事も中途半端な元バンドマンなど、心のどこかに少しだけ不安や不満を抱える様々な人物が登場する短編集。日常の出来事がリアルに描かれており、各回の登場人物が他のエピソードに少しずつリンクしていく形で物語が進んでいく。

Read Article

すべてがFになる(すべF)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

すべてがFになる(すべF)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『すべてがFになる』とはフジテレビのノイタミナ枠にて2015年10月から12月まで放映されたアニメ作品であり、森博嗣の同名小説と『四季』シリーズを原作とする。助教授の犀川創平と女子大生の西之園萌絵が、訪問した真賀田研究所で遭遇した連続殺人事件の謎に挑む本格ミステリー作品である。原作の『すべてがFになる』は第1回メフィスト賞受賞作品であり、累計発行部数は90万部を誇る。 尚、アニメの正式タイトルは『すべてがFになる THE PERFECT INSIDER』である。

Read Article

【武井咲】実写ドラマ「すべてがFになる」のあらすじ・ストーリー・キャスト・相関図・最終回・感想をネタバレ解説!【綾野剛】

【武井咲】実写ドラマ「すべてがFになる」のあらすじ・ストーリー・キャスト・相関図・最終回・感想をネタバレ解説!【綾野剛】

2014年に放送された実写ドラマ『すべてがFになる』。森博嗣の同名小説を原作とするこのドラマは武井咲と綾野剛がダブル主演を務めたほか、豪華キャスト陣が話題になりました。この記事では、本作のあらすじ・ストーリーや相関図、感想などについてネタバレありきで紹介していきます。

Read Article

目次 - Contents