オチビサン(安野モヨコ)のネタバレ解説・考察まとめ

『オチビサン』とは、主人公・オチビサンの四季折々の日常を描いた安野モヨコによるフルカラー漫画である。1話ずつ1ページでストーリーが進む。『朝日新聞』に2007年4月から2014年3月まで連載され、2014年4月から2019年12月まで『AERA』(朝日新聞出版)に移籍して連載された。単行本は全10巻。オチビサンとその仲間たちのほのぼのとしたストーリーと、水彩画の絵が人気を呼んだ。絵本になりテレビアニメ化され、さらには動画配信サイトでも公開された。

『オチビサン』の概要

『オチビサン』とは、主人公・オチビサンの四季折々の日常を描いた安野モヨコによるフルカラー漫画である。1話ずつ1ページでストーリーが進む。『朝日新聞』に2007年4月から2014年3月まで連載され、2014年4月から2019年12月まで『AERA』(朝日新聞出版)に移籍して連載された。単行本は全10巻である。『朝日新聞』では毎週月曜の生活面に掲載されていた。
安野モヨコは、少女漫画『シュガシュガルーン』や『働きマン』などで有名な漫画家である。『シュガシュガルーン』は、第29回講談社漫画賞児童部門を受賞している。また『働きマン』は、アニメ化、ドラマ化された。特に『働きマン』は社会のリアルな人間模様が好評を呼び、人気作品となっている。「安野の作品と言えば『働きマン』。特に松方弘子(まつかた ひろこ)の働きぶりが面白い」と、レビューする読者も多い。安野が描く女性は元気ではつらつとしている。安野は「他人の時間を自分のために使ってもらったのだから、相手を元気にしたい!」と言いながら、ストーリーをいつも考えていたのである。そして、多くの読者から「元気をもらった」という便りも安野に届いていた。それは安野の原動力となり、もっと読者の期待に応えようと頑張った。

だが、時折「自分がしんどい時に松方弘子を見ていると、気持ちがしんどくなる」という声が安野に届くようになった。それをきっかけに、安野は当時連載していた『働きマン』と並行して『オチビサン』を描くことにした。『オチビサン』は、「疲れた時や悩んだ時に、ふっと癒してくれるような漫画にしたい」という思いで、誕生したのである。オチビサンは、豆粒町(まめつぶちょう)で遊んで暮らす可愛いキャラクター。何気ない日常の中で、仲間と一緒に色々な発見をして、四季の移り変わりを楽しむ。日本人が忘れかけていた心を思い出させてくれる作風は人気になった。だが、『働きマン』と『オチビサン』の他にも多くの連載漫画を抱えていた安野は、2008年に病に倒れてしまった。

そこで、ストーリー漫画の連載は一時休止。身も心も疲れ切った安野に、担当編集者は、仕事を一切やめて本格的な長期休養をとることを勧める。そして『働きマン』の連載は休止した。だが安野は『オチビサン』を描くことだけはやめなかった。病床から30分だけ起き上がっては下書きを描いて、次の日も30分だけペンを入れて、という生活が5年も続いた。そこまでしても安野が『オチビサン』を描くことをやめなかった理由は、『オチビサン』を描くことで安野自身が救われ、癒されていたからだった。安野自身を癒していた『オチビサン』は、読者にも癒しを与えてくれる作品になった。

『オチビサン』は漫画の世界から飛び出して、絵本になりテレビで放送され、さらには動画配信もされた。安野モヨコによる描き下ろしで『オチビサンのひみつのはらっぱ』が『講談社の創作絵本シリーズ』から2014年5月28日に発売されている。
テレビでの放送は、NHKのEテレで『てれび絵本』(てれびえほん)で放送された。平日8:50 - 8:55に放送されているテレビ番組で、2014年5月より季節に合わせて「春編」「夏編」「秋編」「冬編」と1年に渡り全8回(各季節につき前後編の2回シリーズ)、2015年2月には派生絵本作品『オチビサンのひみつのはらっぱ』を前後編2回、年間10回シリーズで放送された。ナレーションは安田成美が、音楽は日下義昭がそれぞれ担当した。
動画配信は、日本アニメ(ーター)見本市で配信された。この日本アニメ(ーター)見本市とは、様々な監督によるオリジナル短編アニメ作品をインターネット配信する企画。名前に括弧がついている理由については「アニメーターだけがアニメを制作しているわけではない」との理由から安野の夫、庵野秀明が付け加えたものである。スタジオジブリの宮崎駿が題字、プロデューサーの鈴木敏夫が題字彩色。声優の山寺宏一と林原めぐみが、声の出演を全話担当する。動画視聴に登録は不要。『オチビサン』は、2015年4月17日に公開された。監督・脚本は川村真司、作画アニメーションはスタジオカラー、ストップモーションはドワーフ、音楽はインビジブルデザインズラボだ。製作は太陽企画が行った。

『オチビサン』は、新聞に掲載された作品であり、ストーリー漫画ではない。おおよそ5コマから6コマのコマ数で主人公のオチビサンと、その仲間たちが遊んでいる日常が描かれる。オチがあったり、急展開することがないので、どの話から読んでも楽しむことができる。実際に人間が住む世界の、どこか片隅にオチビサンが存在しているような描き方である。また、水彩画のイラストが非常に丁寧で可愛らしい。白黒漫画では表現できない植物の生き生きとした様子や、空のグラデーション、美味しそうな食べ物が読者の心をほぐす。オチビサンや相棒のナゼニ、食いしん坊のパンくいが起こす日常生活のさまざまな発見を、読者も一緒に楽しむことができる作品だ。

『オチビサン』のあらすじ・ストーリー

春のはじまり

オチビサン(左端)と、ナゼニ(真ん中)が登場する場面。

4月1日。小さな生き物たちが住む架空の町、豆粒町(まめつぶちょう)。桜が咲く木の下で、オチビサンは「オチビはこう見えてやんごとなき生まれなり」と俳句を書いている。原っぱの影から相棒のナゼニがやってきた。「あいぼうのナゼニは犬に見せかけて実はヨウカン」とオチビサンがナゼニを紹介する。「つぶあんです」とナゼニは補足した。2人は夕暮れ時の空を飛び始めた。「オチビのななつ道具その壱、空飛ぶざぶとん!」と軽々とざぶとんに乗って飛行する2人。「美しい国日本を守りぬく正義の使者、オチビサンの冒険がいまはじまる!!」とオチビサンは声を大にして言った。家に帰ってきて「ホント?」と聞くナゼニ。「うそです」とオチビサンはご飯を大盛りによそいながら言った。これから始まるのは、オチビサンたちのほのぼのストーリーである。

天井から糸を引くクモ(上)は、オチビサン(右)とナゼニ(左)に気づかず、彼らの頭の上で巣を作る。

暖かくなってくると、虫たちが顔を出す。オチビサンが外を歩いていると、自宅の壁に「オチビハチビ!」といたずら書きがされているのを発見する。「ひどいひぼう中傷だ。ここにあるということは他にも書いてあるにちがいない」とオチビサンは予想した。その姿を木の陰から「ヒヒヒ」と笑っている猫がいた。その猫の存在に気づかず、オチビサンは「もっとすごい内容かもしれない!探さねばならぬ」と街中を駆け回る。途中でナゼニに会った。「オチビサン何を探しているの?」とナゼニが聞くと「オチビの悪口!!」とオチビサンは走りながら言った。「ナゼニそんなものを。僕ならチョウチョを探すけどな」とナゼニはオチビサンの姿を見てつぶやく。オチビサンは結局、ほかの場所でいたずら書きを見つけることはなかった。
帰ってきたオチビサンは、ナゼニと一緒に家で過ごす。天井からぶら下がるクモを見つめる2人。クモは糸にぶら下がりながら、オチビサンとナゼニに近づいてくる。「気付くはずだ」とオチビサンはクモを観察する。「まさか」とナゼニは言う。クモがオチビサンとナゼニが生き物であることを気づかないとナゼニは思っているのだ。じっとしているとクモが糸の先をオチビサンとナゼニの頭に伸ばした。「どうかな」とじっとするナゼニとオチビサン。「やっぱり気付いていないようだよ」とナゼニが言う通り、クモはさらにクモの巣を拡大中だ。ナゼニは「言葉にしないと伝わらないこともあるのさ」とオチビサンに言う。それを聞いたオチビサンが「もしもしクモくん、そこは頭の一部ですよ」とクモに言ってあげた。

雨が止むまで、傘をさして待つオチビサン(上)。ナゼニ(右)も一緒に待つ。

ある雨の日。オチビサンは傘を構えて玄関に立っている。「オチビサンまだ出掛けないの?」とナゼニが聞く。「いますこし」とオチビサンは外に出ようとしない。「雨のやつはかさを持って出掛けると急に止んだりするでしょ」とオチビサンはナゼニに言った。「特に今はね」とナゼニも納得だ。春の雨は気まぐれで、急に降ったり止んだりするのである。「だからこうしていかにもかさで出かけるってフリしてオチビは待ってるの」とオチビサンは傘をさして滴る雨を見つめる。「雨との根くらべだね」とナゼニも一緒に雨が止むのを待つことにした。小雨が、オチビサンの傘に落ちる。トントンと心地よい音がした。「雨のやつめ…」とナゼニは眠くなった。「よい音をかなでおる」とオチビサンは目をつぶって聞いていた。結局、オチビサンたちは雨の音が気持ちよくて、出かけることはなかった。
暦が5月になった。5月のイベントといえば、端午の節句である。オチビサンは朝から柏もち作りに大忙しだ。「いそげいそげ」と材料を両手に持って、庭にでた。大きなボウルに粉を入れる。そこにお湯を注ぐ。オチビサンが粉をこねて、餅を作る。ナゼニは餅を蒸す担当だ。一度蒸した餅に、砂糖と片栗粉を混ぜて、もう一度蒸す。ナゼニが大きな鍋で餅を蒸している間、オチビサンは柏の葉を切る。2人で力を合わせた柏もちが完成した。「で…できた」と汗をぬぐうオチビサン。だが、中に入れる餡子がない。餡子は作らなくていいのだ。なぜなら、温かい餅の間にオチビサンとナゼニが入って寝転ぶからである。あんこになると言う長年の夢を2人で叶えた「子どもの日」であった。

道端で見つけたボールを、一生懸命追いかけるオチビサン(上)。

オチビサンには、家族はいない。ひとりで豆粒町に住んでいるのだ。晴れた日に、親子3人が出かけるところを見たオチビサン。「ちぇっ」とオチビサンは羨ましく思った。そして意地になって自分一人でも楽しむことのできる遊びを探す。「ひとりだって楽しいもの。ボールみっけ!」と、道端に落ちているボールを見つけた。オチビサンは、そのボールを拾おうとしてかけよった。だが、その拍子にボールを蹴飛ばしてしまう。ボールはオチビサンからどんどん離れていく。「まって~」とオチビサンが言っても、ボールは勢いよく転がって止まらない。汗をかきながら、オチビサンはもうすぐ手の届きそうな距離に近づいた。だが、捕まえようと近づくたびに蹴っ飛ばし、いつまでたってもつかまらない。でもオチビサンは諦めなかった。ボールを見つけたのはお昼間だったが、日が暮れるまでボールを追いかけ続けた。夕暮れ時に、ようやくオチビサンはボールを捕まえることができた。「オチビにはこの関係がしっくりくる。今日から君を家族にしよう」と大事そうにボールを抱きかかえる。泥にまみれたオチビサンは、ボールと一緒に家に帰っていった。

新しいお友だち

ナゼニ(左)が、パンくい(右)をオチビサン(下)に紹介する。

原っぱに若葉が芽吹く時期になった。オチビサンは、雨あがりに葉っぱを拾う。それはパズルのように2枚でひとつの葉っぱである。「ナゼニにあげよう」と、オチビサンはそれを持って歩いていた。すると、ちょうどナゼニと会った。「オチビサン!」と呼んで駆け寄るナゼニに「ちょうどよかった。コレ見て。友情のしるしに…」と2枚の葉っぱを見せた。「わあ!!きれいなはっぱだね」とナゼニは感激する。すると、横に見知らぬ犬がいた。「あ、紹介しよう。僕の親友のパンくい君」と、ナゼニは茶色い犬を紹介する。「こんにちはオチビサン」とパンくいは挨拶した。「彼はひっこして来たばかりなので仲よくしてやってね」と、ナゼニはオチビサンに言った。それを聞いたオチビサンはちょっと考えた。いま拾った2枚の葉っぱのうち1枚をナゼニだけにあげるのは、パンくいが可哀想である。だから2枚の葉っぱをナゼニをパンくいの2匹にあげたオチビサン。「ボクにもくれるの?ありがとう」と喜ぶパンくい。そしてパンくいの葉っぱにもう一枚の葉っぱを合わせて「こうするとピッタリだ」と感心するナゼニである。オチビサンはちょっと寂しい気分がした。

パンくい(右)は、持ってきたパンをオチビサン(左)と一緒に食べた。

翌日、オチビサンの家に急にパンくいがやってきた。「オチビはまねいてないの」とオチビサンは言うが「友情のしるしにボクの大切な焼きたてパンを持ってきたんだよ」と、パンくいが言った。オチビサンは心が温かくなり、「あ…ありがとう」と受け取る。するとパンくいが「ところでボクはおなかがペコペコだよ」と言い、「友情のしるしにそのパンをごちそうしたらどうだろう」と提案する。「なんとゆうずうずうしさ」とオチビサンは一度固まった。だがすぐにちゃぶ台の上で、一緒にパンを食べた。「でも許せてしまうってことはもう友達なんだな…」とオチビサンは思った。「うん!!うまい!」とパンくいはとても美味しそうにパンを食べるのであった。

オチビサン(上)が、パンくいの家に行ってパンが育ったかパンくい(下)に尋ねる場面。

パンくいとすっかり友達になったオチビサンは、パンくいにパンをあずけることにした。パンくいいわく、「パンくいはパンをしまう箱を持っているからオチビサンのパンをあずかるよ。箱に入れてねかせておくと大きくなるしおいしくなるよ。増えたパンを後でじっくり食べる」とのことだ。「へえ、じゃああずけてみる」とオチビサンは言って、夕食用のパンをパンくいにあずけた。
半月後、オチビサンはパンくいの家を訪ねた。「こんにちわ、オチビのパンは育ちましたか」とオチビサンがパンくいに尋ねると「おいしくいただきました」と返事が返ってきた。オチビサンはナゼニに事情を説明した。オチビサンは、パンくいがパンを増やしてくれると思っていたのでショックだったのである。話を聞いたナゼニが「パンくいにパンをあずけるのは国にお金をあずけるのと同じだよ」とオチビサンに説いた。オチビサンはべそをかきながら「あの時食べときゃよかったと言うの?」と言った。

夏の過ごし方

ナゼニ(左)とパンくい(右)は、クーラーで涼んでいい気分であるが、オチビサン(下)は体が冷え過ぎてしまう。

青い空に白い雲。オチビサンが着ている長袖シャツも、半袖に着替えた。季節はすっかり夏である。オチビサンは、ナゼニとパンくいと一緒に海水浴に行ったりした。しかし外は暑い。
「古くてもクーラーがあればゴクラクだね」とナゼニがオチビサン宅で涼んでいる。「ああ涼しい。ああ気持ちいい」とパンくいは頭に氷まくらを置きながらアイスを食べる。オチビサンはクーラーと扇風機で体が冷えてきた。「すっかり冷えた。おフロに入ろう」と震えた体で浴槽に入った。だが、お湯ではなくて水風呂だったのだ。オチビサンはびっくりして、「氷入りの水ブロだ!」とくしゃみをした。風呂からすぐに出て、オチビサンは毛布にくるまった。ナゼニが「もう1枚毛布を持ってこようか」と言い、「ゆたんぽもあるといいよ」とパンくいが湯たんぽを持って来てくれた。「今って夏?それとも冬?」とオチビサンはすっかり寒くなってしまった。夏の体の冷やしすぎには要注意である。

おじい(左)とオチビサン(右)は、打ち水をしていてお尻がぶつかった。2人は互いをライバル意識する。

体が冷え切ったオチビサンは、翌日にはすっかり元気になった。太陽が地面をカッと照りつける。「あつい時は打ち水だ」とオチビサンは言って、家の玄関に水をまいた。そして次は道に出て打ち水をする。オチビサンは、一生懸命桶に入った水を手でまいていた。後ろ向きに進んでいるので、ご近所のおじいさんとお尻がぶつかった。名前は「おじい」だ。おじいはオチビサンとお尻がぶつかったので「むっ」と声を出した。おじいも道に打ち水をしているのである。オチビサンはおじいと向き合った。2人の視線がぶつかり、火花が走る。オチビサンにとっておじいの登場は、打ち水ライバルの出現だ。オチビサンとおじいはお互いに水をパシャパシャと勢いよくかけあった。ずぶ濡れになったおじいとオチビサンだが、2人の間にはまだライバル意識がある。「明日からここまでをわしの受け持ちとする」と、おじいが道に境界を設けた。「心得た!」とオチビサンは返事をする。おじいとオチビサンの打ち水の掛け合いのせいで、近所のおばさんの家の前が水びたしだ。「家の前が水びたしじゃない」とおばさんに怒られたオチビサンとおじいである。

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