あの娘にキスと白百合を(あのキス)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『あの娘にキスと白百合を』は、缶乃によるマンガ作品。
中高大一貫の女子校における高等部を主な舞台とし、少女同士の恋愛と、成長をオムニバス形式で描いていく。KADOKAWA メディアファクトリー発行の『月刊コミックアライブ』にて、2014年1月号より連載中。
主人公の白峰あやかは「1番」であることを誇りとしていたが、その「1番」を軽々と奪っていく黒沢ゆりねとの出会いに、心乱されていく。

『あの娘にキスと白百合を』の概要

『あの娘にキスと白百合を』とは缶乃による漫画作品。
中高大一貫の女子校である「清蘭学園」の高等部を舞台に、少女同士の恋愛と成長を描く、いわゆる百合モノのマンガ作品となっている。
オムニバス形式を採用しており、白峰あやかと黒沢ゆりねを中心に据えつつ、学園における様々な青春模様が描かれる。
作者の缶乃は今野緒雪の作品である「マリア様がみてる」から百合の影響を受けていると発言している。
百合漫画としてだけではなく、青春漫画、学園漫画としても面白い。毎回キスシーンが挿入されているところが、この漫画の特徴である。

『あの娘にキスと白百合を』のあらすじ・ストーリー

高校1年・春(1話~2話)

白峰 あやかと黒沢 ゆりねの出会いを描いたエピソード。

主人公の白峰あやかは、学業成績において「1番」であることを目標とし、弛まない努力によって維持してきた、品行方正な『秀才』。
しかし、高等部への進学の折に編入してきた黒沢ゆりねは、白峰あやかよりも少ない努力で高い成績を叩き出す『天才』だった。
「2番目」になってしまった白峰あやかは、黒沢ゆりねを一方的にライバル視して宣言するも、黒沢 ゆりねからは好意を寄せられる。

高校1年・夏(3話~4話)

陸上部の上級生である瀬尾 瑞希と二階堂 萌を中心としたエピソード。

瀬尾 瑞希と二階堂 萌は、陸上部の短距離走選手とマネージャーであり、プライベートでも良きパートナー。
ある日、二階堂 萌は、学業以外においても才能を発揮しながら部活動には所属しない黒沢 ゆりねを、陸上部に勧誘する。
一方で、瀬尾 瑞希は、黒沢 ゆりねを熱心に勧誘する二階堂 萌を見て、黒沢 ゆりねへの嫉妬と羨望の念を抱く。
しかし、二階堂 萌が黒沢 ゆりねを勧誘していたのは、瀬尾 瑞希の記録を伸ばすべく、共に走らせようとしてのことだった。

また、瀬尾 瑞希の髪が中2から短くなった理由について、「二階堂 萌に似合う自分でいるため」であることが明かされる。

高校1年・秋~冬(5話~10話)

日下部 千春のルームメイトであり、天文部所属の上級生、星野 真夜を中心としたエピソード。

高校3年である星野 真夜は、大学受験を控えている。
清蘭学園の大学には理学部がなく、星の勉強ができないため、遠くの大学へ行こうとしている。

上原 愛は、星野 真夜と会えなくなることを嫌い、一度は受験の失敗を願ったものの、応援するよう心を入れ替える。
日下部 千春は、星野 真夜に恋愛感情を告げようとするが、やんわりと断られてしまう。

日下部 千春は、寮に居づらくなって実家から通い、持て余した時間で風紀委員の見回りを行う。
学園から禁止されている自転車通学の常習者・秋月 伊澄と知り合い、親しくなる。

星野 真夜は、志望していた大学に合格。
日下部 千春、上原 愛、秋月 伊澄の3名は、プラネタリウムを自作し、卒業する星野 真夜を温かく見送る。

高校2年・4月(11話~12話)

白峰 あやかと黒沢 ゆりねは進級し、高等部2年生となった。

テストの点数で黒沢 ゆりねに負け続けていた白峰 あやかだが、実力テストの英語において、初の勝利を収める。
黒沢 ゆりねにとっても、白峰 あやかは「自分を負かしうる存在である」ことから、特別な存在となっていた。

一方で、黒沢 ゆりねは、園芸部に所属する上級生の大城 雪奈から、園芸部の新入部員として強引に仕立て上げられる。
現在、園芸部員は3年生の大城 雪奈と三田 十和子の2名のみであり、次年度以降の活動予算が絶望的であるため、5月の予算会議まででよいので、名前を貸してほしいと言われる。
黒沢 ゆりねは、むしろ「必要とされているのが『特別な才能』ではない」ことから、才能抜きの自分、「バラを育てて白峰 あやかに贈りたい」という気持ちに気付き、自主的に園芸部へ入部する。

高校2年・5月(13話~15話)

園芸部所属の3年生、大城 雪奈と三田 十和子を中心としたエピソード。

黒沢 ゆりねが入部し、3人となった園芸部。
更なる部員確保のため、張り切る部長の大城 雪奈だが、募集ポスターが破り捨てられているのを目にする。
そして、生徒会から、生徒総会において「バラ園を廃止しテニスコートとする案」が提出されることを知る。

大城 雪奈と三田 十和子は、幼い頃から、中等部入学時には寂れていたバラ園の作り直しを経て今に至るまで、2人で過ごしてきた。
しかし、園芸部員の募集ポスターを破り捨て、園芸部の廃部を望んでいたのが他ならぬ三田 十和子であったことを知り、大城 雪奈は困惑する。

ずっと一緒に過ごしてきた2人だったが、「綺麗なものを長く楽しむ方法」についての認識が違っていた。
大城 雪奈にとっては「後代へと伝えていくこと」だったが、三田 十和子にとっては「綺麗なうちに終わらせてしまうこと」だった。
三田 十和子は、2人で過ごしてきた園芸部が好きだからこそ、園芸部の廃部を望んでいた。

大城 雪奈が不在の中、生徒総会においてバラ園の廃止が決定。
三田 十和子は目的を果たしたものの、気持ちは満たされず、大城 雪奈に殴られ、泣いて反省する。

非常に少ない予算とバラ園の廃止という、翌年以降の園芸部にとって厳しい状況が決定したが、黒沢 ゆりねは、園芸部を続けると言う。
バラ園のバラも、グラウンドの端に少しだけ残せることとなり、園芸部と、大城 雪奈と三田 十和子の関係は、続いていく。

高校2年・5月~6月(16話~17話)

陸上部所属の3年生、瀬尾 瑞希と二階堂 萌を中心としたエピソード。

県総体を前にした追い込みをする瀬尾 瑞希だが、二階堂 萌のことが必要以上に気になり、練習に身が入らない。
見かねた二階堂 萌は、瀬尾 瑞希に、好物を断つ一環での「萌断ち」を提案する。
一時的に距離を置くことで、中等部からの5年間、二階堂 萌とともに走ってきた瀬尾 瑞希に、「誰のためにがんばるべきか」を気づかせようとしての提案だった。
瀬尾 瑞希は「萌断ち」の末に、「二階堂 萌のため」と同等に、「自分のため」に走るべきだと気づく。

瀬尾 瑞希は、県大会の決勝に臨むが、健闘の末、敗退する。
高校最後の大会を終えた瀬尾 瑞希は、自分の気持ちに整理をつけ、高校で陸上競技を終えることに決める。
そして新たな「自分のためにやりたいこと」を見つけるべく、高校生活へと戻っていく。

高校2年・6月~7月(18話~19話)

黒沢 ゆりねとクラスメイトの町田 郁、その友人である猪上 小萩と鹿間 もみじを中心としたエピソード。

町田 郁は、中学1年の頃、黒沢 ゆりねと同じクラスだった。
当時から才能を発揮していた黒沢 ゆりねに憧れていたが、勇気が出ずに声をかけられないまま、親の仕事の都合によって、清蘭学園中等部へと編入することになる。
高等部へと進学し、黒沢 ゆりねが編入してきた機会に声をかけるが、覚えられておらず、高校2年まで友達になれずにいた。

そんな折に、白峰 あやかと黒沢 ゆりねが家庭科の課題であるテディベア作りで競うことになる。
町田 郁は、手芸屋にて、白峰 あやかと瀬尾 瑞希の会話を偶然に聞き、黒沢 ゆりねの敗北を予感する。
町田 郁は黒沢 ゆりねへ助言し、それをきっかけに、少しずつ会話をするようになる。

猪上 小萩と鹿間 もみじは、黒沢 ゆりねを夏祭りへ誘おうとする町田 郁を、温かく見守る。
少し妬きながらも友達として支えた末に、町田 郁は黒沢 ゆりねから了承の返事を受け、全員で夏祭りへ行くことになる。

高校2年・8月(20話)

再び、陸上部所属の3年生、瀬尾 瑞希と二階堂 萌を中心としたエピソード。

瀬尾 瑞希と二階堂 萌の2人は、夏祭りへと出掛けた。
瀬尾 瑞希は、高校卒業後の進路、ひいては「自分のためにやりたいこと」について、まだ明確なことは決めていないと言う。
ただし、将来については、いずれは二階堂 萌と一緒に過ごしたいという思いでおり、瀬尾 瑞希は、二階堂 萌へ「いっしょに暮らそう」と言った。

高校2年・8月~10月(21話~25話)

広報委員会所属の2年生である伊東 紗和と、後輩の西河 いつきを中心としたエピソード。

伊東 紗和は、広報委員会の活動で、西河 いつきと組むことになる。
西河 いつきからの応答に刺々しいものを感じるも、初対面にも関わらず刺々しい理由がわからず、途方に暮れる。
直接尋ねてみると、伊東 紗和は「西河 いつきとは初対面」と認識していたが、実は幼馴染だった。
小学1年以来の再会で、西河 いつきがあまりに美人になっていたために、気づかなかったのであった。

それをきっかけに、一度は幼い頃のように仲直りするも、伊東 紗和は幼い頃に交わしていた約束を忘れており、怒った西河 いつきから、再び距離を置かれてしまう。
伊東 紗和は、小学校の頃の文集から、「西河 いつきと一緒にモデルになる」という約束を思い出す。
約束を思い出した後も「自身がモデルになることは無理だ」と感じていたが、昔の約束のままではなく「写真家とモデルとして、モデル像を一緒に作り上げていく」という約束を新たに交わすことで、2人は再び親しくなった。

高校2年・10月(26話~27話)

高等部1年の秋月 伊澄と、2年の日下部 千春を中心としたエピソード。

学園では、花にリボンを巻いて送るのが流行っていた。
リボンの色によって含む意味合いが異なり、中でも赤色は、「たったひとりの大切な人にしか贈れない」色とされていた。

そんな中、秋月 伊澄は、流行を知らずに、朝倉 亜麻袮から赤色のリボンを巻いた花を受け取ってしまっていた。
リボンの意味を後から知った秋月 伊澄は、日下部 千春という大切な人が既にいるため、花とリボンを返すことを決める。
そして、朝倉 亜麻袮へ、受け取った花とリボン、そして謝罪を意味する紫色のリボンを返した。

日下部 千春は、卒業した星野 真夜が、放課後に学校に来ることを知る。
秋月 伊澄は、花とリボンの騒動を日下部 千春に黙っていたことの埋め合わせに、ケーキを奢る約束をする。
日下部 千春は、秋月 伊澄との約束もあり、星野 真夜とは会わない事に決める。

しかし、風紀委員会の会合で遅れた結果、偶然に星野 真夜と会う。
互いが元気であることを確認したのち、日下部 千春は、秋月 伊澄との約束に向かった。

高校2年・10月~11月(28話~30話)

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