キノの旅(Kino's Journey)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

時雨沢恵一によるライトノベル、及びそこから派生したアニメ作品。原作のイラストは黒星紅白。
旅人キノと喋るモトラド(二輪車)エルメスが不思議な国々を巡る、ショートストーリーの連作シリーズ。キノとエルメス以外にも、「師匠と相棒」「シズと陸(とティー)」「フォトとソウ」などが主人公になる話もある。
アニメは2003年4月~7月に全13話が放送され、2017年3月12日には再アニメ化が告知された。

『キノの旅』の概要

第6回電撃文庫大賞最終選考に残るものの、落選。当時としては特異な作品であり、最終選考で落選となったものの編集部では捨てがたい作品として読者に判断を委ねる形で電撃hpに一挙掲載、好評を博し、文庫化された経緯がある。シリーズ累計で770万部を超える電撃文庫の大ヒットシリーズの一つである。

現在までにテレビアニメ1クール、劇場版2作、ゲーム2作(これとは別にキャラクターゲスト1作)、ビジュアルノベル3作、ドラマCD1巻、小中学生向けに配慮した新規書下ろしが角川つばさ文庫から1巻発売されている。

そして2017年3月発売の『少年マガジンエッジ』2月号にプロローグ漫画が掲載され、同年4月号にて連載がスタート。さらに2017年3月17日には再テレビアニメ化が告知された。

他に外伝として作者自らがキノをパロディとした『学園キノ』がある。4巻のあとがきに書かれた嘘ネタが発端となっている。電撃文庫作家陣による限定公開海賊本『電撃ヴんこ』に読み切りとして掲載された。その後、公開海賊本上でシリーズ化、さらには文庫化され、現在5巻が発売されている。

『キノの旅』のあらすじ・ストーリー

キノと名乗る旅人と、喋るモトラド(バイク)のエルメスの旅を描く短編の連作シリーズ。繋がりはあるがそれぞれの短編は独立しているので、何巻から読み始めてもいいように作られている。

物語の世界は、様々な都市国家が存在する架空の世界である。国はそれぞれ全く異なった文化や文明を持っており、原始的な国家もあれば、近未来的な技術を保有する国家も存在する。一方で国の外は盗賊や獣などがいる無法地帯となっている。
ほとんどの国家は何らかの問題(外国人から見たら問題だがその国の人は気付いていない、という場合もある)を抱えているが、その問題は現代社会に実在するものが多く、いわゆる風刺小説の一面を持つ点がライトノベルとしてはかなり異色であるといえる。

キノとエルメス以外にも、「師匠と相棒」「シズと陸(とティー)」「フォトとソウ」が主人公になる話があり、稀にこの3者以外が主人公の話もある。

エルメスや陸、ソウといった人間以外のモトラドや動物が人間のように考えたり喋ったりすることがある。ただし一部そういう存在がいるということであって、すべてのモトラドや動物ができるというわけだはない。

作者は松本霊士の『銀河鉄道999』がこの作品の根源にあると語っている。

『キノの旅』の登場人物・キャラクター

主要登場人物・キャラクター

キノ

出典: pbs.twimg.com

CV:前田愛(テレビアニメ版(注・女優))/久川綾(ラジオドラマ版、電撃FIGHTING CLIMAX)/悠木碧(多数決ドラマ版、新テレビアニメ版)

10代半ばほどの、精悍な顔立ちの旅人。一人称はボク。少年と間違われることがあるが実は女性である。頭の回転が速く、華奢な体格ながら運動神経は抜群で、3丁のパースエイダ―(銃)を携帯する射撃の達人で、モトラドの操縦技術を会得しており、戦闘・サバイバル技術も高い。

無口というわけではないが寡黙で、最初の一言を発しただけで黙ることも多い。そのため、その続きを多弁なエルメスに勝手に代弁されることもしばしばある。表情の変化も少ないが、感情が乏しいわけではない。食いしん坊で貧乏性。

キノという名前は実は本名ではなく、恩人の旅人の名前を踏襲したもの。本名は明かされておらず、「秋に咲く地面に群生する赤い花と同じ名前で、読み方を変えると悪口になる」という特徴が分かっている程度である。作品内では×××××(5文字以内でも使われる)と表記されている。

元々彼女は1巻5話で登場する「大人の国」に住む普通の少女だった。しかしこの話に登場する初代キノ(男性)との出会いによって彼女の運命は大きく変わる。
この国では12歳の誕生日に「大人になるための手術」をするのだが、彼女は初代キノと話しているうちに生まれた、手術を受けないままで大人になれないのか、という気持ちを両親たちに言う。それを聞いた両親たちは彼女を処分しようとしたところに初代キノが自らの命を犠牲に庇う。そして少女は旅人に命を吹き込まれた(それまではただのガラクタだった)二輪車のエルメスに乗り、国を飛び出した。ここから「キノ」として名乗り始める。

その後、とりあえずどこかの国に行こうとして迷った森に住んでいた師匠に出会い、彼女から銃器や旅の心得を学ぶ。そして十分なスキルを得たあと、エルメスとともに旅に出る。

キノという名前の由来は映画を意味するドイツ語の「Kinematograph」(Kinoと略される)からきている。

エルメス

画像上:キノ、画像下:エルメス

CV:相ケ瀬隆二(テレビアニメ版)/野田順子(ラジオドラマ版)/斎藤相馬(多数決ドラマ版、新テレビアニメ版)

キノの相棒で、言葉を話すモトラド。少年のような声で喋り、かなり口数が多い。それ以外は普通の二輪車で自立走行することはできない。

軽妙で人懐っこいが、シリアスな場面でも冗談を言うため、キノから怒られることもある。一方で人の死にも動じることがないドライな性格でもある。また、知識が豊富な反面、間違った慣用句やことわざを使い、しばしばキノにツッコミを入れられている。

元は「大人の国」のスクラップで、初代キノに修理された。エルメスという名前は初代キノの友人の名前であり、「大人の国」脱出後に現在のキノに名付けられた。

ブラフ・シューペリアSS100という実在のオートバイがモデル.。名前の由来はギリシャ神話のヘルメスから。

シズ

画像左:陸、画像右:シズ

CV:入江崇史(テレビアニメ版)/梅原裕一郎(多数決ドラマ版)

バギーに乗って旅をする、刀を持った青年。一人称は「私」だが、感情が高ぶったときは「俺」になる。本作の登場人物にしては温厚で慈悲深く、無償であっても人助けになるなら積極的に引き受けるが、場合によっては冷徹な行動をとることもある。
剣術の達人で、銃で撃たれても刀で簡単に跳ね返してしまうほどの実力の持ち主。

かつてはとある国の王子だったが、暴君の父親が祖父を殺害したことで国は乗っ取られ、圧力を敷かれた。父に反発したシズは追放され、復讐するために7年間放浪の旅をしていた。その後祖国に戻り父を殺害するためにコロシアムに参加するが、決勝戦でキノに敗れ、キノによって父親を殺害される。そこからまた各国を彷徨った後、安住の地を探して旅を続けることとなる。

画像左:シズ、画像右下:陸

CV:大塚芳忠(テレビアニメ版)/松田健一郎(多数決ドラマ版)

シズに付き従う喋る大きな白いサモエド犬。オス。いつも楽しく笑っているような顔をしているが単に生まれつき。
シズが主人公になる話では語り手になることが多い。

シズとの出会いといった関係は不明だが大きな恩義を感じており、付き従っている。
冷静な思考を持ち丁寧な口調で話すが、その価値観は割とシビアである。

シズを助けたこともありキノに対しては好意的だが、エルメスとの仲は非常に悪い。後に仲間になったティーに対しては、最初こそシズを傷つけた過去から快く思っていなかったが、段々と仲間と認めるようになる。

ティー(ティファナ)

出典: blogimg.goo.ne.jp

画像左:シズ、画像中央下:ティー、画像左下:陸

CV:能登麻美子(テレビアニメ版)/佐倉彩音(多数決ドラマ版)

無口・無表情な、雪のように白い髪を持つ12歳くらいの幼女。彼女のセリフは全てひらがなになっている。手榴弾をはじめとした爆発物を気に入っているが、思考そのものが物騒というわけではない模様。たまに思いもよらない発言をしてシズや陸を驚かせている。

彼女は「船の国」という船そのものが国家である国で旅人の夫妻に捨てられた赤子である。捨てられた後、同国を支配していた塔の主に育てられる。船の国が長く持たないことから、シズは塔の主に託され、船の国の最後に端を発する騒動の後、シズらと旅をすることとなる。ティファナという名前は、「船の国」にかつて現在の国民の先祖を乗せて漂着した漂流船の名前である。

名前の由来はメキシコにある町の名前から。

師匠

画像:若い頃の師匠

ataru_nagai1889
ataru_nagai1889
@ataru_nagai1889

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