鉄拳チンミ(Ironfist Chinmi)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

著者前川たけしにより月刊少年マガジンにて1983年12月号より1997年2月号まで連載した漫画作品。全35巻。続編に「新鉄拳チンミ」、「鉄拳チンミLegends(レジェンズ)」と続く長編ストーリー。番外編には「鉄拳チンミ外伝」がある。
類稀な拳法の才能があり、陽気な性格の少年チンミが大林寺にスカウトされ入門することから始まる成長ストーリー。

『鉄拳チンミ』の概要

「鉄拳チンミ」「新鉄拳チンミ」「鉄拳チンミLegends(レジェンズ)」と、途中休載期間もあったが1983年12月号より30年以上続いている長編大作。長期連載にも関わらず絵、内容とも常に進化を続けている。
「鉄拳チンミ」は老師に“拳精”として見い出され大林寺に入門することから始まる。様々な人達との出会いや敵との遭遇を繰り返し成長していくストーリー。
「新鉄拳チンミ」では大林寺師範になり弟子ももつようになったチンミの各地での活躍を描いた物語。「カナン解放運動編」「水軍編」の二部構成。師範に登り詰めたチンミのその活躍ぶりは手に汗握る迫力。また、チンミの人を惹きつける人柄で沢山の絆が芽生えていく様もみどころ。
「鉄拳チンミLegends(レジェンズ)」は現在なお連載中。大林寺拳法を世に広めるため弟子のグンテと共に諸国を旅をすることとなる。内容、画力ともさらに洗練されており読み応え十分な作品に仕上がっている。
手抜き感一切無し、充実のストーリーはもとより特に闘いのシーンは迫力満点。著者前川たけし氏のとても丁寧でクオリティの高い仕事ぶりが作品に如実に表れている。

『鉄拳チンミ』のあらすじ・ストーリー

鉄拳チンミ(全35巻)

修行

大林寺には建立100年目に大林寺拳法の「拳精」が現れるという言い伝えがあった。その「拳精」を見つけるべく旅をしていた大林寺の老師により見いだされ、大林寺に入門することとなった陽気な少年チンミ。
入門後、多くの大林寺拳法の達人たちに弟子入りし、厳しい修行を経る。チンミの力を上手く引き出す優秀な師たちの教えに加えて、持って生まれた類まれな才能もありメキメキと成長していく。また「敵」に出会うことも多くあり、彼らとの生死を賭けた闘いもチンミを大きく成長させていく。
棍法の達人リキの下で修業することとなったチンミは、そこで後の運命のライバルとなるシーファンと出会う。彼との勝負は0勝2敗1引き分け。自分と同じ年頃の相手に勝てなかったのは初めての経験だった。
師、敵、そしてライバル。様々な出会いがチンミを成長させていった。しかし大僧正は入門当初のひょうきんさが抜けて大林寺の教え通りに心も成長を遂げていくチンミを見て、大林寺の枠にはまるのは早すぎると判断する。そしてチンミを東林寺のヨーセン道士に預けることにするのであった。
チンミはヨーセン道士の下で「通背拳」を体得すべく厳しい修行に挑む。そんななか道士は酒浸りの習慣がたたり危篤に陥ってしまう。そしてチンミが通背拳を体得する様を見届けて息を引きとるのであった。

旅、そしてオウドウとの闘い

ヨーセン道士の死後、見分を広げるため旅に出るチンミ。様々な人達との出会いがさらにチンミを心身共に成長させていく。
旅半ばにして大僧正が倒れたことを知り、急ぎ大林寺へ戻ったチンミ。しかし大林寺はかつて門下生であったオウドウに占拠され、さらに大僧正は監禁されていた。チンミよりはるかに強力な気功を使いこなすオウドウを倒すため、大林寺秘伝の「雷神」を体得。そしてこれを使いオウドウを撃退する。しかし「雷神」は活人拳の大林寺拳法の奥義にして殺人拳。チンミは殺人拳を使ったことに責任を感じ大林寺を去ることを決意する。しかし街の人々の声や偶然会ったリキの助言により大林寺に戻ることとなる。

ナジルの闘い、天覧武道大会

ひょうきんで陽気な少年チンミも師範になり、弟子を持つようになる。その1人グンテの故郷であるナジルが騎馬民族「風の群狼」の標的になり危機が迫っていることを知りナジルへ赴く。風の群狼との闘いは大林寺と国軍、街の人々の協力により勝利する。その時にチンミは風の群狼の首領ゲンマを打ち倒す。
チンミの活躍が都の皇帝陛下の耳に入り国軍の将軍オウリンに都に招待される。都で皇帝陛下に会ったチンミは大林寺の代表として毎年開催されている天覧武道大会に出場することとなる。この天覧武道大会にかつてのライバルであるシーファンが出場することを知り会いに行く。しかしそこには皇帝暗殺計画を企てるシンサイの傀儡針に操られ正気を失っているシーファンがいた。大会直前には皇帝暗殺計画があるという情報をオウリンに聞かされて優勝して阻止して欲しいと頼まれる。
大会は甲組(武器なし)部門と乙組(武器あり)部門に分かれており、最後に甲組の優勝者と乙組の優勝者で統一戦を行う。チンミは初戦、準決勝と勝ち進み甲組決勝ではタンタンに勝利する。そして乙組で優勝したシーファンとの統一戦。試合中傀儡針に操られているシーファンの洗脳を解くため「百会」のツボを突くも洗脳は解けず、未だかつてない苦戦を強いられるチンミであったが最後は通背拳で勝利する。試合後両雄の健闘を称えるために近づいてきた陛下。暗殺を目論むシンサイの針から守り皇帝暗殺計画を阻止することに成功する。翌日の表彰の儀の後には陛下直々に謝意を表され、シーファンとも別れて大林寺に帰還するのであった。

新鉄拳チンミ(全20巻)

カナン解放運動

大僧正は南の辺境にあるカナン自治区の同門、興林寺と連絡が取れないことを危惧していた。そしてチンミを使者として赴かせることにする。
その道中に知り会ったプーシンと一緒にカナンに到着するチンミだが、カナンは前国主の一族を殺しその地位を奪ったジライによる圧制に住民達が苦しめられていた。
前国主の一人娘ホウジュンを中心に活動する「カナン解放運動」に合流し、チンミは彼らに協力することを決意する。
仲間達が国主軍将軍ボルを鉱山に足止めしている隙に宮殿に潜入したチンミ。憲兵隊長ソウビを討ち、ジライを追い詰めるものの駆け付けたボル将軍に阻止されてしまう。チンミはホウジュン達にジライを追わせるためボル将軍の前に立ちはだかる。しかし圧倒的な強さを誇るボル将軍に追い詰められていく。遂には殺人拳「雷神」の封印を解くが逆にボル将軍に「雷神」を習得されてしまう。絶体絶命の状況に敗北を覚悟したチンミであったが、子供の頃から兄弟のように共に過ごしてきたサルのゴクウの声や死んでしまったら会えなくなる人達のことを想い今一度奮起、最後の反撃を見事決めボル将軍を撃退する。またジライも執念深く抵抗するもホウジュンと住民達により捕獲される。「カナン解放運動」は無事住民達の勝利に終わった。

水軍

皇帝陛下は「カナン解放運動」の報告を受けさらにチンミへの評価を高める。そして、かねてより苦慮していた水軍への密偵任務をチンミに任せることにするのであった。恩師ズイウン提督への親書と水軍の密偵の任をチンミに与える。同じく密偵任務を与えられたシーファン、タンタンと共に水軍の本拠地カレイ、そこにある水軍司令部「軍船島」に潜入する。
皇帝陛下からの親書を受け取ったズイウン提督は、自分の補佐役である副官カイオンの企みに気付く。カイオンは自分と同じく副官のチョウリュウやズイウンを始め邪魔者を始末した後、自らが新提督になる計画を企てていた。既に大半の兵たちはカイオンの傘下にあったため、カイオンを処罰しようとしたズイウンは逆に拘束されてしまい、チンミも艦から夜の海へと突き落とされてしまうのであった。
そうしてカイオン艦隊によるチョウリュウ艦隊への攻撃が始まった。しかし驚異的な体力で夜の海と陸路を走り抜いて帰ってきたチンミとチョウリュウの優れた判断力、カイオン艦隊に乗り込んだシーファン、タンタンの活躍もあり次々と計画を狂わされることとなる。そしてチンミたちは遂にはズイウンの奪還に成功する。
いよいよ追い詰められたカイオンは最強の第一海兵部隊を投入し、チンミたちが避難した艦を落として全てを闇に葬ろうとする。しかし第一海兵部隊もチンミたちの奮闘に撃退される。カイオン傘下の残党の艦もチョウリュウの命がけの作戦により撃沈。崩壊する旗艦と共にカイオンもまた海へと沈み、その野望は完全に潰えた。

鉄拳チンミLegends

悪党街マウロン

皇帝陛下の立案により近隣諸国の代表を招き、友好式典が催される。そんな中ミト姫も自国の代表として式典に出席することとなった。しかし王族としての立場に常々嫌気が差していた姫は、羽を伸ばす好機と考え道中の宿屋を抜け出す。自由を満喫していたミト姫であったが、人さらいに誘拐されてしまう。偶然、武術指導の旅の最中この現場を目撃していたチンミとグンテは誘拐犯を追跡した末に悪党街マウロンにたどり着く。
マウロンの顔役ゼイガンの砦は断崖絶壁の岩山の上にある。そこに連れていかれたミト姫を救い出すためチンミたちは近衛兵隊長ダルトと組み、この断崖絶壁を登るのであった。またミト姫も自力で監禁部屋から脱出していた。姫を巡りチンミたちとゼイガン砦の選りすぐりである十人衆との激しい攻防が繰り広げられる。10人中9人を撃破するも十人衆最強の実力者ガンテイに阻止され再びミト姫とさらにグンテたちも捕らわれてしまう。
犠牲者を出さぬよう苦慮するミト姫だったが、ゼイガンは生還を賭けてガンテイと決闘することを提案する。そしてその先鋒に名乗り出たチンミはガンテイの黒翼剪剣という二枚刃の剣に苦戦するが死中に活を見出し一瞬のスキを逃さず勝利する。ゼイガンは約束を守りチンミたち全員を解放する。そしてチンミたちと別れたミト姫は無事友好式典に出席するのだった。

水害

幾度となく英雄のごとく活躍するチンミ。皇帝陛下はついに「国家功労賞」をチンミに授与することを決定した。オウリン将軍は授与式のため大林寺に訪問することとなったのだが、その一団にはチンミに想いを寄せるオウリンの一人娘、レンカの姿もあった。大林寺に着いた一団。そこでレンカはもっと深くチンミのことを知ろうとするが、チンミの弟子たちに昔からチンミと親しくしている少女ヤンのことを聞き、二人の関係を確かめるためにヤンに近づく。
降り続ける雨。その影響でヤンの村の近くの川では大水が起こりかけていた。それにいち早く気付いた村の親方の指示により村には避難勧告が出された。しかし親方自身の家族は今だそれに気付いていなかった。心配して様子を見に行ったヤンによってようやく状況を理解する親方の家族。避難を始めた矢先に遂に大水が発生してしまう。流れてきた流木には双子の赤ちゃんが入っている籠が引っかかっている。ヤンは赤ちゃんを救出しようと向かうが、代わりに今度はヤンが川に引きずり込まれてしまう。そんなヤンを助けるべく、荒れ狂う川に飛び込むチンミ。無事生還を果たすのであった。

『鉄拳チンミ』の登場人物・キャラクター

チンミ

本作品の主人公である。底抜けに明るくひょうきんな性格にして類まれな拳法の才能を持つ。大林寺の老師に「拳精」として見い出されて以来、水を吸う砂のごとく成長していく。時を経て師範代になるとこれまで以上に各地で英雄的な活躍を見せ、皇帝陛下にさえ高く評価されるようになる。
必殺技「通背拳」や「一指拳」、さらには大林寺秘伝の奥義「雷神」も会得している。また子供の頃からサルのゴクウと過ごしていたためか、持ち前のスピードに加えトリッキーな動きを得意とし相手を翻弄する。敵がどんなに強敵でも決して諦めず立ち向かう精神力、苦境に立たされても一瞬の勝機を見逃さない集中力と冷静に状況を判断する分析力も兼ね備える。

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