目次

  1. 配役が全部なめこ系キャラ
  2. 魅力その1:違和感がない
  3. 魅力その2:世界観が分かりやすい
  4. 魅力その3:絵だから想像させる、伝わるものもある
  5. 疑問:何故「なめこ?」
  6. まとめ・創作の可能性を示唆する作品

配役が全部なめこ系キャラ

『なめこ』をよく知らない方でも、この作品を読んで驚くはず。なめこのバリエーション、その配役の絶妙さに。

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こんなに種類が豊富だとは思いませんでした。

魅力その1:違和感がない

東西の古典文学作品をこんなプリティな連中が再現って大丈夫なのか?と若干心配にもなりますが、そこは作り手の手腕。まったくもって違和感ナシです。「ちょ、なめこ・・・」とはならず、原作同様に引き込まれるんです。

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芥川龍之介『蜘蛛の糸』より

かわいいなめこも、気色悪いシーンはがっちり「気色悪く」演出されています。ことにこの『蜘蛛の糸』。血の池の質感と生前での森の中の光景が何だかコントラストのように思えるんですよね。糸に群がる亡者や、『羅生門』の老婆など、遠慮なく「怖い」です。

魅力その2:世界観が分かりやすい

ガッツリ原作を読み込んでイメージを膨らませたんでしょう、世界観や登場人物の様子が分かりやすく表現されています。

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宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』より

『セロ弾きのゴーシュ』の1ページ目。他の奏者と違って、見るからに余裕のない演奏を強いられてます。挙句弦まで切れる。そんなゴーシュの腕やら要領の悪さをたったの数コマで表現。しかも原作で楽長の言っていた「トオテテ、テテトオ」というリズムがキッチリ楽曲のオノマトペとして再現。これは原作ファンはニヤリの展開かと思われます。ちゃんとセロもボロボロですし。

魅力その3:絵だから想像させる、伝わるものもある

小説作品、文章だけの芸術も十分素晴らしいですが、そこに「絵」という要素が加わることにより、却って想像を広げている場面もあります。

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カフカ『変身』より

外見だけでなく食の嗜好まで虫と同じになってしまったザムザの食事シーン。「うれし涙を流しながら食べた」とあった気がするんですが、改めて絵で見てみるに、哀しい涙にも見えます。意図してのことか分かりませんが、そんな心持ちがしたんじゃないか、と思わせるシーン。徐々に人間性が失われていくことへの恐れや、「自分は人間だ、だから泣くんだ」という無意識の意地のようなものが、背景の網掛けの部分に暗示されているように思えます。「虫」の顔が鬼というか化け物っぽいのも、そんな不安の表れかもしれません。

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同じく『変身』より

このシーン。ザムザの「虫」の部分しか映ってませんね。冒頭から部屋を出るまで、ずっと「人間」の部分は隠れており、時には「虫」の部分しか映らないことも。そう、つまり「家族からも「虫」と見なされて部屋に閉じ込められるザムザ」が「どう見られているか」を表しているわけです。恐らくはなめこが表す「人間」の部分、読者にしか見えてないんじゃないでしょうか・・・?

疑問:何故「なめこ?」

名作文学のコミカライズは多くの作家によりなされてきました。が、何だって『なめこ』でやろうと思ったんでしょうか?それはひとえに、「かわいいキャラが演じるからこそ引き立つものがある」という効果を狙ってのことかもしれません。

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『蜘蛛の糸』より

何かグラサンかけたなめこがいたり、ラブレターも見えたりしていますが、それでもぬぐえない不快感。奈落の地獄を思わせる闇。カンダタの味わう恐怖と絶望、葛藤はちゃんと伝わりますし、かわいい絵柄、キャラクターでも「怖いシーンは怖い」ことをこれでもかと物語ってくれています。

まとめ・創作の可能性を示唆する作品

『なめこ文學全集』という作品は小説だけでなく漫画の持つ可能性を読者に教えてくれている気がします。セリフはすべて「んふんふ」ですし、人間でないキャラが人間を演じる。なのに違和感もなければ、不快感もない。原作未読の場合でも「損した」と悲観することなく「小説ではどんな感じなのかな?」とある種新鮮な気持ちで臨めるかもしれません。