エゴによって人・家庭崩壊を描いた秀逸ホラー漫画「HIDEOUT」

単行本1冊の中に描かれたスピードホラーにあなたはどんな感情を抱くか?痛々しい描写紹介は避けましたが、苦手な方はご遠慮ください。

本書について

ビッグコミックスピリッツ2010年28号~38号連載 2010年単行本発売
著者:柿崎正澄…作品「感染列島」「RAINBOW-二舎六房の七人-」など

あらすじ・ストーリー

分筆業を生業としている桐嶋誠一と妻美樹、子供の純は幸せに暮らしていた。誠一の仕事が上手くいかず、連載していた作品が打ち切り、新作を執筆し出版社をまわるも断られる日々。そんな夫とは裏腹に妻美樹はブランド物を沢山購入していた。まだ幼少の純を不安にさせたくなくて、仕事が上手くいっているフリをしながら必死に執筆活動を続けていた。美樹が友人とショッピングに行くので子供を見ていてほしいと誠一に伝えて家を出て行ったのだが、誠一はイヤホンをして仕事に集中していたため聞こえていなかった。その間に悲劇は起こってしまった。純はベランダから転落死してしまった。純の事を引きずったままではダメになるからと子供を作ることを提案した誠一だが、美樹から「最初から子供なんて欲しくなかった。純は出来ちゃったから仕方なく産んだだけ。それよりもしっかり私の為に稼いでね。」とあしらわれてしまう。くすぶっていた火種が燃え出した。誠一は”全てをやり直そう”と美樹を旅行に連れ出し、異質な洞窟を発見し入っていってしまう…

全ては家族のために

貯金を切り崩しながら仕事がうまくいっているフリを続ける誠一

あの時もっと気を付けていれば…

美樹は夫に”伝えた”が、誠一はイヤホンをしているので聞こえていない。集中するために余程音量を上げて聞いていたのでしょう。美樹が洗濯物を取り込んで欲しいと伝えたのを子供の純が聞いており、窓も開いたままだったので気をきかせて洗濯物を取り込もうとして踏み台から足を滑らせてしまった。

「あんたのせいよ」

度重なる叱責に理性が吹っ切れた

洞窟のバケモノ

”全てをやり直そう”と美樹を連れて行った旅行先の島の山奥は、かつて戦争の激戦地だった。「幸せになれる滝」を見に行こうと山奥へ行ったところでやっとその時がきた。何度も何度も想像していた…この女を殺すこの瞬間が。このクソ女を殺せば俺はやり直せると信じた誠一は、隙をついて逃げた美樹を追って洞窟に入ってしまった。その洞窟にはかつて兵士として戦争を生き抜いたであろう”バケモノ”が人を食糧に生きていた。捕えられていた女・小さな男の子・生きていた美樹・食糧にしようと襲われる誠一。

僕から離れないで ひとりにしないで

誠一は家族が欲しかった。洞窟内で捕まっていた女を愛する妻、子供を愛する息子と呼び新しい家族を築こうとした。ここ(洞窟)には誠一が探していたものがある。これが1989年某月の彼の物語。

時は過ぎ2010年11月30日 一組のカップルが洞窟に入ろうとしていた。
「私はずっとひとりで…寂しい…です。私はあなたに会いたい…。助けてください…もう…嫌だ… もう、ひとりは…嫌だ…」
「あなたは、僕の… 家族…」

あとがき

作者・柿崎正澄によるあとがきでは、「グリーンマイル」「ショーシャンクの空に」などを手掛けた作家で、モダン・ホラーの第一人者「スティーヴン・キング」に影響を受け、幼少の頃からホラーの面白さにとりつかれており、ホラーは売れないと分かっていながらも形にさせてくれた方々に感謝を述べつつ、読んだ人に良し悪し問わずに何か感じてもらえたらと書いています。作者は今回の形に出来たことを「毒ヌキ」と表現しているのが面白いです。そして「HIDEOUT」があなたの本棚の片隅に並んでくれることを願っていますとも書かれています。

好きか嫌いか-読者の意見が見事に分かれる-

もっと知られていい、傑作です。
飛行機に乗る前、空港の本屋で売っていたスピリッツ(本作連載誌)の表紙に、
本作のイラストがあり、その時から引き込まれていました。
適切なセリフ回しや、編集者や義父など脇役のリアルな描写もよいです。

ある程度の量の作品に接すれば、映画や漫画、音楽などのほとんどのものに
既視感を覚えます。
要は、そこをいかに料理する(演出する)かの問題だとは思います。

出典: www.amazon.co.jp

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