回る、回る、回る。映画「パラドクス」は今もどこかで回り続けている

新たなホラーの幕開け。ループものでこれほど怖い映画はこれまでに観たことがありません。メビウスの輪とマトリョシカを足したような作品でした。どこか哲学的な映画でもあり、伏線が回収されていくクライマックスは圧巻の一言。イチオシ映画「パラドクス」をご紹介致します。

あらすじ・ストーリー

とあるビルへと飛び込んだ犯罪を犯した兄弟と彼らを追う刑事。非常階段で1階へと下りたはずの彼らの前に、なぜか最上階である9階が現れ、何度も1階へ下りても同じ現象が発生することに、三人は混乱をきたしていく。一方、どこまでも続く一本道を車で走っていた家族は、いつの間にか元の道に戻っていることに気付く。それぞれが謎のループを繰り返す空間から抜け出そうとする状況で、刑事に足を撃たれたカルロス(ウンベルト・ブスト)は生命の危機にさらされ、一家の長女カミーラは持病の発作を起こしてしまう。

出典: movies.yahoo.co.jp

従来のループものとは一線を画す傑作ホラー

ビルの階段に35年間閉じ込められてしまうことを想像できますか。地平線の果てまで続くようなハイウェイを35年間走り続けるような人生にあなたは耐えられますか。ループものといえば、どこかに時間の切れ目があってそこを通り過ぎたら一番初め、あるいはどこかの時間軸に戻るのが常道なのですがこの作品は切れ目までの長さがとんでもなく長い。35年間、同じところで生活しなければいけないのです。もはや拷問に近い所業です。

ホラーというジャンルではあるものの、この作品はSFの要素も含んでいるようにも思えます。幽霊や宇宙人の類は一切出ず、物語の中枢に横たわるのは説明不可能な超常現象。科学的な現象ではないのでSFというのは正しくないかもしれません。しかし単なるホラーでもない。新たなジャンルの可能性を見せつけられたような気分です。どのジャンルにも分類できそうでできない。そんな作品だからこそ、こんなにも面白いのでしょう。

思索的かつ哲学的な映画

不自由な場所で自由な人生を歩むのと、自由な場所で不自由な人生を歩むのと、あなたならどちらを選ぶ。この映画を観終わった時、私はそんな問いかけをされているように感じました。あるいは、自分の人生を犠牲にして誰かを幸せにすることと、誰かの人生を犠牲にして自分が幸せになることならばどちらが良いのだろう、ですかね。複雑な構造をした今作ですが、根底にはその構造なんて目じゃないほどの複雑な問題提起がされているような気がしてなりません。

まとめ

永遠に終わらないマトリョシカがあったらむちゃくちゃ怖いですよね。この映画はそんな作品です。ほんの好奇心で選んだ1本でしたが思わぬ傑作に出会えました。少なくとも通り一遍のホラー映画とは一線を画します。最近のホラーに飽き飽きしている方、王道の展開に少し食傷気味の方、どうかこの映画をご覧ください。今までにないシチュエーションと驚きによってあなたは満足するに違いありません。

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