スペイン映画賞の最高峰、ゴヤ賞を受賞した傑作映画「マーシュランド」

1980年代のスペインを舞台にしたミステリー映画はスペイン映画最高の名誉であるゴヤ賞を受賞しました。少女強姦事件に隠された闇を、重厚な雰囲気と精緻なタッチにより見事に描き切っています。今までスペイン映画に興味のなかった人も、まずはこの作品から観始めてはいかがでしょうか。映画「マーシュランド」をご紹介致します。

あらすじ・ストーリー

1980年、スペインのアンダルシア。湿地帯にある小さな町で、2人の少女の行方がわからなくなる。やがて彼女らは激しい拷問を加えられた果てに殺される。ベテラン刑事のフアン(ハビエル・グティエレス)とマドリードから左遷されてきたペドロ(ラウール・アレバロ)は、これまでにも似た事件が起きていたことを知る。調べを進めていくうちに、貧困、汚職、麻薬密売、小児性愛といった町と住人が抱える闇を目の当たりにするフアンたち。そんな中、新たな少女失踪事件が起きてしまう。

出典: movies.yahoo.co.jp

重苦しい空気感と主演2人の渋さとが相まって良い味を醸し出しています

まさか2人もヒゲを生やしているとは、というのが主演の男2人を観た第一の感想でした。バディものといえば割と正反対な性格と見た目で構成されることが多く、ヒゲもありとなしが1人ずつといった印象が強いのでちょっと面食らってしまいました。とはいえ2人ともきちんとキャラが描き分けられて、かつ立っているのでそこまで重要な要素はないでしょう。ミステリーというジャンルではありますが、ハードボイルドという観方もできるでしょう。謎解きという側面は些か弱く、どちらかというと地道に真相に近づいていくという過程を描いた作品ですので。

雰囲気は抜群。荒廃した世界観をあえて作っているのか、街並みも服装もどこかしら埃を被っているような空気です。明るいシーンはほとんどなく、惨い有り様の死体を普通に映していたり、物語の主軸も脅迫犯罪に類するものばかりなので自然と胃がズシリとなるような気分になってしまいます。しかしこの作品にはそれくらいの空気感が合っているのでしょう。常に緊迫感を持って観ることができました。

伏線をばらまきすぎたのか、はたまた煙に巻こうとしたのか

ラストは意味深な感じで終わります。詳しくは言及しませんが、真相は読者の解釈に任せるというよりかは煙に巻いたという印象の方が強かったですね。思わせぶりなシーンが物語の中に度々登場し、「これは伏線ですよ」というあからさまな指摘があったのですが、それが機能したかどうかは微妙なラインです。ちょっと伏線をばらまきすぎて上手く回収しきれなかったのかなという感想を抱きました。

とはいえ、この作品は謎解きを主軸にしたものではない為、その点は無視しようと思えばいくらでも無視できます。某漫画風に言えば、真実の中にある更なる真実という感じでしょうか。社会の闇の部分を描写したというだけでもしかしたら明確な答えというのはないのかもしれません。

まとめ

パッケージの煽り文句でむちゃくちゃハードルを上げてしまっている今作ですが、それなりに楽しむことができました。期待値を割と低めに設定しておいたことも影響しているとは思いますが。煽りは信用しないようにしているので、経験則的に。受賞歴などを気にせずに純粋に観てもらえれば楽しめる作品です。どれほどのものかと最初から観てしまうと色々穴が見えてきてしまう作品でもありますので、なるべく先入観なしで観て頂きたいと思います。

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