もはや至高の文学作品!個人の「日記」なのに面白すぎる作品3選

「活字本」と言われてまっ先に思い浮かぶのはなんでしょうか。小説?論説文?専門書?どれもそれぞれの面白さがありますが、今回ご紹介するのは「日記」。自分の身の回りのことを書く「日記」。ただの、個人の、ちょっとした「日記」。それなのにこんなに笑わされるなんて……悔しい!

武田百合子「富士日記」

夫である武田泰淳さんとの生活を上・中・下巻に渡りつづった日記。
タイトルの通り、富士山麓での生活模様がメインとなっているため、自然の美しさ・尊さを感じられる表現力が魅力。

しかし、ただ想像力をかきたてられる文章が淡々と続いているわけではなく、あいだにはフック的に笑ってしまう言葉が散りばめられており、お二人のおちゃめな人柄がうかがえます。

毎日の食事についても詳細に描き出されているのもまた、ワクワクさせられるポイント!

穂村弘「本当はちがうんだ日記」

「現代短歌」として、新たな切り口で短歌を発表している歌人の穂村弘さん。

自意識が高すぎるあまりに人との関係においてちょっとしたシーンでも恥ずかしい思いをしてしまい、かつ人には「オーラがない」と言われてしまう平凡な自身の日常について「本当はちがう、もっと素敵な人になれるはず」と奮闘する日記。

人生のちょっとした恥ずかしさをユーモラスに書ききってしまうのが作者最大の持ち味であり、痛々しい方向ではなくおちゃめでかわいい、という印象に結び付けていく語り口はむしろ聡明です。

辛酸なめ子「自立日記」

「女子校」「処女」など、フェミニズムにまつわる作品を多数発表している辛酸なめ子さんの1998年からの三年間の日記。

今となっては懐かしいワードもたくさん登場しますが、それらの「なつかし~!」「あったね~!」という感覚こそが、この日記に広がるほの暗くもニヤニヤが止まらない雰囲気と妙にマッチします。

自分の周りにあるもの・いる人を容赦なくバッサリと切り捨てるような言葉も多くそれこそが面白さに繋がっているのですが、なぜか陰湿さよりも妙な爽快感を感じてしまいます。
このクセになる文体は、「辛酸節」とも言える持ち味!

「日記」は随筆と純文学の境目をなぞる面白さ

自分の身辺をしたためる文章は「日記」「随筆」「エッセイ」などとして語られますが、とりわけ「日記」は最も私的でひとりよがりなイメージがつきまといます。

「誰にも見せるべきではない(見られたくない)」という前提を持った「日記」だからこその面白さは、ほかの文章では味わえないスリルを持っているのかもしれません。

あなたのお気に入りの「日記」を探し、そしてあなたも「日記」を書いてみませんか?

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