「ウサギ」を探せ!謎解き宝探し絵本『仮面舞踏会』

イギリス発祥の「宝探し」絵本です。「ウサギの形をした『宝』を箱に入れて隠したよ、ほしい人はこの絵本に書いてあるヒントを解いて、探してごらん…」何ともロマンあふれるうたい文句、そして意味深な挿絵の数々…日本では1981年、角川書店から出版されました。ほぼ入手不可能ですが、「こんな本もあったよ」という紹介です。

絵に驚く

絵本だからって侮っちゃいけません。

どうですか、このハイクオリティな絵!そして何よりの魅力は「謎解き」です。

あらすじ・ストーリー

「月の女神」が「太陽」に恋をしました。愛の印としてのプレゼントは野ウサギのジャックに託されます。が、ジャックはそれを失くしてしまいます。「というわけだから、読者の皆さん、探すの手伝って」というのが大まかなストーリーです。ドジっ子ウサギの尻拭いですが、宝探しがスタートです。

意味深な絵と、難解な謎

イギリス出版なので、作中現れるなぞなぞめいた「謎」は英語で考えなくてはなりません。そして、額のように絵を取り囲む枠に書かれたアルファベット。赤いところがありますね。この赤いところをつなぎ合わせて「アナグラム」を作ったり、絵に繰り返し現れるモティーフ、共通のモティーフも考慮に入れねばならない(と思われる)非常に高度かつ難解なミステリー絵本なのです。

宝物の行方

まったくの偶然に近い形で宝は見つかってしまいました。謎の一つに着想を得て、ですが、作者の望んだ形ではなかったようです。うーん、ロマンがない…。

著者キット・ウィリアムズが「ウサギは見つかった」と発表したにもかかわらず、読者は納得せず「自分のウサギを探し続けていた」。自分の望む形の良い解答を、別のウサギを。

出典: ja.wikipedia.org

これはこれでロマンかと…しかし、またも事態は一転しました。

「ウサギ発見」の真相

「発見者の手口は詐欺だよ、金属探知機使っても見つからなかった(それを防ぐために投棄の箱に入れられていた)から、その辺の場所描いて、適当なことを言って偽名使ってウィリアムズに連絡したんだ。それで認めさせたんだ」…イギリスの新聞にこのような記事が載り、「発見者」たちはゲーム会社を起こしたものの失敗。ウサギは競売にかけられたものの、制作者の元へは戻らず、行方不明のまま。

出典: ja.wikipedia.org

正確な解答を導き出した人がいたのに、そっちに行かず行方不明…ロマン溢れる絵本だったのに、現実はこんな結果に終わりました。日本語版の巻末では、著者キット・ウィリアムズの人となりや、「次回作」の構想及びそれにかかわる2枚の絵が紹介されていたことも相まって非常に残念です。「今度の主人公はハチでねー」とか「これは春夏秋冬を表しているんだ」などと訳者に説明してくれたそうですが、そちらがどうなったのかは、ウサギの行方同様分かりません。

残念な結果に終わった『仮面舞踏会』。謎がちょっと難しすぎたのも一因かもしれませんが、謎解き、絵、いずれもハイクオリティです。こんな形で埋もれてしまうのが勿体ないほどに。もしも手に取ることがあったら、ぜひ読んでみていただきたいです。各ページに隠れているウサギを探す、という一興もあります。ちなみに正確な答えはウィキペディアに出ていますので、「答気になる!」「解けない!」という方はそちらをご覧ください。

えどまち
えどまち
@edono78

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