目次

  1. 『ミルクホールとドーナツ』吉沢久子
  2. 『始まりは、ドーナツ屋さんのあるところ。』三島邦弘
  3. 『高度に普通の味を求めて』堀江敏幸
  4. 『ドーナツも「やわらかーい」』東海林さだお
  5. 『ドーナツの穴が残っている皿』片岡義男
  6. まとめ

『ミルクホールとドーナツ』吉沢久子

戦争が始まる少し前から始まる、著者の青春とミルクホールにまつわる思い出がつづられています。

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―10代で働き始め夜学に通っていた著者は、お小遣いに余裕のある時はミルクホールと呼ばれる軽飲食店で食事を取っていた。そこで出されるものは名前の通り牛乳、とーすと、それからシベリアやドーナツ。
戦争が差し迫ると同時にその店で出す食品は少なくなり、最終的にビワの実を言った粉末を溶かした飲み物を「代用コーヒー」として売っていたそうだ。結局戦火の中でそのミルクホールは塵になってしまい、現在はもう存在しない。―

一抹の寂しさを禁じえない話です。

『始まりは、ドーナツ屋さんのあるところ。』三島邦弘

ミシマ社社長・三島邦弘さんが独立したばかりのころのエピソードです。

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起業して1カ月、「出版社」の名を背負い忙しくなり始めた矢先、一人の男から突然にアポが入ったと言う三島さん。初めて1ヶ月、どんな客も邪険には出来まいと一応は請け負ったが、いざ男に会ってみるとその様相はまるで浮浪者。
「これはヤバいな」と感じた三島さんは、その男を事務所には上げず下のドーナツ屋に場所を移し、支離滅裂な話を聞かされたとか。

起業したての労苦とそのドーナツ屋さんが果たしてくれた受け皿としての役割を描いています。「ドーナツのような周縁部の仕事」と言う言葉が印象的。

『高度に普通の味を求めて』堀江敏幸

芥川賞受賞作家・堀江敏幸さん。彼の「プレーン味」に対するあくなき愛を語ります。

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ちょうど「飽食の時代」を語られはじめた昭和世代生まれの堀江さん。
小学校時代、給食で出される味気ないパンを完食しきれない彼はそっと鞄の中にパンを忍ばせて持ち帰っていたそう。これに対して「もったいない」と感じたお母さんは、そのくたびれたパンを砂糖で上げて魅惑的な揚げ菓子へと変身させてくれていた…

やがて成長し、ミスドや留学先・フランスなどでジャム、チョコ、クリーム入りの様々な揚げ菓子を端から端まで吟味した堀江さん。けれども最終的に「プレーンがイチバン」と感じたとか。おふくろの味にはどんなものも敵わない、と言うところでしょうか…

『ドーナツも「やわらかーい」』東海林さだお

全世界に店舗展開する「クリスピー・クリーム・ドーナツ」についてのエピソードがつづられています

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「おじさんでも並んでる人もますよ!」や「ドーナツだけど、ふわふわでトロトロなんです…!」と言う女性社員たちの言葉に惹かれて店を立ち寄った東海林さん。
いざ行ってみるとそこは店からはみ出すほどの客の入りで、寒空の下Yシャツ姿なのにいつまでも行列は進まない。イライラを募らせ、ようやく手に入れたソレの味は、確かに「フワフワでトロトロ」、イチゴショートにも羊羹にも真似できない「ドーナツ」の甘さだったと言う…

ドーナツと言うと堅いイメージの方が先行しますが、確かに「クリスピー~」のものは艶々でなおかつフワフワ。東海林さんの文章によってその贅沢な味を追体験できるような気分になります。

『ドーナツの穴が残っている皿』片岡義男

個人的にあまり馴染みがないのですが、「ドーナツの穴」と言う食べ物が存在するとか。そのドーナツの穴について、どこか懐かしさを感じられるエピソードがつづられています。

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ドーナツをくりぬいた際、残された生地を丸めて揚げたお菓子を「ドーナツの穴」と呼ぶ。片岡さんがこれを初めて食べたのは友人の家でだったそう。大人になった彼は、やがてカリフォルニアの喫茶店にてその菓子と再会する。
値段は普通のドーナツの半分以下、沢山食べたい人向けに考案されたメニューで、客はそれに自らの手でアップルソースをかけるとか。

いまだに知らなかったモノの発見を得た一編でした。ミスター・ドーナツにあるD・ポップはもしかすると「ドーナツの穴」かもしれませんね。

まとめ

スーパーマーケットやファストフード、パン屋など割合どこでも手に入る焼き菓子・ドーナツ。食べる時に想いを馳せたい、そんな一変がギュッと凝集された1冊です。気になった方は書店、あるいは図書館にてお手に取ってみてください♪