劇場映画のように緻密な作り。「刑事コロンボ」シリーズから傑作5選

日本では「うちのカミさんがね…」というセリフで有名な「刑事コロンボ」。本家アメリカだけでなく、世界中で大ヒットし、現在でもどこかで再放送されつづけている「コロンボ」シリーズから、特に秀逸と思われる作品を5作厳選して、紹介いたします。

「刑事コロンボシリーズ」の概要

『刑事コロンボ』(けいじコロンボ、原題:Columbo )は、アメリカで制作・放映された、ロサンゼルス市警察殺人課の警察官コロンボを主人公としたサスペンス・テレビ映画である。全69話。

出典: ja.wikipedia.org

最初に完全犯罪を企む犯人の周到な犯行を視聴者に見せた後、一見して隙のない犯人が見落としたほんの僅かな手がかりを元にコロンボが犯行を突き止める物語となっている。ミステリー小説では倒叙物と呼ばれる形式だが、視聴者はあらかじめ犯人とその犯行を知っているので、視聴者の興味は「犯人と視聴者は一体何を見落としていたのか」「コロンボがどうやって尻尾をつかんで犯人を追い詰めるか」「犯人側の心境に重ねる緊張や焦り」などの心理的駆引きが展開されていく。犯人が結末にわかる(シーズン5「さらば提督」)、犯人は明らかにされているがトリックは結末までわからない(シーズン7「美食の報酬」)、など例外作品も放映されている。

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犯人は医者や弁護士、作家、会社重役、スターなど地位や名声のある知識人、有名人であることが多く、犯行動機も権力欲や遺産目的によるものが多い。知能犯である彼らの犯行はいずれも緻密かつ周到で、コロンボから追及されても鮮やかにかわしていく。これら特権階級(エスタブリッシュメント)の世界をうかがわせること、そしてそれらの人々が作り上げた完全犯罪を覆していくことにこの作品の魅力があるといえよう。原案者のリンクとレビンソンは、コロンボの庶民的で凡庸なキャラクターの対比を鮮明にするため犯人を特権階級に設定したと語っている。

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コロンボ役・ピーター・フォークについて

ピーター・フォーク(Peter Michael Falk, 1927年9月16日 - 2011年6月23日)は、アメリカ合衆国の俳優。
アメリカで製作・放映されたテレビドラマ『刑事コロンボ』の長年にわたる主演で知られている。

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傑作5選

19話「別れのワイン」(原題 ANY OLD PORT IN A STORM)

シリーズ中、おそらくファンから特に愛されている作品。

ワイナリーの経営者エイドリアンは、ある日突然弟リックからワイナリーを大手企業に売却すると宣言されます。
理由はワイナリーの経営難。手間のかかる製法で採算を度外視したワイン造りをエイドリアンがしてきたため、赤字続きだったのです。
ワインに自分の全てを捧げてきたエイドリアンはカッとなり、弟を殴り倒してしまいます。
この後エイドリアンはあるアリバイ工作をして、リックが事故死したように見せかけるのですが…。

ワインを心から愛する男エイドリアンを、イギリスの名優ドナルド・プレゼンスが見事に演じていました。
謎解きの面白さと同じくらい、人物の感情の機微に焦点が当てられており、そういう意味で「大人の鑑賞に耐えうる作品」になっています。

エイドリアンの秘書役、ジュリー・ハリスも超有名な女優さん。
「エデンの東」では、ジェームス・ディーンの恋人役でした。

32話「忘れられたスター」(原題 FORGOTTEN LADY)

往年の名女優グレースは、ブロードウェイでのミュージカル上演を企画、再起を図りますが、彼女の夫ドクター・ウィリスは彼女の計画に反対し、資金援助を拒否します。失望したグレースは夫殺害を決意。
邸宅内の映写室で映画を見ることでアリバイ工作をした彼女は、その間に夫を殺害し、ベランダ伝いに外へ出て映写室に戻りますが、そこで回していたフィルムが切れてスクリーンが真っ白になっているのを発見。しかし彼女は見事な手際でフィルムを継ぎ合わせます。

本作で流れる犯人グレースが昔主演したという映画「WALKING MY BABY」は、実際グレースを演じたジャネット・リーが主演した作品だったそうです。
ジャネット・リーといえばなんといってもヒッチコック監督の「サイコ」の悪女が有名ですね。
バスルームで惨殺されるという役ですが、ものすごくインパクトがありました。
本作では、現実に昔大スターであった彼女を犯人役として登場させることで、古き良き映画の時代に思いをはせることができ、また意外で悲しい「事実」がラストで判明することで、犯人に対するなんともいえないやるせなく切ない気持ちが呼び起こされます。

29話「歌声の消えた海」(原題 TROUBLED WATERS)

メキシコ行きの豪華客船シーパレス号で、殺人事件が起きる。
中古車ディーラーの男ダンジンガーは、一緒に乗船した愛人から自分たちの関係を暴露すると脅されて、彼女を銃殺したのです。
彼は自分に嫌疑が向かないよう、彼女に付きまとい行為をしていたバンドマンの男に罪をなすりつける工作をします。そして自分自身は彼女の殺害時間には医務室で休んでいたというアリバイを作りました。
そこへたまたま夫婦でこの船に乗船していたコロンボが居合わせたことで、一見完璧と思われたダンジンガーのアリバイが崩されていくのです。

犯人を演じたのはロバート・ボーン。
私たち世代には、スパイアクション「ナポレオンソロ」のソロ役でお馴染みの俳優さんです。
本作内でも、枕を消音器として巧みに使い、愛人を撃つシーンがありますが、その銃さばきはやはり「ただものじゃない」感じでした。
豪華客船という、非日常的な場所を舞台に、いつもと違い鑑識も仲間の警察官たちもいない孤立無援の状況下で、少しづつ真相に近づいていくコロンボの姿が見ものです。

15話「溶ける糸」(原題 A STITCH IN CRIME)

ドクター・ハイデマンは心臓移植手術の権威ですが、自分自身心臓病を患っており、ある日発作を起こして倒れます。
主治医はハイデマンとともに新技術の研究をしているドクター・メイフィールド。
メイフィールドはすぐにハイデマンの手術に取り掛かります。この時手術に立ち会った看護師のシャロンは、メイフィールドが研究成果を独り占めしようとしているのでは、と疑っていました。
手術は無事に済みますが、シャロンは自分が渡したのとは違う縫合用の糸が床に落ちていたのを見つけ、メイフィールドに詰め寄ります。
しかしその後彼女はメイフィールドに殺され、証拠の糸は持ち去られてしまいます。
そしてメイフィールドはシャロンが麻薬中毒患者に殺されたように偽装工作をするのですが、コロンボは彼に疑いの目を向け、捜査を始めるのでした。

レナード・ニモイ=スタートレックのミスター・スポックと言っても過言ではないでしょう。
それくらいあの尖った耳と、バルカン星人の挨拶というてのひらを外に向け、手指を2本づつくっつけるポーズは有名でした。
本作でも、「感情がほとんど表に出ない」スポックっぽいイメージがうまく生かされていて、彼のその人間離れした?冷たさは、珍しくいつもは温厚なコロンボを激怒させることになるのです。
ミステリとしてはプロットが秀逸で、キャスティングも良い、バランスのとれた一作と言えます。

ちなみに、バルカン星人の「挨拶」はこのポーズです。

13話「ロンドンの傘」(原題 DAGGER OF THE MIND)

本作はシリーズ初の海外ロケ編。
行き先はイギリス・ロンドンです。
コロンボ刑事は研修のためロンドンへ。そのロンドンのある劇場ではシェークスピアの「マクベス」初日を翌日に控えた、ニック&リリーの俳優夫妻がリハーサルに勤しんでいました。
彼らは既に盛りを過ぎた舞台俳優同士。この公演は妻のリリーがプロデューサーのサー・ロジャーを色仕掛けで口説き、なんとか実現させたものでした。
上演前日の夜、激昂したサー・ロジャーがやってきて公演は即刻中止だ!と叫びます。
理由は、リリーと自分の「関係の場」を、夫であるニック自身が手配していたことを知ったから。
なんとかサー・ロジャーを引きとめようとした二人ですが、リリーが投げたクリームの瓶が彼の後頭部にあたり、サー・ロジャーは死んでしまいます。

同じ英語圏でも、アメリカとイギリスとではこんなにも空気感が違うんだということがよくわかる作品です。
コロンボがロンドンの名所を巡るシーンは、ちょっとした観光ガイドにもなっています。
トリックとして重要なアイテムとなる「こうもり傘」は、言うまでもなくイギリス紳士の象徴。
犯人の妻役はオナー・ブラックマン。007シリーズでボンドガールを演じたことで有名な女優です。
夫役のリチャード・ベイスハートは、イタリア映画「道」で主役ジェルソミーナの心を癒す「キ印」役が最も有名です。

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