目次

  1. あらすじ
  2. 物語全体の”素朴さ”がウリ。
  3. キュンとくる、みるめとユリの恋模様
  4. 読みやすくするための作者の隠れた工夫
  5. まとめ

あらすじ

美術の専門学校に通う19歳の磯貝みるめは、講師のユリと恋に落ちる。でも彼女は39歳で、夫がいる…。
愛と言っては大げさだけど、恋以上のなにか。
磯貝みるめとユリの過ごした日々を綴った、恋愛&青春小説。

物語全体の”素朴さ”がウリ。

特に派手な事件が起こるわけでもない。登場人物も少ない。ほとんど主人公である磯貝みるめとユリしか登場しない。ユリにいたっては、年上の女性であるにも関わらず、化粧っ気もない。
実は、そのシンプルさ・素朴さこそが本作品のウリなのだ。
主人公の青年の純朴さが引き立ち、作中に頻繁に出てくる彼の心情を読み手は素直に読み進めることができる。それは、人というものは相手が素直だと往々にして自分も素直になれるからかもしれない。
また、素朴な青年が素朴な女性を好きになるというのも自然な流れだろう。だから(20歳差というのは現実で考えると結構な幅のように感じられるが)実際に読んでみると意外と抵抗なく物語の世界に入っていけるのだ。

キュンとくる、みるめとユリの恋模様

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ユリ(永作博美)に抱きつく、みるめ(松山ケンイチ)

ユリにとってみるめは、一般的に言うと不倫相手になる。
しかし「不倫」という言葉から程遠いほのぼのとした雰囲気が、本作品にはある。

たとえば、みるめがユリのアトリエに行ったシーン。

”ベッドの上に二人で座って、彼女の肩をちょんと押すと、ヤラレタとでも言うように、ユリはふざけて倒れこんだ。”

ユリの茶目っ気が伺える場面である。ぶりっこでもあざとくもない、ナチュラルなかわいさがある。
同時に、みるめのユリへのいとしさも感じられる場面である。

また、みるめはユリへの気持ちを次のように感じている。

”これが恋なのかも、もはやわからなかった。ただ身近にいる人に優しさを注ぎたい気分なのかもしれない。
 (中略)
 べつに愛というのではなく、ただの執着だとも、思う。
 燃えている火はいつかは消えるものだ。それゆえに、燃やさずに静かに仲良くはいられないものか、と願う。
 しかし、心臓が燃えていないなら、生きていても仕方ない。
 恋だとも、愛だとも、名前の付かない、ユリへの愛しさがオレを駆り立てた。訳もわからず情熱的だった。”

わからないことを誤魔化さずに認める素直さ。
しかしこれだけはわかっているのだ、どうしようもないのだという気持ちがとてもよく伝わってくる描写だ。
みるめにとってユリが、「なぜかはわからないけど非常に魅力を感じる女性」であることは間違いない。そんなことを思わせてくれる。

読みやすくするための作者の隠れた工夫

本作は短いセリフが多用され、辞書を引かなければいけないような難しい言葉もない。
これは、
「誰にでもわかりやすい言葉で、誰にも書けない小説を書く」
という、著者の山崎ナオコーラのモットーに基づいている。
難解な表現に頭を抱えることがない分、読者は物語の展開や登場人物の気持ちの移り変わりをぐっと追いやすくなる。

まとめ

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タイトルに「セックス」という言葉が使われていたり、主役の二人が不倫関係であることから「官能小説では?」「過激なのはちょっと…」と心配される方もいらっしゃったかもしれませんが、けっして安っぽいエロ小説(俗な表現でごめんなさい)ではありません。むしろ純愛に近いかたちの恋が描かれ、きゅんとするシーンもたくさんあります!
主役の磯貝みるめくんとユリを、それぞれ演じられた松山ケンイチさんと永作博美さんにあてて想像しながら読むとさらに読みやすくなるので、おすすめです。