「親なるもの断崖」曽根富美子の世界

電子書籍のバナー広告で注目され、一躍話題を呼んだマンガ「親なるもの断崖」。1991年に出版され長らく絶版になっていましたが、電子版が好評だったため、先ごろ新装版として出版されました。著者は曽根富美子。日本漫画家協会賞優秀賞を受賞するほどの実力を持ちながらも、生活に困りスーパーでレジのパートをしていました。

高校生の時「りぼん」でデビュー

高校3年生のときに『りぼん』の第8回「新人漫画賞」で
佳作二席に入選して、その年末のお正月増刊号でデビューしました。

経理の仕事をしながら「りぼん」に持ち込みをしていたんですけど
「あなたの作品は絵も話も暗い」と言われて、なかなか上手くは
いきませんでした。

漫画家の夢がどうしても諦められず、経理の仕事を1年で辞めて、
漫画家さんのアシスタントを始めました。20歳のときにサンリオが
発行していた『リリカ』という漫画誌で再デビューして、
集英社の『ぶ~け』や秋田書店の『ひとみ』でも掲載されました。

出典: ebook.itmedia.co.jp

少女マンガからレディースコミック作家へ

作品発表の場がレディースコミックに移ったことで
自由度が広がり、好きなテーマで描く事ができるように
なりました。DVや障碍者、児童虐待など、主に
女性を取り巻く社会問題をテーマにした作品が
多いです。

性虐待を受け、粉々に壊れた心と身体でたどり着いたのは
児童養護施設・光学園。
奪われた自尊心を取り戻そうと必死に戦う子どもたちの真のドラマ。
社会派漫画の名手が綿密な取材をもとに描き上げた意欲作!

「親なるもの断崖」

1988年から「月刊ボニータイプ」で連載された「親なるもの断崖」で
1992年に日本漫画家協会賞優秀賞を受賞しました。

昭和の初め、北の大地には、
貧困と時代に翻弄される、
哀しい少女たちがいた!!

昭和2年4月、北の海を渡り、
4人の少女が北海道室蘭の幕西遊郭に売られてきた。
松恵16歳、その妹梅11歳、武子13歳。道子11歳。
松恵は着いたその日に客をとらされ、首を吊った。
奈落の底で、少女たちの血を吐くような人生が始まった!!

当時、北海道の室蘭に幕西遊郭という政府公認の遊郭がありました。
この時代、北海道では大規模な鉄道工事が行われており、
男たちは「タコ部屋」と呼ばれる小屋に押し込められ、
酷い強制労働を科せられていました。その男たちを慰労する
ために幕西遊郭があったといわれています。

4人の少女のうち、容姿の醜い道子は遊女にすらなれず
遊郭で下働きをすることになります。

遊郭に入った女性が生きて抜くには2つしかありません。
芸妓か、遊女か。武子・梅・道子…残された3人の三者三様の道と
その先にある結末。この第1部は、4人が遊郭入りしてから
約7年後までのことが書かれています。

出典: arasuji-manga.com

1日平均5人以上の客を取らされ、時には1日12人もの
客を取らされることもあったそうです。生理中でも
店が許す休みは二日程度。それ以上休みたいときは
なじみの客に来てもらうか、「身上がり」といって
自分で自分の花代を払うしかありませんでした。
そうまでしても着物代や化粧品代などは全て自分の
借金なので、いつまでも借金地獄から抜け出せません。
逃亡を企てたら折檻され、時には死が待っていました。

遊郭から出てしまった梅も、拷問をうけます。

女郎のほとんどが、淋病や梅毒などの性感染症に罹りました。
父親が分からぬ子供を妊娠すると、強制的に堕胎させられ
その日のうちに客を取らされることもありました。

性病に罹り視力も失った道子は、ついに着物もボロボロに
なり、ゴザを体に巻いて客の袖を引くことになります。

結婚し、遊郭を抜け出すことに成功した梅ですが、
母となってからも世間からの冷たい差別をうけることに
なります。

白無垢姿で遊郭を抜け出したお梅は、母になった。
赤い雪が燃え狂う室蘭の断崖で、
祝福されることのない母と子は、
つらい修羅の途を歩まねばならなかった。
生きろ!生きてゆけ!!
次の時代を生み出すのは女性だ!!

レジより愛をこめて

著者は「北乃咲喜」名義で油絵も描いています。
ネットで注文を受けていましたが、それだけでは生活が
心もとなく、スーパーでレジのパートをしていたことも
ありました。「レジより愛をこめて」は、その時の
体験を元にかかれたコミックエッセイです。

貯金ナシ、頼れる旦那ナシ、最近は仕事の依頼もナシ。
でもって、もう若くもナシ…。崖っぷち漫画家・レジノさんが、
スーパーのパートで、毎日約300人分のレジを打つ中で
生まれた数々のドラマたち。 ドン底のドン底まで落ち込んでも、
それでも働くのだ、「明日」も。 「働くこと」って、
自分にとって、一体なんだろう? お金を稼ぐ、
それだけじゃない「何か」が、漫画を通して見えてくる。

とんとん
とんとん
@tonton

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