ゾンビランド(Zombieland)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

新型ウィルスの爆発的流行により、大半の人間が感染し次々とゾンビ化した世界で、辛くも生き延びた臆病な大学生、短気なワイルドガイ、詐欺を働く姉妹の4人が冒険を繰り広げる、09年公開のコミカルでパンチの利いた痛快エンタテインメント・サバイバル・ホラー。大学生がゾンビの世界で生き延びるための32のルールを作り、それを実践して生き延びるというアイデアが面白い快作。

『ゾンビランド』の概要

2017年7月に亡くなったジョージ・A・ロメロ監督が撮ったゾンビ映画「ナイト・オブ・リビング・デッド」(68)以降、ゾンビが登場するホラー作品が多数作られたが、そんなゾンビ映画史上、全米ナンバー・ワンヒットを放ったのが「ゾンビランド」。
2009年10月にアメリカで公開され興行成績初登場1位を記録し、4週連続トップ10入りを放ち、世界各国でも軒並み大ヒットを飛ばした。
出演は、臆病で引きこもりの大学生に、「ウェス・クレイブン’s カースド」「グランド・イリュージョン」のジェシー・アイゼンバーグ、ワイルドガイに「ラリー・フリント」「ノーカントリー」のウディ・ハレルソン、詐欺師姉妹の姉に、「アメイジング・スパーダーマン」「教授のおかしな妄想殺人」などに出演し、「ラ・ラ・ランド」でアカデミー主演女優賞を受賞したエマ・ストーン、妹にM・ナイト・シャマラン監督「サイン」で映画デビューし「リトル・ミス・サンシャイン」の演技で注目されたアビゲイル・ブレスリン。そして、「ゴーストバスターズ」で一躍日本でも知られるようになったビル・マーレイが本人役で登場。
監督は、本作が劇場作品第1作目となるルーベン・フライシャー。彼は、本作に携わるまでゾンビ映画は「28日後…」しか見たことがなかったそうだが、とことんリサーチして、あらゆるゾンビ映画に親しみ、それらの作品に失礼のないないようなものを作ろうと心掛けたらしい。
また、映画では人間がゾンビ化した理由を一切説明しないと脚本の段階で決めていたそうで、監督は、これはゾンビ化の真っただ中にいる人たちの話ではなく、ゾンビだらけの世界で、生き抜くために戦っている一握りの人間たちの物語に焦点を当てているからだと語っている。

『ゾンビランド』のあらすじ・ストーリー

ある日突然、謎の新型ウィルスに感染した者が次々とゾンビ化し、生きた人間を襲ってその肉を喰らい始めた。そのウィルスは爆発感染を引き起こし、猛烈な勢いで全世界へと広まった。数か月後には地球上は人食いゾンビで溢れかえり、人類はほぼ絶滅状態となった。
今や“ゾンビランド合衆国”と化したアメリカで、テキサス州ガーランドに住む大学生コロンバスは、数少ない生き残りの1人だった。
臆病で胃腸が弱い彼は、“ゾンビの世界で生き残るための32のルール”を作り、それを慎重に実践して何とか生き延びてこれた。

1人きりの日々が続く中、人恋しくなったコロンバスは、まだ生きているかも知れない両親に会おうとオハイオ州コロンバスの実家へと向かうことにした。
旅の途中、ハイウェイをとぼとぼ歩いていた時、一台の車が走ってきて彼の前に止まった。
コロンバスは用心深く銃を手にし、車に銃口を向けた。車から出てきたのは、いかつい風貌の中年男で、彼も手に銃を持ちコロンバスに銃口を向けた。
しばしにらみ合ったが、互いに敵ではないと判り、コロンバスは男の車に同乗させてもらうこととなった。
タラハシーと名乗るその中年男がゾンビを蹴散らすのが得意に見えたため、コロンバスは彼と行動を共にするのが安全だと考えた。
だが、タラハシーには一つの弱点があった。それはスナック菓子トゥインキーに目がなく、それを見つけ出すのに命をかけていることだった。

タラハシーが、好物のトゥインキーを求めて大型スーパーの前に車を止めた。
廃墟と化したスーパーに入ったタラハシーとコロンバスは、まずはバンジョーをつま弾き、それに反応してゾンビが出てこないか確かめた。
案の定、ゾンビたちが次々と現れ二人に襲いかかってきたが、タラハシーは手慣れた手つきで次々と倒していった。
これでゆっくりトゥインキーを探せると思った時、二人の前にキュートな女性が現れた。
ウィチタと名乗った女性は、妹のリトルロックがゾンビに噛まれたので二人が持っていた銃で彼女を殺してほしいと頼んできた。
タラハシーがリトルロックに向けて銃を構え引き金を引こうとした時、ウィチタが「待って、姉の私がやるわ」と言い出し、彼から銃を受け取った。
だが、銃の矛先はリトルロックではなくタラハシー達に向けられた。
姉妹はプロの詐欺師で、タラハシー達をダマして車と銃を盗むのが目的だったのだ。

車も銃も姉妹に奪われたコロンバスとタラハシーは町を歩き回り、新しい車を見つけた。車内には武器もいっぱい積まれていた。
これでまずは一安心と旅を続けるなか、タラハシーは飼っていたペットの犬がゾンビにやられたことをコロンバスにしんみりと語った。
途中、道路に奪われたタラハシーの車が止まっていた。
コロンバスを残し、奪われた車を調べに向かったタラハシーだが何も怪しいところがなかった。
だが、戻ってくるとリトルロックが後ろの座席から姿を現し、銃を構えて二人に向けた。
そして近くに隠れていたウィチタも乗り込んできた。
タラハシー達は、またしても置き去りにされるのかと思いきや、車から降ろされることはなかった。
タラハシー達が悪人ではないようだし、男がいた方が何かと安心できるとウィチタが思ったせいだろう。
結局、4人の道連れ旅となった。

いつしか4人は次第に打ち解けていき、行動を共にするようになった。
ウィチタとリトルロックは、ゾンビがいないと噂されているロサンゼルス郊外の遊園地パシフィックランドを目指していた。
コロンバスは、ウィチタからオハイオ州が壊滅状態でゴーストタウンとなっているを聞き、実家に戻るのをあきらめ3人と旅をすることにした。それにウィチタに淡い恋心を抱き始め、彼女から離れたくないせいもあった。
夜、ドライブインに着いた時、タラハシー達はアメリカ原住民の民芸品ショップに入り、はしゃぎながら店内の商品を次々とぶっ壊した。
ゾンビ相手の日々の中、少しでも爽快な気分を楽しみたかったのである。

やがてロサンゼルスに辿り着き、まずはハリウッドスターの家をねぐらにしようと俳優のビル・マーレイの屋敷に忍び込んだ。
タラハシーとウィチタがゴージャスな室内で和んでいると、突然ゾンビとなったビル・マーレイが二人の前に現れた。
驚いたウィチタがマーレイの尻をゴルフクラブで一撃すると、強烈な痛みにマーレイは悲鳴を上げた。
実は、彼はゾンビメイクをし、ゾンビに紛れ込もうとしていただけで、まだ人間だった。
ゾンビはゾンビ同士で共食いはしないからと、ゾンビメイクをして生き延びていたのだ。
マーレイの大ファンだったタラハシーは大喜びで、ウィチタとマーレイと一緒にハッパを吸ったり、マーレイ主演のヒット映画「ゴーストバスターズ」のワンシーンをマネしたり、思いっきり楽しんだ。
そして、映写室で、マーレイのことを良く知らないリトルロックのためにコロンバスが「ゴーストバスターズ」を見せているところに、二人をちょっと驚かしてイタズラしてやろうとマーレイがゾンビ歩きで二人に近寄ってきた。
ところが本物のゾンビと思ったコロンバスが、そばに置いていたショットガンを咄嗟に手に取り撃ち殺してしまった。

マーレイが死んだことにちょっぴり悲しんだ後、4人はボードゲームを楽しみ、友好関係が深まっていった。
タラハシーが広間でガラスコップや皿を狙い撃ちして遊んでいると、リトルロックがやって来て、彼のそばで銃を構えて同じように撃った。
だが、標的に全く当たらず、タラハシーがアドバイスすると、今度は見事に命中し、にんまりするリトルロック。
そのころ、コロンバスはウィチタと酒を酌み交わし、会話が弾み、抱きあった。でもキスする寸前でタラハシーがお邪魔虫として現れキスすることはできなかった。

翌朝、タラハシーとコロンバスが目を覚ますと、ウィチタとリトルロックの姿がなかった。
他人を誰も信用するなを座右の銘として生きてきた彼女たちは、二人だけでパシフィックランドへ向かったのだ。
パシフィックランドには噂どおりゾンビの姿はなかった。電源を入れ、二人はいろいろな乗り物に乗って思う存分楽しんだ。
だが、ランド一帯のきらびやかな照明を遠くから目にした大勢のゾンビ達が、パシフィックランド目がけて押し寄せてきた。
ゾンビに気付いた二人は逃げ回り、フリーフォールに飛び乗った。ライドは急上昇したが、しばらくすると下がり始めた。
このままじゃゾンビの餌食になってしまうと、リトルキッドが地上にある遊具作動オン・オフのスイッチ・ボタンを狙い発砲した。
なかなか当たらなかったが、タラハシーのアドバイスを思い出し、なんとかスイッチ・ボタンに弾を命中させ、高所に留まることが出来た。
だが、ゾンビ達は高所の二人を目指して、フリーフォールをよじ登ってきた。

その頃、コロンバスはウィチタの後を追いかけてパシフィックランドに行くことを決心した。
タラハシーは、一人でメキシコに行こうとしたが、コロンバス一人じゃ危なっかしいと思い、結局一緒にパシフィックランドに向かった。
タラハシー達がやって来たのを目にしたウィチタは安堵するが、ゾンビ達は彼女たちのすぐそばまで迫って来ていた。
タラハシーは両手に銃を構え、ゾンビ達を片っ端から殺しまくった。
コロンバスは、フリーフォールまで力いっぱい走り、ブレーキ解除し、ライドを下すことが出来た。
ライドから降りるとウィチタはコロンバスに抱きついた。そして、二人は見つめ合い、キスを交わした。
コロンバスにとって、やっと愛する女性をゲットできた瞬間だった。
ゾンビ達を皆殺しにしたタラハシーは、ランドにあったスナック・ショップに向かった。
だが、お目当てのトゥインキーは見当たらず、怒りまくって周囲の菓子を蹴り散らしまくった。
タラハシーがショップから出ると、ウィチタ達が車に乗って待っていた。
窓からリトルロックが体を出し、手に持っていたものをタラハシーに向かって投げた。
それは、タラハシーが必死で探し求めていたトゥインキーだった。
やっとトゥインキーを口にでき、幸せいっぱいの笑顔で頬張るタラハシー。
そして、やっと信頼で結ばれた4人は、“家族”としてパシフィックランドを後にするのであった。

『ゾンビランド』で、コロンバスが作った「ゾンビの世界で生き残るための32のルール」

ルール31、後部座席を確認しろ

「ゾンビの世界で生き残るための32のルール」のうち、映画に登場するのは10個ほどで、その都度ルール名が画面に英字で現れる。
●印は映画に登場したルール。

ルール1:有酸素運動(●)
映画に登場するゾンビはノソノソ歩きではなく足が速いので、走って逃げなければならず長時間運動できる体を作らなきゃいけない。
ルール2:二度撃ちして止めを刺せ(●)
銃を撃っても一度では死なないこともあるので、必ず二度撃ちして完全に止めを刺すことが大事。車による二度轢きもパシフィックランドで登場する。
ルール3:トイレに用心(●)
トイレの便器で用を足すときはつい無防備になり襲われやすいので、注意を怠らないこと。
ルール4:シートベルトをしろ(●)
車中でゾンビに襲われたとき、壁や他の物に車をぶつけて、ゾンビをウインドウにぶち破って投げ出さなきゃいけない場合があり、運転者まで投げ出されないようシートベルト着用は大事。
ルール5:ゾンビを発見したらまず逃げろ
ルール6:フライパンでぶっ叩け
ルール7:旅行は身軽であれ(●)
あんまり荷物が多いと、おたおたしてゾンビから逃げ遅れてしまう可能性がある。
ルール8:クソったれな相棒を見つけろ
ルール9:家族・友人でも容赦しない
ルール10:素早く振り向け
ルール11:静かに行動すべし
ルール12:バウンティ・ペーパータオルは必需品
ルール13:異性の誘惑には注意
ルール14:シヨッピングモールは補給基地
ルール15:ボウリングの球をぶん投げろ
ルール16:人の集まる場所は避けろ
ルール17:英雄になるな(●)
カッコつけて英雄になるより、身の安全を優先すべきと決めていたが、最後に危険を顧みずウィチタを救おうとしたことから、「英雄になれ」と後で変更する。
ルール18:準備体操を怠るな(●)
ハイウェイでお菓子を運ぶトラックを見つけたとき、中にゾンビがいるかも知れないので、直ぐに反応できるよう軽く準備運動するコロンバス。タラハシーにコバカにされてしまうが全く気にしない。
ルール19:葬儀・埋葬の必要はない
ルール20:人を見たらゾンビと思え
ルール21:ストリップクラブは避けろ
ルール22:逃げ道を確保しろ(●)
大型スーパーに入ったとき、コロンバスはゾンビに遭遇して危ない状況になってもすぐに逃げられそうなドアのチェックに怠りない。
ルール23:金品よりも食料確保
ルール24:生き残るためには犯罪も
ルール25:火の用心
ルール26:肌の露出は最小限に
ルール27:就寝前には安全確認
ルール28:食事と風呂は短時間で
ルール29:二人組で行動しろ
ルール30:予備の武器を持て
ルール31:後部座席を確認しろ(●)
ゾンビ映画では、後部座席からゾンビに襲われるシーンがよく登場するので、まずは注意を怠らないこと。コロンバスは車を乗り換えるたびに、いちいち後部座席をチェックしている。
ルール32:小さいことを楽しめ(●)
タラハシーの言葉「トゥインキーがあれば十分だ、小さなことを楽しまなきゃ」から決まったルール。

『ゾンビランド』の登場人物・キャラクター

コロンバス(演:ジェシー・アイゼンバーグ)

臆病者で胃腸が弱い、引きこもりの大学生。自分で“ゾンビの世界で生き残るための32のルール”を作り、それを実践して何とか生き延びている。スーパーで出会った詐欺師姉妹の姉ウィチタに一目ぼれし、彼女たちに何度も騙されながらも、恋い慕い続ける純情青年。なかなか想いが遂げられなかったが、遊園地で、自分の作ったルール「英雄になるな」を破って彼女の危機を救ったことから、やっとキスにこぎつけ幸せ気分に浸る。

タラハシー(演:ウディ・ハレルソン)

タフだが気が短い一匹狼のワイルドガイ。とても可愛がっていたペットの子犬がゾンビにやられたことで、彼らに深い憎しみを抱いているとコロンバスにしんみりと語るが、実はゾンビの犠牲になったのは子犬ではなく、彼の幼い愛息だった。マーレイ邸での雑談の中で彼がふと漏らした言葉から、コロンバスはそれに気づき、タラハシーの愛する者を失った深い悲しみを知り、深く同情する。
また、タラハシーはアメリカでポピュラーなスナック菓子・トゥインキーが大好物で、訪れる先々で必死にそれを探し求めるが、なかなか見つからずキレてしまうこともしばしばで、コロンバスに呆れられる。

ウィチタ(演:エマ・ストーン)

キュートなルックスの詐欺師姉妹の気丈な姉。他人を誰も信用するなをモットーに妹と二人で世渡りしてきただけに、コロンバスやタラハシーと一緒に旅をしても、なかなか気を許さない用心深さ。とても妹思いで、遊園地パシフィックランドに向かったのも、そこがゾンビがいない場所というだけでなく、楽しみのない日々の中で、妹を楽しく遊ばせてあげようといういう優しい気づかいからだった。

リトルロック(演:アビゲイル・ブレスリン)

ウィチタの妹。姉を信頼し、いつも行動を共にしている元気はつらつとした女の子。タラハシー達との旅のなかで友好関係が深まり、次第に彼らを騙すことに後ろめたさを感じるようになる。パシフィックランドでゾンビの群れに襲われたとき、タラハシーからアドバイスを受けた銃の撃ち方が役に立ったお礼に、どこから見つけたのかトゥインキーを彼に投げ渡してニッコリするところが微笑ましい。

ビル・マーレイ(演:ビル・マーレイ)

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