傷だらけの天使(傷天)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

「傷だらけの天使」は、1974年10月から1975年3月にかけて、1話完結の全26話が日本テレビ系で放送されたTVドラマ。探偵事務所で働く木暮修と彼を慕う乾亨。彼らは調査員として暴力団抗争から捨て子の親探しまで様々な案件に関っていく、そんな中での二人の怒りと挫折を多彩なストーリーと個性的な演技によって描く。深作欣二を始めとする個性的な映画監督が演出を担当。現在でも人気の高い伝説のドラマである。

綾部情報社の女秘書。
故郷は長崎で、そこにフィアンセもいるらしい。
綾部貴子を目標にしていて、日々教養を磨いている。英語が堪能。
抜群のプロポーションで常に男たちの視線を浴び、辰巳からもよくセクハラを受けるが、本人はいたってクール。
当初は修たちのことを見下していたが、次第に理解を示すようになる。最終回では綾部から解雇され田舎へ帰る。

『傷だらけの天使』の名シーン・名場面・見どころ

有名になった「オープニングシーン」

テーマ曲を背景にした、あまりにも有名なオープニングシーン。どれだけのファンがこのシーンを真似しただろうか。
皮ジャンを着て、ヘッドフォンを付け、水中眼鏡を付けた修が眠りから目を覚まし、冷蔵庫の扉を開き、新聞紙をナプキン代わりに首から下げ、トマト、コンビーフ、リッツ、魚肉ソーセージに次々とかぶりつき、口で栓を開けた牛乳で喉に流し込む。
主演の萩原健一によると、制作サイドは「タイトルバック不要でいいんじゃないか」という話だったが、スポンサーサイドから「ないとダメ」と言われたので、監督の恩地日出夫とカメラの木村大作で急遽撮影したものだったそうだ。実は、初回の放映が近づいて、ようやく恩地監督で撮影することになったものの、オープニングの内容が決まっておらず時間もなかったので、とりあえず修が住むペントハウスで撮影することだけが決まり、あとはほぼアドリブのワンカット撮影となった。食事をするのは萩原のアイデアだったそうだが、撮影中はずっと巻きの合図が入って、急いで食べた結果こういうシーンになったらしい。

深作演出に「仁義なき戦い」の山守親分が登場

第1話「宝石泥棒に子守唄を」
今回の仕事は宝石強盗に入り、警察に捕まることだった。守備よく強盗に入り宝石を盗む修であったが、逃げる途中に歩行中の母子と衝突して子供に怪我をさせてしまう。ラグビーボールに隠していた宝石はボールごと亨に渡し、修は警察の御用となる、というストーリー。
この第1話の監督は深作欣二。修が古美術屋に強盗用のモデルガンを借りに来るシーンで、その店の店主役の金子信雄が深作監督の東映映画「仁義なき戦い」の山守親分のような広島弁を喋るキャラクターで登場する。さらに修がもごもごと「このオジさんむかし広島でヤクザの親分だったから」などと言うシーンもある。金子は「仁義なき戦いシリーズ」出演が縁でのカメオ出演と思われる。
因みに深作監督はこの「傷だらけの天使」で初めて木村大作カメラマンと組むのだが、その木村は手持ちのカメラワークが主体の「仁義なき戦い」に負けじと、オートバイに乗ってキャメラを担いで撮影したというエピソードもある。

修の別れた妻の姉役に桃井かおり

第14話「母のない子に浜千鳥を」
修は、正月を息子の健太と過ごすため、健太を預けてある妻である菊絵の故郷に行くと、健太は菊絵の姉・照代に引き取られていた。照代は、自分を捨てた男を脅すダシに健太を使おうとしていた、というストーリー。
照代役には今や大女優で映画監督でもある桃井かおり。当時は、萩原健一と東宝映画「青春の蹉跌」で共演したあとで、多少の人気があったぐらいの頃だった。病気でしばらく休んでいて復帰第一作だったそうである。桃井と萩原はのちにTVドラマ「前略おふくろ様」でレギュラーとして共演し、桃井の人気は広く浸透していく。
この第14話は、綾部・辰巳・浅川のレギュラー組が出てこない。放映も半分が過ぎたところで低かった視聴率を受け、修の息子である健太が初めて顔を出すことで、アクションの無い演技中心の展開となっており、軌道修正を図った第1弾という感じが見て取られる。

「祭りのあと」に虚しさが残る衝撃の最終回

第26話(最終回)「祭りのあとにさすらいの日々を」
海底トンネル工事の利権に絡み、綾部貴子に公文書偽造背任横領の逮捕状が出たため、綾部は高飛び、辰巳は身代わりに逮捕され、京子は解雇で里帰り。
おまけに修のペントハウスも立ち退きを命じられ、修も出ていくことになるのだが、亨は風邪をこじらせ動けない。修が薬を買って戻ると亨は死んでいた。亨の周りには一面ヌード写真がばらまかれている。
修は泣きながら亨を風呂に入れ「あったかいだろう?今、女抱かせてやるからな」と、ヌード写真を亨の体に貼り付ける。服を着せ、ドラム缶に納めリヤカーに乗せて夢の島へ向かう。夢の島でドラム缶を下ろし、地面に転がすとドラム缶と亨がクルクルと回っていく。そのドラム缶を見ながらリヤカーに戻った修は、もう一度ドラム缶に振り向き、振り切るように走り去るのだった。
この最終回の冒頭は大きな地震が起こるシーンから始まる。思えば最終回のすべての悪夢を予感するようなシーンである。ラストシーンはあまりに突然で悲しい終わり方だが、修が死んだ亨を思いやる姿に深い感動を呼ぶ。このラストシーンに流れる、ザ・ゴールデン・カップスの元リーダー・デイヴ平尾が歌う「一人」という歌も印象的である。

「一人」歌・ デイブ平尾 /作詞・岸部修三 /作曲・井上堯之

『傷だらけの天使』の関連エピソード・逸話

亨役は水谷豊ではなかった

萩原健一によると、当初自分の相棒である亨役にキャスティングが予定されていたのは火野正平であった。だが火野がTV時代劇「斬り抜ける」などのレギュラー番組が決まったため、スケジュールが取れずに降板、年下の水谷豊に変更になったという旨のことを新聞の連載記事に明かしている。

修の住んでいたビルは今もあるらしい

現在の「代々木会館」屋上風景

修が綾部探偵事務所から斡旋されて住んでいた屋上にあるペントハウス。
実際にロケに使用されたのは、代々木駅にある代々木会館ビルで、40年以上経った今でも当時のまま残っている。
今では時代の流れに取り残されたかのように近代的なビルの間に建っているが、かなり老朽化しているため取り壊しの話も出ているらしい。
今は立ち入り禁止となっていて入ることは出来ないが、たびたび熱狂的ファンが無断で進入を試みているようで、住居侵入罪で逮捕されるケースもあるそう。

綾部貴子の出演シーンでかかる印象深い音楽とは

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