宇宙刑事シャイダー（特撮テレビ）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

不思議獣ペトペトと珍獣たちは、動物にペトペトビールスを振りまき凶暴化させた。サチオ少年の飼い犬・ゴローもビールスに感染し、大人しい性格が一変してしまう。ペットとの交流を絶たれた子供たちの心がすさんでいく。捜査を開始した沢村大とアニーの前に、怪しいチンドン屋に化けたペトペトが現れる。フーマと勇敢に戦うアニーと大は宇宙刑事シャイダーに「焼結」する。シャイダーは子供の心を切り裂いたぺトぺトを打ち倒し、平穏を取り戻すのであった。

冒頭よりいきなり登場する、ぺトぺトの化けたトランペット吹きとチンドン屋、そして不思議ソングのメロディーが強烈なインパクトを放っており、本作の方向性をいかんなく発揮している。ペットを凶暴化させることで、子供の心を荒ませるという今回の作戦。子供番組にありがちな一見じれったく感じる作戦だが、地球を無傷で手に入れるための一環としての作戦であり、フーマの恐ろしさ、残虐さを見事に表現することに成功している。また、アニーの目を見張るようなアクションシーンにも注目の一編だ。

第14話「恋のミュータント」

女子高生・夏川まり子は、自身を「霧子」と呼ぶ怪しい男に追われ、大に助けを求める。男の名はジミー北原。20年前、NASAの月面基地建設に向かう途中に事故に遭ったが、何故か出発時と変わらぬ姿で宇宙から奇跡の生還を遂げた宇宙工学者である。北原が呼ぶ「霧子」とは、若くして病気でこの世を去ったまり子の叔母の名であったのだ。多量の宇宙線を浴びたことで、自身の体を原子分解できるミュータントとなっていた北原の時間は、20年前の時点で止まったままとなっていた。その為彼はまり子を霧子と思い、近づいたのだ。北原の持つミュータントとしての能力を悪用すべく、フーマが狙う。そんなフーマを見事打ち倒し、北原を守ったシャイダー。全ての事情を理解したまり子は北原を受け入れようとするが、北原もまた、失われた歳月の流れを受け入れ、宙に昇華するように四散し姿を消すのであった。

「不思議」をテーマとしたシャイダーの中にあって、とりわけ幻想味、シリアス成分に満ちたエピソード。真実を聞かされてなお、かつての霧子の幻影を追い続けるジミーが、近づいてくるまり子を拒絶しそのまま空へ姿を消してしまうという苦いラストが、比較的快活な作風の本作の中において、独特の味を醸し出している。

第38話「魔少女シンデレラ」

世間で人気の美少女女優・早見聖。彼女が主演の新作映画「シンデレラ物語」は、撮影中、突如監督の意向で「魔少女シンデレラ」とタイトルを改められる。タイトルが変更されてから、聖の様子が徐々に変わっていき、ファンにもぞんざいな扱いをする心無い少女へと変わっていってしまう。全ては不思議獣ムビムビの化けたカメラによって心の潤いを吸い取り、やがては映画を観た者も石の心に変えるというフーマのシナリオだ。映画の撮影の中、魔法使いの力で舞踏会に出た少女・マリアの心の美しさに嫉妬する聖こと魔少女シンデレラ。マリアが落としたガラスの靴を奪って自分が王子の嫁になるのだという魔少女シンデレラは、もはや撮影と現実の区別がつかず、マリアを崖から落として殺そうとする。すんでのところで聖を救出したシャイダーは、ムビムビを打ち倒す。後日、大の前に新作映画のオーディションを受けに行く、明るい笑顔の聖が姿を見せるのであった。

同年の映画「Wの悲劇」を取り終えたばかりの澤井信一郎監督が贈る、映画界を題材とした一編。映画を通し、「人の心を荒ませる」というフーマの侵略方針がいかんなく発揮され、一人の女優の精神が徐々に破壊されていく様を妖しげに描く。「映画」という題材と本作の「不思議」が上手くかみ合ったエピソードである。

第49話（特別篇）「3人の宇宙刑事 ギャバン シャリバン シャイダー大集合！！」

フーマが滅び、全銀河に平和が訪れた。かつて地球を守り戦ったギャバン、シャリバン、シャイダーは地球で会う約束をする。3人はそれぞれ、青春を燃やして戦った日々を回想する。再会を果たした3人の宇宙刑事。ギャバンは近々バード星でミミーと結婚式を挙げるという。シャリバンは、かつての相棒・リリィがバード星で教官をしている事を語る。太陽系地区担当刑事となったシャイダーからは、エジプトに留学したアニーの近況が話される。思い思いの暮らしが出来る平和を噛みしめる3人の元に、天からの声が届く。「地球の子供たちは、3人のコンバットスーツ姿が揃った所を、まだ一度も見ていない。一度コンバットスーツ姿を見せてあげたらどうだ？」と。顔を見合わせた3人は同意し、力強くポーズを決める。「蒸着！」「赤射！」「焼結！」並び立つ3人の宇宙刑事の雄姿。無敵の宇宙刑事にとって、平和こそ栄光なのである。楽しく街中を散策する3人の前に、かつてシャリバンが戦ったマドーのガイラー将軍によく似た、アクセサリー売りの男が現れる。ガイラーの生存を疑う3人。しかし男はただの他人の空似であった。人違いと怒る男から、慌てて逃げ出す3人であった。

シャイダーの最終回後に製作された特別篇にして、宇宙刑事シリーズ3部作の総集編といえる内容。回想という形で各作品をテンポよく振り返っており、シリーズを追いかけてきたファンにはたまらない作りだ。そして何と言っても最大の見どころは、本編ではかなわなかった3人の宇宙刑事の揃い踏みである。「チェイス！ギャバン」のインストに合わせて次々と変身する3人の姿は、BGMと相まって最高にカッコいい。

『宇宙刑事シャイダー』の裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話

上原正三と円谷プロの不思議な縁

宇宙刑事シャイダー＝沢村大役の円谷浩氏は、元円谷プロ社長・円谷一氏の息子である。円谷氏は、本作メインライターの上原正三氏が強く推薦したこともあって選ばれたといういきさつがある。円谷プロで脚本家デビューを果たした上原にとって、円谷一は恩人でもあり、息子の浩を主演へと推薦することで円谷一の恩に報いたかったのが、最大の推薦理由でもあったという。特撮監督を務めていた矢島信男は、松竹の社員時代における円谷英二や、「ミラーマン」などにおける円谷一、そして本作における円谷浩との出会いを指して、「親子三代に渡る不思議な縁ですね」と当時の感想を述べている。

輝け！2代目シャイダー・烏丸舟（からすましゅう）

2012年に公開された映画「宇宙刑事ギャバン THE MOVIE」にて、2代目宇宙刑事シャイダー・烏丸舟（からすましゅう）が登場している。現在活躍中の2代目ギャバン、シャリバン、シャイダーの中で最年長である一方、捜査中にナンパするなど軽い性格だが、ここぞというときは頼りになる力強い男である。以降、2013年の映画「仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z」、2014年発売のOV「宇宙刑事NEXT GENERATION」にも出演しており、今後のますますの活躍が期待される。