特救指令ソルブレイン(特撮テレビ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

「犯罪が高度化した時代…人の命と心を救うために、自らの青春をかけて立ち上がった若者たちがいた!それが、特装救急警察である!!」(OPナレーションより)
特救指令ソルブレインとは、1991年に放映された特撮ヒーロー番組である。メタルヒーローシリーズ第10作目にして、前作・特警ウインスペクターより始まったレスキューポリスシリーズの2作目でもある。

笹本勝彦/偽ソルブレイバー(演:春田純一)

笹本を演じた春田純一氏は、数々の東映特撮作品に出演している実力派アクション俳優である。

警察を退職した元エリート。大樹と並び、ソルブレイバーの最終候補者であったが落選した過去を持つ。それを根に持っており、復讐のためにソルブレイバーのプロトタイプスーツを強奪し、次々とソルブレイン隊員を襲った。ソルブレイバーとの戦いも当初は優勢だったが、最後はプロトスーツの過負荷により自滅し、大樹に救出される。その後、戦いの現場に居合わせた子供を、装着可能時間の限界を超えてなお救出に向かった大樹の姿勢を嘲笑するも、正木本部長より、「それこそが落選した最大の理由」であることを諭され、涙を流した。

プロトタイプスーツは、胸部の一部、および右肩の色が赤い点以外はソルブレイバーと同等の外観を持つが、ほぼ全能力がソルブレイバーより高い。しかし、そのハイパワーゆえの負荷が大きいため、不採用になったという経歴を持つ。

第21話「帰ってきたWSP(part-Ⅰ)」/第22話「非情のファイヤー(part-Ⅱ)」/第23話「竜馬から大樹へ!(part-Ⅲ)」

ウインスペクター隊長・ファイヤーの最強武器、ギガストリーマーがオーバーホールのため日本に帰って来た。オーバーホールを終えたギガストリーマーをテストするソルブレイバーはファイヤー同様、必死の特訓で、これをマスターする。その後、東京でウインスペクター隊員バイクルとウォルターが目撃される。そして今また、隊長・香川竜馬の姿が。だが、大樹の目の前で竜馬は一般人を撃つという信じられない行動に出る。
竜馬が追いかけていたのは、自在に姿を変えることが出来る諜報ロボット「メサイヤ」であった。メサイヤには時限爆弾が内蔵されており、一刻も早く破壊しようとする竜馬と、それに反対する大樹の間に亀裂が生じてしまう。その最中、メサイヤは彼の製造者・藤波博士のいる松川電子工業で火災事故を起こし逃走してしまう。藤波博士は、メサイヤは「人間の意識に目覚めた」のだというが、果たして彼の正体は何者なのか。
メサイヤの正体は、交通事故で事故死した日本人旅行者の脳を利用し作られた生体ロボットだった。それと同時に、彼に仕込まれた時限爆弾を外すすべはなく、もはや破壊するしかないことが判明する。何としてもメサイヤを破壊しようとする竜馬であったが、メサイヤによって返り討ちにあってしまう。竜馬は大樹にギガストリーマーを預け、メサイヤの破壊を懇願する。だが、メサイヤの正体が人であると知った大樹には撃てなかった。メサイヤは大樹の優しさに触れ、人の心を取り戻し誰もいない場所で爆発し果てる。事件の後、竜馬は大樹を認め、彼にギガストリーマーを託すのだった。

前作ヒーロー・ウインスペクター登場という事もありお祭り編の様相を呈する3部作。しかし、悲劇の諜報ロボット・メサイヤを中心とした極めて重厚なドラマが圧巻であり、単なるお祭り回に留まらない「ソルブレイン」ならではのドラマ性溢れる力作回である。

メサイヤ(演:堀田真三)

演じる堀田真三氏は多くの東映特撮作品で悪役を演じてきた名優である。彼の重厚な演技が3部作に華を添えた。

NATO(北大西洋条約機構)が開発した諜報ロボットで、パリから竜馬達が追ってきた犯罪者。NATOが事故死した日本人旅行者の脳を使って製造された、いわば生体ロボットである。あらゆる人間に変身する能力を持つ。生前の意識を取り戻したことで「家族に会いたい」という一心で行動していた彼を待ち受けていたのは、制御を外れてから一定時間が過ぎると高性能爆弾で自爆するという非情な運命であった。その運命に絶望し、大勢の人間を巻き添えにしての自爆を画策するが、最後は彼を撃てない大樹の優しさに触れ、誰もいない所で爆発して果てた。

第29話「子供帝国の反乱」

父親である一条博士によって脳を改造され、超天才となった少年アキラ。だが彼は、身勝手な大人たちに復讐すべく「子供の世界」作りを画策する。彼はソルブレインのコンピュータからギガストリーマー設計図のデータを、更に鉱物研究所よりギガストリーマーの材料、ジルコナイト32を盗み出す。そして遂に、「複製ギガストリーマー」の製作に成功してしまう。ギガストリーマーを手にソルブレインに戦いを挑むアキラら子供たち。だがソルブレイバーの活躍で計画は阻止され、ソルブレイバーに諭された一条博士は、アキラの脳を元通りに戻した。元の明るい少年に戻ったアキラの笑顔に安心するソルブレイン一同であった。

天才になってしまった少年が、なんとヒーローの武器を複製し挑戦するというぶっ飛んだストーリー。大人をこき使う力を持ちながら、「子供の世界」を作る事に執着するという子供らしさを持つ危うさが、「天才になってしまった子供」を上手く描写している点が面白い。

一条アキラ(演:大西良和)

ウインスペクター最強兵器を複製してしまった超天才少年。脳改造恐るべし。

元々はあまり成績の良くない普通の少年であったが、そんな彼に怒りを覚えた父・一条博士によって脳を改造された結果、超天才となる。しかし同時に悪の心も芽生え、父をはじめとした勝手な大人に復讐すべく、子供が大人から束縛されず自由に生きられる「子供の王国」を作ろうと画策する。超天才となったことで大人たちを逆にこき使い、遂にはギガストリーマーの複製にまで成功する。しかし最後はソルブレイバーに救われ、反省した一条博士の手で脳を再改造され、元の普通の少年に戻った。
彼の作った複製ギガストリーマーは、サイズ、威力共に本物の1/2で、反動圧力は2Gにまで軽減しているという恐るべき代物であった。

第51話「特救・解散指令!」/第52話「特救・爆破命令!」/第53話「また逢う日まで」

ソリッドスーツの量産化が決定し、組織拡大のためソルブレインは一旦解散することになった。大樹、玲子、純はスーツ使用法の指導のため全国へ散り散りに異動することが決定し、寂しさにつつまれる本部。一方ソルブレイン解散の話を聞きつけた高岡は、それまでに自身の計画を度々阻止してきたソルブレインへの復讐を果たすべく、最後の挑戦をしかける。

高岡は一人の少年・中井勇に、20年前、勇の父・中井誠一が起こした殺人事件の現場をホログラフで見せ、勇を人質にして誠一にソルブレイン本部爆破を強要する。それが失敗すると、今度は20年前に誠一が殺した男の息子・佐藤和也をそそのかして勇を攫わせ、ソルブレインをおびき寄せる作戦に出る。20年前の殺人の影響で精神を病んでしまった和也の母をダシに、和也の憎しみを掻き立てていた高岡だったが、和也は長い年月を経た結果憎しみが薄れ、既に誠一を許す気持ちになっていた事、また勇少年と親しくしていた事から、最後に高岡を裏切る。追いつめられた高岡は、憎しみが消えることを恐れながら毒を飲み、大樹らの目の前で息絶える。事件の後、誠一と和也は真に許しあうことが出来た。最後の事件を終えた大樹らは、ソルブレインでの思い出を胸に、新たな使命へと旅立っていくのであった。

ハードかつシリアスなストーリーが連続したソルブレインの最後を飾る3部作。第35話より度々ソルブレインに挑戦した悪魔の天才科学者・高岡隆一の最後の挑戦を描く。3部作ではかつて罪を犯した者の後悔と贖罪、殺人により身内を失った者のその後を描いており、罪を犯す事の重大さ、責任の重さが描かれる。その中で、既に相手を許すことが出来た佐藤和也と、亡き両親のために憎しみを抱き続けた高岡の二人の対比が鮮やかで、高岡の死をより引き立てる。高岡の心を最後まで救えなかった事で、事実上ソルブレインの敗北とも取れる苦いラストは、「人の心を救う」事の難しさを最後まで伝えきり、考えさせられるものとなった。

高岡隆一(演:寺杣昌紀(現在はてらそままさき))

ソルブレイン最大の宿敵となった。憎しみの心に満ちた哀しき犯罪者でもあった。

第35話より登場した悪の天才科学者。 幼少期のある事件で、両親を死に追いやった人物への復讐を画策するもソルブレインに阻止され(第35話)、以降は復讐の矛先をソルブレインに向け、ソルブレインが掲げる「人の命と犯罪者の心を救う」という使命を完全否定するために手の込んだ策略を持ってソルブレインに度々挑戦した。純真な少年を催眠術で操った警官のパトカーで轢殺するなどメンバーらを心身共に追い詰めていき、終盤にかけてソルブレインの宿敵となっていく。
第51話~53話では、同じく父親を子供の頃に殺され母親が心を病んだ青年・佐藤和也に、入院している母親の治療費を宛がうことで父親を殺した中井誠一とその家族に復讐をさせようとするも、和也に裏切られ負傷する。高岡の罠に掛かり、身動きが取れなくなったソルブレイバーらを救出するため、正木が同乗したSS-I が高岡のアジトである廃工場へ強行突入した直後に、覚悟を決めて服毒する。ソルブレイバー、ナイトファイヤー、正木の3人に追い詰められ、最期は自らの身体と直結させていたコンピューターを正木が放った銃弾によって破壊され、自らの憎しみが消えることを恐れながら自爆して果てる。数多くの犯罪者の心を救いながらも高岡の心だけは最後まで救えなかったことで、ある意味ではソルブレインの敗北とも言える結末である。
憎しみの中でしか生きられず、両親の死による憎しみが時間と共に薄れることを憂い、コンピューターと合体して憎しみを増幅させるプログラムを流し続けるという、あまりに哀しい存在であった。

『特救指令ソルブレイン』の名言・名セリフ

「常にトップに立ち、上からしかものを見れないお前には分かるまい…どんなに小さく弱い命でも自分の力が続く限り、救おうとするソルブレイバーの心と勇気が。」(正木本部長)

第8話、笹本との死闘の後、スーツの装着時間の限界を超えてなお燃える廃工場の中に取り残された子供を救出した大樹の姿を嘲笑った笹本を一喝した台詞。これこそが笹本をソルブレイバーの候補から落選させた最大の理由であり、正木が大樹に大きな信頼を置いていることが伺える。

「俺は人間でもない、ロボットでもない、ただの"バケモノ"だ。」(メサイヤ)

第23話、メサイヤを撃てなかった大樹の心の優しさに触れ、誰もいない所で自爆することを選んだメサイヤが、最後に大樹に言い残した台詞。つかの間、人の心を取り戻した「バケモノ」の、悲しい最期であった。

「やめろ…私から、憎しみを奪うな。憎しみが無くなったら、私はどうしたらいいのか…頼む、頼むからもとへ…来るなぁーッ!!」(高岡隆一)

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